斜翼複葉双発戦闘機"アヴロ ドラゴンフライ"

非常に珍しい複葉双発の戦闘機。
当時の空戦戦術では敵機後方斜め上空からの一撃離脱が重んじられたため、高速性能に優れた戦闘機の開発が待たれていた。これを満たすため、本機は当時の戦闘機としては非常に珍しい双発を採用。配置も独特で、機首にふたつのエンジンを並列配置、プロペラ同士をギアでリンクし90度偏向させて逆回転する構造だったようだ。これは左右でトルクを打ち消し合うため直進性に優れるが、形状としては明らかに頭でっかちで妙なバランスであった。連結こそないものの、このような機首よりプロペラを前方に突き出す接近配置の双発機はこの後英空軍機を中心に長く用いられることになる。
プロペラ径はさほど大きくない。このため機首中央上方に取り付けた機銃は銃架により少々持ち上げるだけで左右プロペラの谷に収まり、同調装置なしにも射撃に問題を生じなかった。後には機首下方にも増設されて圧倒的火力を見せ付けている。
頭が重いため、重心バランスを取るには胴体後方を延長するしかない。同時に、滑走時に地面と接触せぬよう尾部は可能な限り上げたい。これを両立させるため、本機は妙に細長い上に斜め上方に向いた尾部を有するデザインとなった。
また攻撃にあっては前方下方視界を、防御にあっては後方上方視界を広く取るのが最も望ましいとの考えからか翼を極端にずらし配置、真上から見たとき前後翼が重ならない状態になっている。このような位置ずらしには上下翼間での気流干渉による揚力減少効果を低減する意味もあり、配置をずらす設計自体は珍しくない。とはいえここまで極端なものはかなり異例である。
上から見ると膨らんだ頭に左右2対の翅、長い尾を持つシルエットであり、本機に対する愛称は満場一致で「蜻蛉」に決まったという。
設計意図通りの直進高速性を発揮し奇襲戦では活躍したが、慣性モーメントが極端に偏った配置から旋回性は非常に低く、一旦捉えられると被撃墜率も高かったようだ。結局あまり評価されることなく、ごく少数の生産に留まった。


調子に乗って複葉機も考えてみる。Fw228がシューティングゲームにでも出てきそうな(無意味に)未来的スタイルであるのに対し、こちらは駄っ作機として頭が妙に膨らんだ不恰好な機体を想定している。そのうち暇があれば1/144で工作するかも。