コンピュータRPGのボス演出

どうもボス戦が嫌いで、面白いRPGでもそれを機に止めてしまうことが多い。
面白みがないのだ。


RPGに於けるボスというのは「強大な存在」だ。そこらの雑魚と違って数ターンで決着するようなものであってはならない。攻撃を悉く跳ね返し、痛烈な一撃で以てPCをピンチに陥れる。そういう代物として描かれる。とりわけラスボスの存在価値は極めて大きく、その分だけ苦しみも大きい。
が。
プレイヤーを苦しめてどうするのか。いや「乗り越えるべき障害」としての存在感が必要だというのは良い。しかし乗り越えようとする行為が単なる苦行であっては、エンタテインメント失格ではないだろうか。


典型的なラスボス戦というのは、例えば強烈な全体攻撃や殆どの攻撃を無効化する防壁、状態異常の多用や強化の消去など多彩な手段を以てこちらの常套手段を悉く封じて見せ、あるいは無数の雑魚を召喚し続けて手数で圧倒し、また倒したと思ってもより強力な第二形態へ移行する、要するに「長くて面倒で鬱陶しい」ものだ。
それって面白いんだろうか。


苦境というのは乗り越えられるからこそカタルシスの源となるのだ。乗り越えられなければ唯の絶望に過ぎない。また思考ゲームたるRPGに於いては、乗り越えまでの手順は純粋に思考だけで解決できるようなものであるべきで、力技だけで押し切るとか偶然に頼る、あるいは複雑で理論的でない筋道を総当たりで探るようなやり方が正道となるべきではない。
つまるところ、ボス戦は(やるとすれば)パズル的であるべきなのだと思う。


この方向性での傑作は、ナムコの「7〜モールモースの騎兵隊〜」である。

7(セブン) ?モールモースの騎兵隊? PlayStation 2 the Best

7(セブン) ?モールモースの騎兵隊? PlayStation 2 the Best

これは(一般的な意味では)RPGのようでRPGでない。極めてパズル的なシステムを特徴とする、一種のシミュレーションゲームである。前列、中列、後列の3段12マスに7人のメンバーを配置して部隊を組み、これをローテーションさせて戦闘する。攻撃を行なうのは前列(もしくは射撃能力を持つ中列)のみ、中列のメンバーは前列を補佐して能力を増強し、後列はダメージの回復に努める。敵の行動パターンは一定なので体力のあるメンバーで攻撃を受け止め、攻撃の苛烈なメンバーに補佐の得意なメンバーを添えて敵を削る。
その特異なシステムと、RPG的なストーリーゲーム部分(実は丁寧なチュートリアルであるが)の短かさが災いして評価は決して高くないが、実はRPGの目指すべき道の一つであると思う。


もうひとつの方法は、ボスを特別扱いしない方法。強大な敵と雖もシステム上それほど抜きんでた特権を持つものではなく、所詮は同じルール上にあるものとして扱う。当然その存在感が疑問視されるが、そこは演出で乗り切る:例えば、初回登場時はどんな攻撃も一桁ダメージ程度しか与えられないなど強烈な能力差を示しつつ、次回登場時にはPCの成長によって「手の届く相手」に成り下がっているなど。こちらは相対的にPCの成長を示す演出ともなり、別の効果を生む利点もある。


戦闘の楽しいゲームであっても、考えながら課題を乗り越えるからこそ楽しみがあるのであって、単なる作業と化してしまえば苦行に堕する。開発者はその辺もう少し考えるべきだ。


レベル上げ過ぎとか言われてしまったので追記しておくと作業否定派なのでレベル上げもしたくない。寄り道せずほとんど真っ直ぐ突入、戦力不足を悟ってから嫌々レベル上げに戻る程度。ただ育成傾向がかなり偏りはするかも知れない、が「それだと勝てない」のだとすればちとバランス調整に問題がないか。育成状況は後から変更できないわけだからして。