南部十四年式NERF

発端

そろそろ7月2日の「ナーフの日」が近付いてきたので今年も新しく何か作りたいなと考え始めた頃、ちょうど魅力的な拳銃を目にした。


戦前日本の軍用ピストル「南部十四年式大型拳銃」が現代的にカスタマイズされている。

実際にはこれは「近代化された南部拳銃」ではなく、台湾のトイガンメーカーACTION ARMYが発売したAAP-01アサシンというオリジナルデザインの拳銃に、南部拳銃風にするカスタムパーツを組み込んだものであるらしい。つまり「グリップまわりを変更した南部」ではなく「銃身まわりを変更したアサシン」だったのだが、それはともかくNERFで南部拳銃を作るのはどうだろう。

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計画

南部十四年式は、現代的な自動拳銃とは異なりフレームがトリガーガードまでで断ち切られ、銃身がスライドに覆われることなく前方に伸びた特徴的なスタイルをしている。また後部に円筒状のコッキングピースがあり、これを後方に引き出すことになる。つまり素体となるNERFは、銃身と一体化したプランジャーの後方にコッキングレバーが伸びたシンプルなものが望ましい。

当初、素体としてはSnapFireを考えていた。

プランジャー前方に細身の銃身、後方にコッキングレバーというシンプルな構成。不要部分の切り落としも簡単そうで、あとは外装をそれらしく形成すれば済む。
ところが平行輸入品のため、到着は早くてナーフの日の翌週となってしまう。これでは間に合わないので、すぐにでも手に入る国内流通の現行品から選ぶことに。
調べたところ、NERF ELITE2.0 VOLTがまさに同形式の内部機構を持っているようだ。

まずはVOLTのmod事例を画像検索し、内部機構の配置がわかる画像を探す。そして、これに南部十四年式の画像を重ねて配置を検討する。
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プランジャーの長さはちょうど南部の本体フレームと同程度。銃身は短かいが、これはある程度延長が可能だ。
VOLTのトリガーは南部のグリップ内にすっぽり収まる。トリガーは後方にスライドするだけのシンプルな構造なので、前方にトリガーを増設し連結することで動作機構はほぼ流用可能だろう。

分解

これは行けそうだ、ということで早速VOLTを購入し、分解を試みた…… のだが。
なんとVOLT、どこにもネジ穴がない。どうやらELITE2.0シリーズは構造の合理化が行なわれ、組立にほとんど金属部品を使わない構造になっているらしい。レールやトリガーまわりのバネも廃止され湾曲した板が一体成形されることで置き換えられており、外装の固定は爪による嵌め込み式に変わったため、非破壊的手段による分解は不可能となってしまった。
そういうわけで購入から2日ほどを費し、合わせ目を抉じ開けて鋸の刃を差し込み固定爪のありそうな位置を切断することでどうにか分解に成功。不要な箇所を切り落として最小限のフレームのみを取り出した。
今回は他に適当な素体を用意できなかったために強行したが、ELITE2.0シリーズは改造素体としては手間がかかりすぎるのでおすすめしない。

木材

グリップは木製にしようと、ホームセンターで桐の板を購入。桐は柔らかく加工しやすい材であるのでお手軽な工作には丁度良い。バルサならば更に手軽ではあるが脆いので外装には向かないし、もっと硬く密度のある材だと加工にかなり手間がかかる。
配置検討の際に用いた画像を元に、実物の内部機構を計測してサイズを合わせ、トレースしてグリップの下絵を印刷。これを板に貼って切り出す。

スリム化

さて本体フレームにグリップを仮置きしてみたところ、位置合わせには問題ないものの予想よりもフレームの幅が厚く、グリップが幅広になりすぎて持ちにくいことが判明。シルエット的にもだいぶ「太った」感じになってしまうので、これを詰める必要が出てきた。
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オリジナルのVOLTは外装と内部機構の間に余裕があるようで、これを切ってギリギリまで幅を詰めてゆく。単に中央の合わせ目を直線的に切れば済むというわけではなく、その分だけ内側の機構保持部も掘り込んで位置をずらしてゆくので、簡単ではない。
プランジャーは前方の銃身固定部側にに少々の出っ張りがある。これが外装と当たって幅詰めに支障を生じる懸念があったので、上下の固定ピン通し穴を切り落としてプランジャーの向きを90度回転させ、出っ張りが上下方向になるよう変更する。
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外装裏は、右フレームの透かし文字部を保持するため厚めに作られているので、これをギリギリまで薄く削る。
左が削る前、右が削ったもの。これぐらいに厚みを減らした。
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左右パーツを固定する爪はすべて切り落としてしまったので、固定のために穴を空けてネジを通す。
これで機構部分を保持しつつ、基本的な本体構造は完成。

トリガー

次にトリガーとトリガーガードを作ってゆく。
プリントアウトを元に薄いプラ板を切り出して重ね、トリガーの厚みを作る。本来のトリガーに穴を空け40mmのネをジ通し、その先に新造したトリガーパーツを固定。
トリガーガードは2枚のプラ板を切り出し、間に同じ長さのプラ棒を接着することで面を作ってゆく。表裏にはパテを盛って丸棒の凹凸を埋めて固める。ただ、フレーム根本の幅で作ると幅広にすぎて不恰好なので、根本から斜めに切り取って幅を半分ほどにした。
……まあ、後で実際の南部十四年式を確認したら実は結構トリガーガード太かったのだが。

銃身

銃身は本体と同じぐらいの長さに延長したい。0.2mm厚のプラ板を接着しようとしたがうまく行かなかったため、細く切ったコピー用紙を斜めに巻き付けることで長さを出し、瞬着で固めた。先端部分には巻いたプラ板を差し込んで厚みを作るとともに補強とする。実際の十四年式よりは些か銃身が短かいのだが、これ以上伸ばすと装填に問題を生じるため控え目にしておく。
斜めに巻いた紙の段差を抑えるため、外側をラッカーパテと瞬着で固めて磨く。

グリップ

グリップを本体左右に固定し、間をパテで埋める。下部には100均で見付けた修正テープの外装を嵌め込んでいる。マガジン引き抜き構造までは再現できなかったが、後方がなだらかに盛り上がり前方は終端部でキュッとまとまり、非常に握りやすい形状になった。
全体かなり軽量ではあるのだが、その上で重心がちょうどグリップのところにあるため大変バランスが良い。
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実際の南部十四年式では、グリップ下部が分離してマガジンが引き抜かれる構造になっている。当初は省略しようと思ったのだが、ここに何か部品がないと収まりが悪かったため、それらしいディティールを追加することにした。
脱着ボタンを再現できそうな部品を100均で探したところ、洗濯バサミの先端が円形の滑り止めになっているものを発見。
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ただ、材質が接着も塗装も困難なポリプロピレンだったため、一計を案じパテに押し付けて型を取ることでそれらしい円形部品を制作した。接着離れの良い材質だけあってパテからの剥離も完璧。
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グリップ部と下端の間にはマスキングテープを細く切って貼り付け、3mmほどの隙間を空けた。これによって元の材質の透明オレンジ色がアクセントとなる。
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塗装

木造グリップをマスキングしてサーフェイサーを吹き、全体を黒に塗装した上で銀を乗せる。黒を基調に上下を銀色にし、透かし文字から見えるオレンジのプランジャーがアクセントになった。
グリップは別途、ウレタンニスで塗装している。
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元となったNERF ELITE2.0 VOLTと並べると、とても同じものには見えない。
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今後

丁度良い部品が得られず断念したが、いずれ後部コッキングピースはリング部を切り落として円筒状のものを取り付けたい。