たほいや倶楽部の出題と嘘の傾向

あまり意識していなかったんですが、実はもう10問が終了しているのです。
そこで、ちょっとこれまでの出題を振り返って、皆様の傾向を分析してみようかと。

出題者別・出題と傾向

まずは出題傾向です。これまでの10問の正解を抜き出しました。
idのアルファベット順に見て行きます。

id:DocSeri

  1. むらびよふ【Nikolai Nikolaevich Muraviyov】ロシアの政治家。
  2. ふえつねんらん【不越年卵】カイコなどの昆虫で、産み下されて年内に孵化する卵。
  3. ねおぴりな【Neopilina】一九五七年、メキシコ湾の底から採取された原始的軟体動物。体節構造の痕跡があり、環形動物との類縁を示す。
  4. うりやんは【兀良哈・Uriangkha】明代に興安嶺東方に住んだ蒙古系の部族。
  5. くろなくしー【chronaxie】電流刺激の時間要素を表す語。フランス人ラピック(Lapicque)が初めて用いた。

ここからはまだ傾向というほどのものが見えてきません。敢えて言えば3と5がどちらも理系の用語であること、外国言語が多いこと、でしょうか。

id:nobody

  1. りええか 【リエーカ】 "Rijeka"イタリア東側のアドリア海に臨むクロアチア港湾都市。イタリア語名(旧称)フィウメ。人口16万7千(1991)。
  2. しよんずいで 【祥瑞手】 祥瑞およびそれに類する染付磁器。

出題数2問で傾向も何もないような気も。
りええかが実際の読みと多少異なるのは、表記のぶれや出典などの縛りをゆるくした実験的出題だったから。

id:sugio

  1. しんぼっち【新発意】発心(ほっしん)して新たに仏門に入ったもの。出家して間のないもの。しんぼち。
  2. さんだらごり【サンダラゴリ】〔水垢離〕みずごりの事、マタギが違反した時の罰則として雪の中でのサンダラゴリをしなければならない。
  3. ぜぜまん【瀬瀬幔】台所などに引く粗末な幕。

id:sugio氏のこれまでの傾向がはっきり見えます。いずれも日本語、民俗学的要素が強いように感じます。

解答作成者別・嘘傾向

続いて嘘解答作成者の嘘傾向分析です。作成数が3例以上の人にだけコメントを付けます。
尚、りええかとしよんずいでは既に嘘解答のリストが消えてしまっているようで、データを採る事ができませんでした。しよんずいでは記録がありましたので追記しました(合わせてコメントなどを一部変更しています)。
りええかは嘘提供者がはっきりしません。http://d.hatena.ne.jp/keyword/%a4%ea%a4%a8%a4%a8%a4%ab%a1%ca%a4%bf%a4%db%a4%a4%a4%e4%b6%e6%b3%da%c9%f4%a1%cbに記録がありますので、嘘つきの方はお知らせ下さい。

id:asimov

  1. 【ゼゼマン】ウルトラQに登場する怪獣カネゴンの企画段階での仮名。

id:DocSeri

  1. しんぼっち【thymbotch】ハンガリーの生化学者(1884-1966)。嫌気性細菌に見られる硫黄反応系サイクルを発見した。
  2. しよんずいで 【紫苑瑞提】(梵語セムラーナー・ズィーデの音訳)彼岸。常世の国。
  3. りええか【Ryoeca,Alexandla】ソ連の鉱物学者。チャロ石を発見した。また、合成ダイヤモンドの研究でも著名。
  4. りええか【痢影下】疫痢の蔓延した状態。
  5. りええか【lijekha】ヨーロッパ中東部の河。ドナウ河より分かれ、ハンガリー南部・ユーゴスラビア北部 を経過しアドリア海へ至る。
  6. りええか【裡嬰花】綻びはじめた蕾を指す。
  7. りええか【reacre】(英古)領土。
  8. うりやんは【ウリヤン派】アルメニアの僧ウリヤヌスにより率いられた異端キリスト教の一派。神と悪魔を表裏一体とする変則的な二元論を主張し、故に悪行もまた主の御心であると説いた。
  9. さんだらごり【St.Dal'agori】フランス南西部、スペインとの境に位置する港町。古くから染料として利用されたアクキ貝の漁獲で知られる。
  10. 【是是満】[仏]善悪を超越して全ての事柄を肯定すること。仏説無量寿経「善即悪、悪即善、---唯仏意仏心侭」

理系嘘2、地名嘘2、宗教嘘3、簡潔嘘4。これを見るとばらけているような気もしますが、出題傾向と合わせるとやや理系/外国語傾向が強いことが見て取れます。

id:emimi

  1. 【シヨンズィデ】鹿児島、奄美地方の方言。そうします。そうさせてもらいます。例えば、以下のように使われる。

    バッケヤ ヤーナン ウモリンシュリュンヤ (おばあさんは、家にいらっしゃいますか)

    アイ ハカモリシーガ イジャドー (いや、墓参りに行ったよ)

    ニャ ヤガテ ムドッテ キュスガ (もうすぐ もどってくるからね)

    チャンキャン ヌデ マッチュルィバ (茶でものんで待っておれば)

    シヨンズィデ (そうしましょうか)

  2. 【祥瑞手】(しょんずいで)中国明代末期の頃、景徳鎮で造られた染付の茶器で茶陶の染付では最上の物とされる。器の底に「呉祥瑞 造」という染付銘をもった物がある事から、祥瑞あるいは祥瑞手と呼ばれるようになった。
  3. りええか【リエーカ】(Reeka) エーカナイト( Ekanaite)は放射性鉱物の一種。リエーカとは破砕したエーカナイトを再結晶化した物を指す。エーカナイトは非常に脆い鉱物だが、再結晶化する事によって硬度を増す。
  4. ふえつねんらん【浮悦燃乱】魂の離脱の意。忘我の神秘的状態。中世神秘主義思想家の重要な概念。エクスタシス。
  5. うりやんは【ウ・リャン・ハ】 凱梁播(Ou Lean Hak)明末・清初の戯曲家・伝奇作家。江蘇の人。号は笑翁。世に梨十郎と称す。著「笑翁十五楼」「笑翁一家言」などがあり、喜劇的要素に富む。
  6. 【ネオピリナ】 (アイヌ語)チドリ目、ウミスズメ科の中型の海鳥。体色は黒褐色。顔は白、くちばしは橙色、眼の上には緑色の飾り羽を生ずる。冬季北海道の海に多い。ネオピリナはアイヌ語で、美しい鳥。
  7. 【手手まん】昔の小児遊技の一つ。互いに手を合わせて、手の平を互いに打ちながら「せっせっせーの、よいよいよい、ぜぜまん、ぜぜまん」と歌い、歌い終わった時に打たれた者が鬼となる、手合わせうた。同様の遊技に、せっせっせ、おちゃらかホイ、お寺のおしょうさん、などがある。
  8. くろなくしー【Croinak Sea】クロナク海。アゼルバイジャンアルメニアの東側に広がる海域。水温は低めながら抜群の透明度を誇り、近年ダイビングスポットとして人気が高まっている。

外国語、とりわけハワイ語(りええかで発揮)奄美語アイヌ語など、全員が知識を持っていないあたりのでっち上げが巧妙です。また広範な知識をお持ちのようで、嘘傾向もまた広く散らばって読めません。大変な勘違いをしていたようでして、りええかのハワイ語id:yukatti氏でした。どちら様にも失礼を致しました。

id:fumine

  1. ネオ-ピリナ ピリノア科の多年草南アフリカ原産。1947年鑑賞用にイギリスで栽培、品種改良され日本に渡った。高さ約80センチメートル。夏、草頂に美麗な白色又は黄色の五弁花を開く。

id:igatoxin

  1. くろなくしー【clonaxy】インフレーション宇宙論において、我々の存在している宇宙とは別に発生した宇宙に存在するとされる銀河系群。我々の宇宙に存在する星雲などが全く同じ形に形成されていると考えられている。クローン銀河。

id:masah

  1. 【府越年覧】(ふえつねんらん) 新潟県初代県令の楢崎弥兵衛(1832-1895)が在任中に記した公務の記録。楢崎日記とも。→飯岡新聞事件
  2. 【不悦然乱】(ふえつねんらん) 禅宗の用語で、感情を抑え心を乱さぬさま。ふえつぜんらん。良周「岩ニ如ク動カス−トシテ」
  3. 【斧鉞粘藍】日本画に用いる顔料の一。硫酸コバルトを主とする濃藍色で、合戦画の旗幟(きし)を描くのに大野派が好んで用いた。→大野曾鳳
  4. うりやんは 朝鮮半島沿岸部に伝わる民謡。ヘデコという太鼓の音にあわせて踊る。
  5. ねおぴりな ラテンneopiluinum キク科セイヨウギクのヨーロッパ原産の多年草。和名オランダジョチュウギク。セイヨウカヤリソウに同。 根茎を加工して除虫剤を得る。
  6. サンダラゴリ 石川県七尾市に伝わる祭りで、隠れキリシタンが復活祭を祝ったもの。慶長十七年に当地に布教活動を行ったイエズス会宣教師フイエル・グレゴリに因むとされる。あにまー様と呼ばれる山車を引いて町じゅうを練り歩く。
  7. サンダラゴリ パプア・ニューギニアの貿易港。首都ポート・モレスビーの北西に位置し、オーストラリアとの貿易の中継港として栄える。
  8. サンダラゴリ テレビ番組「ウルトラマンセブン」に登場した怪獣の一。第十三回「消えたネオピリナ号」に初出し、原子力鉄道を襲う。体長86メートル、体重99トン。ゴリラのような体とサンダルのような頭部が特徴で、原子力エンジンを好む。ソ連(当時)のムラビヨフ博士の娘リエエカと共に相模湖に沈んだ。
  9. 散達羅行李【さんだらごり】 主に真言宗で用いられる、仏典を収める行李。さんだらごうりとも。
  10. さんだらごり 産陀羅垢離。出産の無事を祈る祈祷。明治政府が禁止した。
  11. 膳所鰻】(ぜぜまん) 琵琶湖に産するウナギ目キスジウナギ科のウナギ。滋賀県大津市膳所港で水揚げされたところからこの名がつく。高級食材として主に京都で使用される。

全体的に説得力のある嘘が盛り沢山です。御本人が半分信じてしまっているからなのかも知れません。敵を欺くには先ず味方から、自分を騙せば他人も騙せる。詐欺師の鑑ですね。
初期は物凄い勢いで複数の嘘を寄せて頂いてましたが、ゲーム的公平さの観点から一人一嘘に限ったところ嘘密度が向上しました。

id:moAnnetenna

  1. 【ぜぜまん】地方の名産品の一。握りめしの揚げたもの。収穫後に手の空いた若い男女が、将来の繁栄を祈り、祭りの際に奉納したのがはじまり。
  2. くろなくしー【Cron axy】 別次元。 different sphere

id:mozuyama

  1. くろなくしー【Kronaxy】ケープタウンから東へ約60kmのクロナクシーは、17世紀からのワイン生産で知られる由緒ある街だ。広大なブドウ畑に点在する白壁の洒落たワイナリーではケープワインを試飲できる。コンスタンシア山麓に広がる美しい景色を眺めながら伝統の味を楽しもう。

id:mutronix

  1. むらびよふ【邑代斑】脚気の古名。定住し白米を多く食べるようになって多発したことから。
  2. しんぼっち(中国方言。「せぬはぼっち」より)働き分に応じて。長唄,紀州道成寺「さあれど大工が分け前も−也」
  3. しよんずいで [Shoenzuidee ドイツ] 美即知。フッサール古代ギリシアの知に備わっていた、美と倫理との不可分性を指して用いた言葉。

最近嘘参加がなく寂しいmutronix氏ですが、全般に渡り簡潔にして厳格な辞書らしい記述、また用例など小技も利いて見事な説得力です。

id:nobody

  1. むらびよふ【むらび・よふ】(1974- )事務員。付き人。劇団構成員。中島らもの弟子っていうか孫弟子。わかぎえふにあこがれて強引に「中島らも事務所」に押しかけ、バイトとして雇ってもらったらしい。同事務所の中でも異色の「出世魚役者」*1として活躍中。っていうか、ぶっちゃけ、活躍待機中(スタンバイOK!)。
  2. しんぼっち/しんぼつち 【滲没地】地学用語。湿地帯を生成過程で分類した場合の一つ。周囲を小高い地形に囲まれた盆地形の場所に多く見られる。古くは地表に露出していたが、時の経過とともに周囲から滲出した雪解け水などが集まって蓄積され、現在の湿地が形作られたような個所を指す。
  3. 【不庶出】(しょんずいで/しよんずいで) 元フリーランス・ライター。本名不詳。本業は会社員だったらしい。それも某世界的メーカーS社の…。他にも、名家の子息だと か、慶応を出てるとか、そういう噂だった。アスキー出版という会社が出していた雑誌にレビュー記事を書いていた。今は南の島で 農業や漁業(っていうか自給自足の暮らし)をしているらしい。
  4. しよんずいで 【勝瑞出】 (戦の前の)瑞兆。古代中国で兵士の士気を高めた。
  5. 【不庶出】 高貴な家柄に生まれた者の意。
  6. 【小水殿】(しょんずいで) 厠の婉曲な表現。
  7. ふ-えつ-ねんらん【不越年蘭】キク科パフィオペディルム属の一年草。アジアやラテン・アメリカの温帯区高地に自生。硯菊・袴蘭とも。
  8. うりやんは【瓜柳羽】鱗翅目ヤンハチョウ科の中型のチョウ。流線型の翅に瓜状の文様を帯びる。後ろ翅は退化して矮小。アジア東北部の高地・寒冷地に分布。幼虫は針葉樹の葉を食すとともに、擬態を示す。
  9. ね-おぴり-な【ね御放りな】江戸期に新吉原の遊女層に用いられた語の一。「それ以上の愚痴はおこぼし召されるな」の意。「ね−な」は禁止。「お」は軽い命令を表す。→「ありんす言葉」

傾向の読めない方です。広辞苑に限定していたにも関わらずのっけから明らかに方向性を無視したようなぶっ飛び嘘を書くかと思えば、打って変わっていかにもそれらしい嘘もつき通します。特に文法の解説まで付いたねおぴりなは見事。

id:ryuryusese

  1. ふえつねんらん −ふえつねむのらん【増津合歓の乱】 1118年(増津4年)京都に勃発した内乱。皇位継承に関する崇徳上皇後白河天皇との対立に、摂関家藤原頼長と忠通との家督争いが結びつき、上皇・頼長側は源為義平忠正、後白河・忠通側は源義朝平清盛らの武士団を招じ入れて戦い、上皇方が敗北した。上皇は讃岐に流され、頼長は戦傷死。頼長ののぼり旗である合歓の木 ( ねむのき ) にちなみ、合歓の乱・増津合歓の乱と呼ばれるようになった。この乱は、のちの武家政権成立への端緒をなした。

id:smoking186

  1. 斧鉞捻乱【ふえつねんらん】将軍の象徴である斧や鉞(まさかり)が捻れ乱れること。転じて、人望の厚かった将軍が亡くなった悲しみを表す。倭建が亡くなった際に、東国遠征の際に授かった斧鉞が捻れ乱れた故事による(日本書紀

id:sugio

  1. むらびよふ【群兵】→むらびょう
  2. しよんずいで 【所務水田】中世、所領として管理された水田。

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  1. ふえつねんらん【府悦年欄】戦国期甲信越地方の年欄。善光寺の僧侶府悦が記した年表を江戸初期に小幡景憲が編し、軍学書「甲陽軍艦」に付記したもの。
  2. うりやんは 熊本地方で、行商人の売声のこと。肥後熊本地方の民謡の名。
  3. 【寝起引名】(江戸の遊里語から。ネ(寝)オ(御)ヒレリ(放れり)ナ(名)の訛りか)寝所で男または女が、うわごとで呼んだ(その時の相手とは別の)色人の名前。
  4. くろなくしー【クロナクシー】髪を白く染める方用の、スプレータイプのヘアカラーフォーム。洗髪後にこれをすぐにブラシに吹き付けてブラッシングすればOK。シャンプーで徐々に退色します。

出題でも見えていた傾向ですが、日本語を中心に民俗学、歴史的嘘が多いように見受けられます。
くろなくしーの飛び方は「さんだらごりのお政」ことid:masah氏の影響でしょうか。寧ろ嘘解答例として書いた「美白用乳液の商品名」の影響だったようです。

id:watercolor

  1. むらびよふ【群酔う】大勢で酒盛りをするさま。
  2. しんぼっち【新墨地】新たに領土となった土地。

id:yukatti

  1. リエエカ〔li'eeka〕

    li-e-eka。ハワイ語で「涼やかな声」の意。特に「神聖な谷間」から流れ出るせせらぎの音を声にたとえたもの。転じて神聖な谷そのものを指す。自然を讃える重要で尊い言葉として、古典フラ【Hula Kahiko フラ・カヒコ】の詠唱【Mele メレ】や独唱者(チャンター)によるチャント【Oli オリ】(ハワイの神話や伝説、自然への畏敬の念を歌ったスピリチュアルなもの)の中に多く使用される。

    神聖な谷間

    ハワイアンにとって神聖な食物であり主食であったタロ芋は土地に水を張って水田栽培される。よって、タロ芋畠には水が豊富にたえず流れている土地が望ましく、ハワイでは扇状地の湿地帯を畠にしてきた。ホノルルはその代表的な土地である。

    しかし、神聖な存在である王族のためのタロ芋はけがれのない神聖な土地の畠で作らねばならず、そのために人獣に汚されていない地で山中から直接清らかな水が流れ出ている谷間が「神聖な谷間」として選ばれた。その谷あいの小さな棚田でごくわずかに栽培されたタロ芋が王族に献上された。

    このような谷間の、その清冽な流れのせせらぎ音を神聖さの象徴として、聖域である神聖な谷そのものをリエエカ【li'eeka】と敬意をこめて呼ぶのである(『谷』【pali パリ】と呼称することはタブーとされている)。リエエカは現在もハワイアンにとって侵すことの出来ない神聖な地であり、外国人にはいまだ開放されていない場所が多い。

嘘はこの1点のみですが、この力作嘘に言及しないわけには行きますまい。
たほいやの本来の遊び方はもっともらしい嘘で参加者を騙し、また数多の嘘から僅かな胡散臭さを嗅ぎ取って真実を探し当てることです。が、それはそれとして、こういう「この嘘に騙されたい」力の入った嘘解答というのも得難い楽しみです。
たとえ誰一人騙せなくても、読み物として楽しい嘘を。