ゲームの楽しみ方

フロントミッションのレビューを巡っていたら、5thについて難易度が低いことへの不満を漏らしているものが幾つか。
確かにフロントミッションは決して難易度の高いゲームではない。敵のAIは決して頭の良い方ではないし、ダメージ回復が強力なのでそうそうやられることも無い。たとえミッション中に撃破されても戦死しないから次のマップではまた出撃できる。
システム自体はかなり完成度が高いのだが、敵の動き方が洗練されていないので些か手応えが無い。その分は敵の数とボスクラスのステータスで補っている感は否めない。これが対人戦可能だったら、さぞかし楽しいゲームになっていただろうに。
恐らく難易度を低く抑えてあるのはRPGを主体と捉える開発方針なのだろう。戦闘そのものを楽しみつつストーリーを追う。途中で詰まって投げ出されるより、やや物足りなくても皆が一通り楽しんで終わって欲しいと願うのは自然なことだ。
シミュレーション/ウォーゲームをやり込んでいるプレイヤーには、この難易度では役不足かも知れない。しかし、それだけでつまらないゲームと断じる前に、することがあるのではないだろうか。


プレイヤーは、(法的に問題のある手段を用いない限り)ゲームの難易度を下げることはできないが、上げることは幾らでもできる。例えばアリーナによる金儲けやサバイバルシミュレーターによるアイテム獲得をせずにプレイするだけでも難易度は多少上がるだろう。或いは全機初期装備のまま一度たりともセットアップせずにプレイする……後半かなりキツいプレイになる筈だ。
要はプレイヤーの自主的なストイシズム/マゾヒズムをどう発揮するか、だ。バイオハザードをナイフ一本でクリアする猛者も居る。ドラクエの低レベルクリアの限界に挑む勇者も居る。Magicで攻撃魔法もクリーチャーも使用せずにデッキ構築する数奇者、RTSでチートコマンド使用者を打ち破る強者……彼らは皆、自分なりの制限を課し、より困難な状況を自ら作り出すことによって新たな楽しみを見出している。
ふんだんに与えられたものを全て使った上で「手応えが無い」と文句を言うならば、それらを捨てて徒手空拳で立ち向かってみれば良いのだ。


どんな商品であっても、全員に最適化することなどできない。だから、商業活動としてはどうしても「一部に100%の満足」より「過半数に70%の満足」を目指さざるを得ない部分がある。そのことは百も承知の上で作品を受け入れ、残り30%を自らの手で埋めるのが、ゲーマーたるものの道ではあるまいか。
無論、「どうやり込んでも面白くない」作品だってあるに違いない。そして(彼または彼女にとっては)フロントミッション5thがそういうゲームだったのかも知れないが。