家事の自動化について

人は仕事のために生くるに非ず。仕事は可能な限り省力化したい……と人類は昔から考え、実現させてきた。
もちろん家事についても例外ではなく、あの手この手で省力化が図られてきた。日々繰り返される仕事であるからこそ、その自動化はQoLに直結する問題と言える。安く済ませて手間をかけるより、多少金がかかってでも効率を重視した方が、結局は人生が豊かになろうというものだ。

衣類に関する家事には、主に「調達」=不足分の把握と購入、「メンテナンス」=着用した衣類の洗浄と破損箇所の修復、「管理」=収納と季節に応じた入れ替え、などがある。
このうち、調達と管理は手作業でないと対応が難しい。
調達に関しては通販も可能だが、なにぶん「体に合わせる」必要があるためフリーサイズでもなければ試着なしには購入を決め難く、実店舗へ足を運ぶ必要性が高い。もっとも最近では自宅での試着後返品を受け付けるものも多く、通販のリスクも低くなったが。
管理については、ようやく衣類畳み機が開発されつつあるが、普及価格帯で登場するのはかなり先のことだろう。季節ごとの入れ替えは、省力化するとしたらたとえば衣類収納ボックスを季節ごとに分けて用意し、変わり目にボックスごと入れ替える……ぐらいだろうか。いずれにせよ自動化は困難なので手作業でやるしかない。

一方、日常的なルーチンワークとして要請されるのはメンテナンスだが、この分野については既に自動化技術の蓄積がある:つまり洗濯乾燥機だ。
洗濯機は17世紀には発明されている最古の家事自動化装置であり、電気の普及による自動化が進んだ20世紀には急速に発達、1937年には脱水までの行程が全自動化され、1953年には乾燥まで含めた自動化が実現している。

洗濯乾燥機

今や洗濯機を持たず手洗い洗浄している人はまずいないと思うが、洗浄だけでなく乾燥まで一括で行なえる洗濯乾燥機もかなり普及した。濡れて重たい洗濯物を運び、1枚1枚広げては物干しにかける作業が不要となるだけでなく、天候や時間に関わらず洗濯可能になるというのも大きい。
縦型タイプならば乾燥機能付きで5万ぐらいから、ただし乾燥能力は低く少量の衣類を長時間かけて乾かすことになるため効率が悪い。価格は倍以上になるが、大容量の洗濯乾燥を可能にするドラム式をおすすめする。
一部機種では「風アイロン」「ふんわりキープ」などシワ伸ばし機能を謳うものもあり、これと衣類側の「形状記憶」などを組み合わせると、アイロンがけの必要性も抑えることができ、さらなる省力化が実現できるだろう。
どの機種でも基本的性能に大きな差はないが、細かいところでは結構使い勝手に違いが出る。実際に使ってみて比較したいところだが、洗濯機ともなると容易ではない。
以下はあくまで発売時期の異なる2機種での比較を元にしており、メーカーごとの差異として捉えて良いかどうかは疑問も残るが、参考までに必要性の高い機能・性能について記す。

静粛性

運転音が大きい機種だと夜間に洗濯しにくい。特に集合住宅では階下などに気を使うことになる。カタログスペック上、運転時の騒音はほとんどの機種で40db前後とかなり抑えてはいるが、スペックに出にくいところで「脱水開始時の振動」は結構違ってくる印象がある。
脱水はドラムの高速回転による遠心力で行なわれるが、このとき回転速度の変化に伴い一時的に揺れが激しくなる場合がある。とりわけ洗濯物がドラムに均等分散していない時ほど大きく揺れるわけだが、横向きドラム式の場合は必然的に回転槽の下側に洗濯物が寄った状態から回転を始めるわけで、これをうまいこと分散させつつ回転速度を高めて振動を安定させるノウハウには各社に差がありそうだ。
8年前の日立機よりも、今年のパナ機の方が振動抑制では断然勝っていたが、これが8年間での技術蓄積によるものかメーカごとの差なのかはわからない。

フィルタのメンテナンス性

洗濯乾燥機には、流水の糸屑を漉し取る網状フィルタと乾燥時の綿埃を捕える乾燥フィルタが付いている。これは基本的に運転の度に(でないとしても2〜3回に一度は)掃除する必要があるのだが、掃除しやすさが機種によって結構違う。
日立機は網状の糸屑フィルタを持ち、目に詰まるダストをブラシなどで掻き落とす必要があった。パナ機はフィルタが櫛状のため絡まったダストを取り外しやすい。
また日立の乾燥フィルタは不織布のシートで囲われたボックス内側に張り付いた糸屑を掻き出さねばならなかったが、パナ機では目の細かい平滑な金属メッシュになっているためフェルトのように積もった綿埃がするりと剥がれ、除去の楽さが断然違う。

ピーク消費電力

これはどちらかというと我が家に特有の問題という気もするが、高電力家電が想定されていない時期の家屋であるため台所と洗面所がひとつの分電で賄われており、20アンペアを洗濯機とオーブンレンジ、炊飯器、食洗機などで分け合っていたため、「洗濯機の稼働中に調理家電を動かすとブレーカーが落ちる」という状態であった。そのため洗濯機の買い替えにあたっても乾燥時消費電力の抑制は優先度の高い条件であった。
ただ実際には調理家電が最大11〜14アンペア程度を、洗濯機が6〜8アンペア程度を消費する(その他に冷蔵庫なども常用される)ため、結局のところ同時利用は難しい。
台所と洗面所の配電が分かれている場合には、ここはそれほど気にしなくて良いだろう。

洗剤自動投入

これは逆に必要性の低い機能として紹介しておく。
予め洗剤ボックスを満たしておくと洗濯のたびに必要量だけを投入、残量が少なくなるとランプが点く。洗濯開始時に洗剤投入する手間が省けはするのだが、そもそも1分もかからない作業であるので、そこを省いてもあまり手間は変わらないし、「計って入れるのが面倒」な向きには錠剤型などで洗濯物と一緒に入れておくだけの計量不要な洗剤も存在する。あって困ることはないにせよ、この機能のためだけに高い機種を選ぶような必要はあるまい。

食事に関する家事は主に「調達」=食材や食品の購入、「調理」、「片付け」がある。
調達は、自動化しようと思えばできる:たとえば【Oisix公式】初めての方限定「おためしセット」はこちら生協の宅配パルシステムのような食材の定期購入サービスを利用すれば日々の献立に必要なものがレシピ付きで届くし、そこまではしないにしてもネットスーパーなどで注文すれば、少なくとも食材を持ち運ぶ労力は軽減可能だ。

調理については、多様性がありすぎて単純な自動化は難しいものの、逆に部分的な自動化は結構進んでいる。たとえば炊飯器は細かい火力調整を全自動で行なうし、米研ぎも無洗米によって不要にできる。オーブンレンジなどでもレシピ機能付きの半自動調理が可能だし、あるいはいっそ調理済み食品を購入しておけばレンジ再加熱など簡単な調理のみで済ませることも不可能ではない。

片付けに関して一番負担になるのは食器の洗浄だが、こちらも1893年には手動式ながら現代の電動食洗機に通じる原型が既に登場しており、自動化技術が充分に普及している。大容量のものなら調理に使用したフライパンなどの大物も含めて一度に洗浄可能だが、水栓直結のための工事が必要になる。そこまでしたくない場合は、(いちいち水タンクに汲む必要が生じるものの)工事不要の小型機も登場した。

住環境に関する家事でもっとも日常的に行なわれるのは、掃除と片付けだ。
この分野の自動化はもっとも遅れていて、20世紀初頭には電気式吸引型の掃除機が出現してはいるものの、つい近年まではずっと人が手作業で掃除するしかなく、人の手を離れたのはようやく21世紀に入ってからだ。片付けに至っては今でも手作業である。
平滑な床面を掃除することしかできない自動掃除ロボットは、それゆえ「床に障害となる物を置かないように生活する」習慣を発生させ、結果として片付けについても意識的に実行されることになる。

掃除ロボットは予め指定したスケジュールに従って自律的に家中を掃除してまわり、充電も自動で行なうが、いくつかの不慮の事態によって掃除が中断される場合もある:ひとつは段差などを認識できず引っ掛かって行動不能になる場合。ひとつは掃除中にゴミが一杯になる場合。そしてもうひとつは、ホームに正常に戻れず充電が行なえなくなる場合だ。
障害地形についてはしばらく見守りながら運用してみて、引っ掛かりやすい場所に乗り上げないようバリアを形成したりなど運用を最適化するしかないが、ゴミ量に関しては恐らく運用では解決できない問題である。在宅中であればゴミを捨てて再実行させてもいいが、それでは外出中に掃除を任せたりできなくなってしまう。ソファやベッドの下など狭い場所にも潜り込んで掃除させたいロボットは大きさも高さも抑える必要があり、どうしてもダストボックスの容量が犠牲になりがちである。ただし上位機種では充電ステーションにゴミ回収機能の付いたモデルもあり、ダストボックスが一杯になっても自動回収によって掃除を継続できる。
充電問題は、(ホームベースが障害物で塞がらない限りは)ロボット側で自動調節可能な問題のはずだが、実際にはなぜか失敗しがちである。接点の接触が悪い場合はメラミンスポンジなどで磨くことで解決できる場合もあるようだが。



我が家ではRoombaの導入以降、Dysonの出番がなくなった。日々の床掃除はRoombaが、スポットで処理したい時はハンディ掃除機で充分に賄える。