はてなの帰還とサーヴィスの未来と

に限らず、今回の京都帰還や最近のはてなの動向について否定的見解が散見されるわけだが。
よく判らないのは、それらがほぼ一様に「シェア拡大」を是とし、それが為されないことを理由に失敗と断じている点だ。


シェアの拡大、ユーザの増加は確かにひとつの指針ではあろう。だが無料Webサーヴィスに於いて、経営的な意味でユーザの増加によるメリットはそれほど多くない。明白なのは広告収入に直結するpvぐらいだが、これ実は必ずしもユーザが増加せずとも上昇し得る。単にアクティヴユーザ割合が増えれば良いのだ。
逆に、ユーザの増加/アクセス増加はそれだけでサーバの増強など設備投資を強いられ人的資源の投入を強いられ、デメリットも結構多い。
はてブのようにデータの集積それ自体が価値を産むようなシステムではシェアの重要性は非常に高い。けれどはてダなどではそこまで重要な要素でもない。一定の活気を保てる程度の人数がいれば充分に成立するし、そもそも閉じたサーヴィスではないから他Blogとの交流でも何ら問題はない。
Twitterから乗り換えるほどの価値はない」と言われたハイクなどは、基本的に新規ユーザ獲得のためというより全体としてアクティヴユーザを増加させるための仕掛けに思える。Blogを書くほどではないが、軽いノリで一言書く、それがミニブログの効用である。既にTwittweアカウントを持っている人はそっちでやってもいい、けれどはてなアカウントを持っている人ならハイクで充分、そんな感じだ。「Twittweへ乗り換える程の価値はない」とも言える。
スターは既にはてな外でも一定の認知を得ている。OpenIDにも対応してはてなユーザ以外でも利用可能となったため、新規はてなユーザを増加させる役には立っていないがスター利用者は増加していると考えられる。


相変わらず資本も人数も非常に小規模だが、これはむしろ近藤さんの好みに合った経営スタイルだろう。規模を拡大することで拡がる可能性も確かにあるのだが、同時に雁字搦めとなって身動き取れなくなる部分も多い。サーヴィス規模の拡大に合わせた最低限の増員増資のみで身軽に生きたいというのは、むしろ大企業化指向より理解できる。


とは言え、良いところばかりでもないとは私も思う。
米国法人は確かに奮わないし、最古サーヴィスである人力検索も伸びぬままだ。
はてラボは実験的に過ぎて一過性のブーム以上のものになっていない。
強みである多様サーヴィス連携も、最近ではLivedoorやFC2などでも展開されており独自の強みとは言えない状態にある。


まあ、あせることはない。はてなが目指すべきはMicrosoftのように寡占的シェアを確保することではなく、むしろAppleのように一度使い出したら他へ乗り換える気がなくなるようなサーヴィスだ。そういう存在は、成長率こそ緩やかだがしぶとく強い。
そう言えばもう5年もはてなを使っている。これから5年先、10年先のはてなを楽しみに待とう。どうせ、あっという間だ。