この問題には論点が色々あるので、ちょっと整理する。
変換が同一性保持権を侵害するか
ポケットはてなは、携帯電話など表示領域も帯域も限られる環境向けにWebページの一部を変換し、可能な限りデータを軽く見せるサーヴィスである。変換後のページはカタカナや全角英数を半角に変換される、画像が縮小表示されるなど複数の点でオリジナルと異なる表示になる。この点で、変換前と同一でないこと自体は疑いようのないところだ。
同じ見栄えは保証できない
どんな手段を講じても、著作者の意図した見栄えが再現される保証はないのがHTMLの仕様である。そもそも見栄えを規定するものではないから当然のことだし、見栄えを制御する技術であるCSSを導入してもなお、全ての環境で同一であることは保証されない。
これは同一性保持権の侵害などではなく、そういう仕様の技術を採用して作品を制作し公開したのだから、環境の差による見栄えの違いは著作者が容認したと見做すのが妥当だ。
私的利用の範囲
ポケットはてなの場合はこれと少々事情が異なる。そもそもソースコードレヴェルでの改変が行なわれるからだ。つまり仕様上の問題から同一性が保持されないのではなく、積極的に改変を行なっているということになる。
ただ、ポケットはてな自体は意図して改変を行なっているのではなく、単に改変可能性を示したに過ぎない。改変したデータを公開しているのではなく、改変できる技術を公開し、閲覧者からの要求を受けたときだけデータを取得し改変して渡すだけだ。Photoshopが画像の改変を可能にするからといって同一性保持権を侵害するわけではないように、ポケットはてなもまたそれ自体が同一性保持権を侵害するわけではない。
予め改変したデータを保持してある(つまり内部的にキャッシュしている)ならばデータの無許可複製と改変に当たると言えるが、そうでなければ法的に問題はない、と思う。
そもそもキャッシュは複製権の侵害なのか
キャッシュというのは毎回結果を取得する代わりに一度得たものを保存しておいて使い回す機能だから、当然ながら複製を保存することになる。侵害といえば侵害だ。
ただ、個人のPCに保存される限りは私的複製の範囲に収まるものだし、そもそもデータの閲覧と複製は技術的に不可分だから、これを複製権の侵害とすることは電子機器の否定と等しい。
とは言え、表示速度改善のためにポケットはてなサーバで一度変換したデータを保持したりすると、少々話は違ってくるかも知れない。通信の節約は運営側の都合に過ぎずキャッシュ保持なしにも機能は実現可能だし、個人利用ではなく複製・改変したものを公衆送信することになってしまうからだ。
多分そのあたりは運営サイドも考慮していると思うから、ポケットはてなで実際にキャッシュを保持してはいないと思うんだけど、本当かどうかは知らない。
この記事からhttp://zapanet.infoにTBしようかと思ったのだが、「この記事に言及していそうなエントリを表示」とかいう面白そうな機能があるので自然補足に任せることにした。