ブックマークのコメントがそんなに悪いか

どうも最近の議論では「はてなブックマークのシステムが悪いから荒れたコメントがつく」的な方向に流れつつあって、その結果としてシステム的な何らかの制限、とりわけコメントのユーザー以外への閲覧制限やコメントそのものの廃止論が挙がっているようだが、これは変な話ではないだろうか。
はてなブックマークにせよ2ちゃんねるにせよ、荒らしを助長するようなシステムを持っているわけではない。一部の荒れたブックマーク/スレッドに注目が集まるから全体として荒れた場のように思えるかも知れないが、大半はごく穏やかに運行されている。それが炎上するのは、何らかの火種が投げ込まれた時だけだ。
ブックマークに於いては、その火種は無論ブックマーク対象となった記事であろう。


とはいえ、多人数のコメントを一覧できることが印象操作的に炎上を加速させている可能性は否めまい。[これはひどい]などのタグがついて批判的コメントが並んだエントリを読む時、どうしても「これは酷いエントリ」といった先入観ができてしまうだろうから。
しかし、実際にブックマーク前にコメント一覧を目にする割合はあまり高くないのではないだろうか。人気エントリの一覧ではタイトルと含まれるキーワードしか見ることができないし、注目エントリの一覧でもタグが見えるだけでコメントは見えない。多くの場合はこの状態でタイトルから気になるエントリを探して閲覧しブックマークするのであって、まず他ユーザーのコメントを見てからという例は少ない筈だ。また、お気に入りからの閲覧ではそのユーザーのコメントを閲覧できるが、それは精々一人か二人分であって印象操作に寄与すると言うには少々弱い。というか、お気に入りユーザーの意見であれば自分の意見と大きく食い違うことは少ないのではないだろうか。だとすれば、それを見ても見なくても恐らく印象は殆ど変わるまい。
結論から言えば、コメント機能が炎上を加速するわけではない。


つまり、悪者はブックマークではないのだ。ブックマークはそのエントリに対する率直な感想を反映するに過ぎず、それを見た執筆者がどうショックを受けようと、それは自身に原因があると結論せざるを得ない。リテラシの低さから来る無自覚やそれに伴う自棄行動はまた別の問題である。ブックマークがなければブログ同士のコメントやトラックバックで同じことが行われていただろう。
50文字の制限は歯に衣着せぬ率直な物言いの原因ではあるが、遠回しに表現しようとずばりと切り込もうと内容に変わりがあるわけではない。
はてなブックマークに問題があるとすれば、それは影響範囲全体(理論的にはWeb上のすべて)にある程度高いリテラシを要求する性質そのものと言える。しかし、これははてなブックマークに限った話ではない。極言すれば、インターネットとはそういうものなのだ。モヒカンで手斧を持った連中がウロウロしている場なのであり、平民は尻尾を巻いて逃げ帰るべきだ。そうして世界の片隅に変なテリトリを作り上げてその中だけで通用するローカルルールを敷いて安心するわけだが、そうした楽園は永くは保たない。モヒカン賊のシステムが持続するのはそれが合理的理由に基づいて機能しているからであり、ネット外の慣習をベースとする非合理なルールではそれに太刀打ちできない。一時的には数的優位を確保できるとしても、非合理であるが故に他のコミュニティとも共闘できず、いずれ孤立する。


いや、そんな話ではないのだった。私はただ、荒れたコメントが付くのは元のエントリが荒らされる原因を持っているからであり、またブックマークした一人一人がそれを荒らしているからであってシステムに責を押し付けるのは本質的に間違いだと言いたいだけだったのだが。


一応加筆しておくと、「しねばいいのに」みたいなコメントが付いてしまうのははてなブックマークの所為ではなくて結局自分の責任だろ、と。
「しねばいいのに」は本来ギャグとしての科白だったらしいが、出自がどうあれ使いようで善くも悪くも受け取られる*1し、またそれ単体では/文字だけではニュアンスが伝わり難く額面通り受け取られる可能性を考慮しなかったのであればそれはやはり書いた本人の責任。それが「システムが悪い」という話にすり替わるのはどうかと思ったよ、というエントリなのだった。以上解説終わり。

*1:otsune氏とdasm氏の掛け合いみたいな殺伐芸の例も