Wii Uポジティヴキャンペーン

現在、Wii Uは我が家で最も稼働率の高いゲーム機である。次点は3DS。だいたい娘たちが一日中NewマリオUかニンテンドーランドをやっているし、Wiiタイトルも色々購入した(Wiiは所有していない)。
しかし世間での評価は決して高くない。いや、実のところ所有者からの評価は結構高いのだが、その半面「買おうと思わない」という声がかなり多いように思われる。それどころか一部ではあからさまなネガティヴキャンペーンが張られている(例1)(例2)
まあネガキャンは視点が偏り過ぎているので除外するにしても、Wii Uのイメージが芳しくないというのは間違いないところだ。一体何が問題なのだろうか。

Wii Uにはソフトが少ない」?

最も問題視されているのがこれだ。「買いたいゲームがない」「新しいソフトが発表されない」。ゲーム機は単なるプラットフォームであるから、その上で動くソフトがなければ意味がない。ソフトが少ないのであれば致命的だ。

そんなに少ないんだろうか。
現在のところ、発売済/発表済Wii U用タイトルは38本(ロールプレイング2、アクション15、アクション・アドヴェンチャー2、テキスト・アドヴェンチャー0、シミュレーション1、シューティング4、スポーツ・レース3、その他11)。これはパッケージソフト・DLタイトルを合わせた、「Wii U用のすべて」での数字なので、カラオケUやYouTubeなど非ゲーム6本を除外するならば32本となる。発売から4ヶ月でのタイトル数としてはまずまずだ。その他に既存のWiiタイトル455本も利用可能なので、少なくとも「既にWiiを持っていて遊び尽くした」人以外は充分に遊べる機種と言える。
またローンチタイトル数も、ローンチタイトル - Wikipediaによれば11本とむしろ平均よりも多いぐらいだ(これには本体に内蔵されたいくつかのアプリは含まない)。
数字で見ると、特段少ないという感じはない。にも関わらず実感としては「全然ソフトがない」と見える、その差はどこにあるんだろうか。

仮説として「海外タイトルの比重が高い」というのを考えてみた。正直なところ日本のゲーム市場に於いて、海外ゲームというのは特定分野(主にFPS系アクション及びPC用ゲーム)以外では影が薄い。つまり、本数が多くても海外作品ばかりが目立つ状況が国内のゲーマーに「やるゲームがない」という印象を与えるのではないか、ということだ。
現行の32本を国産と海外産に分けてみると、国産18本海外14本となった。半数近くが海外だ。参考までに3DSの発売後半年間に出た38本を同様に数えると、国産33本海外5本。全数ではそれほど差がないのに割合は全く異なる。また、それも影響してかジャンルとしてもアクションだけで半数近くを占め、他ジャンルが少ない傾向がある。
この辺りが「やるゲームがない」という印象に繋がっているのではないだろうか。

Wii Uは開発が大変」?

Wii Uのゲームは開発に手間がかかるのでソフトが出ないのではないか」という意見も結構根強い。
実際どうなのか、というのを開発者ならぬ身で調べるのは難しいが、任天堂の場合は自社で多数のタイトルを開発しており、当然ながら開発環境も自社で活用している筈で、そんなに開発困難なものを提供するとは思えないし、またその辺りの事情は競合する他プラットフォームでも同じことで、多少の差はあれど「Wii Uだけが飛び抜けて開発が難しい」とは考え難い。
ただ、ハードウェアの仕様に起因する問題はあるかも知れない。任天堂は競合他社に比べハードウェアスペックを抑える傾向があるため、クロスプラットフォームで開発しようとする場合にWii Uだけ描画の調整が必要になるとか、あるいは他にはないUIを備えているため操作系の設計が異なるといった部分で一手間余計にかかるという可能性は否定できない。
とはいえハードウェアスペックで言えば少なくともPS3/Xbox360並みかそれ以上のものはあるわけで、PS4Xbox次世代機がよほど飛び抜けていて、かつその能力をギリギリまで追求しなければ実現できないようなゲーム設計なのでもない限り、性能問題でWii Uに出せないとは考え難いし、2画面やタッチパネルによるゲーム設計もDSからもう10年近くやってきたことで、今更それほどの困難があるようには思えないが。

難しいところがあるとすれば、むしろ任天堂の方針なのかも知れない。聞くところによると任天堂は自社プラットフォーム向けゲームには企画段階から厳しい審査を行なうという。これによって開発数が抑えられてしまうというのは考えられる話だ。

Wii Uは動きが遅い」?

動きが遅い、には2つの意味がある:CPUやGPUの処理能力が低く複雑な描画を行なうと処理落ちするなどのゲーム中の動作を指す場合と、メニュー操作やデータの読み込み・保存などゲーム外での動作を指す場合とだ。
前者については「現行のゲーム機の中では」別に遅くない。「これから出るゲーム機と比較すると」スペック的には劣るだろうけど、ゲームの体感的な「遅さ」は必ずしもスペックにだけ依存するわけではなく、作り方次第だ。実際に、Wii Uよりもスペックの劣る現行機種でも、ゲームをやっていて遅いと感じるようなことはほとんどないだろう。
後者については、Wii Uははっきりと「遅い」。ゲームをやめてメインメニューに切り替えるだけでも30秒ぐらい待たされる。流石にこれは任天堂も問題視していて、4月と8月に分けてアップデータを出すと明言している。まあこの部分は「問題はあるが修正される」ということで。
でも正直なところ、「メニューが遅いからゲーム機を買わない」という話はあまり聞かないので、これは多分Wii Uの人気とは実際あまり関係がない。あるとすればWii Uに対する批判の流れで出てくるぐらいじゃないかと思う。

Wii Uには目新しさがない」?

「Wiiがちょっとパワーアップしただけ」「2画面もタッチパネルもDSで充分」みたいな扱いをされがちなようだ。まあこの辺はある意味仕方ないというか、スペックに表れない部分なので体験して頂く他ないのだが、折角なのでちょっとだけ目新しさについて説明しておきたい。

分割された2画面

2画面ゲーム機そのものはDSと変わりないが、Wii Uの画面はくっついてない。DSでは上下の画面をセットで見ているところ、Wii Uでは別々に見ることになる。位置も独立して動くから、似てるようだけどちょっと感覚が違ってくる。
それにWii Uは1人1台のDSとは違ってマルチプレイ機だ。1台で複数のプレイヤーが遊ぶ時、この「ふたつの画面が独立している」ことの意味が出る。

対称性なゲーム設計

ニンテンドーランド収録のゲームなどでは、ゲームパッドとWiiリモコンで非対称なゲームが提案されている。例えば「ゲームパッドのプレイヤーが全体マップを見ながら逃げ、それをWiiリモコンのプレイヤーが分割された画面内の自機後方視点のみで追い掛ける」とか、「ゲームパッドのプレイヤーは射手を担当し、Wiiリモコンのプレイヤーが白兵戦を担当して協力プレイ」など。
NewマリオUでもアクションゲームが得意でないプレイヤーのために「画面をタッチして敵の動きを止めたり足場を作ったりしてマリオを助ける」バディプレイが用意されている。「全員の立場が対等でない」ゲームは今までになかった目新しさだ。

非接触ICの読み/書き

Wii Uのゲームパッド左下にはボタン類がなくスペースが空いているが、ここについたマークはNFCの読み/書き機能を示している。つまりゲーム内に外部からの情報を取り込んだり、逆に書き出したりできるということだ。
既に「ポケモンスクランブルU」でNFCを内蔵したフィギュアとの連動が発表されている

Miiverse

Wii Uの目新しさ」と言ってよいのか微妙なところだが、今のところWii Uからだけ利用可能なコミュニティサーヴィス「ミーバース」は、Wii Uソフトそれぞれに設けられたコミュニティに参加して短文やちょっとした絵が投稿可能になっている。単にゲームについて語るだけでなく、ソフト側で対応させれば「ゲーム内から投稿できる」のが特徴。例えばボス戦でやられた悔しさを共有したり、ノーミスクリアの嬉しさを投稿したり。

ゲーム以前に、遊びの楽しさというのは感情の共有に依るところが大きい。発売日に並んで買ったゲームを寝食も惜しんで遊び倒すのは、皆が話題にしているうちに興奮を共有するのが最も面白い遊び方だからだ。できれば周囲の同じゲームを遊ぶ友達と、進行具合や攻略できていない部分などを話し合いながら遊びたい。Miiverseはそういうことをオンライン経由で可能にしてくれる。