推理ボードゲーム「ディテクティヴ」シーズン1

アークライトから日本語版が発売された協力型推理ボードゲーム「ディテクティヴ」シーズン1を遊んでみた。

結論から言えば、素晴らしいミステリー体験だった。

ゲームの概要

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FBIから委託を受けて調査を行なうチーム「アンタレス」のメンバーとして事件を捜査してゆくシリーズで、シーズン1には3本のシナリオが収められている(かなりヒットしているようなのでシーズン2以降も予定されていることとは思うが、現時点では発売されていない)。
プレイ人数は捜査員のメンバーと、追加の手がかりを得る「技能トークン」数の関係で最大5人ということになっているが、捜査員に何か能力的な差が設定されているわけではないので、ほぼ「人数を問わず」遊べると考えていいだろう。少人数でも捜査可能回数は変わらず、技能トークン数が増える分むしろ有利かも知れない(その代わり多人数では多角的な視野や閃きが期待できるわけだが)。

まず最初に、事件の概要が提示される。そこには(我々のチームに調査依頼が来た経緯を含む)事件の情報と、最初に調査可能な「捜査の糸口」が示されている。
「糸口」とは調査によって得られる断片的な情報を示すカードで、関係者への聞き込み内容や事件現場調査の結果などと共に、「その情報を得たことで調査可能になる次の糸口」が示されている。これによって順次捜査可能範囲を広げてゆく仕組みだ。
また、糸口カードからは関連して得られるメディア──たとえば「犯行当日の監視カメラ映像」であったり、「契約書の写し」であったりといったファイル──を閲覧するためのコードが手に入る場合もある。それらは専用のWebサイト上のデータベースへコードを入力することにより実際に閲覧可能で、「実際に調査している」雰囲気の演出にも一役買っている。

捜査には時間制限がある。シナリオによるが最大24時間が与えられ、糸口を調査するたびに時間が進み、また調査エリアを移動することでも1時間を消費する。限られた時間の中で情報を集めるためには片っ端から調べるのではなく、情報を推理しながら的確に重要箇所を調べてゆかねばならない。

また、糸口によっては技能トークンを消費して追加の調査が可能になる場合もある。より深く掘り下げて調査することで重要な手がかりを得られるかも知れないし、得られないかも知れない。トークンの数は限られるので追加調査は慎重に行なわなければならないが、保留して他の手がかりを得てから戻ってくることはできないので、その場で決断を迫られる。
もちろん、情報のすべてが真実とは限らない。誰かが嘘をついているかも知れないし、後ろ暗いところがあるにせよ事件の本筋とは関係ないかも知れない。
いずれにせよ、すべての情報を得ることは叶わないから、限られた手がかりから推理してゆくしかない。

残り5時間を切ると、「振り返り」が指示される:今ある情報を元に各自が推理を披露してチーム全体での結論を出し、足りない情報を埋めるためにあと1回か2回ぐらいの捜査を行なう方針を立てる。
時間切れになったら最終報告に進む。前述のWebサイトにて、質問に対し4択ほどの選択形式で回答するかたちで正しい結論を導き出せたかどうかが判定される。

プレイ感

ひとまず第一のシナリオ「自然死なるや?」をやってみた。病死と思われたが殺人の疑いが浮上し、アンタレスが調査することになったというもの。
関係者への聞き込みでは、相手の発言後に「ストレスレベル」が書いてある場合がある。嘘をついているのか、何か隠しているのか、緊張しているのか、ともあれ感情の動きが見られたということを示すもので、直接的ではないが手がかりになるだろう。
糸口カードには調査によって消費される時間が示されているが、これは事前に確認できない。また裏面に情報が追記されている場合があり、これには技能トークンを消費しなければ読めないものと、続けて読んで良いものがある。トークンを消費したからといって必ずしも重要情報が得られる保証はなく、使いどころは悩ましい。特に今回は4人でプレイしたためトークンが2個しかなく、場合によっては一度に2個消費する糸口もあるので余計に厳しい。かといって「先に他の調査を進めてからどうするか決めよう」というわけにも行かない。
結論から言えば、我々は情報の辿り方を誤った。半ばまで事件の構造を見通せたにも関わらず肝心の部分で必要な情報を得られず不要な情報を追い求め、得点こそ満点の2/3ほどを獲得したものの最も重要な部分を間違えて報告しており、事件を解決できたとは言い難い。

1985年にドイツ年間ゲーム賞を受賞した「シャーロック・ホームズ 10の怪事件」の系譜と言われていたが、たしかに良く似ている。10の怪事件では新聞から情報を集め、人名から住所録を引いて住所を調べ、本にその住所に該当するパラグラフを読むという形だったが、ディテクティヴではそれが「糸口」カードに変わったわけだ。「10の怪事件」シリーズのファンには是非ともおすすめしたい。

捜査の過程で顔写真を得られるが、イラストのみで一切の文字情報がないため、付箋などを用意して名前や役職などを書き込んでおくと良いだろう。なんならホワイトボードとピン型マグネット、糸などを用意して関係性を結んでみると一層雰囲気が出ると思うが、そこまでする必要があるというわけではない。

糸口からの調査によって次の糸口が増えてゆく構造と、トークンを消費して「深堀りする」ことのできる仕組みがとても良い。反面、人数が増えると深堀りしにくいのはちょっと残念な気もする。この構造を流用してホラーシリーズを作っても面白そうだ。