OM SYSTEM PENを買う

7年にわたり愛用してきたPEN Fが、突然壊れた。
いや、7年も使い倒してきたのだから既にいくらか不調は見られた*1のだが、流石に撮影機能が完全に停止するとは思ってもみなかった。

シャッターが閉じた後開かない。電源が入っている間はずっと0.5秒間隔ぐらいでカチカチという音が続いており、恐らくは開かなくなったシャッター幕を開こうとし続けているのだろうと思われる。
電源を入れ直したりバッテリーを抜いてみたりしても状態はリセットされなかった。撮影できないばかりかメニューすら表示されず、実質的に一切の操作を受け付けないため、手の施しようがない。

シャッターとセンサーはカメラの中でもとりわけ繊細な部品であるので、素人が弄って直せるような箇所ではない。しかし「物理的に引っ掛かって開かない」だけだとすればなんとかならないか⋯⋯と一縷の望みをかけシャッター幕に爪を引っ掛けて持ち上げてもみたが、センサー全体が見えるところまで引き上げることができたもののカメラの動作に変化はなかった:つまり、問題は「幕が引っ掛かって開かない」ことにあるのではなさそう、ということだ。

となればもうメーカー修理に出すしかない⋯⋯のだが、なんとOM SYSTEMでは「旧製品につき修理対象外」とのこと。まあ既に10年前の機種だしなぁ。

つまり、新しいカメラを買うしかない。
新しいカメラ、というのはもちろんOM SYSTEMから新しく発売される「PEN」のことである。
jp.omsystem.com

基本的なデザインをE-P7から受け継ぎつつも軍艦部を嵩増ししてEVFを追加、旧PENシリーズでは唯一のEVF搭載機であったPEN Fと同じく左肩に配置するレンジファインダー風スタイル。
スタイリッシュとレトロを両立させた外観に、5.5段の手ぶれ補正と防塵防滴シーリングを搭載、コンピュテーショナル・フォトグラフによるNDフィルタ機能やハイレゾ撮影機能などを実装。また前面に配置されたPEN F由来のカラープロファイルスイッチは、リアルタイムで色調整やアートフィルタを反映した撮影を可能にする。

性能面では、おおよそ同社の一眼レフスタイルOM-Dシリーズに於ける中級機OM-5系列に匹敵するミッドレンジモデルということになる。
今まで使用していたPEN F はPEN系列では最上位モデルとしてミッドレンジよりも上の位置付けとなっていたため、後継機種として一段下のモデルに乗り換えるというのは若干気になるところではあったのだが、実際のところ10年の技術進歩は大きく、性能面では明らかに新PENの方が上回っている。

そもそも、PENというブランド自体が一眼レフよりもカジュアルなコンパクト・ハーフカメラを祖としているのだし、また併存するOM-Dシリーズが主としてハイエンド〜ミッドレンジを担っている*2ことを鑑みるに、OM-Dとの棲み分けとしてPENがエントリー〜ミッドレンジを担う形を取り、これより上のPENが登場しない可能性は少なくない*3。
いずれにせよカメラが手元にない状況を長く続けたくはないし*4、品薄による販売予定のずれ込みもアナウンスされているのでさっさと注文してしまうに越したことはない。あとは支払いに悩むのみである。

*1:露出ダイヤルにセットした値が正常に反映されない、バッテリーを抜いたら時間設定が初期化された、などの機能劣化が発生していた

*2:旧製品群ではOM-D系のシリーズにもE-M10系列というエントリーモデルが存在していたのだが、OM SYSTEM下のラインナップとしてはこれに相当する機種は未発表となっている

*3:PEN Fというブランドネームを腐らせるのも偲びないため、なんらかの形で後継機種が登場する可能性も少なくはないが、そうするとスタイル的にも機能的にもOM-3との競合を避け難い

*4:一応PEN Fよりも古いLUMIX GM1はまだ動くが、流石にバッテリーや背面液晶の劣化が見られ予備機以上の使いどころは難しい

オタク経済論

「オタクが経済を回している」という言葉がある。
はじめは「生活費を削ってまで趣味に注ぎ込むことを揶揄する自虐ネタだった」という話もあるが、現在では「オタクが日本経済を支えている」といった文脈で語られがちだ。
まあそりゃ誰しも「自分たちは役立たずではない」と思えた方が嬉しいわけだが、実際にはかなり大袈裟な表現という気もする。
とはいえ、肯定するにせよ否定するにせよ「実際どれぐらいの経済規模なのか」をはっきりさせないことには何も言えないので、少し調べてみることにした。

自認オタクの人数と消費総額

まず、「オタク市場の規模」を調べる。
矢野経済研究所のアンケート調査に拠れば、2024年時点でのオタク総人口は3313万人だそうだ。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3668

この数字は公表されたデータを元に、31分野の自認オタク人数を単純合計したものだが、アンケートの詳細が不明なためこの計算が正しく実情を反映しているかどうかはわからない。
たとえばこれが複数分野への回答可であるなら、人数は重複しており実際の規模はもっと小さい可能性もある。

ともあれ、わからない部分には留保を付けつつもこのデータを元に考えてみよう。
分野ごとに平均支出額と人数を掛け合わせて支出総額を割り出したものを合計してみると、1兆2千4百億円程度となった。ひとまずこれを「オタクの経済規模」であるということにしよう。
1兆円というと途轍もない金額に思えるが、国家規模の金額感では「1億円は1円、1兆円は1万円」という目安がある。これはつまり「国民一人あたりに直すと」というやつだ。何にでも適用できる目安というわけではないが、今回のように国全体の経済規模とオタク単体の経済規模を比較しようというならそれなりに有効で、「年間で1万円ぐらい経済を回した」という個人経済感覚はわりといい線行っているのではないかと思われる。オタク一人の支出は大きいようでも、全体に均すとこの程度でしかないということになる。
実際、国内経済の規模を示すGDPは名目670兆円/実質590兆円で、つまりオタクの消費総額1兆2千億円は、国内経済規模のうちおよそ0.2%程度に過ぎない。
(実際には、GDPの計算は単純な消費支出金額ではなくその分野への投資額や政府支出・輸出入額などが加算されるので、比較すべき金額は個人消費のみの合計額よりも大きくなるだろうが、流石にそのあたりを正確に見積もることは難しい。)

業界分野別市場規模

別のデータも見てみよう。
たとえば下記は就活情報サイトに拠る「業界別の市場規模」であるが、50位の「ゲーム」業界は5兆3千億円規模となっている。
https://reashu.com/shijokibo_ranking/
こちらは出典不明につき情報の正確性については不明だが、流石にまったくのデタラメというわけでもないだろう。ただ、ランキング1〜10位の市場規模合計のみでも580兆円ほどにもなっており、下に行くほど額が小さくなるとはいえすべて合計するとGDPの2倍ぐらいはありそうに見える。
なので、GDPとの比較値としては雑に1/2として扱うことにしておこう。

オタクの消費額が全分野の総額で1兆2千億円、ゲーム3分野(スマホ・コンシューマー・PC)のみの合計では2千億円程度なのに、オタク消費の一分野であるゲーム業界の市場規模が2兆6千億円もあるのは奇妙に思えるが、「自認オタクではない層」からの売上がそれだけ大きいということなのだろうか。だとすると他分野に於いてもアンケート調査と実態とではこれぐらいの差が出ている可能性はあり、実際の「オタク業界」の経済規模は1兆2千億円ではなくその13倍、15兆円ぐらいあるのかも知れない。
もちろん、これは精度の低い雑な推論なので誤差も非常に大きいかとは思うが、これが事実ならオタク市場全体としては先ほどのランキング比で10位前後の巨大市場だということになる。

総括として

GDPの0.2%では「経済を回している」というには烏滸がましいが、2.5%もあるならばだいぶ違ってくる。オタク市場が国内経済を牽引しているとまでは言えずとも、それなりに経済を支えているというのもあながち間違いではないと言えよう。

他方、「自認オタク」の規模感と実際の市場にこれほど大きな乖離があるということは、実際にオタク市場を支えているのが「少数の熱心な自認オタクではなく、オタク自認のない大勢の一般人」であるという証左でもあろう。だとすれば、オタクは「経済を回している」どころか実際には「自ジャンルの経済すら回しきれていない」ということになる。

アークナイツ:エンドフィールド:詰んだ

6年前からプレイし続けているタワーディフェンスゲーム「アークナイツ」と世界設定を共有するアクションRPGタイトル「エンドフィールド」を始めた。
endfield.gryphline.com

RPG部分としては似たようなタイトルが他にもあるが、エンドフィールドの特徴的なところは「工場自動化」と「インフラ整備」の要素を持つところである。

工場自動化というのは「Factorio」などに代表されるゲームジャンルで、ベルトコンベアラインを組んで様々な加工装置に素材を運び、加工品をってゆく。より重要な部品を作るためには複数の行程を経る複雑なラインを考案する必要があり、最適化が悩ましくも面白い。
エンドフィールドでは装備品のための部品などを工場ラインで生産する必要があり、フィールドを駆け回って集めた素材を加工してラインを拡張してゆく。

インフラ整備の方は、主に電線の延伸である。
エンドフィールドではあちこちに電力のダウンした装置が転がっており、これに電線を繋いで電力を供給することで先へ進める道が拓けたり、素材採集を自動化したりする。そのために電柱を立て電線を繋いで電力網を伸ばしてゆく必要がある。

ある程度進めると素材の回収が電力網によって自動化でき、それを使って工場を動かし続けることができるようになってくる。
装置を増やしてゆくと徐々に必要電力が増加するのだが、電力もまた自動生産ラインの中に組み込んで効率の良い燃料を製造し、それを消費して高効率な発電を行なうことができるようになる。
そうやって電力の余裕を作っては電線を伸ばし、その先々で採取する素材を増やし、また新たなラインを組んでゆく。
エンドフィールドは、アクションRPGでありながら拡大再生産の遊びでもあるのだ。

で。

生産ライン自動化が楽しすぎてどんどん工場を拡張し、新たな高級素材を生産するラインを増やしていったら、素材消費が増えすぎて自動採取が追い付かなくなり、在庫が枯渇してしまった。
前述のように、発電システムもまた自動生産ラインの一部に組み込まれており、生産ラインが製造した燃料が供給されることで全体の電力を賄っている。
それが、すべて停止した。

ラインを再起動するためには電力が必要になる。が、その電力はラインが担っている。つまり、再起動するための電力がないので再起動できない。
いちおう、燃料を手掘りして発電機に流し込めば最小限の電力は確保できるのだが、それでは到底足りない。
やむなくラインをすべて解体し、多数の発電機を並べて直接燃料を流し入れるだけのラインを組んだ上で複数の採掘所を回って回収してきた燃料を流し入れてみた。これで電力網が起動すれば自動採掘機能が活動を再開し、素材の蓄積が再開できるので様子を見ながら生産ラインを徐々に拡張して電力効率を上げてゆけば、いずれ元の生産ラインを再構成できるだろうと思ったのだが、現在可能な範囲で組んだ発電ラインでは最低電力を確保することができなかった。燃料が虚しく消費されるのみである。

あとは電力網とその先に繋がった自動採掘装置などを解体して消費電力を下げてゆくしかないのだが、そうなるとある意味で全てリセットして1からプレイし直すより苦行では⋯⋯

こういう事態に陥ったときの救済措置ってないのかな。というか、こういう事態が想定されてなかったんだろうか?

髪の毛の絡まない掃除機

掃除機の運用に於いて、ブラシに絡まる髪の毛の清掃は悩みの種である。
長髪の人や長毛種のペットがいる家庭ならば尚更だ。

長く細い毛は回転部に容赦なく絡む。ブラシに、ローラーに、絡まった毛は隙間に詰まり軸を締め付け、回転を阻害する。
およそ掃除機に於いて回転構造を避けることは難しく、とりわけロボット掃除機のように自走するタイプでは走行輪や隅の埃を掻き出す小ブラシなど、複数の回転部品を有するため相応にメンテナンスの必要性も高まる。

スティック型掃除機は接地面が先端のノズル部分だけであるため、毛の絡みという問題には比較的強いが、それでもブラシヘッドがある限り問題がゼロにはならない。

もちろん、回転ブラシがないノズルのみのヘッドであれば毛の絡みは全く発生しない。その代わり、掻き出す力がないのでカーペット上での集塵力は非常に悪くなり、とりわけ髪の毛は全く取れなくなる。
髪の毛はブラシの毛の間に絡み付くので、植毛ではなくゴムブレードになっているタイプならば絡みにくくはなるが、植毛ブラシよりも掻き出し力は弱い。
やはり集塵力の点では植毛ブラシが最善だが、一方で毛の絡みについては最も厳しいことになる。

しかしここに、植毛でありながら毛の絡みを解消した回転ブラシがある:それがパナソニックの「絡まないブラシ」である(そのまんまな名前だ)。
panasonic.jp
このブラシは少々特殊な構造をしている:通常ならば横長の円筒ブラシが1本付いているところ、左右から先細りのブラシが2本、中央で先端を合わせるようにして付いているのだ。
巻き付いた毛は、より細い部分に集まってゆく。車輪などではそれが軸への絡みとなるが、先細りのブラシではより細い先端側への移動として機能する。そして、2本のブラシの先には隙間があるため、そこから抜け落ちて吸い込まれる。

実際に使ってみたところ、毛の巻き付きそのものは生じているのだが、それがブラシの間に留まって絡み合うことがなく、使っているうちに順次脱落して吸われてゆくため、ブラシ清掃の必要がまったく発生しなくなった。


なお「絡まないブラシ」はその構造上、掃除機本体から取り外すことができない。現在は絡みにくさを維持しつつ取り外して清掃可能な「絡まないブラシplus」が登場しているらしい。
こちらは中央セパレートの先細り構造をやめ、代わりにブラシカバー裏にブラシの巻き付きをこそげ落とすブレードが備わっているようだ。

パナソニック掃除機の現行機種は、有線タイプはすべてキャニスター型、コードレスはすべてスティック型となる。
スティック型は集塵方式が3種類あり、紙パック式・サイクロン式、そして内部タンクに溜めたゴミを充電ドックに吸い出す「セパレート式」から選ぶことができる(セパレート式もドック内の集塵には紙パックを使用する)。
今回はセパレート型のうち「絡まないブラシ」搭載モデルで最安のMC-NS100Kを買ってみた。

本体は非常にスリムで軽く、そのサイズにゴミを溜めるタンクとバッテリーを内臓しているため容量は決して大きくない。連続して広い範囲を一度に掃除するにはあまり向かないものと思われる。
本来ならばワンルームなど狭い範囲で使うか、キャニスターまたはロボット掃除機などと併用する前提なのだろうが、稀に発生する全体の掃除でちょっと面倒なことに目を瞑れば、日常の掃除では十分に役立ってくれる。

掃除機本体から吸い出したゴミはドック内のパックに溜められてゆく。パックが一杯になってくるとランプが点灯するが、およそ1ヶ月分ほどが溜められる計算とのこと。

充電はドックに戻すだけ、ゴミは月に1度パックを交換するだけ。ブラシに髪の毛は絡まない。おそよ考え得る限り最大限の「メンテフリー」掃除機ではなかろうか。

使用感

実際に使ってみての感想として。

本体内臓の集塵カプセル容量はごく小さい。イメージ的には「指3本分ぐらい」。
そのため、ちょっと埃の積もった箇所の掃除などではすぐ満杯判定が出てしまい、都度ドックに戻して吸い出す必要がある。

ただ、そんなに吸っていないはずなのに満杯表示(赤ランプと青ランプ同時点灯)になる場合は、ブラシヘッド側のエラーかもしれない。
「絡まないブラシ」は確かに巻き付いた髪の毛が中央に寄せられて抜けてゆくのだが、一度に絡み付いた量が多いと吸い取られるのではなくブラシ中央で毛玉となって詰まる場合があり、これがエラーランプを点灯させる。
「中身を吸い出した直後なのにすぐ点灯する」と思ったらヘッドを確認されたい。

カルドセプト、10年の時を超え復活

2026/2/5のニンテンドーダイレクトで、まさかのカルドセプト完全新作が発表された。

www.youtube.com
発売予定日は2026年7月16日。前作「リボルト」(ニンテンドー3DS)が2016年7月の発売だったから、きっかり10年ぶりである。

カルドセプトとは何か

知らない方のために少し説明しておくと、カルドセプトは初代が1997年セガサターン用に発売された、ボードゲーム+トレーディングカードゲーム(TCG)である。開発元は社員わずか5人の小規模ゲームハウス「大宮ソフト」。
昨今人気のデジタルカードゲームの走りとも言える作品で、世界初のTCG「マジック・ザ・ギャザリング」の発売が1993年、その日本語版の登場が1996年、最初の国産TCG「ポケモンカードゲーム」が同じく1996年であることを考えると、翌1997年にもうデジタルカードゲームが登場しているというのは驚くべき早さだ。

基本的なルールは「モノポリー」をベースとしており、すごろくのようにサイコロを振ってボード上を周回し、止まったマスを「買って」自分のものにし、「投資して」価値を高め、自分のマスに止まった他のプレイヤーから通行量を奪い、資産総額を目標値以上にしてスタート地点へ戻る早さを競う。
モノポリーと違うのは、他人のマスに止まったときに「戦って勝てば」そのマスの所有権を奪えるということ。これによって高額の通行量をなかったことにでき、他人が投資してきた資産をごっそり自分のものにできるため、一発逆転のチャンスが生じる。
バトルには、自分が集めたカードを組んだ「ブック」を用いる。より強いカードを集め、戦いを有利に導くことができる。
400種以上ものカード群から選び抜いたブックは組み合わせ次第で様々な戦略を持ち、それによってゲームスタイルが変わる。高火力のカードで相手領地を侵略するか、高防御で拠点を守り育てるか。あるいはサイコロの目を操って相手に自分の領地を踏ませ通行量を奪い取ったり、呪文で領地を焼き尽くしたりもできる。

なぜファンが騒然としているのか

もちろん、一番の理由は「10年ぶりの完全新作」という点だ。

カルドセプトは初代の発売から30年近い古参シリーズながら、そのタイトル数は決して多くない。
初代SS版→PS版→DS版は細部のブラッシュアップこそあれ基本的に同一、DC版「セカンド」→PS2版→3DS版も同様で、他に完全新作としてリリースされたのはXbox360版「サーガ」(シリーズタイトルで唯一大宮ソフトが直接制作に関わっておらず、バグだらけのため闇に葬られた)と3DS版の最終作「リボルト」のみで、つまり実質的には「たった3作しかない」ようなものだ。
だからファンの間でさえ、過去作の移植に望みを託しはしても、まさか完全新作が来るとは予想もしていなかったのだ。

また今回のプラットフォームがNintendo Switch2だというのも非常に大きい。

対戦ゲームであるカルドセプトは、バトルの様子を見せてこそ魅力が伝わる。しかし、これまで対戦画面の配信に適した環境を得ることができなかった。
初期タイトル時代にはまだ通信対戦環境がなく、対面でしか対戦できなかった。逆に、通信対戦環境が整ったDS版以降はハードウェアに映像の外部出力機能がない。両方を備えていたのはドリームキャスト版とXbox360版のみだが、ドリームキャストは20年以上も前に通信サービスを終了しているし、Xbox360版は前述の通りまともに評価できる代物ではなかったため、実質的に通信対戦と画面共有を両立できる環境は存在しないも同然だったのだ。

そのためファンとしてはブラッシュアップが進みバランスが良く、初心者向けガイド機能も充実していた「カルドセプト3DS」あたりがSwitchに移植されることをずっと待っていたのだが、そこに期待を大きく上回る「完全新作」「配信対応」「おすそわけ通信対応」がやってきたわけだ。

Swict2の「おすそわけ通信」とは、自分が持っているソフトを持っていない人に「おすそわけ」して一緒に遊べる、限定的な通信プレイ機能である。Switch2同士であれば「ゲームチャット」を通じてオンラインで、相手がSwitchならば対面距離でのローカル通信限定とはなるが、カルドセプトを買っていない人とも通信対戦が可能になる。
www.nintendo.com

なにしろ、これまでは勧誘しようにも「最新作ですら10年前」「手元に対応プラットフォームがない」「通信対戦サービス終了済み」という大きな障壁に阻まれてきたのだ。それが買いやすくなるばかりか、体験してもらいやすくなるということがどれだけ嬉しいか。

なお、Swich2新作と同時に、Steam上で初代カルドセプトの配信も発表されている。

www.youtube.com
こちらはWindowsだけのようだが、PC上でもカルドセプトを遊ぶことができるようになるのは嬉しい。

今から手を出して大丈夫なのか

ゲームとしては「大丈夫」と断言したい。

世のTCGは大抵、カードの追加を重ねて膨大な分量の資産がストックされることで初心者と古参の間に著しい資産量・知識量の差が生まれがちだが、買い切り型であるカルドセプトでは新作ごとに過去のカード資産が一度リセットされる。
むろんゲームシステムや基本的なカードの性能など共通する部分の知識は活かされるから、初期の知識量には差が出るものの、覚えるべき範囲が無限に拡大するわけではない分、追い付くのはさほど難しくないはずだ。

また、長く続いたシリーズでは回を重ねるごとに新要素が増え複雑さを増す傾向があり、特に対戦ゲームの場合では前作に慣れたユーザを飽きさせないための調整によって間口を狭めがちではあるが、カルドセプトの場合はそもそも新作の増加ペースそのものが極めて緩やかであったため新要素の蓄積も少ない。
特に今回はタイトルに「ビギンズ」とあることからも、従来ファンに向けた「狭い」ゲームではなく多くの新規ユーザ取り込みを意識しているものと予想され、複雑さを抑える調整が期待できそうだ。

気がかりな点があるとすれば、新作ゆえに初代〜2ndに登場したお馴染みのキャラたちがほとんど登場しなさそうということ(主人公のガイド役である魔法の杖「ゴリガン」の姿は確認できる)。
せっかくカルドセプト世界を魅力的に描いた漫画版があるのに、それとの関連性が薄くなってしまうだろうことは少し寂しい。

追記

初期情報のみで突っ走ったのでちょっと情報が錯綜してしまったため整理しておく:てっきり「Switch2で新作が、Steamで旧作が」出るのかと思ったら、

  • 新作「カルドセプト ビギンズ」
    • 2026年7月16日発売
    • プラットフォーム:
      • Nintendo Switch2
      • Steam(Windows11)
  • 初代ベース「カルドセプト ザ・ファースト」
    • 2026年7月30日発売
    • プラットフォーム:

ということらしい。

公式サイト

game.neoscorp.jp

開発インタビュー記事

www.famitsu.com
news.denfaminicogamer.jp

発熱から始まる症状について

ここ数日、病を得て寝込んでいた。
結果から言えばそう大した病状ではなく、同種の症状としても格段に軽い方であったものと考えられるが、個人的には初めての体験だったので、まとめておこうと思う。

発熱

始まりは、背中の張りであった。
私は酷い肩凝り持ちなので背中がバキバキに張るのはそう珍しいことでもなく、この時も「帰ったらマッサージするか」ぐらいに捉えていた。
しかしだんだん背中だけでなく指関節なども強張り痛みを生じるに至り、どうやらこれは凝りではなく発熱らしいということに気付いた。
ただ、これまでの経験的には熱が上がっているときは悪寒を伴うことが多いのだが、このときは(凝りだと思っていたぐらいで)発熱を予感させる自覚症状は何もなく、帰宅して熱を計ってようやくそうとわかる程度であった。このときの体温37.7度。

ひとまずこの日は解熱鎮痛剤を服用して就寝。

発熱外来

翌朝時点での体温は37.1度、まだ熱はあるものの微熱程度である。また咳や鼻詰まり、喉の痛みといった風邪様症状は皆無。
とはいえインフルエンザの爆発的流行期であるから、感染可能性は決して低くなく、用心に越したことはない。近所のかかりつけ内科にて発熱外来を予約する。
この医院はコロナ期以降、発熱外来を常設し感染防御を強めており、院内を仕切って受診者同士の接触を低減している。仕切りの中で待機のちSpO2測定、鼻腔粘膜を拭ってウィルス感染検査。
検査結果は血中酸素濃度99%で呼吸器症状なし、インフル・コロナとも陰性。解熱剤としてロキソプロフェンNaを処方されて帰宅。

翌日も変わらず37.1度と熱は上がりも下がりもせず、若干の体の痛み(ロキソプロフェンで抑える)以外には症状らしい症状もない。
解熱剤を服用していれば動けないこともないのだが、念の為休みを取る。

腰痛

痛みに目を醒ます。左下腹部に内臓系の、キリキリと引き攣るような痛み。左腰背部に筋肉痛系の、重度の凝りのような痛み。
腹を押してみたり腰を押してみたり、姿勢を変えたり便通の不良を疑ってトイレに籠ってみたり色々するが、痛みの波が引いたり寄せたりを繰り返し何が効いて何が効いていないのかよくわからない。
病院へ行くべきだろうが、そもそも何科を受診すれば良いのか。内臓要因ならば内科、筋肉要因ならば整形外科だろうが痛みの部位も判別し難い。
腰から背中の痛みということで想起されるのは結石の類だが、あれは即座に救急車を呼ぶほどの耐え難い痛みとも聞く。しかし今はそこまで辛い痛みというわけでもない。
また痛みというものは必ずしも症状部位に現れるとは限らないというか、部位認識と実際の症状が一致するとも限らないようだ。背中が痛いと思ったら心臓疾患だった、といった事例もあるわけで、素人では判断つきかねる。

とりあえず救急相談窓口に電話してみる。症状を尋ねる内容から察するに外傷性内出血症状(急を要する)かどうかの切り分け、および尿路結石が疑われる明確な症状を確認されているものと思われるが、痛みについてもその他症状についても典型的なものではなかったようで、ひとまず整形外科の受診を薦められた。
たしかに背中は筋肉痛っぽく感じるとは答えたが、それだと腹部の内臓っぽい痛みが説明付かなくない?
あるいは実際に整形外科領域の症状なのかも知れないけど、内臓系の可能性がある場合そっちを優先的に疑っておいた方が安全でない?
いやまあ、相談しておいて疑うのもなんだけども。

病院が開くまでに、結石について少し調べる。尿路結石は尿路中のどこに生じるかで腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石に分かれ、痛みが大きく異なるらしい。
最も痛いことで知られるのが尿管結石。膀胱結石はそれよりは軽く、頻尿や残尿感などを伴う。尿道結石は痛いが瞬間的。腎結石は尿の流れが阻害されない限り明確な症状が生じにくく、痛むにしても背中の鈍痛程度とのこと。
⋯⋯やはり腎結石では?

結局、発熱外来を受診したのと同じ内科に。それほど遠くないところに泌尿器科もあり、そちらの方がより適切ではあったか知れないが、泌尿器科は今まで受診したことがないのに対し内科はかかりつけ医院であり、また直前の発熱について受診済みであることもあってまずそちらを頼ることにした。

病院では尿検査と、指先からの血液採取。指先に針を挿し血を一滴採取するのだが、専用器具は痛みもなくわずかな傷のみで極めてスマートであった。
検査の結果、尿中に潜血が認められ、また血液検査からCRP1.1mg/dLと軽い炎症反応が確認された。つまり軽度の腎結石によりわずかな炎症を生じており、これがどうやら37度程度の悪寒なき発熱の原因でもあったようだ。
「これぐらいだとそのうち排尿とともに排出されることが多いので、水をたくさん摂ってください」とのことで帰宅。以降とりあえず痛みは再発していないものの、石を排出した手応えは感じていないので、しばらくは再発を懸念して恐る恐る動くしかなさそうだ。

というわけで、「凝りかと思ったら発熱、風邪かと思ったら結石」だったという話。

事件調査・証拠解析ゲーム「東京サイコデミック」

1年ほど前にリリースされた事件捜査ゲーム「東京サイコデミック」を遊んだ。
tokyo-psychodemic.com
事件の捜査、というより証拠の調査・解析に主眼を当てた、新機軸のミステリゲームである。
本作のディレクター/シナリオライターは今井秋芳氏、「東京魔人學園」シリーズなどジュヴナイル伝奇もので知られる。

最初に書いておく:独特の面白さはあるものの、あまりおすすめはしない。

ゲームの概要

最初に、今回捜査すべき事件の概要が[エビデンスボード]に貼られる。海外のミステリドラマなどによく登場する、壁に関係者の写真や地図などが貼られ赤い紐で結んで関係性を視覚的に表現する、あれだ。
そしていくつかの疑問点が提示される。たとえば「犯人は?」とか「動機は?」といったような。そして、その空欄を埋める[証拠]を探すために資料を解析してゆく。

解析は他のゲームでは見られない要素なので、とりあえず体験版の内容を例に説明しよう。
体験版では、まず被害者の足取りをいくつかの監視カメラ映像から追ってゆく。映像解析装置では左右2画面にそれぞれ映像を出して比較・解析することが可能で、たとえば被害者の顔写真をデータ解析したものを片方の画面に出して、もう片方で映像を再生しながら被害者と思われる人物が映る場面で停止して拡大表示し、AIに顔の一致率を解析させることで本人かどうかを確認することができる。
このようにして[被害者がどのカメラに写っているか][どちらへ移動したか]を確認することで当日の足取りを掴むことができる。

このほか、文書を[注視モード]で見ることでキーワードを拾い上げたり、音声解析装置で周波数帯ごとにボリュームを調整することで話し声の後ろで鳴っている環境音をはっきりさせたりと、複数の手段で証拠を集めてゆく。
わからないことがあれば[ダークウェブ]越しに専門知識を持った協力者に訊くことができ、また[凄腕のハッカー]に頼んで必要な情報を集めてもらうこともできる。

事件解明に必要な情報を集め切ったら、質問に回答してゆく形で[報告書]をまとめ、証拠となる情報を添えて提出する。

この調査モードは他のゲームには見られない本作のみの特徴で、これを面白いと思えるか、それとも面倒臭いと思うかがひとつめの評価の分かれ目となる。
解析機材の操作はなかなかにリアルで、他では得られない雰囲気を味わえるが、実際の捜査でも付いて回るであろう地味な面倒臭さをもリアルに再現してしまっている。
たとえば監視カメラのビデオテープを再生して事件前後の動きを確認するためには、実際に数分の映像をじっと目視して決定的な瞬間を見付けなければならない。もちろん実際には1本あたり60〜120分ぐらいあるだろう映像が、ゲーム中ではせいぜい5分ぐらいに短縮されているのだから面倒はかなり軽減されているわけだが、そうは言っても多作に比べて面倒であることは否めない。

コントローラーはリアルな機材に近付けて操作を割り当てられており、その試みには成功しているものの、それゆえ手間が増えてもいる。
たとえば映像に映っているのが容疑者であることを確認するのに、片側のディスプレイに顔写真を出して特徴解析を行ない、もう片方に映像を出して再生、容疑者の映った部分を拡大してAIによって写真との一致度を判別させる⋯⋯という手順を踏むことになるのは、そこそこのリアルさと簡便さを両立させてはいるわけだが、ゲーム的には[映像を拡大した時点で本人と断定してフラグ立て完了]ぐらいでもいいわけで⋯⋯
反面、ダークウェブ越しなのに全員顔出しだったり凄腕ハッカーが即座に情報抜いてきてくれたりと雑にお手軽だったり(まあこれはゲームの簡便化の一貫であり、必ずしも悪いことではない)、推理の論拠となる科学・技術知識がだいぶあやふや感あったりと、リアルに寄せたいのかそうでないのか図りかねるところも色々あったりするが。

ボリューム

本作のシナリオ数は5本。ひとつの事件はだいたい1〜2時間程度でクリアできると思われ、最後がちょっと時間かかるとしてもまあ10時間前後と、そう長くはない。
恐らくは連続ドラマ的なノリなのだろう、各話でほぼ同じOP・EDが繰り返される(スキップはできるが)。意図はわかるが連続して遊ぶと正直ウザいばかりで面白さには寄与していない。

各キャラにはLive2Dによるアニメーションとボイスが付けられているが、それがあまり魅力的に作用しているとは言い難い。毎回同じ立ち絵のアニメーションよりも、場面を印象付ける魅力的な1枚絵の方が効果的な場面もあるものだ。コストのかけ方を再考された方が良いのでは。

当初の販売価格は5940円。途中、アップデートとともに販売価格が3980円に変更されたようで、まあこのボリューム感からすればそれぐらいが妥当な金額ではあろう。

総評

全編通しての印象は「雰囲気だけはあるが、中途半端」。

エビデンスボードは視覚的な情報整理効果だけでなく事件捜査感が出ているし、リアルに寄せた解析操作などは昨今流行りのARGミステリー路線の先駆けと言えなくもなく、見た目の楽しさを演出することには成功している。ただ、そういったリアル要素は推理ゲームとしての楽しさにはあまり寄与しておらず、むしろ面倒が前に出てしまっている感は否めない。

そもそもミステリーは実のところゲームにはちょっと不向きなジャンルではある。一番の醍醐味は[予想が覆される]カタルシスであり、そのためにはミスリードが大きな効果を発揮するわけだが、小説や映像など受動的メディアであればこそ読者はミスリードされたまま終盤を迎え、それを名探偵が覆してみせるという構図が機能する。
しかしゲームに於いてプレイヤーは名探偵の役割を担うことになるため、ある程度ミスリードを弱め、真実に気付かせる導線を敷かねばゲームクリアが覚束無いが、結果としてミステリーとしてのカタルシスはどうしても弱まることになる。
とりわけ本作では、証拠の解析の方に重点を置く都合上、推理の方は更に弱めざるを得ない。そのためミステリー本来のカタルシスはほとんど消失しており、証拠集めこそを楽しさの中核とすることになるが、同時にここが一番面倒臭い[作業]でもあるという、構造的弱点を抱えている。


また、本作の事件はいずれも[超常現象]を匂わせる内容となっている。これはある意味でミステリーのカタルシスのための[意外性]の演出に寄与してはいるのだが、この点こそが最も大きな評価の分かれ目であり、率直に言えば評価を下げる要因となっている。

超常現象というのは、現実には有り得ないからこそ超常現象なのだ。つまり超常現象としか思えない事件というのは、もうその時点で現実のものとして説明不可能であるか、あるいはそもそも説明がねじ曲げられて不自然であるかのようにミスリードされているかのどちらかということになるわけだが、本当に超常現象であったとするならば(現実ではないのだから)どんな現象でもアリということになってしまい推理もクソもないし、不自然なミスリードであるなら余程巧妙にやらない限りは到底納得できないアンフェアなものになってしまう。
たとえば密室殺人の真相が「霊体が壁を通り抜けて被害者を殺した」だったら、あなたは納得できるだろうか?あるいは「霊のしわざに見せかけて殺すために壁を通り抜ける特殊な装置を作った」だったら?
上記の例はネタバレにならぬよう私が適当にでっち上げた内容だが、本作に於ける[超常現象を匂わせるミステリー]というのは、大体そういう感じだ。

ゲームは基本的に[証拠探し]に終始するが、終盤でだけ唐突に[謎解き]が差し挟まれる。正直ここだけは、蛇足な上に出来が悪いと感じた。それまでに謎解きに関する何らかの誘導があるわけでもなく、従ってルールが一切不明な状態で、しかもゲーム上は明らかに「誤答したらゲームオーバー」な状況である(実際にゲームオーバーとなるのかどうかは身確認)。ここは全面的に攻略サイトを頼ったが、そこでもあまり納得できる答えとは受け止められていなかった様子。
これもシナリオライターが自分で考えるのではなく謎制作の専門家を頼るべきだったろう。そうであればこんな不可解な謎は作られなかったはずだ。


ところで、超常現象とは別に、本作はコロナ以後の社会情勢を明確にモチーフとしており、社会風刺的な主張を強く感じる──のだが、終盤で悪役側の主張が覆されるでもなく継承されてしまっているために、風刺のつもりなのか純粋に極端な思想の発露なのか、よくわからないことになってしまっている。
まあ「悪が倒されて善なる世界に変わる」みたいなのもわかりやすすぎて興醒めな部分はあるので敢えてのことなのかも知れないとも思うのだが、全体にとっ散らかっているというか、まとまりのなさは否めない。ディレクションとシナリオライティングを一人でやることの弊害というか、外部の編集が入ったらもうちょっと違ったのではないかという気はする。


総じて「意欲は買うが、評価はできない」。
これがせめて、著名なミステリー作家にシナリオを依頼して[証拠の解析に軸足を於いたミステリー]として作られたならば、(操作の面倒臭さは解消できずとも)それなりの作品になったかも知れないだけに、勿体なくはある。

あなたがもし[超常現象系のミステリー]を楽しみたいなら、「都市伝説解体センター」をおすすめする。
umdc.shueisha-games.com

証拠解析ゲームとして遊んでみたいと思ったなら、まずは本作の体験版をやってみて、製品を購入するかどうかを検討されたい。