マイクロフォーサーズの標準ズームを考える

旅行に行くときはなるべく身軽でありたい。カメラは外せないがレンズは最小限、しかし景色を撮るための広角、食べ物を撮るための近接、それに多少の望遠は欲しい。
単焦点だと一本あたりは小型軽量でも3本ぐらいを使い分ける羽目になり、また付け替えの手間もあって撮りたいと思った時に撮れない場合がある。動かないものならば少々時間を取っても良いが、動物や乗り物など「今すぐ」撮るためにはどうしても即応性が不足する。
やはりズームレンズが必要だ。それぞれの画角では単焦点に劣るとしても、画角を自在に変更できる能力は捨て難い。

そういうわけで今回は、広角〜中望遠域をカヴァーする標準ズームレンズを物色する。

求める性能としては、

  • 景色を多く撮るので、広角側はそれなりに広く。現在使っている15mm F1.7(換算30mm)では若干の不足を感じる場面があるので、最低でも12mm(換算24mm)程度は欲しい。
  • 望遠側は多くを求めない。とはいえ最低でも標準域50mm相当程度は必要で、できれば中望遠域ぐらいまでをカヴァーしたい。
  • 近接はマクロというほど強力である必要はなく、料理などを撮ることができれば十分。
  • 重量は軽いほど良い。OM-D E-M5/M10系やPENのボディが400g前後なので、レンズは300gとし、ストラップ込みで合計重量を800g程度に抑えたい。
  • 価格は……まあ安く済むならそれに越したことはない。

といったところ。

候補

まずはズームレンズのうち広角側が12mmよりも長いレンズ、望遠側が25mmよりも短かいレンズを候補から外し、10本ほどに絞る。

パナソニック 最大撮影倍率(換算) 最短撮影距離 重量 価格(概算)
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7 ASPH. x0.28 0.28m 690g 18万
LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S x0.26 W:0.20m / T:0.30m 70g 2万
LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 Ⅱ ASPH. POWER O.I.S. x0.34 全域0.25m 305g 8万
LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S. x0.54 W:0.20m / T:0.25m 210g 4万
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S. x0.6 W:0.20m / T:0.24m 320g 9万
オリンパス(OMデジタルソリューションズ) 最大撮影倍率(換算) 最短撮影距離 重量 価格(概算)
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO W:x0.14 / T:x0.42 0.23m 411g 12万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO x0.6 0.2m 382g 7万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO x0.5 W:0.12m / T:0.23m 254g 5万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO W:x0.6 / T:x0.42 W:0.15m / T:0.45m 560g 15万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 W:x0.20 / T:x0.46 W:0.22m / T:0.7m 455g 9万
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ x0.72(Macro) 0.20m(Macro) 212g (2万)

最後に加えた1本は生産終了品なので新たに購入するレンズの選択肢としてはおすすめしにくいが、私の所有レンズなので参考情報として加えておく。

広角

上記のうち、広角が12mmよりも広いのはLEICA VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7とM.ZUIKO 8-25mm F4.0 PROのみだ。この2本は望遠側が25mm止まりなので標準域のズームレンズというよりも「やや望遠側の長い広角ズーム」という方が適切だろう。とりわけ10-25mmはズームレンズながらF値1.7と単焦点並みの明るさを持つ大口径レンズで、その分だけ重く高価なのであまり観光で気軽に持ち歩くレンズではない。
その他のレンズはいずれも最広角12mmで、さしあたり優劣はない。

望遠

焦点距離ではM.Zuiko 12-200mmが圧倒的で、これはもう超望遠の域である。これほどの超倍率ズームだけに450g超と若干重いし、流石に画質は若干甘さが否めないようだが、広角から超望遠までを1本で賄うならこれ以外の選択はあるまい。とはいえ観光に於いてそれほどの超望遠を使う場面は恐らくそれほど多くはなく、敢えて観光用として採用すべきかどうかには些か疑問がある。
次点のM.Zuiko 12-100mm F4 PROはプロをして「これ1本あればほとんどの仕事は間に合う」と言わしめる超レンズだが、560gもの重さと12万という価格は流石に軽々しく手を出せるものではなく、気軽な観光用レンズとは言えない。

この時点で、「超広角にこだわる」「超望遠にこだわる」場合の選択はほぼ決したようなものだが、逆に言えば「どちらもそこまで必要ない」場合の決め手はまだない。
残り6本を比較してみると、望遠側の焦点距離が短かい方から32mm、35mm、40mm、45mm、60mm(2本)となる。最もコンパクトな12-32mmと最長の12-60mmでは望遠の画角が倍ぐらい違うが、逆に言えば2倍弱の差に過ぎない。長いに越したことはないが、短かいからといって使い勝手が極端に劣ることはなさそうだ。

近接

この項目は実はひとつの性能ではなく、最大撮影倍率と最短撮影距離の両方が影響してくる。
恐らく旅先で小さなものをクローズアップ撮影する機会はさほど多くないだろうが、たとえば花や実などを大きめに撮りたいことはあるかも知れない。
最大撮影倍率では、スペック上もっとも高倍率なのは(マクロモードを持つM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3を除けば)LEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0とM.ZUIKO 12-40mm F2.8 PROの換算0.6倍、次いでLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6の0.54倍、M.ZUIKO 12-45mm F4.0 PROの0.5倍だ。
一方で最大撮影倍率の低い方ではLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6の換算0.26倍、LEICA VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7の0.28倍、LUMIX G X 12-35mm F2.8の0.34倍あたり。

最大撮影倍率から「どれぐらいの大きさに撮れるか」を想像するのはちょっと難しいと思うが、大雑把な目安としては
0.2:アジサイの房ぐらいの大きさなら画面一杯に撮れる
0.4:バラ一輪ぐらいを画面一杯に撮れる
0.6:タンポポの花を画面一杯に撮れる
ぐらいのイメージ。0.6までなくてもいいけど0.3ぐらいだと若干物足りない気はする。
この時点で絞り込むならば、最大撮影倍率の低いパナソニックの3本を落とすところだろうか。

最短撮影距離の方は、主に料理写真などに関わる部分だ。撮影距離の長いレンズだと目の前の料理を撮るために席を立たねばならなくなったりするので、なるべく短距離で撮影できた方が良い。
撮影距離は望遠ほど長くなるが、超望遠で料理を撮ろうとすると画角が狭すぎてごく一部しか写すことができなくなるし、逆に最大広角で撮るとパースが強くなり不自然さが出るので、だいたい標準的な25mmあたりの最短撮影距離が25cmぐらいに収まっていれば良いだろう。撮影距離は最広角と最望遠の数値はあっても25mm時のものはないため明確な比較はできないが、流石にM.ZUIKO 12-200mm F3.5-6.3の最広角22cmは若干厳しいかも知れない。他のレンズは12-100mm以外いずれも望遠側でも25cm以内に収まっており、さほど不便はないものと思う。

こうして見ると、性能面だけでは以外に絞りにくい。いずれも劣らぬ性能を持ち、あとは何を重視するかというバランスの問題になってくる。

価格

最安はパナソニックLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6、2万円ちょっとで買える。次点がLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6で、最安時期なら3.5万ほどになる。3番目に安いオリンパスM.Zuiko 12-45mm F4 PROとは2万5千円ほどの差があり、LUMIXのコストパフォーマンスが光る。
逆に最も高いのはM.Zuiko 12-100mm F4.0 PROで、最安でも12万円。次いでLEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0、最安で7万6千円。

重量

最軽量はLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6でわずか70g。次点はLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6の210gとM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3の212g、またM.ZUIKO 12-45mm F4.0 PROも245gと、なかなかいい勝負だ。まあ重量に関してはLUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8(305g)やLEICAVARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0(320g)も十分に許容範囲ではある。流石に10-25mm F1.7(690g)や12-200mm F4.0 PRO(560g)はちょっと厳しい。

総合評価

最後に、ここまでの全性能をスコア化してみる。
広角・望遠・最大撮影倍率・最短撮影距離・重量・価格それぞれに、最も性能の低いものに0、以降順番に1点づつスコアを割り振ってゆく。11本あるので最低は0、最高は10点ということになるが、性能指標によっては同率も生じ得るので必ずしも最大が10とはなっておらず、また他に比して高い性能を持つものは相応に評価すべく調整を加えている。
広角性能については11本中9本が0となる関係上、より広角なレンズのスコアがごく低いスコアしか与えられないことになるので、これのみ5・10点を割り振った。望遠は12-200および12-100が突出しているので、この部分のスコアを高めにしている。またF値は6段階に分けられたので2刻みとなった。

パナソニック 広角 望遠 F値 倍率 最短 重量 価格 合計
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7 ASPH. 5 0 10 1 0 0 0 16
LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S 0 1 2 0 4 10 8 25
LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 Ⅱ ASPH. POWER O.I.S. 0 2 8 2 1 6 4 23
LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S. 0 6 2 6 4 9 7 34
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S. 0 6 6 7 4 5 3 31
オリンパス(OMデジタルソリューションズ) 広角 望遠 F値 倍率 最短 重量 価格 合計
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO 10 0 4 3 2 3 2 24
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO 0 3 8 7 4 4 5 31
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 0 4 4 5 6 7 6 32
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 0 8 4 6 5 1 1 25
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 0 10 0 4 3 2 3 22
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ 0 5 0 8 4 8 8 33

純粋にレンズ性能を追及すれば大口径化しがちだが、そうすると重量および価格のスコアが悪化する。結果、ピーク性能よりも総じてバランスの良いレンズが高スコアとなる。
そういうわけで、スコアトップは性能の割に安くて軽いLUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6(34点)、次いでマクロモードによってスコアを稼いだM.ZUIKO 12-50mm F3.5-6.3となった。
ただ、このスコアは性能からの絶対指標ではなく、あくまでこの11本の中での順位スコアであるから1〜2点程度の差異はあまり意味を持たない。その意味で30点以上のLEICA VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0、M.ZUIKO 12-45mm F4.0 PRO、M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PROはいずれも甲乙付け難いレンズと言っていいだろう。
また、これは全体的なバランスを重んじるものだから、どうしても譲れない性能がある場合はこのスコアはあまり意味を為さなくなる。

個人的にこの中から選ぶならば、やはり手頃な価格と重量で必須性能をほぼ備えた、LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの2本いずれかだろう。