権限の集中しないシステムは運用可能か

http://fxsystemtrader.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/01_9980.htmlにはじまるWikipediaの管理体勢問題を一通り読む。Wikipediaの運用思想についてはここで語られている内容以外の資料に乏しい(私の知っている範囲で、という意味で)ので触れずにおくが、思ったことを少し書く。


Wikiの設計思想は「誰でも平等に参加可能」であり、その結果として公平さを欠く記述が適切に修正されるであろうことを期待するようになっている。
だが、誰でも参加できるということは時に悪意ある参加者によって攻撃を受ける可能性があるということでもある。そうしたことも見越して、Wikiには編集内容の保存機能が実装されており、破壊的な編集が行なわれたとしても以前の状態まで遡って修正できるため、問題は生じ難いとされる。
とは言え、攻撃者と防衛者の熱意には往々にしてかなり差があるもので、必ずしも防ぎ切れるものでもない。そうした場合に有効なのが、管理権限を有するユーザによる編集の凍結やアクセス拒否設定である。


これは大変有効な機能ではあるのだが、その強力さ故にしばしば問題を生じる。例えば複数勢力による記述内容への意見相違から千日手*1に陥った時は、ページ編集権を一旦凍結して協議により合意形成を見るまで保留するわけだが、仮に管理者がこのうち一派に与していた場合、その一派に都合の良い状態で保留も可能である。もっと言えば、自分に不都合な発言内容を削除したりユーザを追放したりといった権限すら保有するわけで、最早Wiki内部に限っては神にも等しい。
管理者が適切に選出されるならば、そうした問題は(無くならぬまでも)少なくはなろう。しかし人選というのはなかなかに難しい。楽な仕事ではないから、本人の同意なく選出しても適切に管理できるだけの労力を割けるかどうか。かといって自薦は巧くない-----論理的な判断ではないが、経験的に言って権限を持ちたがる人に碌なのは居ないものだ。
いっそ管理権限などというものはなくして、すべてを合意-----というか投票-----によって決めるのはどうか。例えば、凍結なりアクセス拒否なり、権限の変更については各ページで動議提案され、それ以外のユーザによる一定期間のn票(もしくはn%)以上の賛成多数状態を以て可決する。執行は一定の猶予期間後、その間に不服のあるユーザは否決動議を提案できる。提案されたら執行猶予のカウントを一時一定期間停止、その間にn+1票以上の賛成多数状態があれば否決される。勿論、それを更に否決する動議も可能だ。
重要なのは、決議には単純な過半数ではなく一定数もしくは一定割合の賛成多数が必要である点と、決議をひっくり返すには決議時より多い賛成が必要であるという点。


ここまでは、システム上で改善可能……かどうかは不明ながら、それが期待される部分だが、もう一つ懸念がある。システム自体の管理権限である。
サーバを管理できる権限のあるユーザならば、Wikiのデータ改竄など容易に実行できる。その記録はサーバには残るかも知れないが、それは外部から参照できないから、管理者の「悪事」は露見しない。
こればかりはおいそれと平等に権限を与えるわけにもいかない。けれども、これを技術的に解決できなければ、結局権限が集中する問題を根本から解決するのは不可能だ。

*1:ここでは削除と復帰など、同じ行動を互いに繰り返す状態になること