1/35 四式甲脚砲乙型「呑竜」

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オランダで発明された連動式多脚歩行機構を取り入れた「ヤンセン式」駆動装置を採用した大型甲脚砲。
楊式は他の脚歩行メカニズムと異なり、歩行時の動揺が少ないため射撃プラットフォームに適しているが、その反面で機構上どうしても高さおよび幅が大きくなりすぎるという欠点も有する。
これを逆に利点と見做し、車体左右へ増設したデッキに歩兵を随伴させることにより高所からの砲撃・制圧射撃を行なう移動トーチカとして構想されたのが本機である。
上部には対戦車戦闘に適した75mm野砲、機体前方には70mm八連装噴進砲2門を備え、甲板上からは歩兵分隊重機関銃や擲弾筒で側方の敵を牽制する。機動拠点として歩兵中隊ごとに1機が配備され、堅固な防衛能力を発揮した。
本機は現地改修により、下方の死角を補うための機銃砲塔を機体下部に増設(型遅れとなった八九式戦車から移植したもの)。正面主砲を取り外し機銃に入れ替えたのは、この下部砲塔が歩兵の牽制目的であり対戦車戦の必要がないことと、前後に長い砲塔が脚部に干渉し180度旋回できない欠点を補うためだろう。

全長
5520mm
全幅
8050mm
全高
5355mm
固定武装
九〇式三十八口径七糎半野砲1門、四式七糎八連装噴進砲2門、九七式車載重機関銃2門
乗員
10名

──という設定の架空戦闘車両を作ってみた。元となったのはタミヤ1/35 日本陸軍 一式砲戦車と、テオ・ヤンセンのストランド・ビーストである。

呑竜という名は、「太陽の牙ダグラム」に登場する4脚戦車、アビテートF44B「テキーラガンナー」に由来する。テキーラ→竜舌蘭の酒→竜を呑む、という連想──つまり深い意味はない。一式砲戦車ベースなのに「四式乙型」なのも44Bという型番に合わせてのことで、1944年式=皇紀2604年式、Bなので乙型という。

「甲脚砲」とは、PS2の歴史改変SF戦闘ゲーム「RIng of Red」に登場する架空の歩行戦闘車両のこと。
第二次世界大戦中に開発された歩行戦車によって世界史が塗り変えられ、日本は本土決戦の末に南北分割当地されているという設定である。ゲームの主役となる甲脚砲/AFWは歩兵3班を随伴させ、うち1班が背面デッキに同乗し装填などを補佐することで性能が左右される、ユニークなシステムであった。
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Ring of Red ベスト

Ring of Red ベスト

  • 発売日: 2001/09/27
  • メディア: Video Game

制作は「ヤンセンのストランドビーストに戦車くっつけたら面白いのでは」程度の安易な一発ネタから始まった。「大人の科学」にキット付きの号があるのは知っていたが、調べてみると同型のキットが安価に販売されているようだ(大人の科学オリジナル品をコピーしたのか、それとも元々中国あたりで作られていた安価なキットを大人の科学が取り入れたのか、そのあたりは判らない)。
脚部がシンプルな骨組とクランクのみで構成されており前近代的な雰囲気があるので、素体となる戦車の方も現代的なものではなく、開発黎明期の迷走ぶりが感じられる垢抜けない車種が相応わしいだろう。
戦車のプラモといえばまずドイツ軍だが、洗練されて格好良すぎるので避ける。米軍も合理的で無駄が少ない。迷走しやすいのはなんといっても英軍か日本軍、ということで適当に安めのキットを探す。

この時点では2000円を下回る九七式チハかM3グラント(原型は米戦車だが)あたりを候補としていたのだが、ストランドビースト部分が高さ11cm、前後長14cm、幅(1組3脚あたり)7cmと1/35に合わせるには結構な大きさだったため「これ足が盛大に左右へ張り出すな……いっそ足の上に台を組んだらテキーラガンナーっぽくなるのでは?」ということで方針を固め、じゃあ台の上に載せる歩兵も必要だなとキットを探していたら、ちょうどチハ車体ベースの一式砲戦車に歩兵4体が付属しており、そういうことになった。

左右甲板は1.2mm厚のプラ板に鬼目のやすりでざくざく傷を付け、5mm間隔で溝を掘ったものをL字材のフレームに載せている。大きさは8cm、35倍スケールではおよそ四畳半程度である。ここに土嚢を組んでいるので、兵が乗れる面積はせいぜい二畳程度か。
手摺りに利用可能な材が手元になかったため、サイズ統一しやすいランナーを利用したのだが正直だいぶサイズオーバーで、太さ3mmだから35倍すると10cmぐらいになってしまう。これは可能ならば適当な太さの材で作り直したい。
土嚢を載せたのはオリジナルテキーラガンナーの仕様ではなく、こちらの素晴らしいテキーラガンナーに大いに影響を受けたものだが、機関銃分隊を乗せるならば薄い防盾よりも安心感がある。
土嚢も鬼目やすりで縦横に傷を付けることで布地の毛羽感を出し、そこに土色と白でドライブラシをかけ、隙間にシェーディングを施している。今回の塗装でこれが一番ちゃんと手をかけたかも知れない。

左右に据える機銃のうち、ひとつは一式砲戦車のパーツとして付属していた、チハの車載機銃用と思われる軽機銃を流用するとして、もうひとつは重機銃が欲しいところだ。しかし日本軍の用いる機銃はキット化事例が少ない。というかそもそも日本軍が少ない。
大戦期ミリタリーものでの人気は、独軍>>>英米>ソ連>>>日本軍>その他という感じで、歩兵や装備品も独軍ならば豊富だが日本軍はごく僅かしかなく、最も安価に入手しやすいタミヤ1/35系だと「歩兵」「将校」たった2種である。
ピットロードからは九二式重機関銃チームがキット化されているのだが、生産数の少ないメーカーだけに価格が高価めで、これだけでストランドビースト+砲戦車を優に上回ってしまう。

既にある歩兵とダブってしまうというのも避けたかったので、安価なタミヤアメリカ軍小火器セットに入っている機銃を元にそれっぽく改造してお茶を濁すことにした。

九二式重機関銃は7.7mm弾で、米軍だと軽機関銃相当となるのでサイズ的にも合うM1919A6を素体にシルエットを適当に合わせてゆく。銃架にはM8無反動砲のものを流用。ただ、特徴的な放熱板を備えたバレルジャケット部がないとイマイチそれっぽく見えない……手作業での再現は困難と見て、2.5mm径のスプリングをかぶせてみたら、そこそこ良い感じになった。
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さて問題は下面である。
構造上、左右足の間に大きな空間ができ、ここが死角になってしまう。本来のテキーラガンナーでは足の間がもっと狭いので死角があまり意識されないのだが、本機の場合は左右に大きく張り出しているだけにどうしても中央の隙間が目立つ。また、(本来の戦車がそういうものなのかどうかはよく解らないが)このキットだと下面が真っ平らで何の装飾もなく、なんとも物足りない。戦車ならばそこを晒すことはまずないから気にもなるまいが、本機では地上から大きく浮かせているため結構はっきり見えてしまうので、何か適当なディティールを作り込まないと間が持たない。
というわけでこのあたりに機銃砲塔か何かを据えて、死角問題の解消とディティールの追加を狙った……のだが、どうも丁度良い砲塔が手に入らない。なにしろ普段はプラモを作ることもないので適当なパーツの持ち合わせなどなく、さりとて砲塔のためだけにもう一台買うのも無駄が多い。秋葉のYS mintにはランナー単位でのバラ売りがあるので物色もしたが、いい観じのパーツを手に入れることはできなかった。
諦めて自作を試みる。
参考にすべく日本軍戦車の画像などを探していたら、ガルパンの公式が無料配布している1/35八九式中戦車のペーパークラフトを発見したので、それを型紙にプラ板で砲塔をスクラッチすることにした。切り取った上面装甲にL字プラ材を切って「のりしろ」を作り、側面装甲を接着する。ただ装甲は垂直ではなく下方が広がっているため、そのままではうまく接着できない。また、どうしても多少の隙間ができてしまうので、そういうところはパテで埋めて成形してゆく。
ペーパークラフトだと鋲などの細かいパーツはは印刷で対応するわけだが、模型だと一つひとつ植えてゆくしかない。
砲塔の前後にはチハ用の車載機銃部品と思しきパーツを埋め込む。

脚部機構は左右に連結パイプが突き出て、その先にキャップを被せるようになっている。ちょっと収まりが悪い気がしたので、キャップの先にプラ板組みの装甲板を追加。中央を帯状にボルト止め加工してみたが、リベットをランナーに並んだ状態で接着して切り離せば綺麗に並ぶんじゃないかと思ったらポロポロ取れてしまって結局手作業で補修する羽目に。

テキーラガンナーは車体下部にロケットランチャーを備えているので、それっぽいものを自作する。
一式砲の誘導輪に空いている穴をテーパーやすりで徐々に広げ、3mm径のプラパイプを差し込んでランチャーとする。外径3mmだと35倍スケールでは10.5cmぐらい、内径2mmなので7cmぐらい。調べてみると大戦末期に試製四式七糎噴進砲という対戦車ロケット砲が開発されているので、これを八連装にしたものということにしよう。

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ざっくり形ができたところで塗装に入る。
テキーラガンナーに寄せてアースカラー単色塗装にしようかとも思ったのだが、日本軍だと兵士もアースカラーなのでメリハリが少なくなる気がして3色迷彩に。しかし迷彩は格好良く塗るのが難しい。どうにもバランスが悪くなって、誤魔化すためにシェーディングとドライブラシで覆ったら、結局塗装全体のメリハリがなくなってしまった……
せめて多少なりとアクセントをと、各所にダークオレンジで錆を入れてみた。
全体として粗が多い、というかぜんぜんまともに塗れていないが、しんどくなってきたのでこれぐらいで打ち切る。

脚はサイズ確認のため無塗装で組み上げてしまったのだが、素のままのアイボリーカラーでは流石に全体の雰囲気から浮いてしまう。しかしパーツが多いのでバラして組み直すのはしんどいし、できれば可動状態を保ちたかったので、染色スプレーであるらしい「染めQ」を吹いてみた。しかし結局これも塗膜を作るには違いないらしく、動きが鈍くなるわムラができるわで正直ひどい仕上がりなのだが、まあこれもある種のウェザリングみたいなものと開き直ってそれ以上塗らずに済ませてしまった。余裕があれば改めて塗るかも知れないが。

できあがった頃には日が沈んでいたので自然光下で撮影できず、家の中で光源の良い箇所を探したら「洗面所の白い洗濯機の上」が最良ということになった。背景になんかちょっと写り込んでいるのはそういう理由である。