iPadの利用価値

iPadに強い魅力を感じていない。理由は明白で、「自分のライフスタイルで利用シーンを想像できない」からだ。
iPadは一体どんな状況での利用を想定しているのか。それは私にとって必要なものか。

電子ブックリーダー

iBooksという電子ブック閲覧アプリ、iBookstoreの開設からしてもAppleiPadの目玉機能として電子ブック閲覧を据えているのは明らかだ。
この分野での利用価値はひとえに「読みたい本が入手できるかどうか」にかかっているのだが、日本に於いてiTSでさえ未だに楽曲を提供しない大手レーベルがあるなど「自社で囲い込みたい」という欲求が強く、恐らくはこれが書籍についても障害となるだろうと見ている。特に日本の書籍流通は2社の取次が牛耳っており、これを中抜きする形となるだろうiBookstoreへの抵抗は強そうだ。
ついでに言えば私の趣味はかなり偏っており好みの本が絶版/読んでいる雑誌が休刊になり易いなど、新商品から順に取り扱うだろうiBookstoreでまともに買えるようになるのは随分先のことと思われる。この点、自分のコレクションを取り込んでライブラリを用意できたiTunes/iPodとは状況が全く異なる。


また、書籍は無料貸出を行なう図書館という大きなライヴァルを抱えているため一般に予算枠が少ない。その点ではレンタル業の盛んな音楽に於いても同じことが言えるものの、こちらは入手経路の如何を問わずライブラリに取り込みさえすればiPodの利用価値を高めるのに対し、電子書籍に関しては手持ちの本や借りものを取り込んで済ませるわけには行かず、すべてストア経由での購入になるだろうことを考えると購入率、ひいてはiPadそのものの利用率は決して高くないだろうと思う。
Amazon同様に安価提供を前提とするにせよ、本1冊に1000円前後かけるとなると購入数を低くせざるを得ず、それはそのままiPadの商品価値の低下に繋がる。安価提供のもので1冊300円としても、週刊誌の漫画新刊と概ね同程度。安いという感覚はない。
今やレンタルコミックが1冊100円程度の時代、いっそ115円で一定期間レンタルを始めてはどうか。それなら漫画20冊一気読みでも2300円。気軽に利用できるし、Wi-Fi/3Gで24時間ダウンロードの即時性も活きる。延滞がないのも良い。
本当は図書館の無料一時貸出に対応できると良いのだが。

映像ビューア

大型のiPod touchと考えれば、必然的に「どこでも映画ビューア」としての活躍が期待される。iPhoneの小さな画面ではなく個人携行用としては大き目の画面で見られるのは悪くない。ただ映画は音楽のように(レンタルにせよ購入にせよ)DVDからリッピングとは行かず、原則としてiTS経由で購入することになる。この辺、映画好きの人がどうしてるのか知らないが、私の場合はコレクションに動画が一本もないので写真ビューア以外には使いようがない。
そうなるとTVチューナでも内蔵するか、あるいはAppleTVと逆にHDDレコーダに撮り貯めた映像をiPadに書き出すようなことでもできない限り、利用価値があまりないことになる。

Web端末

ネットブックの市場を狙う」などと言われているのはこの利用形態だろう。10インチ程度のディスプレイ、1.5ポンド厚み0.5インチの薄型軽量ボディ、500ドルという価格帯。確かにネットブックと競合する。もっとも、ネットブック利用者の半数以上を占めそうなビジネスユースにはイマイチだが、iWorkiPad対応は(どうしてもMS Officeしか認めないなどの拘りがない限りは)その方面でも悪くはなさそうだ。


我が家で利用価値があるとすれば主に子供用のWeb端末的な用途だろう。ただ、それにはFlash非対応が痛い。YouTubeもニコ動も専用アプリで見ることは可能だが、使い勝手は限定される。それともiPad用には改善されたアプリが提供されるだろうか。
Flashを前提としたWebデザインに関しては、むしろ減少携行にあるという印象がある。いやプローモーション目的などではダイナミックな動的コンテンツとしての価値が未だ高いものの、20世紀末のように「とりあえずFlashでなんか動くのが最先端」みたいな馬鹿な状況は明らかに減っているし、ちゃんとした制作会社ならFlashが使えない環境にも配慮した構造を用意してくる。「どうしてもFlashでの演出が見たい」のでもない限りは必須というわけでもなくなった。


余談ながら我が家としてはこのジャンルについてはむしろOLPCに期待しているのだが……日本での販売はまだか。電波法の絡みだかで難しいとか聞いたが。