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第一部
VI
- 界
- 博物学上の最上位分類。18世紀にリンネが体系化した時点では動物、植物、鉱物の3界であった。もっとも、ここではルビが振られているように、多分に「王国」の意味を被せており、相の入れ替わりを中央アジアの政治情勢の入れ替わりなどに重ねたものだろう。
- チトラール帽
- アフガニスタン国境付近のチトラールで主に見られる、鍔のない帽子。(画像
- ムジャヒディン
- アラビア語で「ジハドを行なう者」。イスラム教の大義に則りジハドに参加する戦士をいう。
- 山の老人
- 東方見聞録に記された、謎めいた暗殺教団の指導者。山中に秘密の楽園を作り、麻薬で眠らせた若者をこの地で享楽に耽溺させた上で元の住処へ戻し、享楽への渇望を餌に暗殺を命じるとされる。
- プレスター・ジョン
- 東方にあると信じられたキリスト教国の王にして司祭。遠く中国にまでキリスト教を布教したネストリウス派の国であると伝えられ、現トルキスタン、インド、あるいはエチオピアに存在すると考えられた。十字軍遠征の後、プレスター・ジョンを探すため東方への使節派遣が盛んになり、大航海時代へと発展した。
- ニコライ・フョードロフ
- モスクワ公立ルミャンツェフ博物館付属図書館の司書、哲学者(1829-1903)。ロシア宇宙主義、トランスヒューマニズムの先駆的存在で、科学による不老不死、あるいは死者復活を論じ、その結果として到来するであろう手狭な地球からの脱出を考えた。
- ルミャンツェフ博物館
- 帝政ロシアの外務大臣を務めたニコライ・ルミャンツェフ伯爵の古書・古地図などのコレクションを元にした博物館。のち附属図書館が分離、現在では博物館部門はプーキシン美術館に吸収され、附属図書館のみ国立図書館として存続。
- モーセの黙示録
- ユダヤ教の偽典を元としたギリシャ語訳本。のち中世に於いて多数の加筆が認められる。
- アダムとエヴァの生涯
- モーセの黙示録と同じ偽典を元としたラテン語訳本。ただし訳出部分に差違が認められる。
- ノストラティック大語族仮説
- デンマークの言語学者ホルガー・ペダーセンが提唱した比較言語学上の仮説で、ほぼあらゆる言語の祖たる仮想の超古言語。
VII
- 玄奘
- 唐代の訳経僧。仏典の翻訳にあたり原典に拠るべしと考え、密かに出国し陸路でインドへと向かい経典や仏像等を持って帰還、教典の大規模な改訳を行なうと共に「大唐西域記」を編纂。
- アイハヌム遺跡
- アフガニスタンのギリシャ人国グレコ・バクトリア王国の都市。
- シナイ山
- モーセが神から十戒を得た場所。紅海から北に伸びる二つの細長い湾に挟まれた三角の半島南端に位置する山がそれであるとされ、半島もシナイの名で呼ばれる。
- アラル海
- カスピ海の東、カザフスタンとウズベキスタンの国境にまたがる塩湖。パミール高原と天山山脈の融雪水が流れ込むことによって発生し、降水量の多寡に応じ水位がかなり変動する。
- 先の戦争
- 40年前にこの地で行なわれた戦争といえば第一次アフガン戦争(1838-1842年)だろう。
- レーテ
- ギリシャ神話に於いて黄泉の国を流れるとされる川。転生に際し川の水を飲むことにより全ての記憶を失う。
- ジョン・マンデヴィル卿の旅
- 14世紀英国の旅行家ジョン・マンデヴィルの著した東方諸国旅行記。東欧を経てコンスタンツィノープルへ至り、そこからキプロス、エルサレムへと旅した。更にインドやエチオピア、インドシナ半島にも言及しているが、その辺りの記述はでたらめであり、恐らくは他の旅行記や博物書などの記述を適当に繋ぎ合わせたものと見られる。文中にプレスター・ジョンの王国について4章を割いて言及している。
- ポドリャスニク
- 正教会派の修道士が着用する、足元まである黒衣。
- 星の智恵派
- 1844年、プロヴィデンス出身の考古学者イノック・ボウアンによって設立された宗教組織。頻発した行方不明事件への関与が明らかになり1877年に解散した。
- 榎本
- 榎本武揚(1836-1908)。蘭学に長けた武官で、幕府海軍を指揮し戊辰戦争を戦う。のち北海道へ逃れ箱館に蝦夷共和国を樹立するも海戦に敗北し降伏、のち特赦を受け駐露特命全権公使を務めた。