超音速・垂直離着陸戦闘機 F-104V/J

F-104Vは、実用戦闘機として初のマッハ2を達成した超音速戦闘機F-104を素体として開発された、超音速VTOL戦闘機である。

当時は東西冷戦下であり、東側と国境を接する国々では常に臨戦状態の緊張が続いていたため、兵器の開発は青天井の予算を投じて非常に早いペースで進められた。航空戦力に於いては新技術であるジェットエンジンとミサイルの発達に伴い、ドッグファイトのための機動力よりも敵機を振り切るマッハ2前後の超音速性能が求められ、F-100から始まる「センチュリー」シリーズと呼ばれる超音速機シリーズが誕生した。
当時はまだ大陸間弾道核ミサイルが実用化されていなかったため、主な脅威として想定されたのは核爆弾を搭載した高高度爆撃機であり、これを即座に迎撃するための要撃戦闘機には卓越した上昇性能が要求された。これに対しロッキードは、最小限の武装のみを備えた軽量の胴に極限まで空力抵抗を削ぎ落とす鋭利で小さな主翼を配した、一撃離脱の高速戦に特化した設計で応えた。
F-104として制式採用されたそれは、最大速度マッハ2.2(エンジン推力の限度ではなく耐熱性の限度であり、後の改良型ではマッハ2.4にも達する)と最大3万mを越える高度、そして高度1万6千m到達までわずか1分という凄まじい上昇能力を見せつけた。

そのような要求仕様を出したにも関わらず、仮想敵国と海を隔てる米国ではF-104の航続距離の短かさと搭載力の低さは不評で、ごく短期間の運用のみで退役となった。しかしその比類なき高速性能は東西緊張の最前線にあった国々では重宝され、特に西ドイツには総生産数の実に半数が配備された。
また専守防衛により国土付近での迎撃任務のみで航続距離を必要としない航空自衛隊に於いても、F-104は主力戦闘機として採用されている。

だが最大の配備先たる西ドイツも決してF-104の性能に満足していたというわけではない。要撃が主任務であるとはいえ、主力機として採用した以上は多用途に用いざるを得ず、結果として高高度・高速要撃を旨とするF-104の仕様に反する運用に就くことも多く、改良あるいは代替を求める声は少なくなかった。
とりわけ、高速性を最優先した小さく薄い主翼の代償としての低揚力による滑走距離の長さは、主任務たる要撃に於いても懸念事項となった。常に東側との戦争を想定していた西ドイツ空軍では、敵の攻撃により満足な滑走路を確保できない状況下での迎撃戦を想定して短距離離着陸性能が必要との論は根強く、F-104にロケットブースターを装備して専用発射台から斜め上に打ち上げるスクランブル装備などの実験も行なわれたが、実用には至らなかった。

そこでベルコウ社・ハインケル社・メッサーシュミット社は合弁事業体EWRを設立し、F-104をベースとしたVTOL機の開発に着手する。目標としたのはF-104の持つ高速度・高高度要撃性能を維持しつつ垂直あるいは短距離離着陸を可能とすることだった。独自設計ではなく既存機体をベースとしたのは開発期間短縮の目論見とともに、増大する防衛予算への批判を躱す目的があったと見られる。
基本プランは翼端に取り付けたジェットエンジンが垂直から水平へと角度を変えることによって離陸から飛行へと遷移するティルトエンジン式VTOLで、小型のエンジンを上下双発の形で組み合わせることにより前面投影面積を大きく増大させることなく、F-104に近い重量推力比を実現する目論見であった。
折しも同時期に英国でもVTOL機(ホーカー・シドレー ケストレル FGA.1)が開発されており、これは亜音速機であり西ドイツ空軍の求める要撃性能を満たすものではなかったため採用には至らなかったものの、VTOL向けとして開発されていたロールスロイスターボジェットエンジンについてはライセンスを得てメインエンジンとする計画となった。

EWR-VJと名付けられた試験機はF-104の胴体からエンジンを取り外し、主翼の先端にそれぞれ2基のロールスロイスRB.145ターボジェットンジンを配した。この小型のエンジンは1基あたりの推力こそ12.2kNとさほど高くないものの小型軽量であり、重量推力比ではF-104が搭載するJ79の倍にも達する。4基の小型エンジンは、J79単基とも遜色ない合計推力を生み出した。
F-104の刃のように薄かった主翼はエンジンポッドの回転軸を通すために厚みのあるものに作り変えられ、また回転軸を水平にするため下反角を付けた中翼配置から水平の高翼配置へと改められた。併せてディープストールを引き起こす原因となったT字尾翼も廃して低翼に配置し直している。
主翼前縁には翼端失速を防ぐドッグトゥースが設けられているが、レイアウト的に翼端からの気流剥離はエンジンポッドによっても抑止されるため、あまり意味がなかったようだ。

初号機は垂直離床からの水平飛行遷移でアフターバーナーなしに軽々と音速を突破し、十分に実用的な性能を示した。初号機は後に自動操縦装置の欠陥により失われたものの、二号機はアフターバーナー併用でF-104に迫るマッハ1.8を叩き出した。
三号機ではエンジンをより推力の高いロールスロイスRB.162へと換装しマッハ2を突破、上昇速度についてもF-104のそれへと迫ってみせた。

エンジンポッドが胴体から翼端に移動したことで重心モーメントが左右に分散し、空力による旋回能力自体はF-104よりも若干低下しているが、翼幅が短かいため分散化の影響は比較的抑えられており、代わりに左右の推力バランスを変動させることによる旋回補助が可能となったため、総合的には旋回性能の低下は見られない。チップタンクを失った代わりにエンジンを取り外した胴部後方へタンクを配置できるため、航続距離は却って延びた(ただし垂直離着陸に消費する分を考慮すると同程度ということにはなる)。

F-104がベースとなっているとはいえ推進系や制御系はまったくの新設計であり、F-104との部品共通性は3割程度に過ぎない。事実上の別機種であったが、予算承認上の都合で同機はあくまでF-104のヴァリエーションとされ、F-104Vの形式名が与えられた(これは米国に於けるF-86Dの事例が参考になったものと思われる)。
ロッキードの設計を流用しているため形式的に「ロッキードからのライセンス供与を受けた」体で西ドイツ内で国内製造されると共に、設計はロッキードへもクロスライセンスされ、独自に他国へF-104Vをライセンス供与することが認められた。

このため、F-104を導入している日本に対しても「改修」の体でF-104Vの導入が打診された。
地上基地から洋上へのスクランブル発進を主任務とする航空自衛隊では、特段VTOL能力を重視してはいないためF-104Vは性能試験機として少数を導入するに留まった。一方で海上自衛隊では以前から艦載機としてのVTOL取得に積極的な姿勢を見せており、F-104Vにも強い興味を示したものの、依然「空母」を持つことは専守防衛の原則に反するとして政治的に強い反発があったため戦闘機としての配備は断念し、代わりに機銃を下ろしてカメラを搭載した偵察型を艦上高速哨戒機として導入している。

超音速VTOL要撃機というコンセプトを高いレベルで実現したF-104Vではあったが、その後に核兵器の運用が爆撃から弾道ミサイルへと移行していったことによって防空要撃のドクトリンにも変化が生じ、マッハ2クラスの高速性能や搭載量の少ない軽量VTOL機の需要が減少したため、生産数は少数に止まった。



……という適当設定で作ってみたF-104改、「もしEWR-VJ101自衛隊に制式採用されたら」架空機である。機体としての設定はWikipediaとか読みながら適当にでっちあげたが、航空機の設計技術に詳しいわけでもないので不自然なところはご容赦願う。
新型機なのに新たな機種名にしなかったのは、F-104の通称名スターファイター」があまりに素敵すぎて、F-102デルタダガーとF-106デルタダートのように発展名を考えるのが難しかったから。

去年は架空戦闘車両を立て続けに製作し、架空設定でそれっぽく作る楽しさに目覚めたので、次は航空機をやってみようかと考えていたところ、たまたまWebでEWR-VJ101のことを知り、このキットも碌にない実験機を作ってみるのもいいかなと考えた。

計画

まずは改造プランを立てるために実機の三面図を探して、素体となる機種と改造先の図をカタログスペックに応じたサイズに調節してスケールを合わせ、重ねる。
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機種部分はほぼ同一なので流用はできそうだ。エンジンのない胴部はF-101よりもだいぶ細く絞り込まれており、垂直尾翼もカットされている。水平尾翼は取り付け位置こそ変わっているものの、形状的には流用できそうだ。
主翼はかなり形状が違う。類似形状のキットから流用するか、それともプラ板から自作するか……これは要検討。
問題はエンジンポッドで、こんな風に上下双発の配置はあまり例がない。BACライトニングの尾部は丁度良いのだが、エアインテイク部分は中央にショックコーンを置いた円筒形であり、VJ101のものとは異なる。
一番近いのはF8クルセイダーの機種直下インテイクで、これを半分のスケールで上下に置くとおおよそVJ101のエンジンポッドに近いイメージになりそうだ。

というわけで1/72 F-104を1機と1/144 F-8を4機購入。

F-8は機首と尾部以外を切り捨てるという、些か勿体ない使い方となる。

工作

最初に、F-104の胴体パーツからエアインテイクの膨らみを切り落とす。
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また併せて尾部も斜めに削ぎ落としておく。これには新規導入のエッチングソーが大活躍した(使い慣れないので早速1枚を折ってしまったが)。

機首側には先に操縦席を組み込むのだが、これは組み上がってからでは塗れないので、先に操縦席だけ塗装を済ませる。
シートには1mm幅に切ったマスキングテープを貼ってシートベルトを追加。計器・スイッチ類はスミ入れした後で適当に白や赤を点々と乗せる。コンソール中央のレーダーはクリアの蛍光グリーンで塗った。
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操縦席と前輪部を組み込んで機種を組み立て、後半と接着して胴体を組んでゆく。後半は腹側に主脚の引き込み部があり、本来ならば上側3/4周分と引き込み部の土台で機首側とがっちり接着されるようになっているのだが、左右エアインテイクを除去した結果として接着面積が背側の幅1cmほどと腹の引き込み脚基部しか支えがなくなってしまい頼りないことこの上ない。とりあえず接触部を瞬着で固めて補強しつつ、空いた部分を埋めて強度を確保することにする。

VJ-101に準拠するなら胴体後半は細身になるはずなのだが、F-104の主脚を流用する都合で引き込みスペースの幅より細くすることはできないので、F-104の胴径に合わせて成形する方向で行くことにした。
超音速機は音速付近での抵抗を軽減するために主翼付近で胴体を絞って全体の断面積変化を抑える「エリアルール」を採用するものであるらしいが、結果としてはそれを無視した形状になってしまった。だがまあF-104自体がエリアルールをあまり考慮していなさそうな形状であったし、アレはあくまで音速付近での抵抗に関わるものであるためマッハ2超の音速機ではアフターバーナー等で強引に音速を超えてしまえばあまり関係なくなるという情報もあり、細かいことは気にしないことにしよう。

穴をパテで塞いで形を整える。中まで充填すると消費量が多くなりすぎるので、盛るのは表面のみに留めたい。しかし胴パーツを接着してしまった後では裏打ち材を貼るのが難しいため、プラ棒を寸断して詰め込むことで芯材とし、その上にパテを盛ることにした。尾部も同様に、まず中央へ構造材を接着し、そこに水平尾翼を取り付けた上でパテで塞ぐ。
芯材を入れて軽量化を図ってさえ、パテの重みは決して少なくない。機体を支える主脚は機体全長の中央に近い位置にあり、その先にはまだ4割ほどの長さが残っている。そこへ胴中央〜尾部にかけてパテを詰め込んだことで重心が主脚よりも後方に移動し、尻餅を搗くようになってしまった。
これでは展示に問題があるので、機首側の重みを増やすべく操縦席の隙間から錘代わりのパテを充填することで重量バランスを調整。

パテをやすっては盛り、胴をできる限り滑らかに仕上げてゆく。本当ならば胴体の完成後に脚を接着すべきだったのだろうが、形状を検討する都合もあって先に脚を接着してから胴体を成形したために、切削中にうっかり負荷をかけて脚を折損してしまった。前脚はそのまま紛失したため真鍮パイプとアルミパイプで作り直し、カットした丸棒にパテを盛ってタイヤを作る。また後脚もフレームに合わせて真鍮線を瞬着で貼り付けて補強。
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本体と平行してエンジンポッドも作ってゆく。F-8の機首と尾部をカットし、操縦席は不要なので上半分をさらにカット。これを2機一組で接着して隙間をパテで埋め、エンジンポッドの形を作る。
表面を整えたところで回転軸を通す3mmの穴を穿ったら、パテが割れてしまったので瞬着で接着して成型し直す羽目に。
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削り/埋めてしまったモールドはエッチングソーで彫り直してみた。スジ彫りテープを貼ったりしてはみたが曲線に沿って直線を貼るのは難しく、あまり綺麗に彫れたとは言えない。

本体に主翼を取り付ける。VJ-101に倣って高翼配置とするため、胴にピンバイスで穴を空けて翼の基部を差し込むためのスリットを作り、差し込んだ翼と胴との隙間をパテで塞いで固定。
エンジンポッドの回転軸を考慮するとF-104のカミソリ翼ではあまりに薄すぎるので、F-8の使わない主翼をカットして上下から貼り付けることで厚みの確保を試みた。翼形が異なるため全体を均一には覆えず翼断面がだいぶ謎なことになっているが、エンジンポッドのおかげで断面をはっきり確認できないのであまり気にしないことにしよう。結果としてF-104の台形翼ともVJ-101の後退翼とも異なる翼形になった。
それでも回転軸を貫通させるには厚みが不足するので、翼端に3mmプラパイプをカットして接着、基部をパテで滑らかに成形しておく。

脚以外の細かい部品を接着してゆく。主脚のハッチは、一度前方が開いて脚を出してから閉じるものらしい(それにしてはハッチ部品の曲面が胴と合わない)が、基部には油圧配管が覗き見えるため先にこれをざっと塗装してからハッチを閉じる必要がある。どうも航空機はそういうの多いな……

ほぼ形状が完成したので下色として全体をアルミシルバーで塗装してみたら、なんか「安いおもちゃの飛行機」感が出てしまった。エンジンポッドが翼端にあり細長いデザインも60年代特撮っぽさがある(実際に60年代の機体なわけだが)。塗装でどうにか実機ぽい雰囲気にできるのだろうか……
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とりあえず図面に色を重ねて配色を検討。付属デカール自衛隊とカナダ空軍の2種なのでそれを元にマーキングする前提で自衛隊っぽい塗装にしようかと思うが、架空機なので部分的には適当なカラーリングをでっち上げなければならない。
エンジンポッド先端はF-104のエアインテイク塗装に準拠して黒で塗り、赤矢印のコーションマークを貼る。F-104ならばショックコーン前方位置へに先端を前向きに貼られるところだが、本機の場合はそこへは貼りようがないのでエンジンポッド側面へ逆向きに貼ることになる。
箱絵を参考にマークを貼ってみると、のっぺりとしてオモチャ然とした雰囲気が俄に精密な雰囲気になる。細密デカールすごい。
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ただ、ハセガワのデカールは日の丸の白縁を「白丸の上に赤丸を重ねて貼る」形で再現するのが辛い。恐らくは隠蔽力と発色を優先しての仕様なのかとは思うが、位置決めに神経使うので一体化して欲しかった(実際にずれて貼り直した結果、破れて大変なことになってしまった)。またキットが古かったのかなんなのか、水に浸しても部分的に台紙から剥離しない箇所があり、色々と難儀した。

ともあれ、全体にマーキングを施してみると、(塗りやパテ成型痕の粗さに目を瞑れば)意外と「それっぽく」見えるものだ。
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なるべく手軽に菓子を焼く


甘いものを食べると心が穏やかになる。色々と買い置くのも良いが、一手間かけて自作するのも良い。
ただ、あまりに手間がかかったり難易度の高いレシピだと、一度挑戦してみるのは良いとしても繰り返し作る気にはなれない。
なるべく手間を省いて雑に作れる方法を模索している。

下記にいくつかレシピを紹介する。いずれも大体「混ぜて焼くだけ」といった感じで、手間も洗い物も少なく済み、十分に美味しい菓子が作れる。

チョコケーキ

「眠れぬ夜はケーキを焼いて」の午後(@_zengo)さんのレシピを元に簡略化。


材料を計る必要すらなく、電動器具なども不要なので非常に手軽で良い。最初に作るケーキとしてオススメ。

材料(マフィン型4個またはパウンド型1個分程度)

  • チョコ:150g程度
    • 板チョコ推奨(チョコ以外のものが入っていないものならなんでも良いが、50g単位で分量を調節しやすいものが望ましい)。
  • 鶏卵:チョコ50gあたり1玉
    • 大きさは問わない。
  • 粉糖(オプション):一摘み程度
    • 焼き上がったチョコケーキに少しふりかけるとそれっぽくなる。基本的に見た目のためのオプションなので、なくても良い。

工程

  1. チョコを非金属のボウル(丼でも可)に入れ、電子レンジで加熱する
    • 出力は500W程度で30〜60秒程度、ヘラで押してみて軟らかく崩れればOK。まだ硬い手応えがあるようなら10〜20秒づつ様子を見て追加加熱。
  2. 溶けたチョコをヘラで均一に混ぜる
    • 電子レンジは点で加熱するため温度分布にムラができるので、全体を混ぜることで溶け残りを溶かす。このとき、加熱しすぎて温度が高いようなら卵黄を凝固させないように少し冷ましておく。
  3. 卵を混ぜる
    • ボウルに卵を割り入れる。ヘラで卵を潰しチョコとよく混ぜ、均一に攪拌する。
  4. 型に流し込む
    • 用意した型へ均等に流し入れる。
  5. オーブンで焼く
    • 200度に予熱後、20分焼く。
  6. 冷ます
    • 大気に放熱することで温度を下げてから、型ごと冷蔵庫で冷却。
    • オプションの粉糖は冷却後に振り掛ける。

洋酒を入れたり洋酒漬けのドライフルーツを混ぜ込んだり、あるいはナッツを入れるなどの応用もできる。お好みに合わせ各自研究されたい。

チーズケーキ

愛妻がチーズケーキ好きなので頻繁に焼く。
クリームチーズと少々の材料を混ぜて焼くだけで手軽だが、軟らかいとはいえ固形であるクリームチーズを液状に混ざるまで攪拌するのは結構疲れるので、フードプロセッサやミキサーなどに頼ることをおすすめする。
クリームチーズ雪印メグミルクのものを推奨。これは品質や味わいの問題ではなく、「箱の裏にチーズケーキのレシピが書いてある」という理由によるもの。

レシピも雪印メグミルク公開のものに準拠しているが、いくつか材料や工程を簡略化している。
www.meg-snow.com

材料(円形ケーキ型15cm、マフィン型4〜6個またはパウンド型2個分程度)

  • クリームチーズ:200g
  • 鶏卵:2玉
    • サイズは問わない。生クリームを200ml使用する場合は3玉にする
  • 生クリーム:100ml
    • 1パック200ml入りのものが多いため半量余るが、他に使う当てがなければ腐らせるだけなので200ml全部混ぜてしまっても良い。その場合は卵を3玉に増量する。
  • 砂糖:60g

工程

  1. 攪拌:手動と電動で多少異なる。
    • 手動の場合
      1. ボウルにクリームチーズのみ入れ、ヘラで潰して軟らかくする。潰しにくい場合は木べらやスプーンなど先端が固く平たいものを使ってもいいだろう( 洗い物が増えるが)。
      2. 卵を割り入れ、泡立て器で混ぜる。
      3. 生クリームを入れ、泡立て器で均一になるまで攪拌する。
    • 電動の場合
      1. 材料すべてをフードプロセッサに入れ、攪拌する。側面に混ざり切れなかったクリームチーズが貼り付く場合はゴムべらで削ぎ落として再度攪拌。
  2. 型に流し込む
    • 用意した型へ均等に流し入れる。
  3. オーブンで焼く
    • 20度に予熱後、40分焼く。
  4. 冷ます
    • 大気に放熱して粗熱を取ってから、型ごと冷蔵庫へ。

焼く前の生地に洋酒を混ぜるのもいいし、またインスタントコーヒーなどを混ぜ込んで味変するというのもアリだ。型の底に砕いたクッキーを敷いておくなどの応用技も。

プリン

プリンは作るのが面倒なのだが、それは主にカラメルソースの作り方と、鬆が入らぬように蒸すためにコツが要るからだ。逆に言えば、その2点を自力でやらなくて済むならば非常に簡単になる。
カラメルについては、タブレット状のものが販売されているので購入を推奨する。袋の裏にプリンのレシピも付いており、至れり尽くせり。

蒸しについてはスチームオーブンレンジを推奨。まず間違いなく「茶碗蒸し」調理モードがあるため非常に安定してプリンを作ることができる。
ない場合は各自、蒸し方を調べること。

材料(プリン容器6個程度)

  • 鶏卵:3玉
  • 牛乳:360ml
  • 砂糖:60g(好みに応じて調節のこと)

工程

  1. 砂糖を牛乳に混ぜて溶かす。鍋に入れて軽く火を通すと溶けやすい(卵を混ぜる前に冷ましておくこと)。注ぎ口付きの鍋を推奨。
  2. 別の容器に卵を割り入れ、卵黄と卵白をよく混ぜておく。
  3. 牛乳を入れた器に卵液を混ぜる。
    • どうしても細かい卵白がダマになって滑らかな食感を阻害するので、卵液を混ぜる際に茶漉しを通しすことで粒状の残留物を除去すると良い。
  4. プリンの容器にカラメルタブレットを入れ、3のプリン液を均等に注ぐ。
    • 器は耐熱性であればなんでも良い。よくある瓶型のプリン容器だとだいたい6個分になる。
  5. タブレットがプリン液の水分で溶けるまで20分ほど待ってから、茶碗蒸しモードで蒸す。

個人的には甘さを控えめにしつつ、ラム酒を少し混ぜるのが好み。

カヌぽ

杏耶@あや(@ayatanponpon)さんのレシピ。雑に言えば「粉入れて焼いたプリン」だこれ。


カヌレは表面をカリッと焼き上げるのがポイントだが、カヌぽは難しいことを気にしない。

材料(マフィン型6個程度)

  • 薄力粉:80g
  • 砂糖:80g
  • 鶏卵:1玉
  • 牛乳:250ml
  • バター:10g
  • ラム酒:キャップ1杯
  • バニラオイル:6滴

工程

  1. 薄力粉と砂糖に卵を混ぜ、練る。
    • 必ず粉材料と卵だけを先に混ぜておくこと(粉に牛乳を混ぜようとするとダマになるので)。
  2. 牛乳をレンジで温めてバターを溶かし、混ぜる。
  3. 1に2を少しづつ混ぜて伸ばし、均一な液状にする。
    • 一度に全部入れるより、少しづつ入れて粘性を下げる方が均一に混ぜやすい。
  4. ラム酒とバニラオイルを混ぜる。なくても作れるが、カヌレっぽさが違う。
  5. マフィン型に均等に流し入れる。
  6. オーブンを200度に予熱し、60分焼く。

本場のカヌレほど表面カリッとは行かないが、モッチリ具合と香りは十分で満足度は高い。

番外:ゼリー

焼かないレシピ。
ゼラチンで作ってもいいが、加熱しすぎると固まりにくくなるし蛋白質分解酵素を持つフルーツは加熱しないと使えないし、色々面倒なのでアガーを使っている。

「やわらかい寒天」のようなもので、粉末状のものを溶かして使う。

材料

  • 水:400ml
    • 水分であれば水以外でも可。コーヒーやジュースなど、お好みで。
  • アガー:10g
    • 水に対するアガーの比率を変えることで固さをコントロールできるので、好みに応じて調節のこと。
  • 砂糖:50g
    • 水で作ることを想定した時の分量なので、甘味や液体の種類などで各自調節のこと。

工程

  1. 琺瑯やガラスなどの蓋付き耐熱容器に液を入れ、アガーを少しづつふりかける。
    • 一度に入れるとダマになりやすいので注意。少量を入れながら混ぜてゆく。
  2. 砂糖を入れ、火にかける。
  3. 沸騰したあたりで火を止め、しばらく放置して冷ます。
  4. 冷蔵庫で冷やす。

鍋を使わず、そのまま冷蔵庫に入れられる耐熱容器で直接作ってしまうところが手抜きポイント。

ただしフルーツゼリーには注意:アガーは凝固温度がゼラチンより高く、50〜60度ぐらいで固まりはじめるのでフルーツが煮えてしまい、いちごなどは表面が白っぽく変色したりとイマイチ綺麗にならない傾向がある。
ギリギリの温度まで冷ましてからフルーツを投入し、すぐに冷却すれば大丈夫かも知れないが、温度管理が面倒になって「手軽」ではなくなってしまうので、そういう時はゼラチンを使った方が良さそうだ。
多少煮えてもあまり影響のないフルーツならアガーで問題ない。特にキウイやパイナップルなど、蛋白質分解酵素のせいでゼラチンが使えないフルーツには最適。

カスタードクリーム

これだけでは菓子にならないが、菓子に添えるものとして覚えておくと何かと便利。

材料(丼一杯分程度)

  • 卵:1個
  • 薄力粉:15g
  • 牛乳:200ml
  • 砂糖:50g程度

工程

  1. 非金属のボウルか丼に薄力粉と砂糖に卵を割り入れ、ダマがなくなるようにすり混ぜる。
  2. 牛乳を加えながら混ぜ、液状にする。
  3. レンジで500W2分ほど加熱、一度取り出して混ぜ、追加で2分ほど加熱

シートマッサージャーを試す

ふらりと立ち寄った家電量販店で気紛れに試したマッサージャーがとても良かった。しっかりと「揉みほぐす」動きで筋肉の凝りをいい感じに刺激してくれる。その割に値段も高くない。
どうやらこれは「シートマッサージャー」というカテゴリで、椅子と一体化した「マッサージチェア」のような大型装置ではなく椅子の上に置いて座る、あるいは床に敷いてその上に寝る形で使うものであるらしい。

マッサージチェアというのは大型の椅子と一体化した装置で、安いものでも10万はくだらない。売れ筋の価格帯は20万から上といったところで、置き場も含めて気軽には手を出せない装置である。その代わり高機能で、背中だけではなく手足までマッサージしてくれたりもする。
対してシートマッサージャーに椅子は付かない。価格帯によっては座椅子程度に椅子の形をしているものもあるが、基本的には椅子の上に載せて使うものだ(体重を預ける必要があるので背もたれがある程度リクライニングしたものが必要かと思う。専用の椅子も1万5千円ぐらいで販売されている)。マッサージ範囲は背中一帯で、脚などは対象外(腿への振動ぐらいは装備している場合もあるが)。価格は2〜5万といったところで、サイズ的にも価格的にもマッサージチェアよりだいぶお手頃である。

しかしマッサージ需要が最も高いのは肩〜腰の範囲であって、脚などは(できるに越したことはないけれども)必須ではないし、必要にして十分な揉み機能を持つのであればシートマッサージャーの方が何かと利便性が高いのでは?

というわけで、ひとまず大型量販店のマッサージャーコーナーで試してきた。
だいたいこういうところで展示されているのは上位機種であることが多いので、探せばこれより安いモデルも出てくるが、安価なものはマッサージ機構が振動のみであったり揉み範囲が狭かったりと、安いなりの理由がある。またマッサージは「体に合うか」が非常に重要なので、結局は「試して良かった」ものを買うのが最良だと思う。

試用

フジ医療器 マイリラ MRL-1200

価格:3万2千円程度
最初に試した機種であり、本命の候補。
首〜肩および背中〜腰を広い範囲で揉んでくれる。揉み機構は剛性が高く非常に安定した動作で、人の手で揉んでいるかのような力の入れ具合が感じられる。また身長180前後でも肩までしっかり揉んでくれるのは有り難い。

ドクターエア MS-002(プレミアム)、MS-04

価格:3万2千/2万4千円程度
揉み機構はしっかりしているが、可動範囲が若干狭く、私の背だと肩までは届かない感じでもどかしい。
また上位機種では振動機能も付いているのだが、正直なところマッサージ効果が感じられなかった。

アテックス TOR AX-HPT221

価格:4万円程度
揉み加減はそう悪くないのだが、動作音がうるさい……というか、グッと押し込む動作に伴い、歯車の噛み合いがずれたような滑り感がありガガガガ……という振動が発生する。店頭試用品にガタが来ているだけなのかも知れないが、耐久性に不安を感じてしまう。

というわけで、最初に試して心地良さを感じたフジ医療器のマイリラが比較検討の結果としても最良に感じられたのでそれを購入。
なお型落ち機種なら2万2千円程度で販売されているのだが、そちらには首・肩用の揉み機構がないようだ。

自宅での使用

購入したフジ医療器 マイリラ MRL-1200が届いたので早速使ってみる。
シートマッサージャー本体に、上下のジッパーで座面と背当てを取り付ける形。腰のあたりにベルクロのベルトがあり、これを椅子の背に回して固定する。

とりあえず事務用のリクライニングチェアに取り付けてみた。が、

  1. 座面が高い
    • 椅子の上にクッションを置く形になるので高さを調節する必要がある
  2. 腰の揉み具合が弱い
    • チェアの腰位置がマッサージャーの想定位置より深いのか、あるいはマッサージャーを置いた分だけ浅く座ることになるのがいまいち合わないのか
      • やはり専用チェアがあった方が良さそう

というわけで、もうひとつの使い肩である「平らに置いてその上に寝る」形でも使ってみた。

  1. 体重で圧がかかるので強く揉める
    • 逆に強すぎると感じる人は椅子でやる方がいい
  2. 寝る位置の調整で当たる場所を変えやすい
    • 椅子型でも左右位置は多少ずらせるが上下位置はずらしにくいので

こちらの方がなにかと使いやすい印象。
我が家特有の事情として、椅子をマッサージャーに占領させにくく、かといって使用の都度セッティングするのも面倒なので、ならば寝かせて使う方がいいかも知れない。
作動音はデジタルモーターの小さな唸りのみで非常に静か。なんならこのまま寝られるぐらい。

F0.95のレンズ一覧

明るいレンズが欲しい。

写真の良さはレンズ性能で決まるわけではないが、レンズ性能は可能性を広げ、撮影を楽にしてくれる(はずだ)。
明るいということはシャッタースピードを稼げるということでもあり、あるいはボケが強くなるということでもある。ボケれば良いというわけではないものの、ピント面以外が大きくボケることによって被写体を浮き立たせることができるのは魅力的ではある。
この方面では比較的センサーサイズの小さいフォーマットであるマイクロフォーサーズはどうしても不利だが、その分だけ明るいレンズを使えば、不利を補うことも不可能ではない。

明るいレンズは概して大きく、重く、高い。これはF値が「焦点距離÷有効口径」で決まるが故にF値を小さくしようと思えば大口径にならざるを得ないという性質によるものだが、逆に言えば焦点距離を抑えれば有効口径も抑えることができるし、あるいは有効口径を稼げばそこそこ長い焦点距離でも明るくできるということではある。しかしながらズームレンズやオートフォーカスでは有効口径を稼ぎにくいようで、大口径レンズは大抵マニュアルフォーカス単焦点である。

オートフォーカスレンズは電気的な機構もさることながら、カメラ本体との通信が必要であるためメーカーとの正式な契約なしには作ることができないが、マニュアルフォーカスならばレンズマウントの形状さえ合わせてしまえばどうにでも作りようがあり、それゆえ勝手サードパーティーレンズの存在する余地が生まれ、大口径単焦点マニュアルレンズが比較的安価に入手できる。
「明るいレンズ」の世界ではF0.95というのが一つの基準であるらしい。人の目はF1.0だとされ(眉唾ではあるが)、「それより僅かに明るい」ということなのかもしれない。ともあれ、F0.95を謳うレンズが多数存在する。今回はそれらを中心に比較してみたい。

私はマイクロフォーサーズを使っているので、他マウントのレンズについては参考程度に留める。

F0.95(マイクロフォーサーズ用)

ブランド 焦点距離 最短撮影距離 最大撮影倍率 重量 全長 フィルター径
フォクトレンダー 10.5mm 0.17m x0.12 585g 82.4mm φ72
中一光学 17mm 0.3m x0.07 460g 75mm φ58
フォクトレンダー 17.5mm 0.15m x0.25 540g 80mm φ54
LAOWA 18mm 0.15m x0.15 500g 83mm φ62
フォクトレンダー 25mm 0.17m x0.26 435g 70mm φ52
中一光学 25mm 0.25m x0.13 230g 55mm φ43
七工匠 25mm 0.25m x0.13 582g 99.7mm φ52
LAOWA 25mm 0.25m x0.17 570g 86mm φ62
Meike 25mm 0.25m 600g φ62
SLR Magic 25mm 0.26m 500g φ52
中一光学 35mm 0.35m x0.13 390g 58mm φ55
七工匠 35mm 0.37m x0.12 369g 59mm φ52
Meike 35mm 0.39m 380g φ52
フォクトレンダー 42.5mm 0.17m x0.26 571g 74.6mm φ58
中一光学 50mm 0.5m x0.05 770g 88mm φ67
七工匠 50mm 0.45m x0.1 410g 56mm φ62
銘匠光学 50mm 0.5m x0.05 410g 60mm φ58
SLR Magic 50mm 0.5m 640g φ62
フォクトレンダー 60mm 0.34m x0.25 860g 74.6mm φ77

(撮影倍率はなぜか同じ最短撮影距離でもメーカー発表値に差があったり、そもそも未発表だったりする(適当に同じ距離のものに合わせて書いた)ので参考程度に)

Voigtländer(フォクトレンダー)は長野のレンズメーカー、コシナがドイツの老舗レンズブランドの商標権を得て製造している。ライカソニーE、フジXなどのレンズもあるが、F0.95以下の明るさはマイクロフォーサーズ用にしか存在しない。
レンズ設計としては、最短撮影距離の短さが際立つ。いずれも最大撮影倍率が(換算値で)0.5倍ほどあり、セミマクロとして運用できる。
反面、遠慮のない光学設計はカメラ本体を上回るほどの重さや価格に反映されている。
マイクロフォーサーズ専用設計だけあって換算21mmから120mmと広い範囲をカバーしてくれるのは嬉しい。
なお29mm F0.8という超レンズも存在する(後述)。

中一光学(mitakon)、七工匠(7artisans)、銘匠光学(TTartisans)、LAOWA、SLR Magic、Meikeはいずれも中国のレンズメーカー。

中一光学はスピードマスターの名でF0.95レンズをラインナップしている。17mm・25mmはマイクロフォーサーズ専用、35・50mmはAPS-Cまでをカバー。
またm43マウント専用にT1.0シネマレンズも存在する。
25mmは僅か230gと、大口径レンズと思えぬ軽さ。

七工匠は特にレンズ名はないようだ。大口径でありながら3万を切る安さは魅力的。

銘匠光学(TTartisans)は主にライカM42マウントレンズなどを多く揃える。50mmの他に35mにもF0.95があるのだが、こちらはなぜかマイクロフォーサーズ用がない。

LAOWAは他社にはない特徴的なコンセプトのレンズを多く揃える。F0.95シリーズではないが、マイクロフォーサーズ用では超軽量の7.5mm F2や超広角の4mm魚眼など。

SLR Magicは名前からして一眼レフ用レンズメーカーだが、シネレンズを多く扱う。

Meikeは

性能

可能ならば全種の性能を比較したいところだが、残念ながら買って試すほどの余裕はなく、また同条件で比較できるだけの情報も得られないので、あくまで個別に行われたテスト事例やレビューを見ての判断となる。
フォクトレンダーは全般に、開放付近がかなりソフトフォーカスとなることが知られている。それはそれで味わいある描写ながら、ある程度の解像力を期待するならF2程度まで絞らざるを得ず、しかしそれでは折角の大口径が生かされない。価格・重量ともヘヴィ級であることから気軽には手を出しにくく、最短撮影距離を活用するか他社にはない焦点距離のために選ぶレンズということになるだろう。
中一光学は全般的に、ボケに二線傾向が見られるようだ。とりわけ小型軽量な25mmではそれが顕著で、せっかくの強いボケにも関わらずザワつきが目立ち、あまり背景が溶け込まない気がする。
七工匠はボケも含めてかなり素直な描写で、なおかつ価格も手頃だが、25mmはマイクロフォーサーズ以外のマウントにも対応するイメージサークルのゆえかフォクトレンダー以上の大きさと重さで、些か使いにくい。
LAOWAは色収差を抑えたAPO設計とのことで、溶けるようになだらかなボケは魅力的。

この中で一本を選ぶとすれば、手頃な価格でバランスの取れたスペックと描写力を両立する七工匠35mm F0.95だろうか。撮影倍率がもう少し高いと更に使い勝手が高まるのだが、それは贅沢というものかもしれない。

マイクロフォーサーズでは換算70mm相当と若干画角が狭いものの、望遠というほどまで強くはないため比較的標準レンズに近い感覚で使えるかと思う。

他レンズ(参考情報)

マイクロフォーサーズ用以外のF0.95レンズや、F0.95以外のマイクロフォーサーズ対応大口径レンズについても触れておく。

ブランド F値 焦点距離 最短撮影距離 最大撮影倍率 重量 全長 フィルター径
イカ F0.95 50mm 1m x0.02 571g 74.6mm φ58
名匠光学 F0.95 50mm 0.7m x0.02 690g 73mm φ67
ニコン F0.95 58mm 0.5m x0.19 2000g 153mm φ82
フォクトレンダー F0.8 29mm 0.37m x0.1 703g 88.9mm φ62
IBELUX F0.85 40mm 0.75m 1200g 128mm φ67
Kamlan F1.1 32mm 0.4m 572g 91mm φ62
Kamlan F1.1 50mm 0.4m 563g 72mm φ62
オリンパス F1.2 17mm 0.2m x0.15 390g 87mm φ62
オリンパス F1.2 25mm 0.3m x0.11 410g 87mm φ62
オリンパス F1.2 45mm 0.5m x0.1 410g 84.9mm φ62

イカは……まあ説明不要だろう。参考価格およそ150万、他システムなら本体と大口径レンズ一式買ってお釣りが来る金額で、それに見合うこだわりの性能はあるのだろうが正直なところ「情報を買っている」感は否めない。
同じライカMマウントでほぼ同スペックの名匠光学50mm F0.95が価格は1/15とあっては尚更。
ニコン58mm F0.95はもう「どこまでこだわるか」を突き詰めたような代物だ。完全受注生産、ライカのそれに匹敵する価格もさることながら驚きの重量2kg。
ここまではマイクロフォーサーズ以外のレンズだが、以下はマイクロフォーサーズに対応したレンズとなる。
フォクトレンダー「スーパーノクトン」29mm F0.8はニコンのそれと同じく換算58mmの画角に”夜光”を超えるF0.8を実現しながらも、価格はたったの20万。いや十分高いレンズだが、こうやって比較すると激安に見えてくる。
IBELUXはマウントアダプターのKIPONがドイツの工業系光学メーカーと合同で立ち上げたブランドで、このレンズは前玉が凹レンズだそう。重量1.2kgは些か辛い。
Kamlanは台湾のレンズブランド。特殊ガラスや非球面レンズを用いないシンプルな構成のためフレアやフリンジが明瞭に発生するものの、使いようによっては演出として効果的だろう。600g弱は軽くはないが、重すぎるというほどでもない。
オリンパスM.zuiko F1.2PROシリーズはオートフォーカスレンズとしては最も明るいF1.2。なるべく明るいレンズを、マニュアルではなくオートフォーカスで運用したいならばこれ一択だろう。

性欲と支配欲:男性の「男性性」理解のために

昨今、女性キャラを用いた広報がフェミニズムからの批判によって「炎上」する事例が増加している。個別の是非は措くとして、批判に対し反論が行なわれる中で、しばしば「ミラーリング」が発生する。
ミラーリングとは、批判者と批判対象の立場を入れ替えることを意味する。正しく行なわれれば問題の本質を浮き彫りにすることも可能な行為だが、問題が正対していない場合には単純な「鏡写し」が両者の立場を正しく反転できず、却って誤解を生じる場合も少なくない。

フェミニズムは女性の権利闘争であり、その範囲は労働や学問に於ける立場から性的搾取などまで多岐に渡るが、中でも性の問題はなかなかに難しい:そもそも男女間で、恐らく性に対する意識に相当な差があるからだ。
大雑把に言えば、男性は「女性全般を性的対象として見ており、一部を対象外と考える」が、女性は「男性全般を警戒対象として見ており、一部を対象外と考える」傾向がある。
それぐらいに見え方が違うため、単純に両者の視点をひっくり返しただけではミラーリングになり得ない。たとえば男性にとっては「女性から性的な目で見られる」のは喜ばしいことに感じられてしまうだろうし、あるいは「女性全般を常に警戒する男性」を想像するのは難しい。

(参考:暴力被害の男女比を考える - 妄想科學倶樂部)



ここから先は少なからず性的な話題となるため、見たくない人のために内容を隠しておく。読みたい人は「続きを読む」から先をどうぞ。
(ただ記事への直リンクでは「続きを読む」が表示されないので、念の為すこし行間を空けておく。)

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「本好きの下剋上」初見勢のためのちょっとした解説

小説投稿サイト「小説家になろう」での連載当時から繰り返し読み耽り、刊行された書籍をはじめとする資料集を集め、二次創作に手を出すぐらいにのめり込んできた「本好きの下剋上」がアニメ化された。
元はそこまで知名度の高い作品というわけではなく、「知る人ぞ知る名作」といった立ち位置だったのが、アニメ化によって間口が広がり、多くの新規ファンが増えた。そして、その分だけ疑問も広がる。

元々、本作は徹底的に「主人公の視点」から世界を描いているため、客観的な情報が読者に伝わりにくい構造になっている。その上、主人公がいささかエキセントリックで読者の思考が主人公のそれと同期しにくいこともあって、「なぜそうなるのかわからない」ことが生じる場合がある。
また、かなり綿密に「中世ヨーロッパ」を調べた上で書かれているのだが、それが却って「読者ののイメージ」と乖離する面がある(我々は実際の中世について、驚くほど無知だ)。結果として「こんな設定は不自然だ」と感じられてしまうことも多いようだ。

納得できないまま読み進めていただいても問題はないのだが、人によってはその違和感が拒否感に転化されて読めなくなってしまう場合もあるようで、それは些か勿体ないので、引っ掛かりやすい部分について少しばかり解説を試みたい。

記事の性質上、内容に触れざるを得ないため先の展開に触れる部分がある。視聴未了の方はネタバレに留意されたい。

マイン編

マイン自分勝手すぎない?

序盤のマインは碌に家事の手伝いもせず、自分の望みのままに家族を振り回すところがあり、たしかに「自分勝手」ではある。この点については作者としても懸念があったのか、それとも読者から何か言われたのか、「なろう」版には「最初のうち性格悪い」という注意書きもあった。
ただ、これは彼女の「度を越した活字中毒」という特性と、「見知らぬ異世界に一人放り込まれた」という孤独感、そして5歳児の情緒によるものと解釈できる。

誰だって、知り合いの一人もいない、これまでの人生経験が全く通じない異世界に放り出されたら不安だろう。その上、生まれ変わった体はひどく虚弱で儘ならず、しかも「人生のすべて」というほど欲して止まない本が、この世界ではどこにもない(正確に言えば、「あるが平民の手が届くようなものではない」)。そんな状態では、「自分で本を作る」という希望に逃げ込むしかないのは仕方ないことではないだろうか。
とはいえ、この問題はルッツをオットーに紹介する(アニメ6話、なろう版25話)頃からはずいぶんと変わってきて、周囲との繋がりも大事にするようになってゆくし、この世界の家族を本当の家族として受け入れるようにもなってゆく。

本好きの癖に知識なさすぎ

マイン(というか麗乃)はたしかにジャンルを問わず様々な本を読んでいたが、にも関わらず本作りでは知識があまり役に立たず失敗しまくる。これは単に「知識がない」というよりも、「読んだだけでは真の理解は得られない」ということだろうと思われる。
実際、序盤もっとも助けになった知識は生前の母に付き合って色々やらされた「オカンアート」や自身が興味を持って体験してみた「和紙作り」など、要するに「経験」したことのあるものばかりである。
これは「単に前世知識だけで無双できるほど単純ではない」という作者の信念に拠るものかと考えられる。

それが最も顕著に表れているエピソードが、カトルカール作りだろう。貧乏平民では手に入れられない材料を使って、いざお菓子作り!……と勇んではみたものの、記憶にあるレシピはいずれも 前世の単位、グラムやらリットルやらを基準にしたもので、この世界の単位ではそれがどの程度に相当するのかがわからない。「お菓子の材料はきっちり計れ」とよく言われるように、微妙な加減の必要なお菓子は目分量で作ると失敗しやすいため、適当に作るわけにも行かない(まして、この世界では高価な砂糖を使うのだし)。そこで閃いたのが「4種類の材料を同じ量だけ使う」カトル・カールという、これは正に「前世の知識があっても無双できるわけではない」ことを作者が強く意識していることを示すものだ。

家の中を見て、なんで新聞もカレンダーもない世界だと気付かないのか

もちろん冷静になれば、家や家具などから技術程度がある程度推測でき、印刷技術の普及していない時代であることが理解できたかも知れない。しかし転生後すぐで動転しており、また前世の「常識」が抜けていないこともあって「印刷物のない世界」を適切に想像できていない、もしくは「想像もしたくない」のだろう。
それに、「中世ヨーロッパ風」ではあっても中世ヨーロッパそのものではないので、技術の発展が同じようであるとは限らない。たとえば史実でも、西洋で印刷が始まったのは15世紀のことだが、東洋では7世紀頃には既に木版印刷による文書の量産が行なわれている。実世界でさえこれほどの差が生じるのだから、見知らぬ世界ではどうなのか、わかったものではない。

パピルス紙の作り方も知らないのか

パピルス紙の原料が芦のような植物であること、繊維を縦横に重ねたような構造であることまでは知っているものの実際にパピルス紙を作った経験はないため、技術的な要点はイマイチ理解不足である。実際には水と発酵で余計な成分を抜いた上で圧着乾燥せねばならず、そう簡単な話ではない(だからこそエジプトはパピルスの製造技術を独占でき、紙の輸出と引き換えに献本を要求し多数の知識を集積したアレクサンドリア大図書館を作ったし、またパピルスの禁輸制裁を受けたペルガモン王国が代替品として羊皮紙を開発するに至ったのだ)。

なぜ木簡を燃やされないように家族に伝えておかないのか

マイン自身にとっては大事なものであることは自明なため燃やされてしまう可能性を想像もしていなかったものと思われるが、そもそも木簡作りは「家の手伝いとして」焚き木を拾うために森へ行き仕事そっちのけで作り上げたものであるから「手伝いもせずに遊んでいた」とは言いにくいし、エーファからしてみれば「娘がはじめてお手伝いで拾ってきた焚き木」にしか見えない。不幸な事故だったのだ。

乗っ取られた「本当のマイン」かわいそう

マインの一人称視点であるために当人の認識があたかも事実であるかのように見えるが、実は「乗っ取った」という認識は正しくない。実際には「麗乃の記憶が思い出されマインの記憶と融合した」のだが、まだ幼ない上に家からほとんど出ないマインの記憶は圧倒的に少ないため、主観的には「麗乃がマインを上書きした」かのように見えているに過ぎず、知識はともかく情緒的にはあくまで歳相応である(ので神殿編では情緒不安定になって接触を求めたりする)。
しばしば判断がおかしい点も、大人の記憶があるため理知的な判断を下しているようでその実判断力は意外に子供、ということなのかも知れない。

ルッツ編

なぜそこまでマインの面倒を見るのか

すべての始まりはパルゥケーキである。
ルッツは男ばかりの兄弟の末っ子で、決して裕福でない家であるから食料が潤沢とは言えず、食べざかりの兄たちにおかずを奪われることも多く常に腹を空かせている。両親も忙しいためその辺りまで気が回っていないが、当人にしてみれば食の不足は命に関わる問題であり、その食料事情を継続可能な形で抜本的に解決してみせたマインは「命の恩人」ぐらいの重みがあるのだ。

飢えているのにおから(パルゥかす)を食べることを思い付かないはずがない

実際にはマインのしたことであるが、ルッツ絡みなのでここに記す。
エーレンフェストが飢饉に見舞われたというなら飼料だって食べようとしたか知れないが、マインの食事などを見てもわかるようにべつだん街に食料が不足しているというわけではない。単にルッツの家が大食らいの男ばかりの兄弟で飯の取り合いになりがちというだけなので、新たな食文化が発生するほどのきっかけとはなっていない。
またルッツは男であり子供であるので自分で料理をすることもなく、それもあってパルゥかすを食べてみるような発想には至らない。
おからを食べものとして認識しレシピを知っていたマインだからこそ思いついた食べ方であって、自然発生するようなメニューではないのだ。

ルッツ大人すぎない?

これはそう、本当にそう。
この世界の1年は現世より長い420日(1日が何時間相当なのかは不明)だが、たとえ6歳時点で実質7歳相当であるにしても、その倍ぐらいの知性を感じる。
とはいえ、この世界の子供は幼いうちから家の仕事を仕込まれ、10歳でもう奉公に出るわけだから我々の思う子供感とは随分違うのだとは思うが。日本だって昔は数えで12歳ぐらいで元服していたのだし。

ルッツの両親、毒親

ディードは口下手でルッツどころか妻にも真意を説明しておらず、それがすれ違いの原因となっているという点ではたしかに「ディードに非がある」にも関わらずルッツに謝罪を要求するなど、些か理不尽にも感じられる。
ただ、そもそもこの世界では「子は親に従う」「女は男に従う」ものというのが一般的認識であり、親の意向を無視しているのはルッツの方だ、という点には注意が必要だろう。

その上でディードは、突き放すようではあったもののルッツの選択を却下はしておらず(という意図は伝わっていなかったが)、決して高圧的に支配するような意味での「毒親」というわけではない。あくまで認識の違いとコミュニケーションの不足によって「そう見えた」だけである。
(これはギュンターにも言えることだが)怒りに任せて大声を上げたり机を叩いて大きな音を立てたりする威嚇的行動は現代の基準だと些か暴力的に思えてしまうが、彼らが職人や兵士といった「肉体労働者」であることも鑑みれば、この世界の標準的なコミュニケーションの範疇を逸脱するものとは言えまい。

技術編

木造で高層建築作るような技術があるのか

実は木造の高層建築自体は紀元前からある。ローマでは1〜2階が石造りで、その上に木造階を重ねた5〜9階ほどの集合住宅が都市部に多く立てられた。エレベータどころか水道すらない時代であるから日々の水汲みも高層ほど重労働となり、その分だけ家賃が安く低所得者が多く住んだようだが火事に際しても上層ほど逃げるのが難しく、ローマの大火では大勢が犠牲になったという。
また中世ヨーロッパでも同様の石積みに木造階を重ねた高層住宅は健在で、パリの15世紀頃からのものなど、各地に中世当時の建物が現存する。

店の本がガラスケースに入っているがガラスは平民には高価ではないのか

現実でもガラス製造の技術自体は古くからあり、それがない社会(日本など)ではガラスは貴重な宝物だったが、製造技術のある社会では必ずしもそこまで高価であったわけではない。平面的なガラスの製法も3世紀までには確立していたし、平滑度や透明度では我々の思い描くようなガラスに及ばないにせよ、板ガラス自体はあって不思議ないと言えよう。
1話冒頭の工房シーンでも棚にガラス器が多く見られるように、この世界にはガラス製造技術が既にあり、貧しい家では板窓であるものの富裕平民の住宅や店舗では窓ガラスも用いられている。

展開編

序盤のテンポが遅い

これはその通り。
なにしろ本作は商業メディア掲載を前提としていないWeb小説という特性上、序盤で盛り上げられなくても打ち切られるようなことはない。
その上、主人公が病弱なため自力で動き回れないことから情報がなかなか得られず、試行錯誤も失敗の連続とあって、どうしても物語が動き出すまでに時間がかかってしまう。
かといって冗長(に見える)エピソードをカットすれば良いかというと、実は異様なほどに伏線が多く、何気ない日常シーンのようであっても後日に繋がる重要な情報だったりするため、省略も難しい。
あれでもアニメは原作より省略されているのだが、それで猶「序盤が遅い」のだという……

下剋上してない/司書になってない

これは単純に、「アニメ化されたのは序盤だけだから」。
原作「小説家になろう」版は677話あるが、アニメ第二期までで カバーしているのはそのうち135話ほどまで、全体の2割ほどに過ぎない。下剋上も司書もずっと先の話なので、是非そこまでアニメ化して欲しいところ。

マイクロフォーサーズの標準ズームを考える

旅行に行くときはなるべく身軽でありたい。カメラは外せないがレンズは最小限、しかし景色を撮るための広角、食べ物を撮るための近接、それに多少の望遠は欲しい。
単焦点だと一本あたりは小型軽量でも3本ぐらいを使い分ける羽目になり、また付け替えの手間もあって撮りたいと思った時に撮れない場合がある。動かないものならば少々時間を取っても良いが、動物や乗り物など「今すぐ」撮るためにはどうしても即応性が不足する。
やはりズームレンズが必要だ。それぞれの画角では単焦点に劣るとしても、画角を自在に変更できる能力は捨て難い。

そういうわけで今回は、広角〜中望遠域をカヴァーする標準ズームレンズを物色する。

求める性能としては、

  • 景色を多く撮るので、広角側はそれなりに広く。現在使っている15mm F1.7(換算30mm)では若干の不足を感じる場面があるので、最低でも12mm(換算24mm)程度は欲しい。
  • 望遠側は多くを求めない。とはいえ最低でも標準域50mm相当程度は必要で、できれば中望遠域ぐらいまでをカヴァーしたい。
  • 近接はマクロというほど強力である必要はなく、料理などを撮ることができれば十分。
  • 重量は軽いほど良い。OM-D E-M5/M10系やPENのボディが400g前後なので、レンズは300gとし、ストラップ込みで合計重量を800g程度に抑えたい。
  • 価格は……まあ安く済むならそれに越したことはない。

といったところ。

候補

まずはズームレンズのうち広角側が12mmよりも長いレンズ、望遠側が25mmよりも短かいレンズを候補から外し、10本ほどに絞る。

パナソニック 最大撮影倍率(換算) 最短撮影距離 重量 価格(概算)
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7 ASPH. x0.28 0.28m 690g 18万
LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S x0.26 W:0.20m / T:0.30m 70g 2万
LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 Ⅱ ASPH. POWER O.I.S. x0.34 全域0.25m 305g 8万
LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S. x0.54 W:0.20m / T:0.25m 210g 4万
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S. x0.6 W:0.20m / T:0.24m 320g 9万
オリンパス(OMデジタルソリューションズ) 最大撮影倍率(換算) 最短撮影距離 重量 価格(概算)
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO W:x0.14 / T:x0.42 0.23m 411g 12万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO x0.6 0.2m 382g 7万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO x0.5 W:0.12m / T:0.23m 254g 5万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO W:x0.6 / T:x0.42 W:0.15m / T:0.45m 560g 15万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 W:x0.20 / T:x0.46 W:0.22m / T:0.7m 455g 9万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ x0.72(Macro) 0.20m(Macro) 212g (2万)

最後に加えた1本は生産終了品なので新たに購入するレンズの選択肢としてはおすすめしにくいが、私の所有レンズなので参考情報として加えておく。

広角

上記のうち、広角が12mmよりも広いのはLEICA VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7とM.ZUIKO 8-25mm F4.0 PROのみだ。この2本は望遠側が25mm止まりなので標準域のズームレンズというよりも「やや望遠側の長い広角ズーム」という方が適切だろう。とりわけ10-25mmはズームレンズながらF値1.7と単焦点並みの明るさを持つ大口径レンズで、その分だけ重く高価なのであまり観光で気軽に持ち歩くレンズではない。
その他のレンズはいずれも最広角12mmで、さしあたり優劣はない。

望遠

焦点距離ではM.Zuiko 12-200mmが圧倒的で、これはもう超望遠の域である。これほどの超倍率ズームだけに450g超と若干重いし、流石に画質は若干甘さが否めないようだが、広角から超望遠までを1本で賄うならこれ以外の選択はあるまい。とはいえ観光に於いてそれほどの超望遠を使う場面は恐らくそれほど多くはなく、敢えて観光用として採用すべきかどうかには些か疑問がある。
次点のM.Zuiko 12-100mm F4 PROはプロの写真家をして「これ1本あればほとんどの仕事は間に合う」と言わしめるほどの超レンズだが、560gもの重さと12万という価格は流石に軽々しく手を出せるものではなく、気軽な観光用レンズとは言えない。

この時点で、「超広角にこだわる」「超望遠にこだわる」場合の選択はほぼ決したようなものだが、逆に言えば「どちらもそこまで必要ない」場合の決め手はまだない。
残り6本を比較してみると、望遠側の焦点距離が短かい方から32mm、35mm、40mm、45mm、60mm(2本)となる。最もコンパクトな12-32mmと最長の12-60mmでは望遠の画角が倍ぐらい違うが、逆に言えば2倍弱の差に過ぎない。長いに越したことはないが、短かいからといって使い勝手が極端に劣ることはなさそうだ。

近接

この項目は実はひとつの性能ではなく、最大撮影倍率と最短撮影距離の両方が影響してくる。
恐らく旅先で小さなものをクローズアップ撮影する機会はさほど多くないだろうが、たとえば花や実などを大きめに撮りたいことはあるかも知れない。
最大撮影倍率では、スペック上もっとも高倍率なのは(マクロモードを持つM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3を除けば)LEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0とM.ZUIKO 12-40mm F2.8 PROの換算0.6倍、次いでLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6の0.54倍、M.ZUIKO 12-45mm F4.0 PROの0.5倍だ。
一方で最大撮影倍率の低い方ではLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6の換算0.26倍、LEICA VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7の0.28倍、LUMIX G X 12-35mm F2.8の0.34倍あたり。

最大撮影倍率から「どれぐらいの大きさに撮れるか」を想像するのはちょっと難しいと思うが、大雑把な目安としては
0.2:アジサイの房ぐらいの大きさなら画面一杯に撮れる
0.4:バラ一輪ぐらいを画面一杯に撮れる
0.6:タンポポの花を画面一杯に撮れる
ぐらいのイメージ。0.6までなくてもいいけど0.3ぐらいだと若干物足りない気はする。
この時点で絞り込むならば、最大撮影倍率の低いパナソニックの3本を落とすところだろうか。

最短撮影距離の方は、主に料理写真などに関わる部分だ。撮影距離の長いレンズだと目の前の料理を撮るために席を立たねばならなくなったりするので、なるべく短距離で撮影できた方が良い。
撮影距離は望遠ほど長くなるが、超望遠で料理を撮ろうとすると画角が狭すぎてごく一部しか写すことができなくなるし、逆に最大広角で撮るとパースが強くなり不自然さが出るので、だいたい標準的な25mmあたりの最短撮影距離が25cmぐらいに収まっていれば良いだろう。撮影距離は最広角と最望遠の数値はあっても25mm時のものはないため明確な比較はできないが、流石にM.ZUIKO 12-200mm F3.5-6.3の最広角22cmは若干厳しいかも知れない。他のレンズは12-100mm以外いずれも望遠側でも25cm以内に収まっており、さほど不便はないものと思う。

こうして見ると、性能面だけでは意外に絞りにくい。いずれも劣らぬ性能を持ち、あとは何を重視するかというバランスの問題になってくる。

価格

最安はパナソニックLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6、2万円ちょっとで買える。次点がLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6で、最安時期なら3.5万ほどになる。3番目に安いオリンパスM.Zuiko 12-45mm F4 PROとは2万5千円ほどの差があり、LUMIXのコストパフォーマンスが光る。
逆に最も高いのはM.Zuiko 12-100mm F4.0 PROで、最安でも12万円。次いでLEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0、最安で7万6千円。

重量

最軽量はLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6でわずか70g。次点はLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6の210gとM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3の212g、またM.ZUIKO 12-45mm F4.0 PROも245gと、なかなかいい勝負だ。まあ重量に関してはLUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8(305g)やLEICAVARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0(320g)も十分に許容範囲ではある。流石に10-25mm F1.7(690g)や12-200mm F4.0 PRO(560g)はちょっと厳しい。

総合評価

最後に、ここまでの全性能をスコア化してみる。
広角・望遠・最大撮影倍率・最短撮影距離・重量・価格それぞれに、最も性能の低いものに0、以降順番に1点づつスコアを割り振ってゆく。11本あるので最低は0、最高は10点ということになるが、性能指標によっては同率も生じ得るので必ずしも最大が10とはなっておらず、また他に比して高い性能を持つものは相応に評価すべく調整を加えている。
広角性能については11本中9本が0となる関係上、より広角なレンズのスコアがごく低いスコアしか与えられないことになるので、これのみ5・10点を割り振った。望遠は12-200および12-100が突出しているので、この部分のスコアを高めにしている。またF値は6段階に分けられたので2刻みとなった。

パナソニック 広角 望遠 F値 倍率 最短 重量 価格 合計
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7 ASPH. 5 0 10 1 0 0 0 16
LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S 0 1 2 0 4 10 8 25
LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 Ⅱ ASPH. POWER O.I.S. 0 2 8 2 1 6 4 23
LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S. 0 6 2 6 4 9 7 34
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S. 0 6 6 7 4 5 3 31
オリンパス(OMデジタルソリューションズ) 広角 望遠 F値 倍率 最短 重量 価格 合計
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO 10 0 4 3 2 3 2 24
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO 0 3 8 7 4 4 5 31
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 0 4 4 5 6 7 6 32
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 0 8 4 6 5 1 1 25
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 0 10 0 4 3 2 3 22
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ 0 5 0 8 4 8 8 33

純粋にレンズ性能を追及すれば大口径化しがちだが、そうすると重量および価格のスコアが悪化する。結果、ピーク性能よりも総じてバランスの良いレンズが高スコアとなる。
そういうわけで、スコアトップは性能の割に安くて軽いLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6(34点)、次いでマクロモードによってスコアを稼いだM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3となった。
ただ、このスコアは性能からの絶対指標ではなく、あくまでこの11本の中での順位スコアであるから1〜2点程度の差異はあまり意味を持たない。その意味で30点以上のLEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0、M.ZUIKO 12-45mm F4.0 PRO、M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PROはいずれも甲乙付け難いレンズと言っていいだろう。
また、これは全体的なバランスを重んじるものだから、どうしても譲れない性能がある場合はこのスコアはあまり意味を為さなくなる。

個人的にこの中から選ぶならば、やはり手頃な価格と重量で必須性能をほぼ備えた、LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの2本いずれかだろう。