言及してもらう為の著作物利用許諾ガイドライン

様々なところで、著作物の無断流用を目にする。Winnyにソフトや音楽データを放流したりYouTubeに録画した画像をアップロードするような明らかな著作権侵害のみならず、例えばBlogで商品の紹介を行なう際にメーカーのサイトから画像を転載するしたり、或いはニュースへの言及に際しその一部または全文を引用するなど、白とまでは言わずとも薄いグレー程度のものまで。
こうした行動について、著作権者側はどう考えているのか。
多分、現状ではほとんどのサイトが「無断転載を禁じる」程度の文言で簡潔に済ませているものと思うが、これでは何の意味もない。
現行の著作権法で無断転載が禁じられているのは、誰でも知っていることだろう。また、正当な引用の範囲ならば認められるというのもそれなりに知られるところだとは思うが、素人目にはどの程度が正当な範囲なのかよく判らない。まして画像の引用は必要性が認められ難いようで、動画となれば尚更「前例にない」で済まされてしまいそうなものだ。
こんなことでいいのか。


現在、ページの価値は概ね「ページ閲覧人数」と「ページへのリンク数」で決まると言える。
ページ閲覧人数は、広告表示などの際に参照される。既存メディアで言えば新聞/雑誌類の発行部数やTVの視聴率に相当するものと考えて差し仕えあるまい。
しかし、閲覧人数はページの運営サイドが自ら設置するアクセス解析によってのみ判断可能なものであり、即ち自己申告に拠らざるを得ない根拠薄弱なものである。
対して、ページへのリンク数は、ある意味で*1客観的な基準が存在する。それが世界一の検索エンジンGoogle」である。


1998年にGoogleが手動分類型に匹敵する高精度の検索システムをひっ下げて登場して以来、リンクは非常に重要な武器となって来た。
「重要なページは(恐らく)多数のページからリンクされる」「重要なページがリンクしたページは(恐らく)重要性の高いページだ」たった2項の単純な原理は確かに巧く機能し、Googleは一躍最重要な検索エンジンの地位を確保*2が自分でコンテンツを用意(それは厳密には著作権侵害である場合が多い)しなくても、著作権所有者自身がリンク可能なコンテンツを用意しておけば、より紹介が容易になり、リンクして貰い易くなるだろう。
更に、その上のコンテンツだけで満足できない場合に参照者自身がコンテンツをアップロードする場合の取り決めも判り易い形で提示しておくことが望ましい。例えば「動画は30秒以内、160px*120px以内であること」などのように。
民衆は締め付けには従わない。公然と無視して、或いは新たな穴を探し出して利用するだけだ。著作権者には大義があるが民衆には数の利がある。いくら取り締まったって全部は取り締まり切れない、となれば、むしろ歩み寄って黙認できる範囲で自由にやって貰う方が、結局は著作権者の利益になるというもの。それを逸脱した場合にだけ、容赦ない仕置きを行なえば良い。


というわけで、私の考える「著作物適正利用の範囲」を例示する。

  • 画像
    • 元ページ上のコンテンツを表示する場合には、ダウンロードしたものを再アップロードするのではなく直接元のファイルURLを指定して表示のこと。また、必ず著作権者を表示し、元のページにリンクすること。
    • それ以外にユーザー自身が画像を用意し掲載する場合、1枚あたりのサイズは320*240以内であること。一部を切り取って掲載しても良いが、分割した画像を集めて1枚に復元可能な場合は全体として制限サイズ内に収まること。
    • 画像の改変を行なう場合は、必ず改変前の画像も掲載し、著作権者を表示して元のページにリンクすること。
  • 動画
    • 元ページ上のコンテンツを表示する場合には、ダウンロードしたものを再アップロードするのではなく直接元のファイルURLを指定して表示のこと。また、必ず著作権者を表示し、元のページにリンクすること。
    • それ以外にユーザー自身が画像を用意し掲載する場合、1枚あたりのサイズは160*120以内、1ファイルあたり最長で30秒以内であること。
    • 複数の箇所を引用する場合、合計で元データ全体の再生時間の半分を越えないこと。
    • 内容の改変を行なう場合は、必ず改変前の動画も同等部分を掲載し、著作権者を表示して元のページにリンクすること。
  • 音楽・音声データ
    • 元ページ上のコンテンツを表示する場合には、ダウンロードしたものを再アップロードするのではなく直接元のファイルURLを指定して表示のこと。また、必ず著作権者を表示し、元のページにリンクすること。
    • 1曲あたり最長で45秒以内であること。
    • 複数の箇所を引用する場合、合計で元データ全体の再生時間の半分を越えないこと。曲については原則として1曲あたり45秒以上の引用を認めない。
    • 内容の改変を行なう場合は、必ず改変前の音声データも同等部分を掲載し、著作権者を表示して元のページにリンクすること。
  • 文章
    • 引用に際しては極力原文の表記を改変しないこと。また、必ず著作権者を表示し、元のページにリンクすること。
    • 引用する文字数は原文の半分以下であること。それ以上の範囲を引用する場合には注釈を入れた上で要約文を掲載することにより文字数を減少させても良い(原文保持の例外)。
    • 引用する文字数は、言及する記事内容の文字数の半分以下であること。無関係な話題についてはその数に計上しない。
    • 内容の改変を行なう場合は、必ず改変前の文章も同等部分を掲載し、著作権者を表示して元のページにリンクすること。

この例では、著作権者がWeb上にコンテンツを有しない場合の処理が考慮されていないなど問題があるが、それは何方かが対案を提示されることだろう……この記事が誰かの注目するところとなれば、の話だが。

*1:客観的とは言っても、そのアルゴリズムは明らかにされておらず、不当に評価を高めようとするspamを排除するために日夜調整が行なわれている。その調整が正当なものかどうかは、外部から判断しようがないため、完全に信頼して良いとは言い切れない

*2:何故か日本では未だにYahoo!の方が高いシェアを有しているのだが。Googleを知らないだけなのか、ポータルとして定着しているということなのか)、Web業界ではGoogleの検索アルゴリズムに最適化して検索で有利な位置を占めること-----即ち、自ページへのリンク数を増加させること-----が急務となった。 一時には、その為だけに数百〜数万の「対象ページへのリンクのみを記した」ページをばら撒くなどの、所謂「Googlespamページ」が多用されたが、Google側のアルゴリズム調整に伴いこうしたページの実効性は低下し、現在は「真っ当な」リンク以外の有効性はかなり低くなっているはずである。 コンテンツへのリンクを増やすには、第一にそのコンテンツ自身に魅力がなければならないが、それと同時にリンクし易い構造を持たせることが重要である。例えば、同じ名前のページを書き替えて使い回すと、ある情報にリンクしたつもりが他の内容に差し替わってしまうからリンクが敬遠される。一度掲載した情報は半永久的に掲載されること、その際URLが保持されること。参照数を増やす上での基本事項である。 また、参照者((ここでは閲覧する者ではなくそのページへリンクする者の意味で使用している