ファンタジーRPGではPCの基本的立場は大抵、「雇われて危険な仕事をこなす」冒険者だ。傭兵に近いが戦争を生業とせず、(ファンタジーならではの)人間に仇なす危険生物を狩ったり古代遺跡の盗掘を行なったりと、まあそれなりにヤクザな商売である。
こうした「冒険」の相場というのはどうもかなり適当に決められている節があって、冷静に考えるとかなり変なバランスになっているような気がする。例えば国産ファンタジーRPGの代表格であったソード・ワールドでは基本的な報酬相場が大体1人あたり1000ガメル〜となっていた。ガメルは基本通貨である銀貨を表すが、中世のそれと違いごく小さなもののようで(当初20g/枚だったが、後に通貨以外の使い道を塞ぐ目的で2g/枚に改鋳)、従ってその価値も相応に小さく、食事や宿賃などの価格設定から判断する限り1ガメルあたり精々100円程度の流通価値に思われる*1。ということは、冒険者は1回あたり10万円の報酬に命を賭している計算となる。
いくらなんでも安くないか。
まあ実際のところどれぐらいが適正なのかと言われると難しい。
中世の傭兵の基本給を調べると、大体4〜15金貨/月ぐらいであるらしい(2ch調べ)。ここで言う金貨は国際的な基本通貨として広く通用したフローレン貨またはその相当品である。
金貨1枚あたりの相場からしてよく解らないが、当時の基準通貨であり今日でもドルなどに名残を見せる銀貨ターラーと等価*2であり、1ターラーは最低通貨単位である銅貨クロイツァーの60倍だという(Wikipedia調べ)。ターラーの相場感も不明だが、著名な作曲家であり宮廷楽長など高給職も務めたバッハの俸給が月額で33ターラーとある(http://www.prmvr.jp/EnsembleVoce/Bach/Bach9.html)。当時の従者や女中など下級職の俸給が年間10ターラー前後だというから、1ターラーあたり10万円ぐらい*3の感覚だろうか?そうすると傭兵の月給は40万〜150万ぐらい。まあこれは「基本給」であり、戦時にあっては功績に応じたボーナスが期待できたのかも知れないが、意外に低く感じられぬでもない。
しかし、別の資料では連隊長職でさえ月に銀貨16枚とある。この表では円換算で2万円弱となっているが、エキュ銀貨は重量/サイズとも概ねターラー貨に匹敵する高額貨幣であるので、実際の価値はもっと高かったのではないかと思われるが、だとすれば司教の収入たるや……
なんにせよ、冒険者の報酬相場としては、せめて50万円ぐらいは欲しいところだ。そして、それを酒・女・博奕に突っ込んであっという間に使い切ってしまったり事情により背負わされた莫大な借金返済に充てて質素に生活したりして、すぐ次の危険に飛び付く、冒険者とはそんな連中であって欲しい。