電書雑誌に必要なもの

kindle月刊スピリッツが無料だったのでダウンロードしてみた。
個々の作品への言及はさておき、「雑誌としての機能」が気になったのでちょっと書く。

普段、雑誌を読むに際し(少なくとも私は)全部通読することはない。ざっとめくって絵柄で作者を見分け、好きな作品と、知らないけどちょっと引っ掛かった作品を読んでゆく。他は無視する。
これが、電書では難しい。1ページづつめくって順に読むことにかけては充分に最適化されていても、それ以外の用途を想定していないように思われる。

いちおう、スライダーによるページ送りや指定位置へのジャンプができないわけではない。でも、これも欲しい機能とは少々異なる。別に「何%位置から読みたい」わけではなくて「目当てのコンテンツを見付けたい」だけなのだ。
kindleだとメニューに目次ページへのジャンプ機能が用意されているので、(電書データ側で目次を用意してあれば)作品冒頭への直接移動が可能ではある。ただ、何冊か確認した限りでは目次を用意している雑誌はほとんどなかった。大半は印刷用の版下データを電書に変換しているだけのようで、個別に手をかけて目次データを埋め込むことにあまり意義を見出していないのかも知れないが。

まあ、たとえ目次があったとしても、それだけでは電書雑誌に期待する要素を十全に満たしているとは言い難い。様々な作品が一同に介し、知らないものに触れられるのも雑誌の良いところで、目次から知っている作品だけを拾う読み方ではそういう期待ができない。是非とも「雑誌全体をざっくり俯瞰する」機能は実装して欲しいところだ。何らかの操作による高速ページめくりの実装でも良いし、あるいは写真管理アプリなどでよくあるようにサムネイルをずらりと並べる感じでもいいかも知れない。

わざわざ読もうとする雑誌なのだから好きな作品が少数であれ含まれるのだろうと思うが、それ以外のものは「興味ない」ならまだしも、積極的に「嫌い」なものも相当数入っているのではなかろうか。あるいは価値判断はどうあれ「この場で目にするのはちょっと」という作品だってある(エロとか)。できれば、俯瞰中も含めて指定コンテンツを表示しないようにする機能もあるといいと思う:たとえば目次から作品単位の表示/非表示切り替えを設定できるとか。

ところで雑誌なので単行本と違って永劫にコンテンツが保持されなくてもいい。むしろ週単位月単位とかで「読み捨て」て、保持したいコンテンツは別途単行本で買ってもらう、という方が健全かと思う。
目次機能なども含めて、既存の電書フォーマットに載せるよりも専用アプリ化した方が扱い易いような気もする。ついでに定期的なコンテンツ更新機能も合わせて、更には作品単位での「購読」機能を持たせて有料で保存までできるとなお良い。kindleでは個別作品の「連載を販売する」試みが為されているが、それともまた別の連載購読モデルが成立するかも知れない(まあこれはこれで囲い込みとプラットフォーム分散が進んで困るので、その辺り統合する方法が欲しくもあるが)。

「理想的な電書漫画雑誌」を妄想してみる

アプリの初回起動時点では、掲載作品がすべて表示される。読んで気に入った作品は上へスライドすると「保存」、読みたくない作品は下へスライドすると「消去」。次号以降は、消去しなかった作品の更新分(前号には掲載されなかった作品を含む)だけが表示される。ただし既に「消去」された作品の作者による新作は、2作目については表示するが、両作とも消去された場合は以降新作表示もしない。
マネタイズについては、通常の雑誌同様に毎号をアプリ内課金で購入して読む方式とするか、あるいは「最新号を読むだけなら無料」にしておいて、「保存」に対して課金するのでもいい。ただ最低課金額が100円だと毎話保存課金では単行本より割高になる感があるので、「保存も無料だが単行本1冊分相当溜まると『過去分を読むには電書購入を』」という形でもいいかも知れない。

なんにせよ電書雑誌はまだまだ研究の足りない分野に思えるので、今後の発展に期待したい。