Amazonのデジタルコンテンツが保証期間1年(かもしれない)件

はじめに:この件、予想外に拡散されてしまったが私の誤認およびサポートとのやりとりの齟齬による誤解の可能性があるので後半を確認されたい。

発端は、2018年発売のSF小説を再ダウンロードしようとしたことだった。なぜかKindleのライブラリ内を検索しても当該作品がヒットしない。

買わなかったはずはない。確かに読んだ記憶はあり、しかし私は2013年にKindle導入して以降、「電書であるものは紙で買わない」ようになり、また借りに行くより買った方が早いので図書館も利用しなくなって久しい。
2015年には講談社が「書籍と電書を同時に発売」宣言したのを皮切りに各社とも電書を同時発売するようになってゆき、2018年頃にはすっかり同時発売が当たり前になった。同作もKindle予約購入で発売当日に入手した1冊だ。
購入履歴にも残っており、商品ページにも「お客様はこの本を購入しました」と出る。しかしライブラリにはなぜか表示されず、「コンテンツと端末の管理」で検索しても出てこなかった。

この作品は当初ハードカバーで出版され、その時点で電書を購入したのだが、のちに文庫化された際に上下巻に分割され、その形で再電書化されている。
通常、書籍から文庫化などされた場合でも「同じ本」として扱われることが多いようで、表紙が差し替えられたりはするものの読めなくなるようなことは経験がない。しかし2冊に分割されたとなると同じ本としては扱えまいから、書籍版が絶版となってkindleもデータが消されてしまったのかもしれないと考えた。
電子書籍は厳密には「販売」ではなく、ユーザはデータそのものの所有権を持たない。そのため販売側の都合によって購入した電書が読めなくなるケースがあることは認識していたが、まさか再読したいぐらい気に入っている本がそれに該当しようとは思わなかった。
1冊だけならば諦めもつくが、この本から連鎖的に思い出された別作家の何作かを調べたところ、同様にkindleで出てこなかったものが複数あったため、慌ててAmazonのサポート窓口を探した。

チャットで状況を説明する。
しかし最初の担当者は「購入した商品がKindleのライブラリや『コンテンツと端末の管理』に表示されない」旨とそうなった注文番号(の一部)を伝えた後なんの応答もなく、そのままタイムアウトしてしまった。判断しかねる内容で相談により結論が出なかったのだろうか。
そのまま次の担当者がログインしてきたので同じことを説明したところ、「過去1年以内に購入されたものに限り復元および再送ができるが、2018年の購入であるため不可」との回答を得た。
「1年以上経過したコンテンツが表示されない場合は再購入するしかないのか」「そうです」とのことであった。

以上が「Amazonのサポートから得た回答」であるが、これが「Amazonの公式見解」とは限らない。あくまで「サポートセンター(の、担当者)の見解」である。まあ「半公式」ではあるけれども、正確な回答でない可能性はある。
Amazonのチャットサポートは24時間対応だが、国内に24時間体制のサポートセンターがあるのではなく世界中の複数地域にサポートセンター(たぶん委託)があり、今この時間に応答できるところが応答するような仕組みなのではなかろうか。
今回の担当者は名前から判断するにアラブ系の方かと思われるが回答は明瞭な日本語の文章で、これが「日本向けサポートは日本語に堪能な担当者が行う」のか「非常に高度な機械翻訳処理を挟んでいる」のかはわからない。パッと見には機械翻訳を挟んでいるようには見えない自然なやりとりに思われたが、実際にはなんらかの齟齬を生じている可能性も否定はできない。

ともあれ、本当に「購入から1年以内しかコンテンツの維持が保証されない」のだとすれば由々しき問題である。今回はKindleのコンテンツについてのサポートを受けたが、窓口はPrime VideoやAudibleなどデジタルコンテンツ全般を担当しているらしく、他のデジタルコンテンツすべてに及ぶ可能性がある。

そもそもKindleは購入したデータをすべて保持し続けるように設計されていないものと思われる。
2014年1月現在、発売されているKindle端末の中で最大容量はおそらく64GB。電書データは活字だと5MB程度(200冊/1GB)、モノクロ漫画だと1冊50MB前後(20冊/1GB)なので64GBならば理論上は漫画で1200冊程度までは保持できる計算となる。タブレットならばもっと容量の多いものもあるが(iPad Proなら最大2TBがラインナップされている)、専用端末でないものはKindle以外にも写真や音楽、ゲームなどに容量が割かれるので、実際に保持可能な量はそう大きくは違わない。
そしてKindle内のデータはバックアップできない。端末を入れ替えたり、不具合で初期化する場合などはデータを復元してもKindle内のコンテンツは空で、都度ダウンロードし直すしか方法がない。最初からそういう運用なのだ。

またKindleアプリは経験的に、2000冊程度を上回ると動作が怪しくなってくる傾向がある。ページがうまく表示されなくなって白いままになったり(ピンチイン/アウトなどで再描画させると正常になるが、ページをめくるたびこれをやる羽目になる)、見開きで左右に同じページが表示されたり。したがって端末に十分な空き容量があったとしてもライブラリ内の全てのコンテンツを端末内に保持できるとは限らない。
こうした現象について過去にサポートを受けたが「コンテンツを削除してデータ量を減らしてくれ」ということだった(これはおそらくKindleに限らず他社電書でも似たようなものだと思われる)。

「2000冊もあれば大丈夫だろう」?
たしかに、総務省の2017年統計に拠れば、世帯あたりの平均書籍購入額は1年で1万円程度だそうで、そういう人ならば200冊もあれば多い方なのかもしれないが、こちとら本に埋もれて生きてきた本の虫共である。なんなら学校図書室の年平均購入費用より本にお金を使っている。2000冊でも収まるものではない。
そういうヘヴィユーザとしては、買ったものを保持し続けられない可能性は看過できない。

まず、先に重要な点を確認しておく:結論から言うと、当該コンテンツは再ダウンロードできた。
当初はライブラリに表示されず、検索しても出てこず、Amazonの「購入履歴」から「コンテンツと端末の管理」で検索してもヒットしなかった(サポートにもそう伝えた)ので消えてしまったのかと考えたのだが、履歴を150ページほど遡り購入時期の履歴に辿り着いたところ、当該作品が出てきた。
そこから端末への配信を行ってみた結果⋯⋯なのかどうかは謎だが、とりあえずKindleのライブラリでも再検索するとヒットし、ダウンロードできたため私個人としては当初の問題は解消した格好である。私の勘違いだったのであれ、なんらかの不具合だったのであれ、ひとまず2018年の書籍が文庫化によって消されたようなことはなく、データは再ダウンロード可能であった。

ただ、「1年以上経過したデータが消えたら買い直し」というサポート見解がAmazon公式なのか、という問題は残る。
こちらは公的な再回答を得ていないのであくまで憶測となるが、サポート担当者の勘違い──というか、私の説明を誤読したという線が濃いのではないかと考えられる。

当初問い合わせを行った時点では考えもしなかったし、私もそのように伝えはしていないのだが、ライブラリの管理上コンテンツの削除には「Kindle端末からの削除(ライブラリには残り、随時再ダウンロード可能)」と「ライブラリからの永久削除(購入した事実は残るがコンテンツを手放す。ライブラリにも残らず再ダウンロード不可能)」があり、後者を復活させる(間違ってライブラリから削除してしまった時の救済措置)期限が「購入から1年」ということではないか、という指摘を何人かの方から頂いた。

サポート担当者が(私が説明したつもりの)「端末から削除されたコンテンツの再ダウンロード」を「ライブラリから削除したコンテンツの復活」と勘違いした、という可能性は否定できない:というのも、チャットのログを読み返すと「削除されると、現在は復元できません」「本は永遠に残りますが、削除すると消えます。1年前の本しか回収できません」という表現があるのだ。
私はこれを(自らの質問趣旨に沿って)「端末から削除したコンテンツを再ダウンロードできることが保証される期限が1年以内」と読んだが、サポート側は「ライブラリから削除した本を購入履歴に基づき取り戻す期限が1年以内」と回答してきたのではないかと、一晩経って/コンテンツが無事ダウンロードできて冷静になった今としてはそのように感じられる。

だとすれば「コンテンツのダウンロード保証期限は1年」というのは誤解であって、「ライブラリから削除してしまった場合でも」1年以内の購入履歴であれば復活対応してもらえるが、1年を過ぎたものは買い直すしかないということになり、おおよそ納得できる話ではある。

(結)

現在のところAmazonへの再確認はできていないため、明確な結論はないが、この件でAmazonに問い合わせをなさった方がおられるので引用しておく。