マイクロフォーサーズの汎用レンズを選ぶ

レンズ交換式カメラの利点は「必要に応じて最適なレンズを選ぶことにより撮影の幅が広がる」ことだが、欠点はその裏返し:「多数のレンズを使い分けねばならない」ことだ。すべてのレンズコレクションをいつでも利用できる状況ならば良いが、外出先などレンズの限られる時には「どれを持ってゆくか」が悩ましい。
それは購入時にも言えることで、予算に限りがある以上は少ないレンズで広い範囲をカヴァーしたい。それには、なるべく使い回しの効く汎用性の高いレンズがあると何かと便利だ。
マイクロフォーサーズのレンズラインナップから、様々な用途を想定した汎用性の高いレンズを探してみよう。

人を撮る

日常的によくある使い方かと思われるものの、個人的にはにまったく興味がないため曖昧な知識になるのだが、いわゆるポートレート撮影では一般的に「単焦点の中望遠レンズ」が良いとされる。
広角で撮ると強いパースがついてしまうため体のサイズ感が狂い、たとえば「頭が大きく体が小さい」感じに映るのは(特殊な効果としてわざとやるのでなければ)好ましくない。望遠の強いレンズはパースが付きにくいためこの用途に向くが、逆に被写体との距離が離れすぎてはポーズなどの指示が届かなくなるので、適度な望遠と適度な距離感を両立させるのがちょうど焦点距離にして85〜90mmあたり、ということのようだ。
また、単焦点が推奨されるのはズームレンズより明るく背景をボカしやすいためで、人物だけを浮き立たせるのに適するからだ。

従って人物撮影のみを目的とするならば42.5mm(換算85mm)あるいは45mm(換算90mm)の単焦点を選ぶところだが、今回は「汎用の一本」を選ぶことが前提なので「この範囲を含む(なるべく明るい)ズーム」で妥協しよう。

焦点距離80〜100mmを範囲に含むズームレンズは20本以上あるが、明るいレンズとなると限られる。

  • 全域F2.8
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
    • Panasonic : LUMIX G X VARIO 35-100mm F2.8 Ⅱ POWER O.I.S.
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
  • F2.8-4.0
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
  • 全域F4
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

あたりになる。これ以外はF3.5-6ぐらいになってくるので、あまりボケの強いレンズではない(もちろん、それらでは撮れないということはないのだが)。

料理を撮る

料理を撮るために最も重要なスペックは「最短撮影距離」だ。
椅子に座った状態で、目の前に置かれた料理と手の距離は10cmぐらいしかない。やや体を引くぐらいの自由度はあるとしても、カメラと被写体の距離はせいぜい30cm前後の範囲で撮影することになるだろう。それ以上となると席を立って離れた位置から撮影せざるを得ず、仕事でならばともかく客としてやることではない。

というわけで最短撮影距離が40cm未満のレンズを探そう。
ただしズームレンズなので全域でこの撮影距離が有効とは限らず、広角側では短かくとも望遠側ではもっと長くなる場合もある。全域で40cm未満のレンズのみに絞ると、

  • 全域0.2m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
  • 0.2-0.25m
    • Panasonic : LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
  • 0.2-0.3m
  • 0.2-0.35m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ
  • 全域0.25m
  • 0.25-0.3m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R
  • 全域0.3m

に限られる。
もっとも、全域でなくとも最短撮影距離30cm以内であれば撮りようはあるわけで、

  • 0.15-0.45m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITALED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • 0.3-0.5m

も加えていいかも知れない。

花を撮る

花や虫など、屋外で小さなものを撮る時に必要なのは「近くまで寄れる」ことではなく「大きく写せる」ことだ。もちろん寄った方が大きく写るのだが、望遠で「あまり寄らずに大きく写す」のでも(それが可能ならば)問題はない。
主なマクロレンズについてはマイクロフォーサーズ マクロ撮り比べ - 妄想科學倶樂部でまとめたが、取り上げたのは12-50mmを除けばいずれも単焦点マクロレンズのみであるので今回は除外して、ズームレンズで撮影倍率0.5倍以上のものを探す。

  • 倍率x0.72
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ
  • 倍率x0.6
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • 倍率x0.54
  • 倍率x0.52
    • Tamron: 14-150mm F/3.5-5.8 Di III Model C001
  • 倍率x0.5

風景を撮る

風景はちょっと難しい。というのも、「近い位置から全景を広く撮りたい」場合と「遠い位置から近付けない場所を撮りたい」場合が混在するからだ。前者は広角レンズの、後者は望遠レンズの守備範囲で、両方をカヴァーするのは結構難しい。
焦点距離何mm以下を広角とし何mm以上を望遠とするか明確な定義はないが、便宜的に換算28mm以下の「ちょっと広い」範囲から100mm以上の「ちょっと遠い」範囲までを手広くカヴァーしてくれるレンズを探す。
このタイプのレンズ群は大雑把に「わりと広くてちょっと長い」「ちょっと広くてかなり長い」に分かれる。広角端が12mmからあるけど望遠端が60mm程度のものと、広角端は14mmとやや物足りないものの望遠端が140mmぐらいあるものだ。その中間に12-100mmというちょっとスゴいレンズが挟まる。

  • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ
  • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
  • Panasonic : LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
  • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • Panasonic : LUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
  • Tamron: 14-150mm F/3.5-5.8 Di III Model C001
  • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6Ⅱ

なお「車を撮る」場合もだいたい広角〜望遠域を押さえておけばいいと思う。広角側で撮るとパースが強調され「迫力ある」写りになり、望遠側で撮ればパースを抑えて歪みの少ない、ただし長さ方向が圧縮された写りになる。どちらが好ましいかを場合によって使い分けることができる。

総じて優れたレンズを探す

以上から、多くの場面で使い回しの利きそうな便利レンズを絞り込む。つまり、スペック的には

  1. F値が4以下
  2. 最短撮影距離が0.4m未満
  3. 撮影倍率が換算0.5倍以上
  4. 焦点距離が換算28mm以下〜100mm以上

のうち、少なくとも3点以上を満たすレンズである。

なお、これらはあくまでカタログスペックからの抽出なので、実際の使用感などが汎用と言えるかどうかはまた別の話ということで。

OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

【明るさ】F2.8【最短撮影】0.2m【撮影倍率】x0.6倍【焦点距離】換算24-80mm
望遠側が僅かに物足りない以外ではほぼ満点のレンズ。特に明るさはズームレンズ中随一、最短撮影距離も撮影倍率もトップクラスである。敢えて欠点を挙げるとすれば価格が高めであることと重いことぐらいか。とはいえ実売7万円台、400g未満と性能を考えれば充分に手軽な範囲ではあるのだが。
レビューと作例

OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ

【明るさ】F3.5-6.3【最短撮影】0.2m【撮影倍率】x0.72倍【焦点距離】換算24-100mm
こちらは逆に最安価クラスにも関わらず明るさ以外ではトップクラスという謎レンズ。マクロモードの切り替えが煩わしいという意見もあるが、その代わりに2万円以下、200g程度のレンズで0.72倍のセミマクロと換算24mm-100mmという汎用性の高い焦点距離が手に入る。
何故か生産終了になってしまったらしいのだが、キットレンズで出回ったこともあり未だ入手は容易。
レビューと作例

Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F2.8-4.0【最短撮影】0.2m【撮影倍率】x0.6倍【焦点距離】換算24-120mm
イカの名を冠したハイスペックレンズ。価格は高めだが、その分だけ全領域について対応できる汎用レンズである。今回挙げた全項目を満たせるレンズは、これの他にもう1本しかない。
レビューと作例

Panasonic : LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F3.5-5.6【最短撮影】0.2-0.25m【撮影倍率】x0.54倍【焦点距離】換算24-120mm
こちらは明るさを捨てライカの名を捨て、その代わりに重さが2/3、価格が半分になった廉価版。安物とはいえ上位種と遜色ない性能を持つお手軽レンズ。
レビューと作例

OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

【明るさ】F4.0【最短撮影】0.15-0.45m【撮影倍率】x0.6倍【焦点距離】換算24-200mm
もう1本の満点レンズである。明るさではF4と一歩劣るが、その代わりに全域で明るさが変化せず、広角24mmから望遠200mmというカヴァー域の広さは魅力的。ただしお値段12万円台、重量561g、長さ116.5mmと色々ヘヴィー級。
レビューと作例

Panasonic : LUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F3.5-5.6【最短撮影】0.3-0.5m【撮影倍率】x0.5倍【焦点距離】換算28-280mm
やや広角-超望遠域をカヴァーする高倍率ズームレンズはオリンパス/パナソニック/タムロンと3本も出ているが、その中でパナソニックの14-140mmは他の2本に比べ若干望遠が控え目な代わりに、最短撮影と撮影倍率がギリギリ条件を満たしランクイン。
レビューと作例

番外:Panasonic : LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F1.7【最短撮影】0.31m【撮影倍率】x0.4倍【焦点距離】換算85mm
単焦点のため今回の趣旨からは若干外れるのだが、焦点距離を広く使えないこと以外ではほぼ要求水準を満たしていたため番外で紹介する。
ポートレート向けの中望遠レンズなのだが、この焦点域にしては珍しく最短撮影距離が短かいため撮影倍率も高めで、風景写真向けの画角以外の点ではかなり使い勝手の広いレンズと言える。もちろん単焦点なので明るさでは群を抜いており、暗所での撮影や綺麗なボケの欲しい局面で重宝するだろう。単焦点で一本持ち歩くならオススメしたい。
レビューと作例

あるいは、マクロ記事の方で詳しく触れたので名前の紹介のみに留めるが、LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.を使ってもいいかも知れない。こちらは換算90mmでF2.8なのでポートレートにも悪くないし、もちろん最短撮影距離や撮影倍率も申し分ない。