F0.95のレンズ一覧

明るいレンズが欲しい。

写真の良さはレンズ性能で決まるわけではないが、レンズ性能は可能性を広げ、撮影を楽にしてくれる(はずだ)。
明るいということはシャッタースピードを稼げるということでもあり、あるいはボケが強くなるということでもある。ボケれば良いというわけではないものの、ピント面以外が大きくボケることによって被写体を浮き立たせることができるのは魅力的ではある。
この方面では比較的センサーサイズの小さいフォーマットであるマイクロフォーサーズはどうしても不利だが、その分だけ明るいレンズを使えば、不利を補うことも不可能ではない。

明るいレンズは概して大きく、重く、高い。これはF値が「焦点距離÷有効口径」で決まるが故にF値を小さくしようと思えば大口径にならざるを得ないという性質によるものだが、逆に言えば焦点距離を抑えれば有効口径も抑えることができるし、あるいは有効口径を稼げばそこそこ長い焦点距離でも明るくできるということではある。しかしながらズームレンズやオートフォーカスでは有効口径を稼ぎにくいようで、大口径レンズは大抵マニュアルフォーカス単焦点である。

オートフォーカスレンズは電気的な機構もさることながら、カメラ本体との通信が必要であるためメーカーとの正式な契約なしには作ることができないが、マニュアルフォーカスならばレンズマウントの形状さえ合わせてしまえばどうにでも作りようがあり、それゆえ勝手サードパーティーレンズの存在する余地が生まれ、大口径単焦点マニュアルレンズが比較的安価に入手できる。
「明るいレンズ」の世界ではF0.95というのが一つの基準であるらしい。人の目はF1.0だとされ(眉唾ではあるが)、「それより僅かに明るい」ということなのかもしれない。ともあれ、F0.95を謳うレンズが多数存在する。今回はそれらを中心に比較してみたい。

私はマイクロフォーサーズを使っているので、他マウントのレンズについては参考程度に留める。

F0.95(マイクロフォーサーズ用)

ブランド 焦点距離 最短撮影距離 最大撮影倍率 重量 全長 フィルター径
フォクトレンダー 10.5mm 0.17m x0.12 585g 82.4mm φ72
中一光学 17mm 0.3m x0.07 460g 75mm φ58
フォクトレンダー 17.5mm 0.15m x0.25 540g 80mm φ54
LAOWA 18mm 0.15m x0.15 500g 83mm φ62
フォクトレンダー 25mm 0.17m x0.26 435g 70mm φ52
中一光学 25mm 0.25m x0.13 230g 55mm φ43
七工匠 25mm 0.25m x0.13 582g 99.7mm φ52
LAOWA 25mm 0.25m x0.17 570g 86mm φ62
Meike 25mm 0.25m 600g φ62
SLR Magic 25mm 0.26m 500g φ52
中一光学 35mm 0.35m x0.13 390g 58mm φ55
七工匠 35mm 0.37m x0.12 369g 59mm φ52
Meike 35mm 0.39m 380g φ52
フォクトレンダー 42.5mm 0.17m x0.26 571g 74.6mm φ58
中一光学 50mm 0.5m x0.05 770g 88mm φ67
七工匠 50mm 0.45m x0.1 410g 56mm φ62
銘匠光学 50mm 0.5m x0.05 410g 60mm φ58
SLR Magic 50mm 0.5m 640g φ62
フォクトレンダー 60mm 0.34m x0.25 860g 74.6mm φ77

(撮影倍率はなぜか同じ最短撮影距離でもメーカー発表値に差があったり、そもそも未発表だったりする(適当に同じ距離のものに合わせて書いた)ので参考程度に)

Voigtländer(フォクトレンダー)は長野のレンズメーカー、コシナがドイツの老舗レンズブランドの商標権を得て製造している。ライカソニーE、フジXなどのレンズもあるが、F0.95以下の明るさはマイクロフォーサーズ用にしか存在しない。
レンズ設計としては、最短撮影距離の短さが際立つ。いずれも最大撮影倍率が(換算値で)0.5倍ほどあり、セミマクロとして運用できる。
反面、遠慮のない光学設計はカメラ本体を上回るほどの重さや価格に反映されている。
マイクロフォーサーズ専用設計だけあって換算21mmから120mmと広い範囲をカバーしてくれるのは嬉しい。
なお29mm F0.8という超レンズも存在する(後述)。

中一光学(mitakon)、七工匠(7artisans)、銘匠光学(TTartisans)、LAOWA、SLR Magic、Meikeはいずれも中国のレンズメーカー。

中一光学はスピードマスターの名でF0.95レンズをラインナップしている。17mm・25mmはマイクロフォーサーズ専用、35・50mmはAPS-Cまでをカバー。
またm43マウント専用にT1.0シネマレンズも存在する。
25mmは僅か230gと、大口径レンズと思えぬ軽さ。

七工匠は特にレンズ名はないようだ。大口径でありながら3万を切る安さは魅力的。

銘匠光学(TTartisans)は主にライカM42マウントレンズなどを多く揃える。50mmの他に35mにもF0.95があるのだが、こちらはなぜかマイクロフォーサーズ用がない。

LAOWAは他社にはない特徴的なコンセプトのレンズを多く揃える。F0.95シリーズではないが、マイクロフォーサーズ用では超軽量の7.5mm F2や超広角の4mm魚眼など。

SLR Magicは名前からして一眼レフ用レンズメーカーだが、シネレンズを多く扱う。

Meikeは

性能

可能ならば全種の性能を比較したいところだが、残念ながら買って試すほどの余裕はなく、また同条件で比較できるだけの情報も得られないので、あくまで個別に行われたテスト事例やレビューを見ての判断となる。
フォクトレンダーは全般に、開放付近がかなりソフトフォーカスとなることが知られている。それはそれで味わいある描写ながら、ある程度の解像力を期待するならF2程度まで絞らざるを得ず、しかしそれでは折角の大口径が生かされない。価格・重量ともヘヴィ級であることから気軽には手を出しにくく、最短撮影距離を活用するか他社にはない焦点距離のために選ぶレンズということになるだろう。
中一光学は全般的に、ボケに二線傾向が見られるようだ。とりわけ小型軽量な25mmではそれが顕著で、せっかくの強いボケにも関わらずザワつきが目立ち、あまり背景が溶け込まない気がする。
七工匠はボケも含めてかなり素直な描写で、なおかつ価格も手頃だが、25mmはマイクロフォーサーズ以外のマウントにも対応するイメージサークルのゆえかフォクトレンダー以上の大きさと重さで、些か使いにくい。
LAOWAは色収差を抑えたAPO設計とのことで、溶けるようになだらかなボケは魅力的。

この中で一本を選ぶとすれば、手頃な価格でバランスの取れたスペックと描写力を両立する七工匠35mm F0.95だろうか。撮影倍率がもう少し高いと更に使い勝手が高まるのだが、それは贅沢というものかもしれない。

マイクロフォーサーズでは換算70mm相当と若干画角が狭いものの、望遠というほどまで強くはないため比較的標準レンズに近い感覚で使えるかと思う。

他レンズ(参考情報)

マイクロフォーサーズ用以外のF0.95レンズや、F0.95以外のマイクロフォーサーズ対応大口径レンズについても触れておく。

ブランド F値 焦点距離 最短撮影距離 最大撮影倍率 重量 全長 フィルター径
イカ F0.95 50mm 1m x0.02 571g 74.6mm φ58
名匠光学 F0.95 50mm 0.7m x0.02 690g 73mm φ67
ニコン F0.95 58mm 0.5m x0.19 2000g 153mm φ82
フォクトレンダー F0.8 29mm 0.37m x0.1 703g 88.9mm φ62
IBELUX F0.85 40mm 0.75m 1200g 128mm φ67
Kamlan F1.1 32mm 0.4m 572g 91mm φ62
Kamlan F1.1 50mm 0.4m 563g 72mm φ62
オリンパス F1.2 17mm 0.2m x0.15 390g 87mm φ62
オリンパス F1.2 25mm 0.3m x0.11 410g 87mm φ62
オリンパス F1.2 45mm 0.5m x0.1 410g 84.9mm φ62

イカは……まあ説明不要だろう。参考価格およそ150万、他システムなら本体と大口径レンズ一式買ってお釣りが来る金額で、それに見合うこだわりの性能はあるのだろうが正直なところ「情報を買っている」感は否めない。
同じライカMマウントでほぼ同スペックの名匠光学50mm F0.95が価格は1/15とあっては尚更。
ニコン58mm F0.95はもう「どこまでこだわるか」を突き詰めたような代物だ。完全受注生産、ライカのそれに匹敵する価格もさることながら驚きの重量2kg。
ここまではマイクロフォーサーズ以外のレンズだが、以下はマイクロフォーサーズに対応したレンズとなる。
フォクトレンダー「スーパーノクトン」29mm F0.8はニコンのそれと同じく換算58mmの画角に”夜光”を超えるF0.8を実現しながらも、価格はたったの20万。いや十分高いレンズだが、こうやって比較すると激安に見えてくる。
IBELUXはマウントアダプターのKIPONがドイツの工業系光学メーカーと合同で立ち上げたブランドで、このレンズは前玉が凹レンズだそう。重量1.2kgは些か辛い。
Kamlanは台湾のレンズブランド。特殊ガラスや非球面レンズを用いないシンプルな構成のためフレアやフリンジが明瞭に発生するものの、使いようによっては演出として効果的だろう。600g弱は軽くはないが、重すぎるというほどでもない。
オリンパスM.zuiko F1.2PROシリーズはオートフォーカスレンズとしては最も明るいF1.2。なるべく明るいレンズを、マニュアルではなくオートフォーカスで運用したいならばこれ一択だろう。