シーリングスタンプ:ワックス溶融炉とハンドルを作る

シーリングスタンプのヘッドを作ったので、そのテストを兼ねてシーリングスタンプ用品を色々と揃えた。

シーリングスタンプというのは、手紙などに蝋を垂らしてスタンプを捺す封印のことだ。
古式では火の点いた蝋燭から溶けた蝋を垂らして捺したようで、今でも棒状で芯のある蝋燭型のワックスが使われるが、最近の流行りは粒状のワックスをスプーンに乗せ、炙って溶かすやり方である。
粒型の良いところは溶かす量を調節しやすいこと、そして複数の色を混ぜるのが容易であること。様々な色のワックスが販売されており、複数混ぜ溶かせばマーブル模様を楽しむことができる。

(余談ながらこれら粒状ワックスはワックスと言いながらも蝋ではなく、グルーガンで使われるのと同じ低温融点のEVA樹脂であるため蝋よりも柔軟で、割れの懸念がない。)

ワックス溶融炉

ワックスを溶かすのに特別な道具は必須でなく、手持ちのスプーンを使いガスコンロなどで炙るだけでも問題ない。が、持ち手が金属だと熱伝導によって火傷する懸念があるので非金属製の持ち手があるスプーンが必要だし、注ぎ口があった方が使い易い。また、溶けるまで手で支えるのでなく置いておける場所があると楽だ。
そういうわけで「ワックスウォーマー」とか「ワックスメルター」などと呼ばれる「専用スプーンを加熱してワックスを溶かすための炉」が売られている。

多くはスプーンを置く穴の下に蝋燭を設置し火で炙る、シンプルな方式である。蝋燭なので危険性は少ないが、「部屋の中で火を使う」ことに抵抗を覚える人もいるようだ。また全金属製でなく周辺部が木製のものでは「燃えた」という話も聞き、若干懸念がある。
もちろん、火を使わない電熱式のものもある。が、なぜか形状が「アヒル」「猫の肉球」⋯⋯⋯⋯

いや、ファンシーな可愛さが悪いわけではないが、少なくとも私の好みの路線ではない。もっとシックで、アンティークめいた雰囲気のものが欲しい。
なので自作することにした。

まず、電熱式のウォーマーを分解する。

シンプルな構造だ。電源からパイロットランプと発熱体に線が繋がっており、間にスイッチを挟んでいる。発熱体は金属板でスプーンを納める金属パーツに押し付けられており、ここを介してスプーンまで熱を伝える。
これなら筐体の自作に問題はなさそうだ。

むしろ問題はその筐体の素体である。アンティーク風のデザインを考えたいが、なにぶんこうした炉自体が近年の粒状ワックス以後に登場したものなので、そもそもアンティークの実物など存在しないのだ。
炉のイメージで色々考えてみたものの、丁度良さそうな大きさとデザインで、かつ加工が可能な素材のものを探すというのは容易ではない。
そこで炉にこだわるのを止め、アンティーク雰囲気の小物としてどう機能を収めるか考えてみた。
要はスプーンを置いて加熱する場所が収められれば良いわけで、ならば箱型でもいいのでは?

スプーンの長さは10cmほど。周囲のマージンを考慮しても、幅15cm程度に収めたい。
そのサイズで適当な箱を探したが、なかなかこれといったものが見付からない。アクセサリケースでは小さすぎ木箱の類では大きすぎ、あるいは素材が鉄やガラスで加工できない。数日悩んでいたが、ふと見た百均のマグネットフラップ付き紙箱がちょうど内寸155mmと手頃なサイズだったので、これを使うことにした。


板材に線を引き、部品を載せて配置を検討する。
スプーンは手前中央部。箱の奥行き方向は105mmだがスプーンの直径は40mmしかないので、周辺部に10mmのマージンを取っても奥側が半分空いてしまう。なのでスタンプヘッドを置く穴を作ろう。
制作したスタンプヘッドが2種類なので、左側に穴をふたつ。右半面が余るので、そこにワックスを入れた瓶を収める穴を作る。発熱体は左下側に来るので使用中もたぶんワックスが溶けてくっついたりはしないはずだ。
箱の内寸は高さ50mmしかないので、50mmに収まる小瓶を探さねばならない。最初は円形の小瓶を入れようとしたのだが、材質にガラスとある瓶を注文してみたら樹脂製で、安っぽくなるので採用を中止、代わりに空のインク瓶を採用した。

今回は丸く穴を空ける加工が多いので、ホールソーを購入する。スタンプヘッド軸を収めるための15mmと、スプーンヘッドを収める40mmのふたつだ。

ホールソーというのは要するに「刃を円形にした鋸」である。中央に軸があってドリルに取り付けて回転させることで板を切り抜く。
丸く穴を空ける道具としては他に「座ぐりビット」というものがあって、こちらは「回転させて板を削る」鉋のようなもので、穴を抜くだけでなく「円柱状に掘り下げる」ことができるのだが、その分だけ削るパワーが必要で、かつ木屑も多く出る。今回は穴を空けられれば充分と考え、ホールソーの方を採用した。

ホールソーとドリルで穴を空け、円形以外の部分は糸ノコで切る。端材で穴の後ろを塞いだので座ぐりビットで良かったのではという気もしたが、それだとスプーンの軸を受ける部分の削り出しが面倒になっていた気もする。
スプーンの受け部分は金属用のエポキシパテで接着。がっちり固まり耐熱性も高いので、発熱部の接着には丁度良い。

裏面に部品を配線してゆく。流用元のワックスウォーマーは電源コード直結だったが、箱からコードが出ているのもちょっと邪魔な気がするのでメガネ型ケーブルのコネクタを埋め込むことにした。
配線は単純な直列繋ぎかと思っていたら実は発熱体とパイロットランプLEDは並列だった。どうも発熱体はPTCヒーターと呼ばれるもので、温度上昇に伴い抵抗が増大し発熱量が下がる、自発的温度維持特性を持つ代物らしいのだが、つまり直列にするとLEDの分だけ抵抗が増え発熱しなくなってしまうようだ。
結線部分をハンダ付けし、熱収縮チューブで絶縁。

パイロットランプとスイッチは雰囲気がイマイチなので、ラインストーンを貼り付ける。
オイルステインで着色しニスを塗って、箱に収めて出来上がり。


箱の内張は黒のストライプでちょっとモダンに過ぎ雰囲気が合わないので、後からアンティークペーパー風の紙を貼った(トップの画像)。

ハンドル

最近のシーリングスタンプはヘッドにネジ穴が刻んであり、好きなハンドルを取り付けられるものが多い。
ということはネジの規格さえ合えば、ハンドルは任意ということだ。木のハンドルがもっとも一般的だが、金属や樹脂のハンドルなども販売されている。

⋯⋯自分でネジを買えばハンドルを自作できるのでは?

アンティークの鍵(風の金属チャーム)を購入し、これを改造してハンドルを作ってみる。

スタンプヘッドのネジ規格を調べてみたところ、M7だという情報を得た。これはネジの共通規格で外径が7mmであることを示す。日本ではM6以降は2刻みなのでM7というサイズはあまり使われないが、シーリングスタンプが主に海外の文化であるためそういうサイズ規格が一般的なのだろうか。
というわけでM7x10mmのボルトを購入した。

⋯⋯のだが、何故かこれで嵌まるヘッドと嵌まらないヘッドがある。
どうやらヘッドのネジ径にもM7とM8の2種類があるようだ⋯⋯
(というか一部のヘッドでなぜか「M7でもM8でも嵌まる」ものがある。径は違うがネジのピッチが一致していて嵌まってしまうんだろうか⋯⋯)

M8ならば手に入れやすい。

イモネジを使えばネジ頭の鍔部分がないので見た目もシンプルにできるだろう。

金属同士の接合用にはエポキシパテを使用した。

これは2液混合式で、強力ではあるが固まるまでは粘液状であるため支えを必要とする。流し込んで固めるなら良いが、形を整えるには不向きだった。
粘土のように練って使うタイプの金属パテをおすすめする。

鍵の先端をネジの穴に合わせてパテで接着しただけであるが、そこそこ雰囲気良くまとまった。
金属風とはいえ質感が異なるので、パテ部分は塗料を塗ってカバーしている。

栃木:蔵の街

栃木市内を観光してきた。全国で唯一の「県名と同名の市名でありながら県庁所在地ではない」、県内第三の都市というちょっと微妙な立ち位置ながらも意外に見所の多い街である。

栃木県の観光名所といえばまずは日光、鬼怒川温泉那須高原、あるいはあしかがフラワーパークなどが有名だが、実は栃木市も隠れた名所で、江戸時代の廻船問屋として栄えた栃木市には古い蔵造りの家屋が今も多く現存し、「蔵の街」と呼ばれている。
同じく江戸時代〜大正頃の建物が多い埼玉県川越、千葉県佐原と並んで「小江戸」と称される地域である⋯⋯のだが、どうにも知名度は今一つのような気がする。

8月の半ばまでで会期が終了となる足利市美術館の展示「顕神の夢」を覧に行きたかったので、ついでに栃木市で一泊して観光してきた。

宿泊

栃木市内のホテルはそう多くないが、駅すぐ横に真新しいホテルが1軒あったので、そちらに宿を取った。
business-activity-chanvre.com

アクセス性は抜群、1階はデリレストラン「FARMDELI」が入っているので食事にも困らない。




向かいのアンテナショップ「蔵なび」では栃木名産の土産物が買えるほか、ジェラートなどもやっている。

アクセス

栃木駅はJR両毛線東武日光線の接続駅であり、交通の便は悪くない。とはいえJRは、小山までなら上野東京ライン=宇都宮線で1時間20分程度、なんなら東北新幹線を使えばわずか40分で到着するものの、そこから栃木へは単線である両毛線での接続となり、その運転間隔は1時間に1〜2本と非常に少ない。対して東武日光線の方は少ない時間帯でも1時間に3本、多い時間ならば7本が運行されているので、これを使うのが賢明だろう。都内からは浅草・北千住から東武伊勢崎線、もしくはJR 宇都宮線栗橋駅から接続できる。
なお日光線両毛線も、ホーム停車時にドアが自動で開かないため乗り降りの際はドア脇のボタンを押すことを忘れずに。

今回は一泊したが、日帰りも充分に可能な距離ではあり、気軽に足を運びたい。

観光

駅からの大通りが「蔵の街大通り」である⋯⋯が、最初の500mぐらいはまったくその気配がない。だいたい700mほど進んで「文化会館入口」交差点を過ぎたあたりでようやくそれらしい建物が現れ始めるだろうか。




見世蔵の並ぶエリアの入口付近には「とちぎ山車会館」があり、隔年で行なわれる「とちぎ秋まつり」に使われる人形山車が常設展示されているそうだが、このときは臨時休館中であった。
そして、その先700mぐらいで蔵の街大通りは終わってしまう。
実は蔵の街大通りは街のメインストリートではあるのだが、観光名所としてのメインはこの通りではないようだ。

大通りの西側には「巴波(うずま)川」という小さな川が流れている。川にかかるたくさんの橋から水面までも2mあるかどうか、川幅は広いところで10m程度か、水深もごく浅く、澄んだ水を通してたくさんの鯉の姿がよく見える。、小舟しか通れそうにない穏やかな川であるが、「渦巻く」を語源とすることからもわかるように、かつては幾度も氾濫した荒れ川であったらしい。

江戸時代には徳川家康の遺骸を駿府久能山東照宮から日光東照宮へと改葬するにあたり御用荷物をこの河岸へ水揚げしたところから舟運が始まり、江戸時代には運送のハブとして大いに栄えたという。今でも川沿いに蔵が立ち並び、そのうちいくつかは資料館などとして公開されている。

また当時を偲んで観光用の小舟で川面を行く遊覧船が運行されている。

この川沿いの散策路が、まず駅からほど近い観光スポットの中心となる。
川岸にはガス灯を思わせるレトロデザインの街灯が立ち並び、夏場は灯籠が置かれ水面に灯りを映す。だいたい18:30〜19:00頃から灯り始めるようだ。



一方、大通りと川の間には「蚤の市通り」と名付けられた通りが走っている。ここは終戦まもない1953年から2011年まで定期的に蚤の市が開催されていたらしく、通り沿いには古道具屋などをはじめとしてちょっと洒落た店が立ち並ぶ。



なお蚤の市は2022年に復活し、今年も10月末に行なわれるそうだ。

通り沿いで見かけたこちらのお店は蔵を改装した、ええと⋯⋯シルクスクリーンプリントによるアパレルデザインやヴィンテージ品販売、キッチンカーまで幅広い謎の店。
bpljbplj.com




店内にはまめしば氏の姿も。大変おとなしい子で、ゆっくり撫でさせてもらった。

大通りも川沿いの散策路も蚤の市通りも、しばらく北へ進んだところで県道と交差して途切れる。
これで終わりか、と思いきやその北側になにやら古い洋風建築が。

実はここから先に伸びる「日光例幣使街道」こそが重要伝統的建造物群保存地区、古い建物がもっとも密集する地域であった。
日光例幣使とは江戸時代、朝廷から幣帛を奉献するために京から東照宮まで遣わされた勅使のことで、この道が当時の主要な街道であったらしいことが伺われる。







(余談ながら日光例幣使は道中で沿線住民に朝廷の権威に基づいた下賜品を配る見返りに金銭を得ることで金策に窮する公家の収入源となり、ときには勅使が駕籠を揺すって「朝廷の使いに失礼な」と担ぎ手に因縁を付け金銭を巻き上げるなどの狼藉をはたらく者さえおり、それが金品を強要する「ゆすり」の語源になったのだとか⋯⋯)


途中に小さな喫茶店のようなものを見付けた。シェアキッチン「Chidori」だそうだ。

walkworks.co.jp
古いとはいっても昭和初期ぐらいの小さな民家をシェアキッチンとして、曜日ごとに違う店が入っている。たまたま木曜日に訪れたのでTwilight Coffeeというコーヒー店だった。

「くらもなか」は栃木市の象徴である蔵の形をした最中皮に各店で独自の具を詰めるものらしく、Twilight Cofeeさんでは小豆餡と胡桃というシンプルな組み合わせ。香ばしさと甘味がコーヒーによく合う。

「カスカラのソーダ」はコーヒーの果肉シロップのソーダ割り。ちょっと他では見たことのない珍しさに注文してみたが、甘酸っぱく香りの良い飲み物だった。

お手製のパウンドケーキでいただく。

実は栃木市コーヒー店が軒を連ねる「コーヒーの街」なのだそうで、多くの店でコーヒーチェリーあるいはカスカラの名で果肉ソーダを提供しているようだ。


そのうち一軒、悟理道珈琲工房では夏らしくクリームソーダエスプレッソアフォガートをいただく。

コーヒー店だけではなく、大正時代の洋館を改装したレストランのメニューにまでコーヒーチェリーソーダがあった。



巴波川から更に西、県立栃木高校は明治時代の旧制中学を前身とする、創立120年近い由緒ある学校で、大正時代に天皇行幸を記念して建てられた図書館「養正寮」は国の有形文化財に登録されている。

その向かいにあるのは市立文学館、こちらも大正時代に建てられたもので、初代栃木町役場庁舎だったもの。




1階は入場無料で、2階が文学館となっている。



栃木出身である日立製作所の創業者、小平浪平と初の国産電動機が展示されていた。

この奥には市立美術館もあり、そちらは2014年まで同地にあった二代目市庁舎の跡に建てられている。
なお現在の市庁舎は大通りに面した、元福田屋百貨店の建物に入っている。同店が撤退したとき、ちょうど庁舎が築50年を越えて建て替え時であり、また平成の大合併の結果として手狭となり複数の建物に部署が分散していたことから新庁舎が求められていたが、既存建物の改築ならば新築に比して1/3の費用で済むと見積られ、また地元住民から百貨店の撤退に伴う人流減少への対策要望もあったことから百貨店の建物を改築し2階以上を市庁舎とし、1階には東武百貨店を誘致したとのこと。

川沿いに宿へ戻る道すがら、洋館を発見。

登録有形文化財に指定さた大正時代の医院であった。「栃木病院」の看板があるが、なんと現在でも現役の病院として営業中である。

実は蔵の街大通りより東にもいくらか古い建物があるのだが、そちらにも大正時代頃のものと思しき古い医院が。



残念ながらこちらは文化財としての登録はなさそうで詳細不明、また営業中かどうかも不明であった(入口付近の改修状況などから見て、少なくともごく近年までは現役であったと思われる)。

ホグワーツ入学

ハリー・ポッター:魔術の覚醒」を始めた。
www.harrypottermagicawakened.com
モバイル/PC用のオンラインRPG/対戦ゲームである。原作同様、プレイヤーはハグリッドに連れられてダイアゴン横丁で入学準備を整え、9と4分の3番線からホグワーツ特急に乗ってホグワーツ魔法魔術学校に入学する。

(私はそんなに熱心なシリーズのファンではなく、原作小説は読んだことがないし、映画も最初の3作ぐらいは見たという程度の知識しかないので、あまり細かいところを適切に評価できていないかもしれない前提でお読みください)

ゲームは映画の冒頭シーンを再現するかのように始まりはするが、自PCはハリーではなくまったくのオリジナルキャラであり、教師はともかく在校生にも原作の人物らはどうやら出てこないため、全体としては「ホグワーツ魔法魔術学校を舞台としたオリジナルストーリー」という風情である。とはいえ物語世界に引き込まれるような雰囲気はたっぷり味わえるだろう。

グラフィックは写実的なものではなく、イギリス児童文学の挿絵を思わせるタッチ。3Dのモデリングは映画のイメージをよく再現している。所どころポリゴンの描写にちょっと怪しいところがあったりズレが見られたりするのはご愛嬌。

コミカルで表情豊かなキャラクターたちは、敵も味方もなかなかに魅力的だ。家柄を鼻にかけるような高慢なキャラや度を越したイタズラ好きのいじめっ子たち、あるいはちょっとひねくれ者や引っ込み思案で周囲に馴染めない生徒たち。それぞれにトラブルメーカーで、次々に引き起こされる事件がつまりメインコンテンツである「戦闘」にリンクしてゆく。

戦闘の基礎を成すシステムは、いわゆる「クラロワ系」の変種である。

予め呪文のコレクションから8枚を選び出してデッキを組み、時間とともに溜まってゆく魔力のゲージを消費することで呪文を唱える。敵魔法使いのHPを0にすれば勝利、自分のHPが0になれば敗北だ。
ただクラロワとは違って固定された陣地は存在しない。召喚物は自身から一定の距離範囲に出現させることができ、自身も(回数の制約はあるが)移動することでポジションを変え、敵の攻撃範囲から退避したり追い詰めて移動することができる。
これによりクラロワとはだいぶ異なるプレイ感に仕上がっており、戦術バトルというよりは緩めのアクションRPGといった雰囲気がある。

デッキに組み込む呪文カードはガチャで入手する。最初に1回だけ無料で引けるレジェンド登場ガチャは何度でも引き直しが可能な親切設計。


対戦がメインコンテンツとはいいながら、ゲームとしての比重は(少なくとも序盤の時点では)かなりの部分がストーリーを追うことに割かれており、戦闘はその合間に挟まれる対NPC戦が中心である。そのため対人戦に苦手感のある人でもそんなに気にならず遊べるのではないかと思う。
逆に、戦闘主体にやりたい人にとってはストーリーを追う時間が長く少々不満かもしれない(ただし、PvPについては「決闘クラブ」で好きなだけマッチできるため、ストーリー抜きでやり込むことは可能だ)。とはいえストーリー進行に伴って手に入れられる呪文カードも多く、またミッション報酬によるガチャチケなどもあるためストーリーは積極的に追ってゆく方が良いだろう。

その他、ミニゲームとして「舞踏会」がある。リズムに合わせて出現する円をタップする、要するに音ゲーであるが、タイミングの判定はわりと緩い。反面、タイミング合わせが直線ではなく円の大きさで示されるのでちょっとリズムが掴みにくいところはある。

ダンスはパートナーと組で行う。フレンドを誘うことも、クラスメイトのNPCを誘うこともでき、男女ペアだけではなく男=男でも女=女でも問題ないのは現代的だ。
その反面、キャラの作成では男女が明確に区別される。アバターパーツには男女で互換性がなく、口調も固定で変更できない。寮という設定上、男女を同室にできないシステムはまあ理解もするが、外見までもが縛られる理由はないのでは。
(なお、クィディッチもミニゲームとして登場するのではないかと予想されるが、少なくとも私の進行度ではまだ出現していない)

原作登場キャラは主に教師などに限られており、ストーリーもオリジナルであるため、原作再現派には少し物足りないかもしれない(一応、原作の主人公たちはデッキを強化する「共鳴」や他の魔術師との共闘を表現する「仲間」カードなどとしては登場する)が、作中で描かれた幻想生物や魔術具などは呪文として呼び出すことができ、自分がこの世界の一員であるかのように感じさせるには十分なものがある。
対戦カードゲームとしても、ホグワーツRPGとしても十分に面白いので、ぜひおすすめしたい。

あしかがフラワーパーク

日曜日の予定が唐突にキャンセルとなり午後が丸々空いたので、唐突に思い立って栃木県の「あしかがフラワーパーク」へ行ってきた。
あしかがフラワーパーク


関東在住なら名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。主に藤の花で知られる観光地である。
元を辿れば戦後すぐの頃、足利市の大地主であった早川氏が藤を植えた庭を近隣の人にも開放したのが始まりだという。その後、市の都市開発に応じて土地を明け渡し、現在の地に移転。
当時、大藤は樹齢130年、幹回り3.6m、棚面積は600m^2にもなり、そのままでは移植できない。そもそも幹が脆い藤の、幹回り1m以上の大木の移植は前例がなく、数年にわたる検討と1年におよぶ準備の末、1997年にあしかがフラワーパークとして開園した。
この藤は県の天然記念物となっているだけでなく、2014年にはCNNによる「世界の夢の旅行先10」に選定されたそうで、海外からの観光客も多い……のだが、逆に関東民は意外に訪れたことがない場所ではなかろうか。私も初めてであった。

交通

都内からはJR宇都宮線で小山(おやま)駅、あるいは東武日光線栃木駅からJR両毛線に乗り換えてあしかがフラワーパーク駅へ。片道およそ2時間ほどの旅路である。
うちからだと最寄り駅が京浜東北線なので浦和で乗り換えの予定だったが、1分差で便を逃してしまったため到着予定時刻が30分ずれる……と思ったら上りの便で赤羽へ出ると乗り換え予定だった便を掴まえられるのだった。Yahooの乗り換え案内なんで最短でない経路提案してくれないんだ……

古河駅を過ぎ、利根川を渡って小山へ。

小山駅東北新幹線の停車駅でもあり、駅内にはコンビニやカフェもありちょっとした食事には困らない。

両毛線は小山から高崎までを結ぶ単線路線で、1時間に1〜2便程度しか列車がない。またドアは半自動扱い、すなわち「駅に着いてもドア脇のボタンを押さないと開かない」ので、乗り降りの際には注意のこと。
Suicaの簡易改札を備えた駅を出ると、園はすぐそこである(入口までは少し歩くが)。

なお自動車だと多分東北道佐野ICか北関東足利ICあたりからのアクセスになろうかと思う。駅前に専用駐車場がある。

料金

入園料金は開花状況によって異なるため、当日の朝までわからない(最大で2200円)。
なお園内には複数の売店がありソフトクリームや軽食などを売っているが、暑い日はかなりの列ができる。自販機もあるが数が少なく売り切れやすいので、予め飲み物の一本ぐらいは持ち込んでおいた方がいいだろう。

園内

園の入口からもう藤の花が飾られており、入口をくぐって売店も藤にあやかった商品がずらりと並ぶ。流石は藤で有名な場所だけある。

園内に植えられているのは藤だけではない。様々な花が植えられ園内をカラフルに彩る。



とはいえ主役はやはり藤。





この日は紫の藤と薄桃色の藤が盛りを迎えていた。白藤はもう少し遅いようで、咲き始めてはいたがまだ見頃には早い。

そしてこちらがフラワーパークの目玉となる、大藤棚である。


園内にはこの大長藤以外に八重藤、二連大藤と4本の大藤棚がある。

園内にはあちこちに水路が設えられ、橋が架けられている。


また水面に枝を垂れる木も多い。


藤も見事な枝振りに剪定されていたし、これらの樹木も景色として計算されたものだろう。

藤の時期は丁度つつじのシーズンでもある。色とりどりの花が咲き乱れていた。




花といえば桜というイメージがあるが、園内には梅も桜もあまり植えられていない。それでも散り際の八重桜が数本、あたりを薄桃色に染めていた。

綺麗に色を揃えて整えられた、メルヘンのような一角も。



藤の大スクリーン。日が暮れればライトアップされて輝くのだろう。

夜景も楽しみではあったが、なにぶん両毛線は1本逃がせば次が30分から1時間先、小山に辿り着いてから家までは更に1時間半。あまり遅くなる前に帰らねばなるまい。
夕日を惜しみつつ帰途。


次に来る時は栃木市内にでも宿を取って夜景を撮るつもりである。

同性婚と重婚と近親婚

同性婚を巡る議論の中で、「同性婚が認められるならば重婚や近親婚も認められるべき」という主張を見掛けた。
同性婚とは直接関係のない主張がどういう理屈で持ち出されているのかよくわからないが、(無理筋の主張を通すことで同性婚を諦めさせようという魂胆でないのだとすれば)「いずれも従来の婚姻制度を覆す点では同列である」という意図だろうか。

同性婚は、従来ならば男女と定められていたものを男男あるいは女女にまで広げるものである。その結果、従来の婚姻と何か違いがあるかというと、せいぜい「同性間では生殖を行なうことができない」点ぐらいに留まる。従って、従来との違いを理由として同性婚に反対するとしたら、それは「子供ができないから」駄目なのだ、という理屈となろう。
すると逆説的に、異性婚は「子供ができるから認められている」ということになり、その延長線上として「(同性婚が子を生めないから許されないのであれば)異性婚であっても子供を生まない/生めない場合は婚姻を認められない」という理屈に到達する。
つまり、「子を生めるかどうか」を理由として同性婚を認めないのであるならば、それに基づいて婚姻にかかる法が改正されねばならず、男女間であっても子を生むまでは婚姻が認められないようにせねばならなくなるはずだ。
結果として、同性婚を認めることにより生じる法改正よりも、認めないことによる法改正の方が面倒なことになるだろうと予想される。

重婚に関しては、当人同士の自由意志に基づく行為としては認めても良いのではと個人的には考えるものの、かかる法的手続きは決して軽くはなさそうに思われる。
まず従来の法に於いて婚姻が常に二人間でのものとして法整備されてきたという事実から、これを覆すことになる重婚への対応は世帯の概念や扶養関係、財産分与や共同所有など広い範囲にわたり見直しを迫られるものと予想される。
また実施にあたっても、たとえばA・B間の婚姻にCとの婚姻を加え重婚とする場合にA・C間だけでなくB・C間の意志も問われることになるはずであるから人数が増えるほどに婚姻関係の成立はややこしいことになるだろうし、またそうした関係性の中での出生・養育などが整理し切れるのかどうか、甚だ疑念に思われる。

一方、近親婚の方は生物学的見地から好ましくないとされてきたが、その点が無視できるとしても「幼少期からの対等でない関係性にある」近親者との婚姻には慎重であるべきと考える。たとえ双方が成人しており自由意志に基づいた婚姻であると主張しても、そう言い切って良いかどうかには懸念が残る。

以上から、同性婚については容認し、重婚・近親婚については保留とするのが現時点では妥当ではないかと考える。

アークナイツの育成時間

アニメ放映によって離脱していたドクターの復帰や新人ドクターの着任が増えたようで、育成に苦労する様が伺える。

アークナイツは育成にコストのかかることで知られる。とりわけ高レア育成ではゲーム内通貨と素材がものすごい勢いで溶ける。ついでに時間も溶ける。
闇雲に理性と時間を溶かしながら攻略しても良いのだが、「新キャラの育成にどれぐらい時間がかかるのか」を把握しておくと育成計画も立てやすくなるのではないかと考え、ちょっと計算してみた。

オペレーター☆数によるコスト差

アークナイツのオペレーターには☆1〜6までのレアリティがあるが、それによる育成上の差は次のようになっている。

☆数 最大レベル スキル数 総経験値 総龍門幣 2昇進まで経験値 2昇進まで龍門幣
☆1 無昇進30Lv 0 9800 6043 - -
☆2 無昇進30Lv 0 9800 6043 - -
☆3 1昇進55Lv 1 115400 104040 - -
☆4 2昇進70Lv 2(1昇進時) 484000 476337 150200 206241
☆5 2昇進80Lv 2(1昇進時) 734400 819325 239400 371947
☆6 2昇進90Lv 3(2昇進時) 1111400 1334796 361400 589841

これはレベルMAXまでの育成+昇進コストの合計である。
☆1はロボット、☆2は人間だが、育成上で差はない。
☆3は昇進1までしかないため、スキルレベル特化・モジュールの対象外となる。また☆4以降とは異なり、昇進しても第2スキルが追加されない。
☆4と☆5は最大到達Lvが異なるため育成コストに差があるものの、スキル数や特化、モジュールなどの面では差がない。
☆6は唯一昇進2によって第3スキルまで解放され、また素質も2種類となる。

☆3と☆4では育成コストが4倍も異なる。☆4と☆5、☆5と☆6では1.5倍程度の差があるので☆4と☆6では2倍以上の差、とりわけ龍門幣の方は経験値よりも差が大きいため3倍弱にも達する。
概して低レアの方が育成しやすく、また配置コストも低いため序盤の戦力としては使いやすい。逆に高レアの突き抜けた強さは魅力的ながら2昇進程度まで育成してこその強さということも多く、育成にかかる負荷は大きい。
単純な話、☆6を1体育てる余裕があれば☆4が3体育てられる。既にある程度の戦力が整って育成の余裕がある、または最大戦力を以てしても突破できない難敵に足踏みしている状況ならば、より強大な戦力を目指して高レア育成を始めるのもいいが、最初のうちはおすすめしない。
まずは☆3の育成を中心に戦力を固めて攻略を進めつつ、要所を☆4に置き換えることを目指した方がいいだろう。☆4は(スペックやスキル性能に差はあるものの)基本的に☆5と遜色ない構成ながら安価に育成でき、また出現率が高い分だけ潜在力を上昇させやすい。
突破できない箇所ではフレンドから高レアを借りてその使い勝手を確かめつつ、長期的な育成目標を立てよう。


ところで、この経験値と龍門幣の量を稼ぐにはいったいどれぐらいの時間が必要なのだろうか。

理性消費から必要時間を考える

アークナイツではステージ挑戦にあたり「理性」を消費する。
理性の最大値はプレイヤーのレベルによって違うが、回復速度は上限に依らず1時間あたり10である。つまり「使い切ってから溢れるまでの猶予」はレベルに応じて広がるものの「1日に使える量」は常に一定で、24時間あたり240ということになる。
これに配布される理性回復剤の分が加わる:週間任務達成で得られるのは上級理性回復剤+(回復量200)x2個。一週間あたりの最大理性量は240x7=1680なので合計2080。そのほか月パス(680円)を購入していれば毎日のログインで初級理性回復剤+(回復量80)が得られるので、1週間あたりに消費可能な最大量は2640となる。
従って無課金でも1日平均297、月パス課金すれば377ほどを使える計算である。
(もちろん、これは理論上の最大値に過ぎない。実際には理性を溢れさせるなどの事情で、利用可能な理性量はこれよりも少なくなると思われる)

経験値の入手方法

まずは経験値を稼ぐことを考える。
経験値の入手方法は大きく分けて「ステージクリア時の報酬」「ログインボーナス」「基地での製造」「購買部での購入」といった手段がある。
このうち不確定な「購買部での購入」は除外して、他の3種について考える。

経験値:戦術演習(LS1-6)

経験値はあらゆるステージで入手可能だが、効率良く稼ぐには(イベント報酬などのイレギュラー以外では)戦術演習ステージを周回するのがもっとも効率が良い。

ステージ 消費理性 入門作戦記録(200) 初級作戦記録(400) 中級作戦記録(1000) 上級作戦記録(2000) 合計 理性1あたり 龍門幣
LS-1 10 1 3 1400 140 120
LS-2 15 5 5 3000 200 180
LS-3 20 2 2 3 4200 210 240
LS-4 25 2 3 2 1 4600 184 300
LS-5 30 1 1 3 7000 233.3 360
LS-6 36 2 4 10000 277.8 432

戦術演習では作戦記録がドロップする。厳密には固定数ではなく確率ドロップであるらしく若干のバラツキはあるらしいのだが(特に理性あたり効率が却って下がるLS-4はもしかしたらドロップ数違うかもしれない)、ほぼこの枚数で確定に近い割合ではあるようだ。
LS-1→2の理性効率幅に対し、以降LS-5まで上がり幅は小さいものの効率自体は向上している(LS-4以外)。LS-6は大きく効率が上がるので周回できる体制を組みたいが、LS-5以降は攻略がぐっと厳しくなる。LS-4以外で自力☆3攻略可能な最大のステージを周回しよう。
単純計算すれば、1日あたり平均理性量xLS-6の理性1あたり経験値効率から、無課金で82506/日、月パス課金で104730/日が見込めることになる。実際には1回あたり消費理性36、経験値収益10000であるので端数を丸めて1日あたり8回(8万)および10回(10万)ということになるだろうか。LS-5ならば7.5万あるいは9万/日、LS-3ならば6万あるいは8万/日ほどになる。

経験値:ログインボーナス

月間ログインボーナスとして、一週間ごとに作戦記録が入手できる。第1週は入門x10(2000)、第2週が初級x10(4000)、以降中級x6(6000)上級x4(8000)上級x5(10000)と上がってゆくので、4週までしかない2月以外は30000(2月のみ20000)が得られる。
1日あたり8〜10万と比べれば微々たる量のため、育成効率にはほとんど影響しない。

経験値:基地内製造

Lv3の製造所では中級作戦記録を製造することができる。
製造効率は配置オペレーターのスキルによって左右されるが、無スキル状態で1日あたり8個(8000)、最高効率ならばその倍ほどとなる。理性全開での経験値周回と比べれば1/10かそこらとはいえ、複数の製造所を回せばそれなりの量にはなる。

経験値:合計量

ステージ周回で1日8万、基地の製造で1日8000+効率50%x3箇所=1日3.5万程度と仮定して1日あたりの経験値獲得が最大11.5万(月パス課金の場合は+2万)。つまり☆4ならMAX育成までに最短4日、☆5で一週間弱、☆6でも10日で稼ぐことが可能ではある(ただし経験値のみであって龍門幣はまた別に稼がねばならないわけだが)。

龍門幣の入手方法。

次に龍門幣の稼ぎ方を考える。こちらも「ステージクリア時の報酬」「ログインボーナス」「基地での製造」「購買部での購入」になるので、「購買部での購入」以外の方法を考えよう。

龍門幣:貨物輸送(CE1-6)

ステージ 消費理性 龍門幣 理性1あたり
CE-1 10 1700 170
CE-2 15 2800 186.7
CE-3 20 4100 205
CE-4 25 5700 228
CE-5 30 7500 250
CE-6 36 10000 277.8

こちらは理性効率が順当に上がってゆくので無理せず攻略可能な範囲で周回すれば良いが、とはいえ高難易度の効率は魅力的だ。
これも戦術演習同様、CE-5以降でぐっと難易度が上がる。
CE-5およびCE-6を周回するときの効率はLS-5・6のそれと同様、7.5万あるいは9万/日、8万あるいは10万/日となるがCE-4以下は量が異なる。CE-4であれば6 .5万あるいは8.5万/日ほど。

龍門幣:ログインボーナス

月間ログインボーナスでの龍門幣は初週2000、以降週あたり2000づつ増加して合計3万(2月のみ2万)。

龍門幣:基地内製造

龍門幣は基地内で製造した金属を、貿易所での受注によって売却することで生み出される。経験値とは異なり2段階を経るが、受注速度が金属の製造速度を上回ることはそうないと思われるので実質的に受注速度だけを考えれば良いだろう。
売却数は2〜4個と幅があり、量の多い方が若干効率が良いものの、大きな差があるわけではないので最小個数状態で考えると1日の受注数は効率0%で10回(20個)、100%ならその倍となる。1個あたりの売却価格は500なので1〜2万ほどが加算される計算である。複数製造できれば莫迦にならぬ量にはなる。

龍門幣:合計量

ステージ周回で1日8万、基地の製造で1日1万+効率50%x2箇所=3万程度と仮定して1日あたりの獲得龍門幣が最大11万(月パス課金の場合は+2万)。
☆4ならMAX育成までに最短5日、☆5で8日前後、☆6でも12日で稼ぐことが可能である。

総評:合計日数

☆4をMAXまで育てるためのリソースを稼ぐのにかかる日数は、経験値4日+龍門幣5日=9日。
☆5は15日、☆6なら22日が必要になる。
ただしこれはMAXまでの育成コストであり、2昇進Lv1までであればもっと安く済む。とはいえ経験値はLxMAX時の1/3程度で済むものの、龍門幣の方は多額の昇進コストが加わるため割高で、およそ半分弱といったところ。合計すると☆4で4日、☆5が6日、☆6で10日ぐらいだろうか。

レンズを上げよう

半年ほど前に新調したばかりだった眼鏡のレンズに、思いっきり傷を付けてしまった。

近視+乱視により裸眼では最長40cmぐらいの範囲にしか合焦できないのだが、眼鏡をかければ遠方から手元まで不自由しなかった。しかし老眼が進行してきたために、今や矯正視力での最短合焦距離が40cmぐらいになってしまい、それより近くを見るためには眼鏡を外さざるを得ない。
これは意外に不便なもので、本を読んだり携帯機器を使う時の距離はだいたい30cmぐらい、PCなどキーボード越しに画面を見る場合は60cmぐらいなので、PCの前に座ってiPadを併用するような(ごく日常的な)見方では眼鏡をかけたり外したり、頻繁に切り替えることになってしまう。

そんなわけで眼鏡をかけたり外したりすることで対応していたわけだが、今までならかけっ放しだった眼鏡を急に外すようにすると、咄嗟にしまう場所がない。無論、眼鏡ケースを持ち歩くか、あるいは眼鏡チェーンなどで首から下げておくのが順当ということになるが、今までそうした風習がなかったため、やむなく車内でiPadを見ているあいだ眼鏡をバッグに放り込んでおいた。
……結果、眼鏡のレンズがバッグの中でカメラのローレットと擦れて盛大な擦傷を付けてしまい、視界に靄が……

とりあえずレンズは交換せざるを得ないが、この傷はいちいちかけ外しを繰り返すという運用の結果である。できれば運用スタイルから変えてしまいたい。
かけ外しの煩わしさを解消する手段として一般的なのは、レンズ下端の矯正を変える、いわゆる老眼対応レンズだろう。正面を見る場合は近視矯正されたレンズを通して、下の方を見るときは矯正のない(あるいはピントを手前に寄せた)状態で。
ただ、先にそのタイプを作った愛妻に拠ると「結構使いにくい」とのこと。どうやら慣れが必要らしく、結局このレンズは使われず以前の眼鏡に戻してしまったようだ。

それならフレームごと新調して「外してもしまわなくて良い」眼鏡にしようと考えた。つまりレンズ跳ね上げ式のフリップアップフレームである。

www.zoff.co.jp

以前の眼鏡をZoffで作っていたので、今回もZoffフリップアップのフレームを探す。オンラインストアにユーザ登録すると、氏名と電話番号から実店舗での購入履歴が検索され、以前のレンズと同じ度数で眼鏡を購入できる。
……のはいいのだが、仕上がりには少々時間がかかる。実店舗での購入なら、在庫のあるものをその場で購入する限り加工調整には1時間程度で済むのだが、オンラインで購入したものは購入から出荷まで4日ほどかかった。急ぎの場合は店頭購入をおすすめする。
ただ、店頭だとフリップアップの在庫はあまり多くなさそうだ。私の選んだタイプも、実店舗での在庫は地元の店舗にはなかったので、種類にこだわるならオンラインが確実だろう。

フレームは二重構造になっており、レンズのないオーバーリムのフレーム上にヒンジがあってレンズを支えるフレームと結合している。レンズ側フレームの上下を指で挟んで下側をぐいと上に押し上げればレンズが90度跳ね上がって視界が素通しとなり、近距離を見やすくなる。眼鏡そのものはかけっぱなしなので紛失したり、「近くを見るために眼鏡を額に上げたまま眼鏡を探す」ようなこともない。遠くを見たいときはレンズを引き戻せばいい。

無論、欠点もある。
跳ね上げはどうしてもレンズを直接触って指紋を付けやすい。
また跳ね上げ状態では上方にわずかながら「歪んだ視界」が見える。これが影響しているのか、頭痛や肩凝りなどを誘発することもあるようだ。
レンズを下ろしたときにも、わずかに垂直になっていなかったりすると補正が狂う。
そうした欠点と、眼鏡自体のかけ外し、あるいは遠近両用レンズ、それぞれの利点・欠点を比較して自分なりの最適を探るといいだろう。