「テクニカル」を作る

テクニカルというのは、「市販車の荷台に武装を搭載して戦闘車両に仕立てた」改造車のことだ。
元は内戦地域で活動する非政府組織が、護衛の入国を拒否されたため「技術支援助成金」の名目で民兵を雇ったことから転じて、民生車両を武装化したもの全般の呼び名となったのだそうだ。
ピックアップトラックなど非軍事用車両に対空機関砲やロケット砲などの重火器を据え付けたアンバランスな姿が印象的で、そのうちネタにしてやろうと漠然と考えていた。

先日より開催された「架空戦車コンペ」に、前回作ったヤンセン式多脚歩行戦闘車両を出してみたところ思いのほか好評だったことに気を良くして、新作を作ろうかと思い立ったところでテクニカルのことを思い出した。私は造形技術も塗装技術も拙いのでアイディア勝負を好む。架空の戦闘車両として、史実戦車ベースの架空仕様車両や脚歩行戦車は多数あったが、テクニカルはまだなさそうだ。

問題は「何をテクニカル化するか」である。戦闘用でない車両に重武装を施すのが面白いのだが、なるべく意表を突きたい。
最初はロボものを考えたのだが、ガンダムにはじまるロボ系プラモの大半は戦闘用であるため「民生車両を武装化する」という趣旨にそぐわない。しかしオリジナル機体で民生用であることを理解してもらうのは難しいし、あるいは知名度のある民生ロボを使うとなると、メカトロウィーゴなどごく少数しかない。

もうひとつの問題が「荷台」だ。テクニカルは車両の荷台へ雑に武装を据えたものなので、荷台のない機体では再現しにくい。たとえばウィーゴの腕に銃を持たせたり肩から砲を生やしたりしても、それはテクニカルには見えない。

(ほぼ)民生用の荷台付きロボとして、ザブングルのウォーカー・ギャロップを素体にすることも考えた。

これはこれで面白かろうとは思うのだが、オリジナルキット時点で最初から機銃が据え付けられており無改造でもテクニカルっぽかったのと、キットの縮尺が1/100であるためミリタリーモデルとサイズが合わないという難点があり断念。
他に荷台付きの良いキットはないか……と色々検索しているうちにふと思い出したのが、アオシマの出していた「ターレー」のキットであった。

ターレーとは、正式にはターレットトラックといい、市場などで荷運び用に用いられる小型運搬車である。車両の前部に原動機と直結した駆動輪を持ち、その上に付いたハンドルで原動機ユニット自体を回転させることで操舵する独特の機構を持つ。運転台には座席がなく立ったまま操縦する。
明らかな非軍事車両で、しかも小型でありながら荷台を備えるため砲座の積載に適した、重武装化で違和感が際立つ最高のチョイスではないだろうか。しかも1/32スケールと、ミリタリーミニチュアで一般的な1/35と合わせて違和感のないサイズなのも良い。

というわけでネタの方向性が決まったので早速キットを取り寄せる。既に流通の少なくなった製品ではあるものの、まだ在庫は確保可能だ。
搭載する武装は、コンパクトながら火力を感じさせ、かつキットの安いものをということでタミヤの2cm4連対空機関砲Flak38をチョイス。

ざっと組み上げて砲座を載せてみる。左右に張り出した装填手座席と砲座を安定させる足をカットして左右をコンパクトに抑えても、台座部分が荷台の幅よりはみ出す。また回転のため砲手座席がギリギリ回転できる位置にすると重心が後輪の車軸より後ろになってしまうので、砲の重みで運転台が跳ね上がる。
エンジンカウル側に鉛でも仕込んでバランスを取ることも考えたが、実機でも同じような現象を生じることが予想され、これはつまりオリジナル仕様のままでは積載に無理があるということだ。そこで急遽、後輪を2軸化することにした(本キットには2台分の部品があるので、予備パーツとして流用可能である)。これにより重心より後ろ側で支えることが可能になり、なおかつ砲の重量に耐えるため車輪を増やして荷重分散した風になる。
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フィギュアをどうしようか考えたが、テクニカルは中東などで多く用いられるのでターバン風のものが欲しい。しかしドイツ・アメリカ・イギリス以外の兵は種類が少なく、割高になる。
ちょうど英軍のSAジープにターバン姿の英兵が付いていたので、これを流用することにした。

ハーフパンツ姿では中東らしく見えないのでパテで裾を延長。また腕の角度が砲に合わなかったので袖口で切り落として角度を変え接着する。もう1体は下半身をパテで作り運転台に立たせる。
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ターレーのキットには牽引台車やトロ箱なども付属しており、これらも生かしたい。そこで連結した台車にも砲と弾薬を載せることにした。
既に機関砲を載せているので、台車にはロケット砲を載せたい……のだがロケット砲単体のキットは少なく、車載型では車体が無駄になる上に価格も高い。
のでプラ棒とプラ板でそれらしく自作する。
砲本体はわりとシンプルな形状なので自作できなくもないのだが、着火のためのケーブルは些か難儀した。たぶんこういうのは細い真鍮線などで作るところなのだろうが、生憎手持ちがないのでパテを細く練って貼り付けてみた。接着面積が小さいためなかなか張り付いてくれず、指で押して貼り付けてからピンセットで摘んで整形し余剰分を精密ニッパーでカットし……やたら手間がかかる割には精密感に欠け見栄えが悪いので、このやり方はおすすめしない。
まあそれでもなんとなく形にはなった。
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ロケット砲の弾薬はプラパイプとプラ棒を接着して適当に作る。これはトロ箱に投げ込んでおくだけのものなのであまり精密には作らない。

塗装は簡単に済ませる。
本体はオレンジイエローをベタ塗り、下面はフラットブラックをベタ塗り。台車はウッドブラウンを塗った上にレッドブラウンを面相筆でドライブラシして木目の掠れを作り、スミ入れする。
砲はダークイエローとダークグレイをベタ塗り。その後、ダークブロンズのドライブラシで全体に錆びを演出。超簡素だが結構それっぽく見える。

人は塗装に凝ると面倒なのでグレーサフのままで。あくまで主役は戦闘車両の方なので、これでもいいだろう。
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テクニカルは日本からの輸入中古車などが多く、現役当時の企業ロゴなどがそのまま残っていることも多く、それが一層武装との違和感を際立てる。
というわけでターレーに付属していた水産会社の看板用デカールを機関砲の防盾に貼ってみた。