今まで使っていたイアフォンで耳障りなビビリが発生してしまったので、買い替えることにした。
私の耳は些か標準的な形から外れているらしく、だいたいのイアフォンは歩いているだけで落ちてくる。そのため落ちないイアフォンを求めて今まで様々な製品を試してきたが、その経験の限りでは最も安定感があるのはスポーツ用モデルであった。着けたまま走ったりする用途を想定しているため脱落を防止する機構が備わっており、振動に対する安定性が高い。
ただ、スポーツモデルは全体に左右独立型のものが少なく、また原色や蛍光色など派手目のカラーリングが多い。デザイン的にはあまり好みでないし、そもそも選択肢自体も少ない。
もう少し毛色の違うものはないかと色々物色する中で、ふと「寝ながら使う」小型軽量イアフォンの紹介記事を目にした。枕に耳を付けてもイアフォンが圧迫されないよう耳の窪みにすっぽり収まるサイズに設計され、小さい分だけ重量も軽い。
いや別にイアフォンを装着して聴きながら寝るつもりはないのだが、これ耳から落ちにくいのでは?
一般に、音質や機能性を追求したイアフォンほど大きく重くなりがちである。ドライバーの径を大きくした方が迫力を出しやすいし、共振を抑えるためか重く硬い金属製ハウジングなどが好まれる。連続稼働時間を伸ばすならバッテリー容量も増やさねばならない。
そうした高級イアフォンは、しばしば装着時に耳から大きく飛び出す大きさになる。
イアフォンの耳内への固定方法は大きさに関わらずほとんど同じであり、先端イアピース部の密着性と耳介の突起部への引っ掛かりで支えるというのが基本的な構造で、つまり耳から出ている箇所が大きく重いものほど脱落しやすいことになる。
逆に、寝フォンのような小さく軽い構造はそれ自体が落下しにくさを生むはずだ。
というわけで店頭で試着したところ感触良好だったので買ってみた、ag COTSUBU mk2+。
これまで使用していたものに比べ、イアフォン本体もケースも半分ぐらいの大きさしかない。非常にコンパクトで持ち歩きやすいが、その分だけバッテリー持続時間は短くなるし、失くしやすそうな予感もする。別売りのストラップケースもあるので、鞄に取り付けておいた方がいいかもしれない。ケースは全体に角丸で、丸い底面にUSB-Cポートがある。つまりは他製品のようにケース蓋部分を上に向けて置くのではなく、横倒しに置く想定なのだろう。
本体は本当に小さく、サイズ感は⋯⋯イアピース2個分ぐらい(つまりイアピース部分も含めて3個分程度)。耳からぜんぜん飛び出ないので目立たないし、カラーリングも明度高め彩度低めの中間色が豊富にラインナップされており、ファッションに合わせやすい。
音響機材はだいたい黒ばかりなので、カラーヴァリエーションが豊富なのはそれだけで嬉しい。
ネイビーと悩みつつ、クリームを選択。
外箱は10x10cmの正方形で、しっかりした厚紙に手触りの良いマットコーティングが施された高級感のある貼り箱。
中身はシンプルで、説明書と本体、それにイアピースと充電用USBケーブルを収めた小さな箱がひとつだけ。
ペアリング方法は非常にシンプル。
よくあるパターンでは「操作ボタンを長押しするとペアリングモード」だが、COTSUBUは非ペアリング状態だと「ケースを開けた時点でペアリングモードになる」ので、端末側でCOTSUBUを選択するだけでペアリング完了。
機能はだいぶシンプルで、操作可能なのは再生/停止、送り/戻し、音量上下ぐらい。マイク内蔵で通話は可能だが、外音取り込みやノイズキャンセリングなどはない。
本体サイズが小さい分だけセンサー部が相対的に広めなので、着脱などで誤操作が発生しやすい感はある。
耳への収まりは良いが、私の場合は左のイアピースをSサイズにしないとちょっと押し出される。
押し込み直そうとするたびタッチセンサーが反応して再生が止まってしまう。5連打で一時的に無効化することは可能だが、ケースに収納するとまた有効状態に戻る。取り出し時に連打しておいてから装着するのがいいか。
あまり音質を気にする方ではないのでサウンドのレビューは他を当たっていただきたいが、この大きさの割に低音部のキックが結構しっかりあってびっくりした。音量小さめの感はあるもののニュートラルで聴きやすい感じ。
ノイズキャンセリングはないものの、遮音性はわりと高く、それこそ睡眠時の耳栓代わりになるかもしれない。外音取り込み機能もないので会話にはちょっと不便か。
予想外だったのが「軽さ」の効用。当初期待した「落ちにくさ」とは別に、歩行時利用に於ける再生音量に安定感がある。
イアフォンなどを長くお使いの方ならばご経験のことと思うが、こういう機材は「耳のすぐそばで鳴らす」ことによって小さな音量でも大きく聞こえる仕組みであるため、耳内での小さな位置変動によって音量がかなり影響を受けやすい。
歩行時の、足から伝わってくる地面からの衝撃や頭部の上下運動といった作用がわずかにイアフォンを揺らし、これが音量に作用してくる。とりわけクラシックのロングトーンなどのように静かで一定の音が続く場面では、歩行の衝撃に合わせて音量が周期的に変動してしまうのが明瞭に感じられるものだ。
ところがCOTSUBUは、その圧倒的な軽さのゆえに振動で動きにくいらしく、歩行による音量の変動をぜんぜん感じない。これはすごく快適だった。今後も買い換えるなら同系統機種にしようと思うぐらいには。
