マイクロフォーサーズの標準ズームを考える

旅行に行くときはなるべく身軽でありたい。カメラは外せないがレンズは最小限、しかし景色を撮るための広角、食べ物を撮るための近接、それに多少の望遠は欲しい。
単焦点だと一本あたりは小型軽量でも3本ぐらいを使い分ける羽目になり、また付け替えの手間もあって撮りたいと思った時に撮れない場合がある。動かないものならば少々時間を取っても良いが、動物や乗り物など「今すぐ」撮るためにはどうしても即応性が不足する。
やはりズームレンズが必要だ。それぞれの画角では単焦点に劣るとしても、画角を自在に変更できる能力は捨て難い。

そういうわけで今回は、広角〜中望遠域をカヴァーする標準ズームレンズを物色する。

求める性能としては、

  • 景色を多く撮るので、広角側はそれなりに広く。現在使っている15mm F1.7(換算30mm)では若干の不足を感じる場面があるので、最低でも12mm(換算24mm)程度は欲しい。
  • 望遠側は多くを求めない。とはいえ最低でも標準域50mm相当程度は必要で、できれば中望遠域ぐらいまでをカヴァーしたい。
  • 近接はマクロというほど強力である必要はなく、料理などを撮ることができれば十分。
  • 重量は軽いほど良い。OM-D E-M5/M10系やPENのボディが400g前後なので、レンズは300gとし、ストラップ込みで合計重量を800g程度に抑えたい。
  • 価格は……まあ安く済むならそれに越したことはない。

といったところ。

候補

まずはズームレンズのうち広角側が12mmよりも長いレンズ、望遠側が25mmよりも短かいレンズを候補から外し、10本ほどに絞る。

パナソニック 最大撮影倍率(換算) 最短撮影距離 重量 価格(概算)
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7 ASPH. x0.28 0.28m 690g 18万
LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S x0.26 W:0.20m / T:0.30m 70g 2万
LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 Ⅱ ASPH. POWER O.I.S. x0.34 全域0.25m 305g 8万
LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S. x0.54 W:0.20m / T:0.25m 210g 4万
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S. x0.6 W:0.20m / T:0.24m 320g 9万
オリンパス(OMデジタルソリューションズ) 最大撮影倍率(換算) 最短撮影距離 重量 価格(概算)
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO W:x0.14 / T:x0.42 0.23m 411g 12万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO x0.6 0.2m 382g 7万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO x0.5 W:0.12m / T:0.23m 254g 5万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO W:x0.6 / T:x0.42 W:0.15m / T:0.45m 560g 15万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 W:x0.20 / T:x0.46 W:0.22m / T:0.7m 455g 9万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ x0.72(Macro) 0.20m(Macro) 212g (2万)

最後に加えた1本は生産終了品なので新たに購入するレンズの選択肢としてはおすすめしにくいが、私の所有レンズなので参考情報として加えておく。

広角

上記のうち、広角が12mmよりも広いのはLEICA VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7とM.ZUIKO 8-25mm F4.0 PROのみだ。この2本は望遠側が25mm止まりなので標準域のズームレンズというよりも「やや望遠側の長い広角ズーム」という方が適切だろう。とりわけ10-25mmはズームレンズながらF値1.7と単焦点並みの明るさを持つ大口径レンズで、その分だけ重く高価なのであまり観光で気軽に持ち歩くレンズではない。
その他のレンズはいずれも最広角12mmで、さしあたり優劣はない。

望遠

焦点距離ではM.Zuiko 12-200mmが圧倒的で、これはもう超望遠の域である。これほどの超倍率ズームだけに450g超と若干重いし、流石に画質は若干甘さが否めないようだが、広角から超望遠までを1本で賄うならこれ以外の選択はあるまい。とはいえ観光に於いてそれほどの超望遠を使う場面は恐らくそれほど多くはなく、敢えて観光用として採用すべきかどうかには些か疑問がある。
次点のM.Zuiko 12-100mm F4 PROはプロをして「これ1本あればほとんどの仕事は間に合う」と言わしめる超レンズだが、560gもの重さと12万という価格は流石に軽々しく手を出せるものではなく、気軽な観光用レンズとは言えない。

この時点で、「超広角にこだわる」「超望遠にこだわる」場合の選択はほぼ決したようなものだが、逆に言えば「どちらもそこまで必要ない」場合の決め手はまだない。
残り6本を比較してみると、望遠側の焦点距離が短かい方から32mm、35mm、40mm、45mm、60mm(2本)となる。最もコンパクトな12-32mmと最長の12-60mmでは望遠の画角が倍ぐらい違うが、逆に言えば2倍弱の差に過ぎない。長いに越したことはないが、短かいからといって使い勝手が極端に劣ることはなさそうだ。

近接

この項目は実はひとつの性能ではなく、最大撮影倍率と最短撮影距離の両方が影響してくる。
恐らく旅先で小さなものをクローズアップ撮影する機会はさほど多くないだろうが、たとえば花や実などを大きめに撮りたいことはあるかも知れない。
最大撮影倍率では、スペック上もっとも高倍率なのは(マクロモードを持つM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3を除けば)LEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0とM.ZUIKO 12-40mm F2.8 PROの換算0.6倍、次いでLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6の0.54倍、M.ZUIKO 12-45mm F4.0 PROの0.5倍だ。
一方で最大撮影倍率の低い方ではLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6の換算0.26倍、LEICA VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7の0.28倍、LUMIX G X 12-35mm F2.8の0.34倍あたり。

最大撮影倍率から「どれぐらいの大きさに撮れるか」を想像するのはちょっと難しいと思うが、大雑把な目安としては
0.2:アジサイの房ぐらいの大きさなら画面一杯に撮れる
0.4:バラ一輪ぐらいを画面一杯に撮れる
0.6:タンポポの花を画面一杯に撮れる
ぐらいのイメージ。0.6までなくてもいいけど0.3ぐらいだと若干物足りない気はする。
この時点で絞り込むならば、最大撮影倍率の低いパナソニックの3本を落とすところだろうか。

最短撮影距離の方は、主に料理写真などに関わる部分だ。撮影距離の長いレンズだと目の前の料理を撮るために席を立たねばならなくなったりするので、なるべく短距離で撮影できた方が良い。
撮影距離は望遠ほど長くなるが、超望遠で料理を撮ろうとすると画角が狭すぎてごく一部しか写すことができなくなるし、逆に最大広角で撮るとパースが強くなり不自然さが出るので、だいたい標準的な25mmあたりの最短撮影距離が25cmぐらいに収まっていれば良いだろう。撮影距離は最広角と最望遠の数値はあっても25mm時のものはないため明確な比較はできないが、流石にM.ZUIKO 12-200mm F3.5-6.3の最広角22cmは若干厳しいかも知れない。他のレンズは12-100mm以外いずれも望遠側でも25cm以内に収まっており、さほど不便はないものと思う。

こうして見ると、性能面だけでは以外に絞りにくい。いずれも劣らぬ性能を持ち、あとは何を重視するかというバランスの問題になってくる。

価格

最安はパナソニックLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6、2万円ちょっとで買える。次点がLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6で、最安時期なら3.5万ほどになる。3番目に安いオリンパスM.Zuiko 12-45mm F4 PROとは2万5千円ほどの差があり、LUMIXのコストパフォーマンスが光る。
逆に最も高いのはM.Zuiko 12-100mm F4.0 PROで、最安でも12万円。次いでLEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0、最安で7万6千円。

重量

最軽量はLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6でわずか70g。次点はLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6の210gとM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3の212g、またM.ZUIKO 12-45mm F4.0 PROも245gと、なかなかいい勝負だ。まあ重量に関してはLUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8(305g)やLEICAVARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0(320g)も十分に許容範囲ではある。流石に10-25mm F1.7(690g)や12-200mm F4.0 PRO(560g)はちょっと厳しい。

総合評価

最後に、ここまでの全性能をスコア化してみる。
広角・望遠・最大撮影倍率・最短撮影距離・重量・価格それぞれに、最も性能の低いものに0、以降順番に1点づつスコアを割り振ってゆく。11本あるので最低は0、最高は10点ということになるが、性能指標によっては同率も生じ得るので必ずしも最大が10とはなっておらず、また他に比して高い性能を持つものは相応に評価すべく調整を加えている。
広角性能については11本中9本が0となる関係上、より広角なレンズのスコアがごく低いスコアしか与えられないことになるので、これのみ5・10点を割り振った。望遠は12-200および12-100が突出しているので、この部分のスコアを高めにしている。またF値は6段階に分けられたので2刻みとなった。

パナソニック 広角 望遠 F値 倍率 最短 重量 価格 合計
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7 ASPH. 5 0 10 1 0 0 0 16
LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S 0 1 2 0 4 10 8 25
LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 Ⅱ ASPH. POWER O.I.S. 0 2 8 2 1 6 4 23
LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S. 0 6 2 6 4 9 7 34
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S. 0 6 6 7 4 5 3 31
オリンパス(OMデジタルソリューションズ) 広角 望遠 F値 倍率 最短 重量 価格 合計
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO 10 0 4 3 2 3 2 24
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO 0 3 8 7 4 4 5 31
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 0 4 4 5 6 7 6 32
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 0 8 4 6 5 1 1 25
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 0 10 0 4 3 2 3 22
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ 0 5 0 8 4 8 8 33

純粋にレンズ性能を追及すれば大口径化しがちだが、そうすると重量および価格のスコアが悪化する。結果、ピーク性能よりも総じてバランスの良いレンズが高スコアとなる。
そういうわけで、スコアトップは性能の割に安くて軽いLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6(34点)、次いでマクロモードによってスコアを稼いだM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3となった。
ただ、このスコアは性能からの絶対指標ではなく、あくまでこの11本の中での順位スコアであるから1〜2点程度の差異はあまり意味を持たない。その意味で30点以上のLEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0、M.ZUIKO 12-45mm F4.0 PRO、M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PROはいずれも甲乙付け難いレンズと言っていいだろう。
また、これは全体的なバランスを重んじるものだから、どうしても譲れない性能がある場合はこのスコアはあまり意味を為さなくなる。

個人的にこの中から選ぶならば、やはり手頃な価格と重量で必須性能をほぼ備えた、LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの2本いずれかだろう。

金沢旅行:2〜3日目

2日目:朝食

2日目の朝はまず朝食から始まる。
昨日の古建築探訪エリアからやや駅側へ遡った一体、「百万石通り」周辺は大正時代以前の木造商店建築が多く残る場所である。前日に目を付けておいた、台湾料理 四知堂 kanazawa天保年間創業の漆商「森忠商店」の建物で、大正時代のものだという。
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四知堂は台湾に本店のある、本場の台湾食堂である。
ここで台湾粥と鶏肉飯、割包に冷台湾茶を。本日の銘柄は東方美人。
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美術館へ

当初はまず兼六園の予定だったが、前日に歩き過ぎたダメージが残っており庭園散策は体力が続かないと予想されたため、予定を変更して先に金沢21世紀美術館を巡ることにした。
www.kanazawa21.jp
バスを下りるとまず、オラファー・エリアソン《カラー・アクティヴィティ・ハウス》が。
シアン・マゼンタ・イエローの「色の3原色」のフィルムを貼られたガラスの曲面が螺旋状に囲う空間で、色の重なりによってガラスを通した景色が様々な色に見える。壁面同士の反射による色のグラデーションも美しい。
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この日は七五三だったらしく、向かいの石浦神社にお参りした着物の子が記念撮影していた。

美術館は円形で、周囲をぐるりとガラスの壁が囲っている。
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入口でチケットを購入し、まずはレアンドロ・エルリッヒ《スイミング・プール》内部入場の予約を取る。有料展示を含めたチケットは1200円だが、バスのフリーパスで200円の割引がある。
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入場時間待ちの間にコレクション展を巡る。
武田竜真《The Eye of a Needle》は海の映像を投射するプロジェクターと洞窟の形を切り抜いたスタイロフォームによる作品で、壁に洞窟から見える海の景色を投影する。
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草間彌生《I’m Here, but Nothing》は展示室内に設えられた生活空間と、その一面に貼られた蛍光色のカラーシールをブラックライトが光らせる。
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ゲルハルト・リヒター 《8枚のグレイ》は何も描かれていない、同じ大きさのダークグレイのパネルが貼られた空間。シンプルだけに「どう見るか」がこちら側に委ねられる。
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そのほか、コレクション展でもっとも惹かれたのは、「SCP」の概念を生み出すきっかけとなったことでも知られる加藤泉の油彩作品を筆頭にシリン・ネシャット、アナ・メンディエータ、向井山朋子+レニエ・ファン・ブルムレンらの写真・映像作品が集められた一室。全体として「未知の宗教儀式」を思わせ、ホラーシナリオの着想が得られそうな雰囲気であった。写真作品にせよ映像作品にせよ、「それを写真に撮影する」ことによって元の作品が持つ魅力を伝えることは困難であるため割愛する。

この美術館が特徴的なのは、なによりもまず「恒久展示作品のために作られている」ことだろう。中庭に埋め込まれる形で作られたレアンドロ・エルリッヒの《スイミング・プール》はその筆頭だが、ほかにも複数の恒久展示作品が館内に組み込まれている。
パトリック・ブラン《緑の橋》は壁面に多数の植物を植えた「垂直庭園」をコンセプトとした作品。
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ジェームズ・タレル《ブルー・プラネット・スカイ》は天井を刳り貫いた大きな部屋で、外と隔絶した何もない空間によって空そのものを展示する。
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同じく空そのものを展示するのがヤン・ファーブル《雲を図る男》。
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アニッシュ・カプーア《L’Origine du monde》は奥に向かって窄まってゆく斜めのコンクリート壁と漆黒の楕円形から成り、遠近感を狂わせる(こちらは撮影禁止)。

展示室の半分ではふたつの「フェミニズム」をテーマとした展示が行なわれていた。ただこちらは些か散漫というか、テーマに対して踏み込みが足りないような印象を受けたが、その中では、裸身のセルフポートレイトを「プレイボーイ」のラビットマークやスクール水着などセクシャルな記号の形に切り抜いた木村友紀《存在の隠れ家》、嫁ぐ女性の顔を隠す風習になぞらえてヌード写真の顔のみを隠した潘逸舟《無題》にはメッセージを感じる。

ちょっと早いが館内のカフェで昼食。
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地下へのエレベーターは箱上部分の装置や周囲の囲いがない油圧式だった。
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さて時間が来たので、いよいよ《スイミング・プール》の地下へ。
展示の性質上、「プールの底に人がいる」「プールの底から人を見上げる」ことに面白みがあるのだけれど、それだけに写真は撮りにくい。同時に入った人たちが写った写真はあるけれど今回は上げずにおく。
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21世紀美術館の近くには私設美術館「KAMU Kanazawa」もあり、こちらにもレアンドロ・エルリッヒの作品《INFINITE STAIRCASE(無限の階段室)》が展示されている。鏡を使った錯覚を得意とするエルリッヒの作風がよく出た一品。
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まだ日も高いうちではあるが、前日のダメージが大きく既に疲れていたのと、前日に撮りすぎた分で朝の時点ではゲージ3本に見えたバッテリーが点滅表示になった(これによって、フル充電で撮影可能な枚数はおよそ500枚が限度ということが判明した)ことで早めにホテルへと引き上げることに。
このあたりは他にも明治24年の煉瓦建築「旧制石川四高」や国会議事堂を設計した矢橋賢吉の設計になる大正13年の最古の鉄筋コンクリート県庁舎などがあるのだが、それらを見て回る気力と電力が足りない。

この日は1万歩ほどでホテルへ帰着。

3日目:朝食と神社

どうせなら「金沢ならでは」のものを食べよう、と朝は地元で知られる名店「ひらみぱん」へ。
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朝から行列ができていたので店内での飲食は諦め、テイクアウトしたパンを近くのベンチで。いずれも美味ながら、特に外はカリッと香ばしく中はもっちり滑らかなカヌレは絶品だった。
内装も素敵だったので撮影したくはあったが、これだけ混雑しては憚られたので諦める。

そのひらみぱんからまっすぐ、尾山神社明治6年に旧金谷御殿跡地へ造られた、加賀藩前田利家を祀る神社。明治8年に建てられた神門は和洋中折衷の独特な形式で、最上階には色ガラスが嵌められている。頂上にあるのは日本最古の避雷針だそう。

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これは前日の夜に神門だけ撮ったもの。色ガラス部分がよくわかる。
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御殿の庭園だった場所はそのまま、神庭として今もある。
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にし茶屋街と昼食

犀川を渡ってにし茶屋街へ。ここに架かる橋は鉄筋コンクリート3連アーチの浅野大橋より2年後、大正13年の鉄骨トラス橋で、こちらも登録有形文化財である。
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茶屋街へ行く手前に気になる建物を発見。
3階建の料亭「山錦樓」は大正11年に建築されたものを昭和11年に3階部分を増築したものだそうで、新しい上階部には色ガラスが見られる。
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にし茶屋街は、市内3箇所の茶屋街の中では唯一「伝統的建造物群保存地区に指定されていない」場所である。その理由は、実際に行ってみるとよくわかる。
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茶屋街の雰囲気は感じるものの他の2地区に比して規模が格段に小さく、また小綺麗に整えられており「つくりもの」っぽいのだ。勿論ここも茶屋街だったのではあり、当時の面影を残す場所には違いないのだろうけれど、雰囲気を楽しむならば浅野川方面へ行った方がいい。
ただ、大正11年の芸妓管理事務所であった西検番事務所だけは間違いなく当時のものだ。
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昼食は、昨日の朝に食べた四知堂へ。ここは軽食だと店頭席での提供となるが、ランチセットは奥のテーブル席でいただくことができ、その向こうには庭も見える。
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雨が降っていて寒かったので暖かい台湾茶が飲みたいところだったが、「キノット」という耳なれない飲みものが気になったので、それを注文。柑橘の一種であるらしい。
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魯肉飯と牛肉麺、それぞれに生姜シロップ・金木犀シロップの豆乳プリンと雪Q餅が付く。
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ところでこの辺りは他にも古い建物が多く残っているので、それらをざっと貼っておく。
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金沢の木造建築では、1階の屋根と2階の窓の間にこのような、タイルというか瓦による装飾が施されていることが多い。気になる風習。
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また寺院の瓦などは、よく見る鈍色のものではなく真っ黒で艶がある瓦が使われていた。どうやら素焼きではなく黒釉をかけた、能登独特の瓦であるらしい。

これは最近建てられたと思しい商業施設の入口にあった謎の屋台。いい雰囲気だが現在は営業していないようだ。
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金沢城兼六園周辺と街探索

兼六園方面へ向かいはしたものの、結局中には入らずじまいだった。なんとなれば「広い」からだ。以前、六義園を回ったときもかなり足を酷使したが、こちらはそれよりまだ広い。そして城は(敷地面積だけなら)その3倍ある。
そういうわけで城と園は次回来たときの楽しみに取っておくことにして、その間を通りつつ写真を少し撮って、市街中心部「香林坊」方面へと向かう。
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これは武家屋敷跡から移植したものだという、立派な枝ぶりの松。
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古い建物ばかりではなく、「普通の街」も少し撮っておく。
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金沢駅にて

早めに金沢駅に戻り、空港へのバスを待つ間に駅内店舗をひとめぐり。
金沢の名店を集めたデパ地下のごとき土産物売り場は新幹線ホームに直結しており、財布へのアクセスが良い。
駅弁だけでなく、待つ間に腹ごなしできるよう飲食店も充実している。
帰る前にもう少しのどぐろを味わっておこうと、海鮮丼を注文して帰路。
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金沢旅行:1日目

会社の勤続表彰で休暇と旅行券を貰ったので、一度行ってみたかった金沢に出掛けた。
結論から言えば、金沢は凄い場所だった。あまりに凄すぎて写真の枚数がとんでもないことになったので分けて掲載してゆく。

計画

新幹線の方が時間の融通利いて便利な気もしたが、運賃がかなり違うので航空便に。実質飛行時間はわずか36分、家〜羽田空港/小松空港〜金沢にかかる移動を鑑みても新幹線(およそ3時間)より速い。
新幹線は今のところ金沢止まりで大阪方面へはまだ路線が完成していないのだが、特急サンダーバードが2時間半で結んでいるのでこちらは航空機より手軽なようだ。


箱根旅行の際に「どんな場所でどんなものが撮れるかわからない」旅先では単焦点の付け替えには限界があると痛感したので、できればズームレンズを持って行きたいところだ。しかし手元のズームレンズはキットレンズぐらいしかなく、流石にちょっと物足りない。
じゃあメーカーのレンタルサービス(いいレンズを格安で貸し出し、沼に嵌める陰謀)を利用しよう、とLUMIX BaseでLeica 12-60mm F2.8-4を借りに行ったのだが「写真付きの身分証が必要です」運転免許証とか持ってないので撃沈。
仕方ないので今回も単焦点のみで行くことに。

1日目午前中:空港〜駅まで

朝早くに出たので、空港で登場前手続を済ませた後まず朝食。空港内の和食処Hitoshinayaで白粥をいただく。
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だいぶ時間があったので空港内を散策するも、朝はショップも開いていない。
これは店のディスプレイにあったロンデル窓(のために作られる、吹きガラス円盤)。
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飛ぶまでは長いが、飛んでしまえば着くまでは早い。機内サービスでJALオリジナルの桃とぶどうのジュースをもらって、紙コップが回収されるともう着陸である。
空港を出てリムジンバスで金沢駅へ。飛行機の搭乗時間と同じぐらいの時間がかかって、到着は昼前。

まずは金沢の新名所、「鼓門」を見にゆく。螺旋状の柱に支えられた木造の赤門が印象的だが、実際にはその門に連なるトラスフレームのガラスドームにまず圧倒される。
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持ってて良かった魚眼レンズ。
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門の側から見ると、ガラスドームが見事にその陰に隠されていることがわかる。
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ドームの左右は曲線状に広がり、バス・タクシーのロータリーになっている。後にわかるが、鉄道が未発達なぶんバス網が整備されており、これが主要な交通手段になる。
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青空の反射も美しい。
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とりあえず、朝食が軽かったのでまずは昼食を食べようということで近江町市場へと歩く。後にわかったのだがバスで2区間ほどの距離があり、歩けないほどではないが足を温存するならバスを使うべきだった。
市内の主要観光地を周遊するバスは1回200円(距離に関わらず)だが600円で1日乗り放題の券が駅のバス乗り場で購入可能で、様々な施設の入場料が200円ほど値引きになるので迷わず買うといい。なお我々の旅行が終わったその日から電子化され、アプリをインストールすれば売り場に行かずとも乗り放題券が買えるようになるそうだ。

これは市場への途中で見つけた洋品店。なかなか情緒ある店構え。
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大通りにはどこも地下道があり、信号を待たずに渡れるようになっている。歩道橋を見ないのは雪国ゆえか。ただ、都心の駅地下にあるような地下街は見られない。
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近江町市場にてのどぐろの寿司などを食べて満足。
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1日目午後:街歩き

当初、金沢観光ではひとまず兼六園21世紀美術館を主たる目的に据え、他にいくつか気になる観光スポットを拾ってなんとなくプランを練っていた。
2日目の夕方〜3日目は雨の予報で、特に3日目は寒くなるようだったので、暖かい1日目〜2日目のうちに兼六園を回るのが良いのでは……と言いつつ、とりあえず街中をぐるりと巡っておこう、とバスに乗り……すぐに気になる建物を見付けてバスを降りた。
思えばこれが大正解(あるいは大失敗)だった。

来るまで知らなかったが、金沢という街は至るところに古建築が残る場所である。あまりに数が多いので、目立つもの以外はさして貴重とも思われていない節があり、気軽にリノベーションされて店舗として使われていたり、あるいは単なる民家として今も現役だったりする。
そういうわけで、一軒見付けて写真を撮っているとその近くにまた一軒見付け……と足を運んでいるうちにすっかり街歩きに時間を取られてしまうことになった。

まずは旧三田商店。
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昭和5年建築のコンクリート造スクラッチタイル貼り。丸みを持たせた角に入口を設け、装飾的な正面を成す。
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隣には喫茶店が続くが、こちらは壁の意匠を合わせてはいるものの後世の築。

続いて旧村松商店。
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こちらも昭和3年築のアール・デコ建築で、直線と曲線を組み合わせた装飾が特徴的だ。
現在はCazahanaというインテリアショップが入っていた。
cazahana.com
あまりに素敵なので内装を撮らせてもらう。
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こちらの店で、近所の古建築内覧会の情報を教えていただく。ちょうど当日とその翌日の2日間のみ実施されているそうで、早速そちらへ向かうことに。
……と、その途上で気になる物件を見付けて寄り道。
昭和7年築の旧田上医院は、モルタル塗りの正面こそ地味ながら側面へ回ると木造病室が続く大医院であったことが伺われ、なかなかの迫力。
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さてその古建築は、金沢医大の教授であった人物の住んでいた洋館であるそうだ。
最近まで住んでいたのか、外観は樹脂製の雨樋が取り付けられたりと手が加わっているものの、荒れた庭木は屋根に倍する高さで、その年月が伺われる。
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ステンドグラスには天馬に跨る騎士の絵。盾には1930とあり、これが建築年と想像される。
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玄関は黒塗りに緑タイル貼り。
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内部は床も天井も剥がれてはいるが、内装の良さが伺われ映画セット的な雰囲気を醸す。
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台所との壁は料理を配膳する棚になっている。
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配電盤のある和室は使用人の部屋だったのだろうか。
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ここからはざっと写真を並べるに留める。館は和洋室入り混った3階建で、二階には大きな和室や壁一面に本棚を設えた書斎もあったが、見学者が多かったため撮影はしなかった。いくつかの部屋は床が腐り落ちていた。
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これほどの建物は他地域ならば自治体の保存指定を受けそうなものだが、今のところ特に指定はされていないようで詳細な情報は不明。

さて街歩きに戻る。
この辺りは特に昭和初期の建築が多く残っているようだ。
昭和4年築の旧高岡銀行橋場支店は、現在は金沢文芸館 五木寛之文庫として運営されている。
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木橋のたもとにあり、すぐ裏手を川が流れているのは印象的。
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1日目夕:茶屋街へ

旧高岡銀行橋場支店の反対側には浅野川を渡る大橋があり、橋を挟んで手前側に主計(かずえ)茶屋街が、向こう側にひがし茶屋街が広がっている。
この橋自体も大正11年のもので、登録有形文化財だそう。
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このあたりを撮るのが当初の二次目標だったのだが、あまりに素敵すぎて日没までずっと撮影していたので、この日はこれでおしまいになってしまった。
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ただ、期待していた日暮れの光景については、コロナ禍の影響か夜間に明かりを灯す茶屋がほとんど見られず少々物足りなくはあった。早く観光の活気が戻って欲しいところ。

1日目夜:夜の駅前〜ホテル

日が沈んだので鼓門のライトアップを見に駅へ戻る。
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ホテルはトリフィート金沢。
torifito.jp
できたばかりの新しいホテルで、グレイを基調とした落ち着いた内装。
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窓際にソファが設えてあるのは嬉しい。

足が痛くなるまで歩き回って、ホテルで歩数を確認したら2万1千歩だった。推定移動距離14km、そりゃ足も疲れるわけだ。

清水公園

千葉県の北西部、「醤油の町」として知られる野田市に、120年続く公園がある。
www.shimizu-kouen.com
東武野田線アーバンパークラインで大宮駅からは14駅50分、柏駅からは9駅26分。「清水公園」駅より徒歩10分の距離。
一般的には巨大なフィールドアスレチック場として有名で、千葉県内のみならず隣接する埼玉県東部地域の小学生が一度は遠足に行き水上コースでずぶ濡れになるという場所だが、実は花の名所でもある。

元はといえば19世紀の末、江戸時代に醤油の醸造で財を成した八家(後のキッコーマンである)が寺院の敷地を50年間の契約で借り上げ造園を行ったことに始まるという。今でも梅や桜、躑躅など季節ごとに様々な花が楽しめるほか、一角には広大な園芸植物園も設けられている。
またキャンプ場・バンガローも併設され、一大アウトドアレジャー施設として利用できる。

私も小学生の頃は隣市に在住していたため遠足などで訪れたことがあったのだが、それ以来もう30年以上ご無沙汰であった。今はやや遠くなったとはいえ、さほどアクセスの悪い位置というわけでもないので、ちょっと出掛けてみることにした。

アクセス

野田線は、清水公園駅を含む春日部〜運河間が単線区間になっている。それだけ利用者の少ない区間であり、ちょうど中央に位置する清水公園付近は人家の密度も低く、高層建築はおろか駅前にはコンビニすらない。
そんな駅の西口からまっすぐ10分。トンネルに至る車道の脇を進んだところに公園の入口がある。途中には「野田貝塚」跡などもあり、この辺りが縄文海進期には海岸であったことを物語る。

園内

入口には巨木。120年を経た公園とは思えないほど綺麗に整備されているが、これは2019年のリニューアルによるもので、それまでは電動カートなど遊具のコーナーだったようだ。
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公園自体に入場料はない。フィールドアスレチックや植物園などいくつかの有料エリアや、レストラン・宿泊施設など有料サービスはあるが、それ以外は無料で楽しめる。これで公営ではなく民営だというので経営が心配になるが、永きにわたり運営されており施設のリニューアルなども行なわれているのだからしっかり利益が出ているのだろう。

左手にあるカフェは芝生に面したオープンテラスを持ち、昼時にはファミリー客で賑わう。
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隣にあるのは、かつて公園の敷地を所有していた慈光山金乗院の山門。寺院は今も敷地内にある。
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寺院の前を通り過ぎた先には、1976年にオープンしたフィールドアスレチック場がある(入場料1000円)。45年を経た今でも人気らしく、現在は新型コロナウィルス禍の影響で事前予約必須かつ水上エリアが閉鎖中(マスク着用で呼吸阻害を懸念してか)であるにも関わらず、子連れ客で賑わっていた。
水上コースはチャレンジするとほぼ水没するので、ちゃんと園内にはシャワールームと洗濯乾燥機が備わっている。
今日のところはスルーして植物園へ。

水路には鴨や鯉の姿が。トンボの交尾する様子も見られ、様々な生き物の憩いの場となっているようだ。
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駅からまっすぐ伸びた道路の先、自動車用トンネルの出口あたりに植物園「花ファンタジア」の入口がある(入場料300円)。
バラ園と蓮の大池、それに藤棚がメインのようで、いずれもオフシーズンだったので少々花寂しいが、それでも十分に楽しめた。次は躑躅も見頃な5月頃に行きたい。
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クラシックスタイルなミラーレスまとめ2021

以前「クラシックスタイルなデジカメ」についての記事を書いたのは2014年末のこと、それから7年近く経っているのでだいぶ状況が変わり、入手可能な機種も変化したので改めて書き直してみようと思う。

「クラシックスタイル」とは

「クラシックスタイルのカメラ」を改めて定義するならば、デジカメよりずっと以前、フィルム時代のカメラを彷彿とさせるスタイルを持つ機種、ということになる。
「クラシックスタイル」とひとくちに言っても、古くは「レンズを取り付けた木箱」から、蛇腹カメラやら二眼レフやら様々なスタイルが混在するが、「古いカメラ」の最も一般的なイメージというのは概ね「角張った銀色の金属ボディに黒の革貼り」ではないだろうか。
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(https://pixabay.com/images/id-3480569/より)
最近のカメラとの違いを挙げるならば「プラスチックボディではなくメタルカラー」「曲線的ではなく直線的」「液晶ではなくアナログな計器や操作系」といったイメージだ。

勿論、現代的なカメラの形状変化にも様々な合理的理由があるのだし、一方でクラシックなスタイルは当時の事情(主に加工技術や材料、あるいはフィルムという物理的制約など)によって成立した、今となっては縛られる理由のない部分も少なくないのだが、合理性よりも好みを優先したいのが趣味というものでもある。
以前にも書いたが、カメラは単なる撮影の道具というだけではなく、ある種のファッションアクセサリという側面もあり、「趣味に合う外観」は決して無視できない重要な要素と言える。大いに拘っていきたい。

以前との変化について

前回の2014年記事時点と今回の大きな違いは、なんといっても「一眼レフからミラーレスへの全面移行」だろう。
これまではフィルムカメラ時代の構造を継承した一眼レフ機が高級デジカメの主力だったが、マイクロフォーサーズによる「ミラーレス」の啓開から10年が経過し、ソニーが「一眼レフに対抗できるミラーレス」を押し進めたこともあってミラーレスのメリットが一眼レフのメリットに勝り始め、ここにきて一眼レフの二大巨頭であったニコンキヤノンが相次いでミラーレス専用の新規格へ移行した。

一方でレンズ一体型の「コンデジ」分野でも大きな変化が生じている。
ソフトウェア処理の発達によってスマホカメラの性能が急激に向上し、擬似的な「ボケ」の生成や自動的なHDR処理など、従来のカメラにはできない「完成された画を作る」ようになったことで「手軽に撮る」ためのカメラであったコンデジはその存在意義をほとんど失った。
センサーサイズの大きな高級コンデジは小型のミラーレス機と競合し、センサーサイズの小さな普及機はスマホの方が高性能になり、今や「超拡大マクロ」や「防水・耐衝撃」、「超望遠」など一芸に秀でたごく一部の機種以外はほぼ生き残っていない。

そういうわけで、クラシックスタイルのカメラについてもほとんどミラーレス一択ということになった。一応まだコンデジトイカメラなどにもいくつか選択肢がないではないが、今回は割愛する。

カメラメーカーと機種

ではメーカーごとに主要なクラシックスタイルカメラを見てゆこう。
基本的に公式サイトを紹介するが、カメラのイメージを表示するためにAmazonへのリンクを併用している。

なお、クラシックスタイルのミラーレスを製造していない社は省略した。

ニコン

日本のカメラメーカーの代表格。一眼レフ時代はプロ用として真っ先に名の挙がるメーカーだったが、その分だけミラーレスに乗り遅れてしまった。
一時はどうなることかと思ったが、レトロスタイルの新機種に注目が集まり、だいぶ持ち直した感がある。

Z fc

www.nikon-image.com

期待のニューフェイス。往年のFM2をイメージしたデザインは、角張ったペンタプリズム部(もちろんペンタプリズムは入っていないが)と複数のコントロールダイヤルが並ぶ軍艦部を持った、正統派な「クラシック一眼レフ風」スタイル。
ボディカラーはブラック&シルバーの一色のみだが、直販では数量限定の「張り替えキャンペーン」で革部分をホワイト、グレイ、ブラウン、ピンク、ミント、アイボリーの6色に変更できる。

オリンパス(OMデジタルソリューション)

「フィルム規格に囚われない、デジタル時代の規格」として世界初のミラーレス一眼「マイクロフォーサーズ」を提唱した、ミラーレスのパイオニア
常に「主流にはなれない」位置をひた走る孤高の存在だが、フィルムカメラ時代からスタイリッシュなデザインで知られた会社でもある。

OM-D E-M5・E-M10シリーズ

www.olympus-imaging.jp
www.olympus-imaging.jp

「小型一眼レフ」の名機「OM-1」をモデルとしたミラーレス機シリーズ「OM-D」の初〜中級機。上級機E-M1シリーズは現代的なスタイルで、中級機E-M5および初級機E-M10シリーズはクラシックスタイルで作られている。
カラーはブラック1色と上下がシルバーの2パターン。シルバー塗装ではあるが樹脂なので少々安っぽくはあるが、なかなか精悍なスタイル。
E-M5とM10の違いは(性能差とそれに伴う操作部の差はあるものの)外観的にはそう大きくないので、好みのものをどうぞ。
最新型はE-M5 mark IIIおよびE-M5 mark IVなのだが、スタイルが若干現代的に変更されてしまったので個人的には前機種であるE-M5 mark II / E-M10 mark IIIの方が好み。

PENシリーズ

www.olympus-imaging.jp
fotopus.com

こちらはフィルムを半面づつ使うことで倍の枚数撮影できるようにした「ハーフカメラ」として一世を風靡したコンパクトカメラ「PEN」シリーズの血統を受け継ぐ初〜中級機ブランド。
角張って無骨なE-P7はブラック&シルバーのみだが、現代的に丸みを帯びつつもクラシックの雰囲気を失わないE-PL10はホワイト&シルバー・ブラック&ガンメタルに加えブラウン&シルバーも用意されている。

なお現在は製造終了となっているが、かつての名機の名を継いだ最上位機種PEN Fも存在した。ダイヤルの並ぶ軍艦部は、同社のミラーレス機中もっともクラシックな印象を与えるデザインであった。是非後継機を復活させて欲しい。

富士フイルム

写真フィルムを本業とするが、写真事業の一環としてカメラも展開してきた。デジカメ黎明期にはセンサーの格子を縦横ではなく斜め45度に配置したハニカムCCDなどユニークな独自技術を投入、現在も通常のRG-GB型ベイヤー配列とは異なる独自配列のX-transセンサーを使用し、また 「フィルムの発色再現」にこだわりを見せる。

X-Pro3

fujifilm-x.com

ミラーレス一眼機Xシリーズの中でもひときわ異彩を放つ「レンジファインダー」風の機種。形状的にはややモダンに寄せたラインに若干不満があるものの、単に接眼窓がレンズ軸上にないだけではなく前面に窓があって撮影レンズを通さない視界が開けており、そこにハーフミラーで情報を投影するハイブリッドな構造によって「レンジファインダー」感を機能的に演出している。

X-T4/X-T30 II/

fujifilm-x.com
fujifilm-x.com

こちらは一眼レフ風スタイルの上級機種シリーズ。いずれもレンズ直上に角張ったペンタプリズム部と複数のコマンドダイヤルを備え、クラシックカメラの雰囲気が強いデザインだ。

X-E4

fujifilm-x.com

こちらはコンパクトスタイルの入門機としては上位の、Eシリーズ。このグレードはあまりクラシックに寄せないラインが中心的なのだが、このE4はシンプルな角型で「昔のコンパクトカメラ」的な風合いが強い。

推理ボードゲーム「ディテクティヴ」シーズン1

アークライトから日本語版が発売された協力型推理ボードゲーム「ディテクティヴ」シーズン1を遊んでみた。

結論から言えば、素晴らしいミステリー体験だった。

ゲームの概要

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FBIから委託を受けて調査を行なうチーム「アンタレス」のメンバーとして事件を捜査してゆくシリーズで、シーズン1には3本のシナリオが収められている(かなりヒットしているようなのでシーズン2以降も予定されていることとは思うが、現時点では発売されていない)。
プレイ人数は捜査員のメンバーと、追加の手がかりを得る「技能トークン」数の関係で最大5人ということになっているが、捜査員に何か能力的な差が設定されているわけではないので、ほぼ「人数を問わず」遊べると考えていいだろう。少人数でも捜査可能回数は変わらず、技能トークン数が増える分むしろ有利かも知れない(その代わり多人数では多角的な視野や閃きが期待できるわけだが)。

まず最初に、事件の概要が提示される。そこには(我々のチームに調査依頼が来た経緯を含む)事件の情報と、最初に調査可能な「捜査の糸口」が示されている。
「糸口」とは調査によって得られる断片的な情報を示すカードで、関係者への聞き込み内容や事件現場調査の結果などと共に、「その情報を得たことで調査可能になる次の糸口」が示されている。これによって順次捜査可能範囲を広げてゆく仕組みだ。
また、糸口カードからは関連して得られるメディア──たとえば「犯行当日の監視カメラ映像」であったり、「契約書の写し」であったりといったファイル──を閲覧するためのコードが手に入る場合もある。それらは専用のWebサイト上のデータベースへコードを入力することにより実際に閲覧可能で、「実際に調査している」雰囲気の演出にも一役買っている。

捜査には時間制限がある。シナリオによるが最大24時間が与えられ、糸口を調査するたびに時間が進み、また調査エリアを移動することでも1時間を消費する。限られた時間の中で情報を集めるためには片っ端から調べるのではなく、情報を推理しながら的確に重要箇所を調べてゆかねばならない。

また、糸口によっては技能トークンを消費して追加の調査が可能になる場合もある。より深く掘り下げて調査することで重要な手がかりを得られるかも知れないし、得られないかも知れない。トークンの数は限られるので追加調査は慎重に行なわなければならないが、保留して他の手がかりを得てから戻ってくることはできないので、その場で決断を迫られる。
もちろん、情報のすべてが真実とは限らない。誰かが嘘をついているかも知れないし、後ろ暗いところがあるにせよ事件の本筋とは関係ないかも知れない。
いずれにせよ、すべての情報を得ることは叶わないから、限られた手がかりから推理してゆくしかない。

残り5時間を切ると、「振り返り」が指示される:今ある情報を元に各自が推理を披露してチーム全体での結論を出し、足りない情報を埋めるためにあと1回か2回ぐらいの捜査を行なう方針を立てる。
時間切れになったら最終報告に進む。前述のWebサイトにて、質問に対し4択ほどの選択形式で回答するかたちで正しい結論を導き出せたかどうかが判定される。

プレイ感

ひとまず第一のシナリオ「自然死なるや?」をやってみた。病死と思われたが殺人の疑いが浮上し、アンタレスが調査することになったというもの。
関係者への聞き込みでは、相手の発言後に「ストレスレベル」が書いてある場合がある。嘘をついているのか、何か隠しているのか、緊張しているのか、ともあれ感情の動きが見られたということを示すもので、直接的ではないが手がかりになるだろう。
糸口カードには調査によって消費される時間が示されているが、これは事前に確認できない。また裏面に情報が追記されている場合があり、これには技能トークンを消費しなければ読めないものと、続けて読んで良いものがある。トークンを消費したからといって必ずしも重要情報が得られる保証はなく、使いどころは悩ましい。特に今回は4人でプレイしたためトークンが2個しかなく、場合によっては一度に2個消費する糸口もあるので余計に厳しい。かといって「先に他の調査を進めてからどうするか決めよう」というわけにも行かない。
結論から言えば、我々は情報の辿り方を誤った。半ばまで事件の構造を見通せたにも関わらず肝心の部分で必要な情報を得られず不要な情報を追い求め、得点こそ満点の2/3ほどを獲得したものの最も重要な部分を間違えて報告しており、事件を解決できたとは言い難い。

1985年にドイツ年間ゲーム賞を受賞した「シャーロック・ホームズ 10の怪事件」の系譜と言われていたが、たしかに良く似ている。10の怪事件では新聞から情報を集め、人名から住所録を引いて住所を調べ、本にその住所に該当するパラグラフを読むという形だったが、ディテクティヴではそれが「糸口」カードに変わったわけだ。「10の怪事件」シリーズのファンには是非ともおすすめしたい。

捜査の過程で顔写真を得られるが、イラストのみで一切の文字情報がないため、付箋などを用意して名前や役職などを書き込んでおくと良いだろう。なんならホワイトボードとピン型マグネット、糸などを用意して関係性を結んでみると一層雰囲気が出ると思うが、そこまでする必要があるというわけではない。

糸口からの調査によって次の糸口が増えてゆく構造と、トークンを消費して「深堀りする」ことのできる仕組みがとても良い。反面、人数が増えると深堀りしにくいのはちょっと残念な気もする。この構造を流用してホラーシリーズを作っても面白そうだ。

南部十四年式NERF

発端

そろそろ7月2日の「ナーフの日」が近付いてきたので今年も新しく何か作りたいなと考え始めた頃、ちょうど魅力的な拳銃を目にした。


戦前日本の軍用ピストル「南部十四年式大型拳銃」が現代的にカスタマイズされている。

実際にはこれは「近代化された南部拳銃」ではなく、台湾のトイガンメーカーACTION ARMYが発売したAAP-01アサシンというオリジナルデザインの拳銃に、南部拳銃風にするカスタムパーツを組み込んだものであるらしい。つまり「グリップまわりを変更した南部」ではなく「銃身まわりを変更したアサシン」だったのだが、それはともかくNERFで南部拳銃を作るのはどうだろう。

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計画

南部十四年式は、現代的な自動拳銃とは異なりフレームがトリガーガードまでで断ち切られ、銃身がスライドに覆われることなく前方に伸びた特徴的なスタイルをしている。また後部に円筒状のコッキングピースがあり、これを後方に引き出すことになる。つまり素体となるNERFは、銃身と一体化したプランジャーの後方にコッキングレバーが伸びたシンプルなものが望ましい。

当初、素体としてはSnapFireを考えていた。

プランジャー前方に細身の銃身、後方にコッキングレバーというシンプルな構成。不要部分の切り落としも簡単そうで、あとは外装をそれらしく形成すれば済む。
ところが平行輸入品のため、到着は早くてナーフの日の翌週となってしまう。これでは間に合わないので、すぐにでも手に入る国内流通の現行品から選ぶことに。
調べたところ、NERF ELITE2.0 VOLTがまさに同形式の内部機構を持っているようだ。

まずはVOLTのmod事例を画像検索し、内部機構の配置がわかる画像を探す。そして、これに南部十四年式の画像を重ねて配置を検討する。
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プランジャーの長さはちょうど南部の本体フレームと同程度。銃身は短かいが、これはある程度延長が可能だ。
VOLTのトリガーは南部のグリップ内にすっぽり収まる。トリガーは後方にスライドするだけのシンプルな構造なので、前方にトリガーを増設し連結することで動作機構はほぼ流用可能だろう。

分解

これは行けそうだ、ということで早速VOLTを購入し、分解を試みた…… のだが。
なんとVOLT、どこにもネジ穴がない。どうやらELITE2.0シリーズは構造の合理化が行なわれ、組立にほとんど金属部品を使わない構造になっているらしい。レールやトリガーまわりのバネも廃止され湾曲した板が一体成形されることで置き換えられており、外装の固定は爪による嵌め込み式に変わったため、非破壊的手段による分解は不可能となってしまった。
そういうわけで購入から2日ほどを費し、合わせ目を抉じ開けて鋸の刃を差し込み固定爪のありそうな位置を切断することでどうにか分解に成功。不要な箇所を切り落として最小限のフレームのみを取り出した。
今回は他に適当な素体を用意できなかったために強行したが、ELITE2.0シリーズは改造素体としては手間がかかりすぎるのでおすすめしない。

木材

グリップは木製にしようと、ホームセンターで桐の板を購入。桐は柔らかく加工しやすい材であるのでお手軽な工作には丁度良い。バルサならば更に手軽ではあるが脆いので外装には向かないし、もっと硬く密度のある材だと加工にかなり手間がかかる。
配置検討の際に用いた画像を元に、実物の内部機構を計測してサイズを合わせ、トレースしてグリップの下絵を印刷。これを板に貼って切り出す。

スリム化

さて本体フレームにグリップを仮置きしてみたところ、位置合わせには問題ないものの予想よりもフレームの幅が厚く、グリップが幅広になりすぎて持ちにくいことが判明。シルエット的にもだいぶ「太った」感じになってしまうので、これを詰める必要が出てきた。
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オリジナルのVOLTは外装と内部機構の間に余裕があるようで、これを切ってギリギリまで幅を詰めてゆく。単に中央の合わせ目を直線的に切れば済むというわけではなく、その分だけ内側の機構保持部も掘り込んで位置をずらしてゆくので、簡単ではない。
プランジャーは前方の銃身固定部側にに少々の出っ張りがある。これが外装と当たって幅詰めに支障を生じる懸念があったので、上下の固定ピン通し穴を切り落としてプランジャーの向きを90度回転させ、出っ張りが上下方向になるよう変更する。
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外装裏は、右フレームの透かし文字部を保持するため厚めに作られているので、これをギリギリまで薄く削る。
左が削る前、右が削ったもの。これぐらいに厚みを減らした。
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左右パーツを固定する爪はすべて切り落としてしまったので、固定のために穴を空けてネジを通す。
これで機構部分を保持しつつ、基本的な本体構造は完成。

トリガー

次にトリガーとトリガーガードを作ってゆく。
プリントアウトを元に薄いプラ板を切り出して重ね、トリガーの厚みを作る。本来のトリガーに穴を空け40mmのネをジ通し、その先に新造したトリガーパーツを固定。
トリガーガードは2枚のプラ板を切り出し、間に同じ長さのプラ棒を接着することで面を作ってゆく。表裏にはパテを盛って丸棒の凹凸を埋めて固める。ただ、フレーム根本の幅で作ると幅広にすぎて不恰好なので、根本から斜めに切り取って幅を半分ほどにした。
……まあ、後で実際の南部十四年式を確認したら実は結構トリガーガード太かったのだが。

銃身

銃身は本体と同じぐらいの長さに延長したい。0.2mm厚のプラ板を接着しようとしたがうまく行かなかったため、細く切ったコピー用紙を斜めに巻き付けることで長さを出し、瞬着で固めた。先端部分には巻いたプラ板を差し込んで厚みを作るとともに補強とする。実際の十四年式よりは些か銃身が短かいのだが、これ以上伸ばすと装填に問題を生じるため控え目にしておく。
斜めに巻いた紙の段差を抑えるため、外側をラッカーパテと瞬着で固めて磨く。

グリップ

グリップを本体左右に固定し、間をパテで埋める。下部には100均で見付けた修正テープの外装を嵌め込んでいる。マガジン引き抜き構造までは再現できなかったが、後方がなだらかに盛り上がり前方は終端部でキュッとまとまり、非常に握りやすい形状になった。
全体かなり軽量ではあるのだが、その上で重心がちょうどグリップのところにあるため大変バランスが良い。
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実際の南部十四年式では、グリップ下部が分離してマガジンが引き抜かれる構造になっている。当初は省略しようと思ったのだが、ここに何か部品がないと収まりが悪かったため、それらしいディティールを追加することにした。
脱着ボタンを再現できそうな部品を100均で探したところ、洗濯バサミの先端が円形の滑り止めになっているものを発見。
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ただ、材質が接着も塗装も困難なポリプロピレンだったため、一計を案じパテに押し付けて型を取ることでそれらしい円形部品を制作した。接着離れの良い材質だけあってパテからの剥離も完璧。
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グリップ部と下端の間にはマスキングテープを細く切って貼り付け、3mmほどの隙間を空けた。これによって元の材質の透明オレンジ色がアクセントとなる。
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塗装

木造グリップをマスキングしてサーフェイサーを吹き、全体を黒に塗装した上で銀を乗せる。黒を基調に上下を銀色にし、透かし文字から見えるオレンジのプランジャーがアクセントになった。
グリップは別途、ウレタンニスで塗装している。
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元となったNERF ELITE2.0 VOLTと並べると、とても同じものには見えない。
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今後

丁度良い部品が得られず断念したが、いずれ後部コッキングピースはリング部を切り落として円筒状のものを取り付けたい。