大砲とスタンプ:共和国軍 主力戦車

前回の擲弾戦闘車 マズルカを仕上げたところで3月も残り数日。架空戦車コンペの締切は3月一杯だったので流石にもう時間がないのだが、公国と帝国を作ったならば共和国も作りたくなるというもの。
実は「大砲とスタンプ」は戦争の話ではあるが戦闘がメインではなく、様々な兵器が登場するものの主人公が後方任務を担当する兵站軍の将校であるため各兵器はチョイ役に過ぎない。むしろ敵軍である共和国の主力戦車こそが、いちばん多く登場する兵器であり、ほとんどイラスト1枚の他の兵器よりも格段に資料が豊富なのだ。
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右前部のスポンソンに大口径砲を、上部の全周砲塔に小口径の対戦車砲を備えた構成やコイルスプリング式の特徴的なサスペンションなどから見て、この戦車のデザインベースは米軍のM3中戦車で間違いない。
ならばシュルツェン付きの特徴的な砲塔を作るだけでおおよそ完成するのでは……それなら数日で完成させられるか?
ということで、1/35 M3グラントMk.1を購入。

とりあえず左前方を切り取ってプラ板とパテで埋めつつ前部装甲を垂直に仕立て直し、砲塔リングを切り出して中央にレイアウトしてみる。
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このあたりで気付いたのだが、どうやらM3中戦車だいぶ恰幅が良いな?
M2〜M4の各戦車のデザインは左右フェンダー部分にまで車体が張り出す構造になっているのだが、共和国の中戦車では左右フェンダーが車体より外に張り出している。
また左右装甲は若干の傾斜が付けられている一方、M3では斜めになった車体後部は水平になっている。
というわけで結局車体を切り刻んで、車幅を切り詰めつつ各所の角度を変更してゆく。車体左前部の角度はなかなかいい感じになった。
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砲塔は基部を円形に整えつつ5mm幅に切れ目を入れたプラ板を巻いて円筒を作り、パテで頂部を形成する。元イラストを見るとシュルツェンは放射状の板で接合されているような感じに見えるのだが……
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流石にそれは手抜きっぽさがあるので、Iビームで支持材を作り直す。まあ雑なことにあまり変わりはないような気もするが。
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車体バランスはこんな感じ。元イラストでは戦闘室がもっと前後に短かく、また砲塔は戦闘室の幅ギリギリのサイズであるように見えるのだが、絵ごとにサイズは曖昧なので「シュルツェンを合わせると車幅よりも大きい」ぐらいであればまあ良いかということにしておく。
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車体幅を詰めるために切り落とした後部上面装甲を2つに切って、中央部の幅に合わせて切れ目を入れて車体尾部を作ったところ、残った半分がちょうど車体前部装甲にぴったり嵌まった。下面にプラ板を貼り軸受け部を作る。
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車体後部の超壕用尾橇をプラ材で作る。第一次大戦の戦訓から初期戦車に見られた構造だが、実際にはあまり役立たず主に荷物置き場になっていたとか。
接合部の糊代は余計で不恰好なのだけど、接着力の方を重んじた。
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切り落とした部分などにリベットを植えつつサフを吹く。表面は整え切れず粗さが目立つが、綺麗に均そうと思うとリベットを削り落として全部植え直す覚悟が必要なので、流石に手間がかかりすぎる。粗さはウェザリングで誤魔化そう。
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砂漠迷彩を意識して、M3の塗装パターンを見本にレッドブラウンをカモグリーンに置き換えてざっと塗り分ける。
全体をミディアムグレーでウォッシングしてコントラストを落とし、錆色をドライブラシして全体を荒らす。
ソビエト歩兵突撃セットを乗せてタンクデサントを演出。今回は乗せてみただけだが、そのうちちゃんと情景にしたい。
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今回はキット入手から塗装までわずか3日という突貫作業で、流石に色々と粗はあるのだが、仕上がってみればなかなか雰囲気は出せたのではなかろうか。

大砲とスタンプ:帝国軍 敵弾戦闘車「マズルカ」

架空戦車コンペ第4弾、前回の「肉挽き機」が良い感じに作れたので、今度も「大砲とスタンプ」5巻に登場する小型車両を作ってみる。
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ドイツ軍っぽさのある帝国軍の軽装甲車「マズルカ」は20mm機関砲と擲弾砲を備えた3輪ハーフトラックである。史実的に言えばケッテンクラートとsd kfz.250の中間ぐらいのイメージだろうか。丸っこい形と車体に似合わぬ大ぶりの砲塔、耳のような測距儀が可愛い。

素体としては、同じく20mm機銃を装備したII号戦車をベースにするのがいいだろうか。しかし履帯部分はもっと小さなものがいい。まったく同型のものは(今回は史実に類似車両がないので)用意できないが、スケール違いのハーフトラックあたりから切り取って来ようか。
スケールを確認しつつサイドビューの画像を切り取ってシミュレートした結果、今回は小さめに作るつもりで1/48のII号戦車に1/72のM3ハーフトラック履帯を合わせるのが良いのでは、という方向に落ち着いた。
ただ、M3が履帯以外無駄になりそうなのがちょっと気になって、とりあえず履帯は後回しにしてII号戦車ベースで砲塔から作ってみることにする。

とりあえずII号戦車の砲塔を組みつつ後ろを切り落とし、パテとプラ板で形を整える。斜めに角度の付いた円形の装甲を組むのが難しい。
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擲弾砲は2mm丸棒を1.5mmピンバイスで抉って作った。先にモーターツールの丸先ヤスリで先端に窪みを作り、中央に0.5mmピンバイスで穴を空け、少しづつ太径にしてゆく。
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車体上部は、砲塔リング部分だけを切り出して曲げたプラ棒を貼り丸みのある車体の骨組みとする。
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L字材を使って斜めの装甲板を貼り、下端にまた曲げプラ棒を貼って間をプラ板とパテで埋めることで車体を作ってゆく。
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車体に合わせて履帯のサイズを見たところ、II号戦車の駆動部を切り詰めれば丁度良いのではという気になってきた。
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それに合わせて車体下部も前後を詰めただけで普通に組んでゆく。
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砲塔を乗せると豆戦車っぽくて、これはこれでちょっと面白い。
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前輪のフェンダーに使える 部品がなかったので、ターレーに使用したFlak.38の余ったバナナマガジンを接着してフェンダーをでっち上げる。
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車体上部と履帯部分を合わせてみて、前輪部分のバランスを考えてみたところ、1/35のSASジープぐらいの大きさでないとバランスが合わないことが判明。つまり車体のサイズ的には1/48じゃなくて1/35ということになる。おかしい……1/48にしようと思って作っていたのに……
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すると砲塔も、1/35で人を乗せるにはあまりに小さい。元イラスト的にも、車体からはみ出すぐらいのサイズであるはずなので、折角作ったが切断して作り直し。
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車体の上下をどう合わせるか考えながら隙間を埋める構造を作ってゆく。L字材を貼って断面三角にしてゆくことで、ドイツ軍のデザインにありがちな傾斜車体が生まれる。
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ようやく元イラストのバランスに近い形状が出来上がってきた。
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横から見るとこんなバランス。かわいい。
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車体前部に1mm半丸棒を貼ってリブを表現しつつ、細く練ったパテを貼り付けて溶接痕を作る。明らかに太すぎるのだが、細いと貼り付かないので難しい……表面がプラ材だったら伸ばしランナーの方が良いのだろうけど、パテで覆ってしまうとそれも難しそうで。
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SASジープの、モールドが甘いM2機関銃を切って通信機っぽいものに仕立てる。
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アクセサリを貼って塗装すれば完成である。
初期ドイツ軍イメージでジャーマングレイの単色塗装にしたところ、のっぺりとしてメリハリがなく苦労した。若干明くしたグレイで縁部分をドライブラシしてなんとなく立体感を強調している。
帝国軍の国章はポーランド軍の赤白逆だということだったのでマーキングもポーランド軍に準拠したものを考えようかと思ったのだが、資料に乏しかったのでS35の使わなかったデカールから赤白のマークを流用してみた。
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先に作った肉挽き機と並べると小ささがよくわかる。S35だって決して大きな戦車ではないのだが、その半分ぐらいしかない。
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流石にターレーよりは大きいものの、砲まで入れたら全長で負けている。砲座に座らせていたフィギュアを乗せてみたら玩具みたいなサイズ感になった。
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いちおう車内に座れば頭が砲塔内に収まるぐらいのサイズではある。
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大砲とスタンプ:公国軍 近接支援車「肉挽き機」

架空戦車コンペ用に架空の戦闘車両を作るのが結構楽しかったので、次のネタを考える。
流石にヤンセン脚歩行戦車ターレー・テクニカルのようなネタ方向は限界があるので、もっと実在しそうな奴を作ってみよう。
今回はネタ本として「大砲とスタンプ」から架空車両を引用することにした。

公国軍 近接支援車「肉挽き機」は、6巻に登場する。型遅れとなった戦車の車体を流用し、オープントップの砲塔に大口径の榴散砲を搭載した、対歩兵・軽車両用の近接戦闘用車両で、治安戦を得意とする部隊が運用している。
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コミカルな見た目に反して精神的にキツい場面に登場する、業の深い車両である。

一見して解る通り、デザインのベースとなっているのはフランスのソミュアS35だ。というわけで今回の素体には、評判の良いタミヤのキットを用いる。

まずは車体をざっくり組んでゆく。
足回りは4輪を一対としてリーフスプリングで支えたサスペンション構造が再現されている……のだが、それを完全にカバーで覆ってしまうため折角の凝った構造は完成すると見えないという……
車体上部はS35と少し形状が異なる。車体全部のボンネット状構造はなく平面的な台形構造であるため、まずはプラ板とパテでここを作り替えてゆく。斜めに切れ込んだ左前部は一度切断して直線的に接着し直して、ボルト接合部を生かす。
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元イラストからははっきり判らないものの、車体後部は一段高くなっているようだ。砲塔に全周能力がないというのも、ターレットリングより高くなった後部に邪魔されるためだろう。
というわけで 後半を切断し、上面を切り取って間をプラ板とパテで繋ぐ。
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駆動部側面の装甲にブチ穴などの装飾を追加する。
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アクセサリはターレー・テクニカルのフィギュア用に買ったSASジープから流用したのだが、古いキットのためディティールが甘く、側面はのっぺりして布のように見えないので半田ゴテでなぞって彫りを深くする。
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後部にもアクセサリを取り付けてゆく。車体上面中央にあったマフラーは右背面下方から上に向かうように変更。
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ターレー・テクニカルの時と同様に、3mmプラパイプを接着してゆく。ただし今回は120度で切り開いたパイプを周辺にも接着、間をプラ板とパテで埋めて、リヴォルヴァーの回転弾倉めいた構造を作ってゆく。これが榴散砲の砲身になる。
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さて、榴散砲の機関部をどうするかが問題である。内部の見えない砲塔ならば砲身さえあれば良いのだが、オープントップゆえにそれっぽい構造が必要になる。しかし回転砲身の榴散砲など史実兵器に存在していないので、それっぽい形を作るにも参考資料がない。
ひとまず口径の近い榴弾砲が使えないかと考えてみた。できればあまり高くないもので。
色々探したところ、1/72 60cm自走臼砲カールの中古キットを見付けた。スケールが半分程度なので1/35に合わせれば30cmぐらい、榴散砲の砲身は3mmパイプだから35倍すると105mmぐらい。それが束ねられて3倍の太さになるので丁度30cmぐらいで合うはずだ……と買ってみたものの、砲塔部分に乗せてみたらどう見てもオーバースケール。乗せて乗らないことはないとはいえ、これでは人の乗る場所がない。
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なお、パテで埋めて磨いてしまった装甲表面の鋳造表現は溶きパテで作り直している。


仕方がないので手持ちの部品や使えなかったカールのパーツなどを組み合わせて、なんとなく砲の機関部っぽく見えなくもない何かをでっち上げる。
ついでにプラ板で砲塔を作り始める。車体サイズと合わせてバランスを取りつつ回転角を調整し、なんとか左右60度ぐらいの回転が可能なように。側面装甲は曲げがキツくてプラセメントではすぐに剥がれてしまうので瞬着で固める。
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形が出来上がったところで塗装。カラーリングは1巻表紙の塗装パターンを参考に、ベージュ+パステルブルーの2色迷彩とした。マーキングはプラ板で作った原型を元にマステをカットしてステンシル塗装で白→オレンジを重ね塗りし、極細油性マジックでストライプを手書き。車体左前面の黒死病連隊マーキングも手書きである。
車体は全体にダークコッパーのドライブラシで錆を付け、歴戦の車両らしさを演出。布パーツはブラウンに塗った後、白をドライブラシで縦横に重ねることで布っぽさを出してみた。
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「テクニカル」を作る

テクニカルというのは、「市販車の荷台に武装を搭載して戦闘車両に仕立てた」改造車のことだ。
元は内戦地域で活動する非政府組織が、護衛の入国を拒否されたため「技術支援助成金」の名目で民兵を雇ったことから転じて、民生車両を武装化したもの全般の呼び名となったのだそうだ。
ピックアップトラックなど非軍事用車両に対空機関砲やロケット砲などの重火器を据え付けたアンバランスな姿が印象的で、そのうちネタにしてやろうと漠然と考えていた。

先日より開催された「架空戦車コンペ」に、前回作ったヤンセン式多脚歩行戦闘車両を出してみたところ思いのほか好評だったことに気を良くして、新作を作ろうかと思い立ったところでテクニカルのことを思い出した。私は造形技術も塗装技術も拙いのでアイディア勝負を好む。架空の戦闘車両として、史実戦車ベースの架空仕様車両や脚歩行戦車は多数あったが、テクニカルはまだなさそうだ。

問題は「何をテクニカル化するか」である。戦闘用でない車両に重武装を施すのが面白いのだが、なるべく意表を突きたい。
最初はロボものを考えたのだが、ガンダムにはじまるロボ系プラモの大半は戦闘用であるため「民生車両を武装化する」という趣旨にそぐわない。しかしオリジナル機体で民生用であることを理解してもらうのは難しいし、あるいは知名度のある民生ロボを使うとなると、メカトロウィーゴなどごく少数しかない。

もうひとつの問題が「荷台」だ。テクニカルは車両の荷台へ雑に武装を据えたものなので、荷台のない機体では再現しにくい。たとえばウィーゴの腕に銃を持たせたり肩から砲を生やしたりしても、それはテクニカルには見えない。

(ほぼ)民生用の荷台付きロボとして、ザブングルのウォーカー・ギャロップを素体にすることも考えた。

これはこれで面白かろうとは思うのだが、オリジナルキット時点で最初から機銃が据え付けられており無改造でもテクニカルっぽかったのと、キットの縮尺が1/100であるためミリタリーモデルとサイズが合わないという難点があり断念。
他に荷台付きの良いキットはないか……と色々検索しているうちにふと思い出したのが、アオシマの出していた「ターレー」のキットであった。

ターレーとは、正式にはターレットトラックといい、市場などで荷運び用に用いられる小型運搬車である。車両の前部に原動機と直結した駆動輪を持ち、その上に付いたハンドルで原動機ユニット自体を回転させることで操舵する独特の機構を持つ。運転台には座席がなく立ったまま操縦する。
明らかな非軍事車両で、しかも小型でありながら荷台を備えるため砲座の積載に適した、重武装化で違和感が際立つ最高のチョイスではないだろうか。しかも1/32スケールと、ミリタリーミニチュアで一般的な1/35と合わせて違和感のないサイズなのも良い。

というわけでネタの方向性が決まったので早速キットを取り寄せる。既に流通の少なくなった製品ではあるものの、まだ在庫は確保可能だ。
搭載する武装は、コンパクトながら火力を感じさせ、かつキットの安いものをということでタミヤの2cm4連対空機関砲Flak38をチョイス。

ざっと組み上げて砲座を載せてみる。左右に張り出した装填手座席と砲座を安定させる足をカットして左右をコンパクトに抑えても、台座部分が荷台の幅よりはみ出す。また回転のため砲手座席がギリギリ回転できる位置にすると重心が後輪の車軸より後ろになってしまうので、砲の重みで運転台が跳ね上がる。
エンジンカウル側に鉛でも仕込んでバランスを取ることも考えたが、実機でも同じような現象を生じることが予想され、これはつまりオリジナル仕様のままでは積載に無理があるということだ。そこで急遽、後輪を2軸化することにした(本キットには2台分の部品があるので、予備パーツとして流用可能である)。これにより重心より後ろ側で支えることが可能になり、なおかつ砲の重量に耐えるため車輪を増やして荷重分散した風になる。
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フィギュアをどうしようか考えたが、テクニカルは中東などで多く用いられるのでターバン風のものが欲しい。しかしドイツ・アメリカ・イギリス以外の兵は種類が少なく、割高になる。
ちょうど英軍のSAジープにターバン姿の英兵が付いていたので、これを流用することにした。

ハーフパンツ姿では中東らしく見えないのでパテで裾を延長。また腕の角度が砲に合わなかったので袖口で切り落として角度を変え接着する。もう1体は下半身をパテで作り運転台に立たせる。
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ターレーのキットには牽引台車やトロ箱なども付属しており、これらも生かしたい。そこで連結した台車にも砲と弾薬を載せることにした。
既に機関砲を載せているので、台車にはロケット砲を載せたい……のだがロケット砲単体のキットは少なく、車載型では車体が無駄になる上に価格も高い。
のでプラ棒とプラ板でそれらしく自作する。
砲本体はわりとシンプルな形状なので自作できなくもないのだが、着火のためのケーブルは些か難儀した。たぶんこういうのは細い真鍮線などで作るところなのだろうが、生憎手持ちがないのでパテを細く練って貼り付けてみた。接着面積が小さいためなかなか張り付いてくれず、指で押して貼り付けてからピンセットで摘んで整形し余剰分を精密ニッパーでカットし……やたら手間がかかる割には精密感に欠け見栄えが悪いので、このやり方はおすすめしない。
まあそれでもなんとなく形にはなった。
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ロケット砲の弾薬はプラパイプとプラ棒を接着して適当に作る。これはトロ箱に投げ込んでおくだけのものなのであまり精密には作らない。

塗装は簡単に済ませる。
本体はオレンジイエローをベタ塗り、下面はフラットブラックをベタ塗り。台車はウッドブラウンを塗った上にレッドブラウンを面相筆でドライブラシして木目の掠れを作り、スミ入れする。
砲はダークイエローとダークグレイをベタ塗り。その後、ダークブロンズのドライブラシで全体に錆びを演出。超簡素だが結構それっぽく見える。

人は塗装に凝ると面倒なのでグレーサフのままで。あくまで主役は戦闘車両の方なので、これでもいいだろう。
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テクニカルは日本からの輸入中古車などが多く、現役当時の企業ロゴなどがそのまま残っていることも多く、それが一層武装との違和感を際立てる。
というわけでターレーに付属していた水産会社の看板用デカールを機関砲の防盾に貼ってみた。

アニメ「裏世界ピクニック」の改変意図と影響を探る

ホラーSF百合小説「裏世界ピクニック」がアニメ化された。

www.othersidepicnic.com
アニメとは「公式の二次創作」のようなものだ。小説とはまったく異なる都合に合わせて作られるため内容を完全になぞるのは難しく、必要に応じて改変が行なわれるのは当然のことではある。
ただ、裏世界ピクニックの場合、その改変理由、とりわけ順序の変更理由がよくわからない。
原作との違いを追いながら、改変の意図を探る。
(なお未放映回の内容に触れるネタバレ部分があるので注意のこと)

フェブラリー時空問題

1話「くねくねハンティング」2話「八尺様サバイバル」までは原作通りの順だが、3話「巨頭の村」はアニメオリジナル脚本であり原作にはない。こうしたオリジナルエピソードを差し込むことは珍しい話ではなく、ここまでは穏やかに見ていられた。
しかし続く4話「時間、空間、おっさん」は、(原作に於いても4話目のエピソードではあるのだが、3話「巨頭の村」によって1話分の後ずれが生じているので)実際にはこのタイミングで挟まるエピソードではなく、アニメだと5話である「ステーション・フェブラリー」(および、続く6話「ミート・トレイン」)の次にくるはずのエピソードだった。ここでまず、前後が入れ替わっている。

この入れ替えによって、「八尺様の後の打ち上げに」鳥子が小桜に売り付けようと持ってきた(が買い取ってもらえなかった)帽子をかぶったことで裏世界へ、という流れだったものが「時空のおっさん回の後にまだ帽子を持ってる」という若干不自然な流れに変わってしまった。ついでに言えば打ち上げの場を、新宿の居酒屋ではなく「時空のおっさん」回と同じ池袋のカフェとしたことで「小洒落たカフェで居酒屋メニューを食べる」という不自然さも発生している。だがまあ、これらはそこまで大きな瑕疵というわけでもない。
また原作では時空のおっさん回で「ステーション・フェブラリーから小桜にかけた電話による異言」と、「裏世界では読めないものになる表世界文字」の話から説明される、裏世界に於ける認知への干渉と恐怖を引き起こす外因の話が消えてしまった。そのため「理解ってしまった」鳥子が語る、「彼らは恐怖を通じてアクセスしてくる」という認識が裏世界真実なのかただの異言なのか、判断つかなくなってしまった。こちらはより重大だとは思うが、そもそもアニメでは全体に説明の省略が著しいため、(順序の改変それ自体によるものとしては)結果的にそこまで大きな影響を及ぼしてはいないのかも知れない。

むしろ「表世界内で複数の怪異が発生し(=表でも裏でもない「中間領域」に入り込んでいる)、裏世界へ引き摺りこまれ、空魚の目によって『ヒトをヒトでないものに置き換え』、最後に『冴月の姿をした何か』を破壊する」という高密度な物語を、前後2話構成とせず単話で描いたことによる詰め込みすぎで説明不足の方が、順序の問題よりも深刻ではある。実際このあたりで「意味がわからん」とだいぶ脱落者が発生したのを観測している。

順当に描くならば3〜4話でまずフェブラリーを、5〜6話で時空のおっさんをやるべきであるところ、敢えて逆にした理由は(物語上からは)判然としないが、これは恐らく前半の山場となるべきステーション・フェブラリーを「放送タイミングとして2月Februaryに合わせる」ためではないかと思われる。そして時空のおっさんを2話にせず、アニオリ回を挟んでまで1話に圧縮したのも、ステーション・フェブラリー回を「初の2話連続」としたかったためではないか。

敢えて時間・空間・おっさんをステーション・フェブラリーよりも先にすると、続けてきさらぎ駅救出作戦の実行が可能になる。当初はそういう狙いもあったのではないかと考えていた……のだが、アニメはなぜかきさらぎ駅からの脱出先を沖縄に設定、そのまま7話で「果ての浜辺のリゾートナイト」へと突入した。

ミートリゾート問題

実は(これは話順の変更とは全く別の問題なのだが)アニメ版では6話「ミート・トレイン」回に対する視聴者からの反応として、「親切にしてもらった米軍の忠告を無視して迷惑をかけた上に、置き去りにして逃げた」と主人公二人に対してヘイトが向けられてしまった経緯がある。実際には、米軍が親切であるとか置き去りにしたとかいった認識は描かれた内容に照らして正しいものとは言えないのだが、視聴者に「そういう印象を与えてしまった」こと自体は覆し難く、これによってもまた離脱者が続出した。
ここで次週に救出作戦が予告されていたならばそのようなヘイトなどすぐに消えただろうが、なぜか救出は後回しになった(TV版では漫画版CMで救出作戦の存在がアナウンスされているのだが、Web配信版ではそれも伝わらない)。
原作でも救出までには1話空けているので、別エピソードが挟まること自体がそこまで悪いというわけでもないのだが、流石にリゾート回を持ってくるのは失敗ではなかったか。

原作では、(他人に無関心な空魚とは対照的に)鳥子は脱出後にも米軍のことをずっと気にかけていた。冴月捜索にも米軍救出にも気が急く鳥子に対し、恐怖で気後れする空魚の意見が割れて喧嘩別れするというのが、本来の「時空のおっさん」導入部である。
そして、無事に米軍の救出を終えて心配の晴れた二人が、そのまま沖縄で羽目を外して盛大に打ち上げを行ない、泥酔した勢いでリゾートに繰り出すのが「果ての浜辺のリゾートナイト」だった。しかし、それをきさらぎ駅脱出の直後に置いたことにより、アニメでの流れは「自分たちだけ無事に脱出できたことを喜ぶ」打ち上げということになってしまい、同時に鳥子が「行きずりに少し関わっただけの米軍のことさえ放っておけない心優しい」キャラどころか「置き去りになった米軍のことなど気にせすリゾートを満喫できる」キャラに変貌してしまった。この違いはあまりに大きい。
元々この二人は、些か常識を踏み外した人物ではある。鳥子は銃を携行している程度に遵法精神がないし空魚は他人を追い払って裏世界を独占したがっており、とりわけ二人とも恐怖感覚がだいぶ麻痺している。とはいえ「敵ではない人物の直面する死を笑って見過す」ほどに善性の壊れた人物というわけではない。この部分の「改変」(意図的なものではなく、結果として生じてしまったにせよ)は二次創作としても容認し難い「解釈違い」だ。

しかも、「米軍救出のために自分の(第二話で肋戸が遺した)AK-101やマカロフを持ってきた」「空魚用に米軍から銃をもらった」救出回を挟んでいないため、「丸腰で裏世界に入って丸腰で逃げた」ステーション・フェブラリー直後であり何も武器を持っていないはずの二人が、なぜか浜辺では銃を持っている。完全に前後の辻褄が合っていない。
その上、裏世海からの脱出のために八尺様の帽子を(原作通りに)解いてしまった。これは救出作戦に於いてふたたびステーション・フェブラリーへ入り込む手段として使われるはずだったもので、つまりこの改変によって救出作戦についても原作通りには展開できなくなってしまったわけだ。

もしかしたらこのエピソードは当初、原作通りに「救出作戦→リゾートナイト」の順で放映される予定で制作されていたのではないだろうか。しかし何らかの理由で突然、「ミート・トレイン→リゾートナイト」へと接続を変更することになったために内容の辻褄が合わなくなってしまった……と考えると腑に落ちる。原作ではきさらぎ駅から脱出して西部新宿線に出るはずのシーンのみ、沖縄へ出現するシーンへと書き換えられたのではないだろうか。
ただ、何故救出を後回しにしてまでリゾート回へと繋げたかったのかはまだ見えてこない。

猫の日問題

沖縄から帰ってもまだ、二人は米軍を救出しない。次に来る8話は「猫の忍者に殺される」、実話怪異としては微妙なエピソードながら、小桜以外の準レギュラーとなる「カラテカ」瀬戸茜理と、後に裏世界探検の足として活躍を見せる「たばこ管理作業車AP-1」が初登場し、またようやく冴月に連なる手がかりを得る重要な回でもある。ただ、救出を後回しにする必要のある回とは思えない。どうやらこのタイミングに当ててきた理由は初回放送日2月22日が「猫の日」であるからのようだ。

9話以降で判明しているタイトルを見ると、9話「サンヌキさんとカラテカさん」10話「エレベーターで焼き肉に行く方法」とある。9話は「猫の忍者」に続く流れではあるものの原作では3巻収録のタイトルであり、恐らくはアニメ最終話より後の時間軸にあるはずのエピソードだ。そして10話は焼き肉というキーワードから察するに、オリジナル回というより「救出作戦」の前半部(+オリジナル改変)である可能性が高い。つまり「2話構成となる救出作戦をミート・トレイン直後に持ってくると猫の忍者放送日が猫の日ではなくなってしまう」ために、話順を変更しリゾート→猫よりも救出を後回しにしてきたのではないだろうか。

このように、アニメ版は「2月にフェブラリーをやりたいから」話順を変更し、「猫の日に猫回をやりたいから」話順を変更している節があり、ストーリー上の都合ではない理由で行われた改変が無駄に物語の辻褄を歪めているように思われる。それが面白さに寄与しない(逆に邪魔している)のでは本末転倒ではないだろうか。

追記:


ということなので、どうやら「猫の日に合わせた」は誤解だそう。
だとすれば後半の順序変更は「ふたたび2話構成となる救出回を前回と連続させず間を空けたかった」ということなんだろうか。ならば余計に、4話を先に持ってきた意味がなくなる。

他に考えられるとすれば、(この可能性は低いと思って棄却したのだが)「原作に合わせ救出まで1ヶ月近く空く」のを、放送数として視聴者にも体感させたかった?
「ステーション・フェブラリーを2月に合わせた」のが事実だとすれば、そういう「作中と現実を合わせる」形の演出意図である可能性が出てくる。本作は「現実に存在するロケーションを絡め、現実に存在する怪異譚を登場させる」ことで現実と作品内の境界を曖昧にするタイプの作品だということができ、またその体験はそのまま空魚の「架空の怪異譚だと思っていたら本当に出てきてしまった」という認識と重なってゆくと言える……のだが、作中時期では6月頃だったものを2月に合わせたりせずに放映しているし、そのような重ね合わせが強く出ているとはいえず、狙っているとしても効果は弱い。
7話以降についてもそれは同様で、敢えて重ね合わせのためだけに並び順を変えて3週間も空けるべき理由はないように思われるし、救出から最終話が(原作準拠エピソードだとすれば)連続しているべき理由もなく、やはり順序変更の意図は理解し難い。

ただ、6話→7話の雑な繋げ方を鑑みるに、あの部分は本来連続する予定でなかったのではないかという疑念は晴れず、だとすれば「1年以上前には決まっていた」脚本を、後から変更した可能性もある……のだろうか?この辺りは流石に、制作体制を知らずには結論づけることができないけれども。

自己責任抜きのサンヌキさん問題

9話「サンヌキさんとカラテカさん」に於ける怪異モチーフである「サンヌキカノ」は、読むことで呪われるとする、いわゆる「自己責任系」の怪異譚である。つまるところ、市川夏妃が「なぜ」サンヌキカノという怪異に巻き込まれたのか、までがセットになってこそのサンヌキカノであり、原作ではその情報が次話へと繋がる重要な手がかりになった……のだが、アニメでは話順──というか「どこで区切りを付けるか」の違い──によってそれが切り落とされてしまった。
まあ「謎の老婆が襲ってくる」でもホラーとして成立しないわけではないものの、(空魚が右目でおかしくした)茜理がカラテでボコる形で決着を見ることで恐怖どころか猫の忍者と同じぐらい微妙な雰囲気になってしまっている。
ついでに言えば、「時空のおっさん」時点から続く「裏世界ではないが怪異を生じる空間」=中間領域であることがアニメでは明言されず認識がボヤけてしまっていることもあって、この怪異も「夏妃が何かに呪われた」という話に落ち着いてしまい、「裏世界とはなんなのか」がますます意味不明になっている感はある。

まさかの挽回

ここまで非難を書き連ねてきたのは、原作からの乖離によって生じた歪みが「もはやここに至っては修復不能だろう」との認識故だったのだが、まさかの10話アニオリ回で挽回してきた。
3話は「2話とそれ以降の間にあって原作では書かれなかった」裏世界探検エピソードという形だったが、今回は「話の流れを変えたアニメ世界線だけの」独自回ということになる。

まず冒頭、鳥子との会話で「置き去りにした米軍のことをずっと気にしていた」と言わせることによって、「米軍を気にせずバカンスを満喫できる女」から「バカンスしつつも米軍を気にかけていた女へと軌道修正。リゾート回で八尺様の帽子を解いてしまったことで使えなくなったはずのきさらぎ駅行きの方法については、(どうやってか)再び所持可能な形態に戻せたのだということが示され、救出作戦への繋ぎとしてもまずまず。
そして序盤の印象的な「エレベーターのメソッド」を巻き込みの導入に用いつつ、中間領域のことを改めて印象づける。また、異常状況でも平静を保ち、取り込まれた茜理は心配しても巻き添えを食らう小桜の恐怖心はスルーする二人の異常性を小桜の「人の心がない」という指摘によって明示する。
これら一連の演出によって、今までのアニメオリジナル改変に基づく様々な歪みがほとんど修正されている。若干苦しいのはリゾートで何故か持っていた銃ぐらいのものだが、まあ「描かれてなかったけど米軍から借りパク(なぜかロシア制の銃までも)」ぐらいで納得しておこう。

全体として、単独エピソードとしては若干怪異それ自体には具体性を欠きつつも、しかし不穏な雰囲気と冴月の剣呑さをうまく印象付け、終盤への伏線として充分以上のものになっているように思う。

「クラロワ系」のスゝメ

スマホ向けのオンライン対戦ゲームで、俗に「クラロワ系」と呼ばれるジャンルがある*1。代表作「クラッシュ・ロワイヤル」に由来するカテゴリで、少数のカードで組まれたデッキを使い、時間回復するリソースを消費することでカードを出して戦わせ、敵陣のタワー破壊を目指すものだ。
1戦3分前後で済み、移動中の隙間時間などでも遊べる気軽な対戦ゲームである。

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クラロワ系とは

この説明ではちょっとイメージが湧かないかと思うので、もう少し詳しく説明してみよう。
クラロワ系のゲーム画面は縦長であることが多い。画面最下部には自分の手札とリソース量を示すゲージが表示されており、その上に自軍のメインタワーが、前方左右にはサブタワーがある。
ゲームの基本的な目的は、手札のユニットカードを戦場に召喚して相手陣地へ送り込み、相手のメインタワーを破壊することだ。サブタワーの方は破壊してもただちに勝利とはならないが、一定の対戦時間(3分程度であることが多い)でメインタワーが破壊できなかった場合にはサブタワーを破壊した本数の多い方が勝ちとなるし、いずれにせよメインタワーへのルートを塞ぐように建っているので、まずはこれを破壊する必要がある。

手札にあるユニットカードは、戦場の下半分、自分の陣地側ならば好きな場所に召喚できる。召喚時には、カード性能に応じてリソースゲージを一定量消費する。ゲージはおよそ3秒程度で1づつ回復し、上限は10だ。
召喚されたユニットは自動的に敵陣のタワーめがけて進軍し、途中で敵ユニットと遭遇すれば攻撃を行なう。基本的に、ユニットの行動をプレイヤーがコントロールすることはできない。
戦場は中央が水路などで区切られ、左右2本の細い橋などで繋がっている。互いのユニットは相手陣地へ侵攻するためこの狭隘部を通らねばならず、必然的に橋を渡ろうとするユニットとそれを阻止しようとするユニットが橋を挟んで衝突することになる。

ユニットは自動で行動するから、プレイヤーにできることは基本的に「ユニットを出すタイミングと位置を選ぶ」だけなのだが、ユニット同士の三竦み的な性能バランスの兼ね合いによって、ここに駆け引きが生じる。
たとえば、一撃が重いユニットは1対1だと相手に大きなダメージを与えることができるが、小さくて数の多い敵に当たるとダメージが無駄に余り、攻撃の遅さが仇となってなかなか殲滅することができない。
逆に小さくて数の多いユニットは、一撃のダメージこそ小さいが手数も多いので相手のHPをどんどん削ることができるし、敵の攻撃による被害は1体分で済むので生存性も高い。ただし一体一体のHPは低いため、範囲攻撃を受ければあっという間に全滅する。
範囲攻撃ユニットは群れ相手に極めて効果的ながら、火力そのものは高くないため単体で敵と戦うには不利となる。
また、各ユニットは原則として最も近い敵を攻撃するため、高いHPを持つ「盾役」を先に接敵させて相手からの攻撃を引きつけ、後方からHPは低いが高火力なユニットを当てるようにすると、打たれ弱いユニットでも安全に攻撃を継続できるので、大きなダメージが期待できる。

喩えるならば格闘ゲームに似ている。相手の攻め手に合わせ、それに強いユニットでガードすることで被害を抑えつつ、可能ならばカウンターへと転じる。
カードはそれぞれ性能に応じてリソースゲージを消費するので、攻めにも守りにも限度がある。相手が攻撃に要したコストよりも少ないコストで防ぐことができれば、反撃時には相手よりも多くのゲージを消費した攻勢が可能となり、防衛を圧迫できる。そういうイメージだ。
一方、格闘ゲームとは決定的に異なるのは時間感覚で、リソースゲージの回復にも召喚したユニットの移動にも時間がかかるため「相手の出方を見てこちらの手を考える」余裕があり、基本的には防衛優位なバランスとなる。勝敗は反射的な操作精度の差などではなく、リソース量の差により「打つ手がなくなる」形で決着する。

操作が単純で素早さを要求されず、また通信的にもシビアでないため、モバイル向け対戦ゲームとしていくつものタイトルがリリースされている。
課金スタイルは本家クラロワからほぼ一貫してPay2Winで、「カードを買う」ことで戦術幅を広げ、またカードごとのレベルを上げて性能を向上させる方式となる。だがプレイ報酬などでカードは順次入手できるし、レベルキャップの存在とラダー制、「互いのレベルを揃えて対戦する」ルールなどにより、無料プレイでもそう極端に不利ということはない。

新型クラロワ「ソウル・オブ・エデン」

本家クラロワはオーソドックスな西洋ファンタジーをモチーフとしており、ゴブリンやスケルトン、あるいは騎士や弓兵などを召喚して戦う。絵柄は良くも悪くもシンプルで物語性は薄く、「対戦」に注力したデザインだ。その影響から後発にもファンタジーものは多いが、少数ながらSF系や近現代戦ものなども存在し、またよりキャラクター色の強いものなどもある。
そんな中にあって、やや独自性の強い現役タイトルが、台湾RayArkの「ソウル・オブ・エデン」だ。

ソウル・オブ・エデン Soul of Eden

ソウル・オブ・エデン Soul of Eden

  • Rayark International Limited
  • ゲーム
  • 無料
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これはSFとファンタジーが混在したようなイメージで、4系統の種族それぞれに戦術が異なっているのが特徴である。
機械系ユニットの多い「共和国」や、昆虫と軟体動物を併せたような「異種」はRTSスタークラフト」やミニチュアゲーム「ウォーハンマー40000」的な雰囲気を持っている。獣人を中心とした「獣族」と、魔法を用いる人族の「帝国」はさしずめ「ウォークラフト」か「ウォーハンマー エイジ・オブ・シグマー」の方か。

それぞれの種族を、簡単に説明しよう。

共和国

機械ユニットの多い科学文明種族で、基本ユニットである2コストの「マリーン」をはじめ、射撃ユニットが充実している。またHPの高い「ディフェンダー」タイプが多く、「硬い盾役が敵の攻撃を引き付け後方から射撃ユニットで殲滅」という基本的フォーメーションに忠実な構成となっている。
接敵まで姿を隠し敵に狙われない「ステルス」能力と、初撃のみ特別な攻撃を加える「ファーストアタック」が特徴的。
また機銃掃射や爆撃など指定位置に範囲ダメージを投射するスペルを多く有し、敵後方への対応力に優れる。
多くのカードを異種にも提供しており、異種からも少数の供給を受ける。

異種

昆虫と軟体動物が融合したような外見の異星種族で、撃破した敵を味方に変える「マゴットクイーン」や自軍タワーにダメージを与える代わりに性能の高い「ソウル」系ユニット、自軍タワーHPが30%以下でないと性能が下がる「アボミネル」など、エキセントリックなカードが多い。
ディフェンダーに乏しい構成で防衛にはやや難があるものの、攻撃毎に回復する能力によってスペック以上の耐久性を発揮する。またデバフ系能力と除去スペルが充実、特に全カード中最大のコストを持つ「コントロール」は効果範囲内の敵ユニットを奪って我が物とする強力なカードで、これ1発で勝負が決まることも珍しくない。
少なからぬカードを共和国に依存しており、特にレジェンドユニットについては異種独自のカードを1種しか持たない。

獣族

獣人を中心とした魔法系種族。ユニット生産建物と回復系スペルが充実しており、手数での攻めに優れる。また持続時間の長い範囲ダメージスペルや強力な範囲攻撃ユニットも取り揃えており、乱戦には強い。
一方では全種族で唯一、除去系スペルを持っていないため、敵の大型ユニット対策が大きな課題となる。
共有カードでは多くを帝国に依存している。

帝国

魔法系の人類種族。自軍の他ユニット召喚をトリガーとして能力が強化される「センサー」能力持ちのユニットが多く、小型ユニットを次々に召喚して互いの能力を強化できるのが特徴。
またユニット生産系建物やバフ系・妨害系スペルも充実しているため、手数で攻めつつバフをかけて一気に削るような戦い方が得意。
全カード中最大コストのレジェンド「ヤコブ」はハイスペックなだけでなく範囲攻撃によって手数で削らせず、敵が召喚する度に貫通ダメージを放つためユニット追加で応戦されにくく、しかも味方を強化までするという構成で、これだけで勝負が決まってしまうことも少なくない。ただし高コストのため除去されると痛い。

クラロワとの違い

ソウル・オブ・エデンとクラロワの主な違いは、種族以外にも
・戦場が分断されておらず、タワーは1本のみ
・ユニットの配置を分散可能
・デッキは30枚
などがある。

クラロワでは戦場が中央で分断され橋のみで繋がっているため、侵攻ルートが橋からの直線コースにほぼ限定される。そのため迎撃体制を整えやすく、橋を挟んで膠着しがちだが、ソウル・オブ・エデンは戦場がひとつづきなので進軍を阻むものがなく、防衛線が横に広い。そのため単純に言えば攻勢有利なデザインになっている。
その代わり、ユニットカードを出すとき「指でなぞった線に沿って均等配置」できるという特徴がある。たとえば横一線に出して足止めしたり、敵一体を囲んで集中砲火を浴びせたり、あるいは縦列を作って一度に接敵する数を抑えたりといった、柔軟な運用が可能で、これによって戦場全幅を効率良く活用でき、ユニット配置の駆け引きが広がる。
また1デッキ8枚のクラロワとは異なり30枚構成なので使用できるカード種類が多く、そのぶんだけ「引き運」には左右されやすく、また相手の手の内を読みにくい。

基本的なところでは同じでも、細部の違いが意外に大きく、異なったゲーム体験を生んでいるように思う。
クラロワは初めてという人にも、慣れている人にも、新たな体験としておすすめの1作。

*1:成立の経緯などからRTS(リアルタイム・ストラテジー)やTD(タワー・ディフェンス)と呼ばれることもあるが、一般にRTSは資源回収・建築・研究開発・生産などを探索・戦闘と並行して行なうジャンル、TDは敵の侵攻ルートに防御施設を建て進軍を阻むジャンルで、ゲーム性はまったく異なる

GoToの経済効果と救命効果を推定する

防疫の基本はまず「感染源との接触を断つ」ことだ。とりわけ、CoViD-19のようにワクチンなどの医学的予防手段がない感染症の場合、「人同士の接触を抑制する」以外に抜本的な対策手段がない。
しかし、人の接触は日常的な生活、とりわけ経済のほぼ全てにかかってくるものだ。それを抑制するというのは即ち「経済を抑制する」ことと同義となる。

病は直接的に人を殺すが、経済の崩壊もまた人を殺す。従って感染症政策は単に「接触を抑制して流行を抑え」れば良いというわけではなく、それに伴い不可避に発生する経済低迷をも同時に支える必要がある。
理想的に言えば、相当期間の移動抑制要請を出しつつ、その代わりとして「外出せずに用を済ませる」ための体制構築と、経済活動の停止による減収への補償を全面的に行なうべきということになるが、それはもちろん容易なことではない。
それにどれほどの予算が必要かを見積もるのは困難だが、日本はそもそも(この期に及んでまだ)金を出し渋っている感がある。言うなれば、感染抑制と経済維持を同時に行なおうというのではなく「最低限の出費でどちらかダメージの大きい方だけ」を、ある程度軽減するに留めたいと考えているように見える。

恐らくは予算を必要なだけ支出しまくった先に訪れるであろう、「金の刷りすぎによるハイパーインフレーション」あたりを警戒しているのではと思われ、それ自体が(そもそも長らくデフレ社会である日本では)杞憂に過ぎる気はするのだが、私も経済に明るくはないのでこのあたりは判断しかねる。
さておき、仮に「出せるカネには限度がある」のだとすれば、少ない予算を効果の高い部分に絞って投入するしかないということになる。それが感染症抑制にかかるあらゆる経済負担を支えるには不足である場合、どこにどのように投じるのがもっとも効果的だろうか。

(このような「金と命」の比較については抵抗を感じずには居られぬものの、比較せずして政策の是非は語れまいと考え、逢えて「経済と人命の比較」を試みる。)

経済的ダメージとその人的被害

CoViD-19疫禍は世界的に経済、とりわけ旅客・観光業などに大きな打撃を与えた。国境を越えての感染を防ぐため入国をシャットアウトし、帰国に際しても2週間の予防拘禁が行なわれる状況では海外観光などおよそ不可能だし、国内旅行についても一番の書き入れ時であったGWを緊急事態宣言で潰さざるを得なかったのだから、当然のことだ。
日本観光業の経済規模はおよそ22.5兆円規模だが、これが前年比で2%程度にまで落ち込んでしまった。この状況が長く続けば、観光業界そのものが全滅し、それに伴って日本経済自体も重篤なダメージを受けることが予想される。

経済ダメージによる「死者」とは、主に自殺だ(餓死など困窮の果ての死もあるが、多くは餓死に至るよりも先に自死を選ぶことが多い)。
20年ほど前、大型の不況が自殺者を急増させた時期があった。
現在の自殺者は年平均で2万人前後だが、平成10(1998)年に突如3万5千人規模へと跳ね上がり、これが15年ほど続いた。前年の北海道拓殖銀行および山一證券破綻が引き金となり、それまでの貸し付け体制から貸し渋り貸し剥がしに転じたことによる影響と見られる。言うなれば、経済の低迷が年間1万5千人の「超過死亡」を発生させてきたということだ。
98年〜2002年までの間、平時1万を下回っていた倒産件数は2万件近くにのぼり、負債総額は平時1兆円程度だったものがピーク時では24兆円にも達した
これらを大雑把に纏めるならば「23兆円の負債増加が5千〜1万の超過倒産と1万5千の超過死亡を15年にわたり発生させた」ということになろう。

22.5兆円がゼロ近くまで落ち込んだという観光業界への打撃は、この時のダメージに等しい規模である。つまり、何の手も打たなければ再び1万5千人/年の超過自死が懸念される。

この危難に対して政府は観光振興策「GoTo」キャンペーンを打ち出した。
これは予算1.3兆円あまりを投じ、1泊2万円を上限として費用の一部を国が補助することにより、最大で2.5兆円程度の経済効果を発生させようという目論見だ。
政府発表に拠ればGoToキャンペーンの利用総数は、7月下旬の開始から11月半ばまでの時点でのべ5千万人以上。旅行代金のうち政府が補助する35%分の支出総額は3000億円程度とのことで、観光業界の売上はおよそ1兆円前後と見込まれる。

率直に言えば「焼け石に水」である。
無論「やらぬよりマシ」であることは疑いないものの、その効果は本来の経済規模に比して1/20にも満たないものに過ぎず、業界を支えるにはとても足りない。元々は終息後の経済復興策として考えられていたものを渦中での補填に転用したものだから、そもそも目的と手段がうまく噛み合っていない。
経済打撃による自殺者の増加が負債額とリニアに比例するものかどうかは不明だが、そうと仮定すれば23兆円あたり1万5千人の超過自殺者を1兆円ばかり軽減するGoTo政策の救命効果は、およそ650人程度と見積もれることになる。
それでも、今ひとときの1兆円がその後10年以上にわたり650人を救うのだとすれば、もしかしたら6500人程度の救命効果が得られたのかも知れない。こればかりは今後を見守るしかないが。

感染拡大への寄与とその経済的被害

一方で、GoToキャンペーンによる移動の奨励は国内の感染拡大を促進することが強く懸念される。冒頭で述べたように、現在のところ「人同士の接触を抑制する」以外に効果的な対策手段がない以上、移動を奨励し接触機会を増加させる政策は(経済的には望ましくとも)防疫的には最悪の部類だ。
実際、GoToキャンペーンが発表された7月頃を境に日々の感染者数は増加に転じ、また利用者の一部で感染が確認されもした。東大の研究事例では、GoToキャンペーンを利用した人がしなかった人に比べCoViD-19の疑いがある症状を2倍前後発症しているなど、キャンペーンが感染拡大に寄与したことを示唆する傍証はいくつもある。

GoToキャンペーンの開始以前から、緊急事態宣言の解除に伴い通勤・通学が再開され鉄道や商店にも客足が戻り、接触は平時の7〜8割程度まで増加していた。当然ながら感染もそれに応じて拡大してゆく。
そうした旅行以外での感染と、GoToによる移動人口増加での影響を切り分けるのは簡単ではない。
しかしながら、感染者数の変動をグラフで追ってゆくと、5月のGWを潰した緊急事態宣言によって、一旦はほぼフラットに近いところまで抑え込まれた感染者数の増加が、7月の後半から急激に増加する様子が伺われる。
通勤量は緊急事態宣言の解除後ほどなく宣言前の8割程度までは戻っているが、それによって感染の増加が見られるのは最も多くの通勤人口を抱える東京都周辺部のみで、その他では5月末のクラスター発生による増加の影響が見られる福岡県と、最初期に感染の広まりが確認されて以降、押さえ込みに苦慮している北海道だけ。他の府県では通勤が顕著に感染を広げた形跡がなく、それが突如として7月半ば頃を境に、全国で一斉に感染が増加している。
GoToの開始そのものは7月22日であるため、単純に「GoToを利用した人たちによって感染が増えた」のならば、その影響は利用日から潜伏期間の分だけ(5〜14日程度)後にずれ込むことになるはずだ。これを以て「GoToの影響ではない」と主張する向きもあるが、実際にはGoToは開始以後にのみ移動を増加させるわけではない。「国が旅行にお墨付を与えた」こと自体が、観光を中心とした遠方への外出をGoToに先立ち増加させたと考えられる。

単純に考えれば、GoToが行なわれず粛々と平時の通勤通学のみを続けていたのならば感染の増加はフラットに近い緩やかなものに留まり、今に至るもせいぜい3万に届くかどうかといった程度に抑えられていたかも知れない、と考えればGoToは感染を10倍にも引き上げてしまったことになる。
とはいえ警戒を長く続けることは難しく、どうしても気が緩む……というか、時には張り詰めたものを緩めることも必要になってくる。だとすればGoToがなかったとしてもフラットなまま抑え続けることは困難であり、ある程度の増加は避け難くもあっただろう。
そしてまた予測を困難にするのが、「感染者が増えるほどに増加割合も高まってゆく」という特性である。今の20万人がどこまで増え続けるのかによっても、GoToのもたらした影響の大きさはまったく変わってくる。

感染は、増えるよりも抑える方が時間がかかる。そして7月からの第二波は、抑え切れないままに10月頃から再び増加に転じ、現在の波がある。これが今すぐ沈静化に向かうとは期待しにくく、現在の増加割合のままであと1ヶ月も続くとしたら感染者数の累計は40万にも届きそうだ。

とりあえず、GoToによる影響を暫定的に、「感染者数30万人の増加」と仮定しよう。
CoVid-19の世界的な致死率は約2.2%だが、今のところ国内での致死率はそれより低く1.3%に抑えられている。これはひとえに医療現場が頑張って持ち堪えてくれており、他国で見られたような医療崩壊を発生させていないからだろうと思われ、今後もこの死亡率が保たれる保証はどこにもないが、さておき死亡率が変わらず1.3%のままで感染者が30万人増えるのだとしたら、死者はおよそ3900人増加することになる。死亡率が今後他国並みの2.2%にまで引き上がってしまうようであれば6600人程度。
ただ、感染者の増加に比して死者は(今のところ)大きな増加は見られず、もしかしたら死亡率はもっと低くなるかも知れない。それでも、感染者数がもっと増加するならば人的被害はそれに応じて更に増えるし、死を免れたとしても重い後遺症を引き摺る人も少なからず発生するから、実際には死者以上の「超過被害」があるわけだが。

功罪の比較と不足分

これで、(仮定に仮定を重ねた不確定な推計ではあるが)GoToのメリットとデメリットを、「人的被害」という同一単位系の上で比較できる情報が出揃った。GoToが救うかも知れない命は1年あたり650人ぐらい、もしかしたら10年前後続くかもしれないので6500人ぐらい。対してGoToで失われるかも知れない命はこの1〜2年内で3900〜6500人ぐらい。意外にも、「GoToで救われる数」と「GoToが増加させる死者数」には大きな差がないようだ。

ただ、これはあくまで「GoToをやって観光業界を救うのか、GoToをやめて感染被害を救うのか」という二択を前提としての比較である。
が、そもそも「どちらも救う」という選択肢はないのだろうか。単に「観光はさせないが観光業は延命させる」ことはできないのか?

GoToによる観光経済への直接的な寄与は今のところ1兆円程度に過ぎない。その程度の金額であれば、補正予算予備費として確保した10兆円の中だけでも十分に賄うことが可能だ。業界に直接給付してしまえば、なにも旅行を奨励して感染を広げる必要はない。それを「国の出費は1/3」に抑えようなどと考えるから、被害軽減のために被害を広げるようなおかしなことになる。
そして、業界を支えるにしては1/20程度の支援はあまりに非力だ。全額補償とは行かぬにせよ半額ぐらいは出せないと、ごく小数の大手が屋台骨のみ生き残って中小や大勢の業務従事者が失われる(そして来年以降に観光を復興するだけの体力が残されていない)結果になるのではなかろうか。
逆に、観光業が無収入でも当面継続できるだけの支援が可能であれば、移動を奨励して感染を拡大するような政策を打たずにこの局面を乗り切ってゆけるはずだ。

医療現場は既に限界近くまでフル稼働しており、いつ何時崩壊してもおかしくない状態である。諸外国の累計死亡者数を見ても、医療崩壊を引き起こしたら超過死亡はとても数千では済むまい。
そもそも人員の不足を抜本的に解消できる手段がないためジリ貧ではあるのだが、せめて最前線で死力を尽くしている人たちの心が折れぬよう、支える必要がある。
現状できる範囲で最大限の支援は(必要物資の補充と共に)一人一人への手厚い金銭的手当だろう。厚労省はこれまでに5〜20万円ほどの一時金は給付したようだが、継続的に奮闘する彼らを支えるには到底足りまい。
国内の医療従事者数は医師およそ30万人、看護師・准看護師で130万人、歯科医師・薬剤師などあらゆる医療従事者合計で200万人ほど。200万人に一人あたり平均10万円を給付するとして2千億円、毎月給付なら年間で2.4兆円。これも予備費だけで賄い得る金額だ。

予算は使ってこそ意味がある。「使い切らないと減らされる」と無駄に出費を増やして調整するのはどうかと思うが、確保するだけして後生大事に溜め込んでも意味はない。
医療も経済も、被害が小さいうちに食い止めなければ、 手を拱くほどに被害は拡大し、長く爪痕を残す。今出さずして後はないのだ。