新・世界樹の迷宮 体験版レビュー

製品版の発売を1週間後に控えて、新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女の体験版が配信された。
ニンテンドーDS用だった初代をベースに、2〜4作までで実装された改良点などを反映しつつ3DSへ移植したものだが、単なる移植には留まらずダンジョンや敵の一新、キャラを作成しない「ストーリーモード」の実装など「新」の名に恥じぬリメイクになっている。

体験版ではストーリーモードしか選べなかったので、主にその観点からレビューする。

ストーリーとゲーム進行

まず、イベントシーンはアニメーションが挿入される点に注意されたい。これまでのようにテキストベースの会話だけで物語が進むわけではないので、音声が聞ける環境でプレイする必要がある。
製品の説明に「ストーリーモードとクラシックモードがセーブデータ共通」とあったが、これは2モードの進行度合いを共有するという意味ではなく「ソフト全体で1セーブデータしかない」という意味だ。だから一方をやっている間はもう一方を遊ぶことはできない。
そうなると「ストーリーモードでクラシックダンジョンがネタバレするんじゃないか」という不安が出てくる。序盤の感触からすると、ストーリーモード用には別のダンジョンが用意されているみたいだが、世界樹の方に潜らないというわけではないので部分的にはネタバレもするだろう。ただ、体験版ではB3Fまでしか到達できないので製品でその先がどうなるかは判らない。

街の人はほぼ1勢揃い。ただし治療は2以降に準拠し宿で行なうようになったので施療院長は出て来ない。代わりにギルド拠点として利用する館にメイドさんが登場した。新要素「グリモア」絡みの処理以外に、4では気球内での飲食などで得ていた「冒険中続く効果」を付与してくれる。
キャラは全員ボイス有。ストーリー以外の部分では定型セリフしか発話しないが、なかなか自然な振舞い。ただし特定動作に固定音声が割り当てられているため同じセリフを繰り返し聞く部分もあってちょっと鬱陶しくもなる。この辺「1回再生したら次回まで間を空ける」とか、何か工夫が欲しかった。
ボイスはオプション設定で切ることもできるが、それはそれで寂しい気もする。

ゲーム難易度はピクニック、カジュアル、エキスパートの3段階。ピクニックは全滅した戦闘をやり直せる、カジュアルはいつでも街へ戻れる、エキスパートは消費アイテム「アリアドネの玉」を使わないと戻れない。難易度を変えても敵やパーティメンバーの能力値が変わった様子はなく、戦闘時のダメージなどにも差はないようなので、「全滅の重さ」が異なるだけのようだ。
これまでのシリーズではダンジョン最初のフロアから全滅必至なバランス設計だったが、ストーリーモードではその辺かなり親切になってしまっていて少々不満。まあその後は全く手加減なくなるので、例の「マップ作成」ミッションの間だけの問題だが。

生物が3Dになりモーションに「仕草」が加わったことで、敵がこれまで以上に「生物」っぽくなった感がある。FoEの生態も含め、単なる討伐対象ではなくちょっとした博物学的面白さというか。内蔵のメモ機能じゃなく独自に手帳を付けながら遊んでも面白いかも知れない。

システム面

今作からの新要素として「グリモア石」が加わった。これはキャラのスキルや敵のスキルを他キャラに「装備」させることのできる機能で、グリモア同士の合成成長などもある。ゲームの幅が広がる反面、複雑化の要因でもあって評価の難しいところ。ただ、キャラ表現的な意味では「刀を振るうメディック」「銃を構えたパラディン」などが可能になって楽しい。

スキルツリーは整理されて把握しやすくなった。マスタリー及び能力ブーストがグループを束ね、そのレベルに応じてツリーが解放されてゆく。マスタリーの場合は条件を満たした時点で各スキルが1レベルで自動取得されるので手っ取り早くスキル数が増える。能力ブーストでは条件を満たしてもスキル自動取得はない。

そういえば入力時にとうとう漢字変換が可能になった。これで名付けについてもメモについても情報量がぐんと上がる。タブ切り替えのマップアイコンとも相俟って地図書きが一層捗るだろう。

またマップ移動に関して、「フロアジャンプ」機能が追加された。これは現在位置から階段の前へと一気に移動するもので、「1階から入って目的階まで徒歩で移動」の必要がなくなったので進行が格段に早くなった。その間に遭遇すべき敵も出ないので、結果として難易度もちょっと下がったと言える。
ただしフロアジャンプ機能はマップを隅々まで描かないと機能しないので、「とりあえず最短突破を目指す」のではなく「なんとかしてフロア全体を踏破する」プレイスタイルが推奨されることになる。

総評

全体的に、感触はとても良い。余計なものはなく、不足していたものは補われ、初代に立ち還りつつ新たなものを作り出した感じを受ける。これまでのファンにも、初めての人にも、どちらにもお薦めできそうな気がする。