位置情報ゲームのためのモバイルバッテリー選び

社の健康診断でもっと運動せよと言われたので、数年ぶりに位置情報ゲームを始めた。
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プレイヤー自身が移動する必要のある位置情報ゲームは、出不精に移動の動機を与える面に於いて非常に優れており、運動不足解消などには適している。
反面、ゲーム内の状況が外的要因に左右されること、逆にゲーム内から外への干渉は不可能であることからバランスコントロールには難があり、展開が単調になりがちで飽きやすいといった弱点もある。事実これまでにプレイしてきたタイトルはいずれも最長半年程度で離脱してしまった。本作はどれぐらい保つだろうか。

さておき、位置情報ゲームを遊ぶにあたり、必然的に生じる問題を解決せねばならない:連続プレイ可能時間の短さである。
GPSで頻繁に測位を繰り返すせいなのか、それとも画面を常時点灯してタッチ操作を繰り返すからなのか、位置情報ゲームは全般に電力を多量に消費する傾向がある。

信長出陣では通信データ量をかなり抑えているようで、1時間の通勤時にかかるデータ量を確認してみたが60MB程度と、通信負担はかなり軽い。なんならAppleMusicなど音楽ストリーミング再生の方がよほど通信量は多い。
また「委任」機能を利用すればプレイヤーが操作せずとも自動で資源回収や領地登録が行われ、省電力モードでは画面も暗くするので電力消費はかなり抑えられる。
それでも、ゲームを遊ぶ以上ずっと委任で省電力モードのままというわけには行かず、たびたび確認し操作せざるを得ないため、どうしても電力の消費は激しくなる。

私はiPad Air4を使用しているので、連続駆動時間は公称で9時間ということになっている。実際、普通にネットなどを使用する使い方であれば1日持ち出してもバッテリ切れを起こすようなことはまずない。
しかし位置情報ゲームをプレイすると、およそ2〜3時間程度でバッテリ切れになってしまう。それほどまでに、位置情報ゲームプレイ時の電力消費は激しい。
自宅周辺などを徒歩で散歩する程度なら十分か知れないが、位置情報ゲームは既に訪れたことのある場所よりも新たな場所へ行った時にこそ沢山の特典が得られるように作られていることが多い。特に信長出陣の場合は「エリアの占領」が主要なリソースとなっており、それには新たな場所を実際に訪れる必要がある。
つまり家の周囲を巡るだけではなくて、なるべく遠出したくなるようにできているということなのだが、となると3時間程度の稼働時間では往路の移動だけでバッテリーを使い切りかねない。
特急車両のように移動中の充電が可能ならば良いが、それでも到着後はそう頻繁には充電できない環境となる。安心のためにも、モバイルバッテリーを携行しておきたい。

必要なバッテリー容量を考える

モバイルバッテリーの選定にあたり、まずは端末のバッテリー容量を確認する。
iPad Air4のバッテリ容量はおよそ7500mAh。miniだと5000、12.9インチのProだと11000mAhほどあるらしい。iPhoneはSEが2000、通常のサイズだと3300、大型で4300mAhほど。端末が小さいほど画面も小さいため消費電力も少なめであり、容量ほどに稼働時間の差はないが、それでも大型端末ほど長時間駆動であるのは間違いない。
プレイした時間とバッテリの残量から時間あたりの消費電力を求めると、私のiPad Air4は容量7500で平均2時間半であるから、1時間あたり3000mAhぐらいを消費している計算になる。

次に、延長したい稼働時間を見積もる。
昼頃に家を出て夕方に帰るとしても5〜6時間ぐらい。朝から出て日暮れまでだとすれば8〜10時間ほど。本体のみで2時間半だとすれば、バッテリーで+3〜8時間ほどを保たせる必要がある。
もっとも、途中で電源を借りられるなら条件は緩和されるし、位置情報ゲームのためだけに出かけるのではなく観光の合間にプレイする程度だとすれば消費ももっと緩やかかも知れず、条件は色々に変わるが、少なくとも2〜3時間程度の延長は欲しいところだ。
1時間あたりの消費電力と、延長したい時間を掛ければ必要な追加電力がわかる。私の場合、1時間あたりの消費量が3000mAhなので、3時間延長するならば9000mAhを充電する必要がある。

モバイルバッテリーには容量が示されているが、実はこれは「このバッテリーが他端末へ給電できる容量」ではなく、バッテリー自身の充電容量である。
バッテリーによる給電の効率はだいたい6割程度とされるので、この容量に0.6を掛けたものが実際に端末へ充電可能な分量となる。逆算すれば、バッテリーの容量は端末に充電したい容量の1.7倍ほどのものを用意する必要があるということ。たとえば3000mAhの給電を行うためにはバッテリーの容量は5000mAhが必要となる。
一般的なモバイルバッテリーの容量はだいたい3000〜5000mAh程度。大容量を謳うものでも10000mAh止まりであることが多い(更に大型な15000〜20000mAh以上のバッテリーも存在するが、相当なヘヴィデューティ向けであり種類は多くない)。また、当然ながら容量が大きなバッテリーほど重量も堆積も嵩み、高価になる傾向がある。

容量以外の機能を考える

上では必要なバッテリー容量を確認したが、バッテリーの性能とは容量だけではない。そのほかの要素も見てゆこう。

給電出力

バッテリー容量が「貯められる電気の量」なら、出力は「一度に出せる量」だ。いかに大容量のバッテリーであっても、出力が小さいと充電はゆっくりとしか増えない。
特に、iPadのように容量も消費量も多い機種の場合、出力が小さいと消費速度に対し充電速度が追いつかず、ぜんぜん充電できない場合もある。

細かい話はさておき、雑には「出力のW数が大きいほど高速充電できる」と思えばいい。ただ、バッテリーによっては接続方法ごとに制限が存在する場合もあるので注意。一般的に、USBのポートがType-A(長方形)のものだと出力が低い場合が多く、Type-C(長円形)のポートを利用した方が安心。
なおメーカーによっては出力をWではなくA(電流量)とV(電圧)で表記している場合もあるが、W=AxVなので簡単に計算できる。

バッテリー充電速度

これはバッテリーから接続機器への充電ではなく、電源からモバイルバッテリーへの充電速度。
どこかで電源を借りる場合、外ではバッテリーから端末に充電し、電源からはバッテリーへ充電することになるかと思うが、そうそう長い時間充電しているわけにも行かないので、バッテリー自体の充電も早い方が好ましい。
こちらは「入力」と書かれている場合が多い。出力と同じく、Wが高いほど高速にチャージできると考えて良い。

入力ポート

「モバイルバッテリーへ充電するときにどうやって接続するか」。
USBポートからの充電である場合、「モバイルバッテリーに充電するための充アダプターが別途必要」であることに注意。
ACプラグを内臓しておりコンセントから直接充電できるタイプも存在し、旅先での取り回しではこの方が好ましいが、大容量のモデルでコンセントプラグ内蔵のものは少ない。

パススルー機能

モバイルバッテリーは、自身への充電中には接続した端末への給電ができないことが多い。そのため「モバイルバッテリーを使い切って本体の電源も切れそう」な状況だと、途中までバッテリーに充電しては抜いて端末を充電して⋯⋯を繰り返さざるを得なくなる。
パススルー対応バッテリーは、モバイルバッテリー自体への充電とバッテリーから接続した端末への充電を同時にこなせるので、電源を借りて充電する時などにはこの機能があると頼もしい。

大きさと重さ

外出するのに、荷物はなるべく軽くコンパクトな方がいい。バッテリー容量が多いほど安心ではあるが、そのぶん重く嵩張る。ガチ勢は複数のバッテリーを持ち歩くとも聞くが、私としてはなるべく軽いもので済ませたい。
重さは単に「軽いほど良い」けれど大きさは荷物にもよる。薄型の方がいいのか筒状がいいのか、

発熱

モバイルバッテリーは充電/給電中少なからず発熱する。ほんのり温かい程度ならば良いが、中には触っていられないほど熱くなるものもある。ハイパワーなバッテリーほど熱くなりやすい。
こればかりはスペックに現れないので、使用者のレビューが頼り。

実機レビュー

現在手元にあるモバイルバッテリーは以下の2機種。

エレコム DE-AC07-10000

容量
10000mAh
サイズ
80x90mm、厚さ34mm
重量
260g
出力ポート
USB Type-Ax1(12W)、Type-Cx1(12/20W)
バッテリー充電時間
4.5時間

本体表面ははシボ加工が施されており、滑りにくく、また指紋などが目立たない。
「ELECOM」のロゴを正面とすると、左側面にUSB Type-AとType-Cの2ポート、右側面上端にACプラグ。裏面には「─・・・・」というインジケータが目立たぬよう配置され、残量に応じて光る。電源ボタンは金色で上品な仕上がり。
大容量バッテリーの中では控えめな10000mAh、重量・サイズには余裕を持たせたつくりに思われる。そのぶん動作には安定感がある。
給電は20WなのでiPad用としては出力がやや控えめで(iPadの急速充電は30Wまで対応している)、充電はあまり早くない。とはいえ消費に追いつかないほど非力ではないので十分役には立つ。
使い切った時点での表面温度は45度と、許容範囲。

中国製大容量モバイルバッテリー

容量
15000mAh
サイズ
84x84mm、厚さ30mm
重量
240g
出力ポート
USB Type-Ax1(12W)、Type-Cx1(12/20W)、内蔵ケーブル(Type-C/Lightning)
バッテリー充電時間
4.5時間

メーカー不詳。なぜかAmazoには同じ写真でいくつかのブランド名が存在し、価格もまちまち。レビュー写真を見る限り製品としてはほぼ同じものとは思われるが、表面のプリントが30W°だったり35W°だったりと、細部には違いがある。中身が同じかどうかも保証の限りではない。

本体にはType-Cケーブルが内蔵されている。横向きにLightning端子も飛び出ているのはだいぶ格好悪いが、別途ケーブルなしにも充電可能なのは便利ではある。
側面の端子はType-AとType-Cが1つづつ。Aには出力、Cには入力と書いてあり、バッテリへの充電の際はACプラグかCを使えということなのだろう。実際にはCは充電専用の端子というわけではなく、機器に繋げばちゃんと出力もしてくれる。
電源ボタン上にはインジケータ、7セグ3桁によりバッテリ残量を1%単位で表示してくれるのは悪くないが矢鱈と明るく、充電中は点灯しっ放しなのでちょっとウザい⋯⋯明度を落とす方法を考えたい。

購入時点でバッテリ残量91%で届いた。満充電状態で出荷されているものと察せられる。
そこからACプラグをコンセントに差し込んで、100%になるまで約2時間かかった。充電速度が一定であるとすれば満充電に20時間かかってしまうが、恐らく充電率が低い間は急速に、いっぱいになってくると速度を落とすのだと思われ丸一日がかりということはない。とはいえ、容量が大きい分だけ充電にはやや時間がかかる様子。

iPadの内蔵バッテリ単体での稼働時間とバッテリ接続時の追加稼働時間から充電量を推計し、総容量と比較してみたところ充電できた量はおよそ9000mAh、充電効率が60%とすれば総容量は15000。スペックシート通りの性能を持っていると評価できる。ELECOMのものとほぼ同じサイズで1.5倍の容量というのはなかなか優秀ではないか。

ただし発熱は相当なものだった。放射温度計で表面温度を計測してみたところ55度にも達しており、低温火傷を発生させるに充分な温度であったので注意されたい。