Adobe Illustrator初心者が学ぶべきこと

新人さんにIllustratorの講習をやっているところなので、未経験者が身に付けるべき感覚の話をちょっと書く。

重なり順序で絵を作るということ

絵を描くのに慣れている人がまず陥りがちな失敗が「線で描こうとする」ことだろうと思う。多数の線を繋げたひとつのオブジェクトとしての絵を意識してしまうと、Illustratorでは巧く描けない。
むしろ切り抜きを多数重ねて形を作るのが、Illustratorの役割なのだ。まずシルエットを書き、黒く塗る。その内側にシルエットを一回り小さくしたものを置き、部分的に外の輪郭との感覚を調整する。と、強弱の付いた線で描いた線画のようになる。
筆致の芯線を描くのではなく、筆が描いたストロークのアウトラインをなぞる感覚。
重なり順が極めて重要になるので、画面端には常にレイヤーパレットを展開してオブジェクトの順序を把握する。また適度にグループ化してオブジェクトの整理を心がけ、全体を把握し易くしておくこと。

ベジェのコントロール

ベジェ曲線Illustratorの修得を阻む最大要因であるような気がする。点と点の間を滑らかに繋ぐ曲線を、点から伸びるハンドルの傾きと長さだけで調節する感覚は、慣れるまでかなり混乱するだろう。
練習としてはロゴのトレースや写真の切り抜きなどをひたすら練習するのが王道だが、それはそれとして法則性というか、ちょっとした感覚を掴むと上達が早い。
まずは円ツールで真円を描く。次にその半径に合わせて正方形を描く。
ここで選択ツールで円のアンカーポイントを選択、接線ハンドルを見てみる。
と、アンカーポイントからハンドル先端までの長さが概ね正方形の中心、つまり円の半径の半分に一致するのが判るだろうか。
正確には半径の半分より僅かに長いのだが、これが概ね円に近似したカーヴの描き方となる。
アンカーポイントからハンドル先端までの長さだから、ハンドル両端の距離はほぼ半径に一致する。「円を描く時はハンドルを半径分」と意識しておくと判り易い。

塗りと線の順序

Illustratorは基本的に形を切り抜いては塗り色と線の太さを指定して絵を描くようなソフトだが、実は塗りと線は複数重ねられるし、重なり順序を変更できる。アピアランスパレットで新規線や新規塗りを追加してそれぞれにコントロールすれば、例えば白黒が交互に並びその外側に細く黒線が沿う鉄道線路や、赤い太字の外に白線、その外に更に赤線で囲う二重袋文字なども簡単に作れる。同一オブジェクトを複数重ねて線の太さを変えるようなものだが、オブジェクトとしては単一なので後から文字を打ち変えたり線の形を変更したりといった状況でも1回の作業で済む。

Command+7で切り抜く

写真を一部トリミングして使いたい時、はみ出る箇所を透明にしたい時。ついPhotoshopで切り抜いてしまいがちだが、Illustratorで切り抜きたい形のパスを重ね、切り抜き対象と同時に選択してCommand+7を押すと指定パス通りに切り抜かれる。
なにかと多用するのでキーボードショートカットを記憶しておくこと。