FRAGILE〜さよなら月の廃墟〜

FRAGILE(フラジール) ~さよなら月の廃墟~(特典無し)

FRAGILE(フラジール) ~さよなら月の廃墟~(特典無し)


Wiiの廃墟探索RPGである。
FRAGILE 〜さよなら月の廃墟 〜

人が死に絶え、廃墟となった世界。ごくわずかな生き残りである少年は、一緒に暮らしていた老人の死に際し、遺言を元に遠方に見える赤い鉄塔を目指し旅立つ。
昭和の匂いを色濃く残す廃墟を、懐中電灯を頼りに歩く。そこかしこに見えるのは、生きていた当時の人間の記憶と、人間に害意を向ける何か、それに生きた猫の姿。
旅の途中で見掛けた少女の足取りを追って、少年は廃墟を巡る。天文台、地下鉄駅、商店街、遊園地……

作り込まれた廃墟の雰囲気は実に素晴らしい。恐らく、クーロンズ・ゲートもハード能力さえ許せばこういうことがやりたかったのだろうと思わせる。
操作系は実にWiiらしい設計で、リモコンを向けて視線を動かしつつヌンチャクで移動する。慣れるまでは酷く酔うこと請け合い。
アイテムやセーブポイントに合わせA+Bボタンでズームすると取得/利用。拾ったアイテムはもちもの欄のマス目に並べるが、一杯だと取得できない。使わないものは鞄に仕舞い、あるいは配置を変えて余裕を作る。
リモコンを向けた方向に何かあると、音が聞こえてくる。雑音と共に声がするような場合は敵がいることを示す。場合によっては人の声や猫の声を頼りに進む必要も出てくる。また、誰か一緒にいる場合はリモコンを縦にして耳に近付けると話ができる。

敵。そう、この世界には敵がいる。それは多くの場合、心霊現象的な何かだ。攻撃はコマンドではなくアクションによって実行される。とはいえ難易度はかなり低めで、大体の敵はスルー可能なので話を進めるのは難しくない。もちろん、ボス敵はスルー不可能なので戦力を高めておくに越したことはないのだが。
とはいえ「ストーリーを追う」のが目的のRPGに於いて障害であり話が間延びする原因ともなる戦闘要素を、スルー可能な仕様としたのは大きい。これによってゲームはかなりハイテンポで展開する。
ただ、それだけに「飛ばすことのできない」イヴェントの存在が気になるところでもある。ボス戦などの戦闘イヴェントは事前にレベルを上げ強い武器を入手すればどうにでも乗り切れるが、パラメータと無関係なイヴェントについてはプレイヤーの能力でどうにかするしかなく、場合によっては心折れる原因となりかねない。少なくとも追いかけっことモーションセンサーはなかなかしんどかった。

各所に落ちているアイテムの中には「人の記憶が籠った」ものがあり、これらはセーヴポイントで焚き火に照らすことで「読む」ことができる。別段ゲームの進行には何ら関係ないのだが、ちょっとしたショートストーリーを形作っており、主に滅びの直前の人々の様子が垣間見える。闇雲に恐怖に暮れるのでもなく、怒りや狂乱に身を委ねるでもなく、最期の一時を静かに全うしてゆく人たちの姿が。

派手さはないが、隅々まで作り込まれた良作であった。