逆手

これ、なんと読みますか。
私はずっと「さかて」だと思っていた。いや、それは決して間違いではない。のだが、NHKのアナウンサーが「ぎゃくて」と読むのが気になって仕方なかった。
ところが実際に色々調べてみると、どうも「ぎゃくて」の方が正しいとされているらしい。
NHKの見解によればまず【ぎゃくて】ですが、柔道などの技で、相手の腕の関節を反対に曲げて攻める技があり、これを『ぎゃくてを取る』と言います。そこから、相手の手段を逆用するという比喩的な言い方『ぎゃくてに取る』が出来たのです。では【さかて】ですが、例えば刀などを持つとき、普通の持ち方とは逆になるように持つ、つまり“小指の方が刃に近いように持つこと”を『さかてに持つ』と言います。また、体操競技の鉄棒で、手の甲を下にして棒を下から握る方法も『さかて』です。逆上がりをする時の手を思い出してください。順手の逆が、「さかて」ですね。とある。
また、ATOK監修委員会10周年記念シンポジウムではたとえば、「逆手」はいま「さかて」と言いますが、もともと「さかて」は玉串を祭壇に捧げる、あるいは柔道の一手のことでして、我々の世代はあくまで「ぎゃくて」と読んだんですね。と述べられている。


しかし、どちらの説明も何だか矛盾を含むように思える部分がある。まず、柔道の技としての「逆手」。NHKではこれをぎゃくてと読み、作家はさかてだと言う。まあこれは記憶違いだとか色々ありそうなものだが、もう一つ気になるのが「順手*1」の対義語として挙げられる「さかて」である。順手が重箱読みならばその対義語も重箱読みの「ぎゃくて」であるべきではなかろうか。そう考えると、むしろNHK見解とは逆にも思える。
多分これは、順手という言葉が後から発生したことによるのだろう。逆手は「普通の持ち方とは向きを逆に持つこと」であるから、それに対して普通の向きに持つ持ち方をわざわざ命名する理由はなかった筈だ。
それぞれの言葉がいつ頃から発生したのかはわからないが、由来から想像するに、まず玉串の持ち方としての「さかて」が存在し、後に柔道で「ぎゃくて」が発生、その後対義語としての「じゅんて」ができたのではないだろうか。
その方面の学があるわけではないのでまったく勝手な想像に過ぎないのだが。

*1:ことえりでは「さかて」「ぎゃくて」は変換できても「じゅんて」は変換できない