雨を撮る


雨の日は気分も晴れない。
陰鬱な空。体に纏わり付く湿気の不快感。外に出るにも傘が要るし、なにかと億劫だ。
だけどそんな雨の日も、カメラがあれば楽しい日に変わる。

雨の日はいつもと違う写真が撮れる日だ。すべてのものが濡れて色を深め、水たまりは風景を反射し、草花には水玉が転がる。マクロで水滴の向こうに写し込まれた景色にピントを合わせてもいいし、激しい雨なら暗めの背景に雨粒の流れを写すのもいい。陰鬱な空の色も弱々しく散乱する光も、撮りようによってはしっとりと落ち着いた雰囲気を出してくれる。雨上がりには日光を受けて輝く水滴が見られるし、夜には地面がネオンを反射して幻想的に彩られるのも素敵だ。
そう考えると雨も悪くない。

さあ雨を撮りに行こう……と言いたいところだけれど、それには準備が要る。機材を濡らしてしまうのは好ましくないし、傘を差していると片手が塞がって撮りにくい。
そういうわけで今回は、撮影用の雨具の話。

体を雨から守る

正直、レインウェアってあんまり良いイメージを持っていない人、結構いるんじゃないだろうか。
子供の頃に着せられたようなレインコートのすごく安いやつなんかだと単なるビニール生地の服で、たしかに水は通さないんだけど内側に熱が籠るし、汗も通さないので湿ってベタつく。耐久性を高めるためなのか厚手のビニールだったりすると硬くゴワゴワした感触で、重量も結構ある。特に半袖で肌に直接レインウェアが触れることになる夏などは不快感が強い。

でも最近のレインウェアはちょっと違う。水を通さず汗の蒸発は逃がす「防水透湿」素材で作られたものも多く、薄く軽くて熱が籠りにくく、肌触りも良い。いつの間にか雨具も進化しているのだ。

特にスポーツ用のやつは、雨の中で長時間着たまま激しく動くことを想定しているので、脇の下など濡れにくい場所に空気を取り入れるベンチレーションがあって風通しが良かったり、また登山などではしばしば多数の荷を背負うことになるので、携行するレインウェアもなるべく薄くて軽くなるよう工夫されている。
もちろん街中での撮影用途ならそこまで高性能なものじゃなくてもいいんだけど、でもせっかく雨の日を楽しもうというんだから、快適さにはお金をかけた方がいい。薄くて軽いやつなら傘の代わりにいつも鞄に突っ込んでおくことだってできるし、荷が軽くなるのは(交換レンズなどで重くなりがちな)カメラと一緒に持ち歩く時にだって嬉しい。

各メーカーから色々なものが出ていて、品選びは悩ましい。私も色々知っているわけではないので、ひとまず自分が購入時したものを貼っておく。

(ホグロフス)HAGLOFS L.I.M PROOF JACKET MEN 602501 2C5 TRUE BLACK S

(ホグロフス)HAGLOFS L.I.M PROOF JACKET MEN 602501 2C5 TRUE BLACK S

実測で243g(男性用Lサイズ)の撥水・透湿レインジャケット、フード・胸ポケット付き。袋はないので畳んで丸めてフード部分に突っ込む形でまとめている。折り畳み傘より少し嵩張るけど少し軽い。
ただ守れるのは上だけ(パンツは買わなかった)なので、そこは割り切る。
これで雨の時の動きがかなり軽やかになったけど、フードがそれほど深くないので顔が濡れるのはちょっと気になる。なるほど、鍔付きの帽子が必要になるわけだ……

カメラを雨から守る

カメラは精密機器なので、決して水に強くはない。とはいっても少々の雨で壊れることはそう多くないけど、なるべくなら濡らさない方がいい。
カメラにかけるレインカバーというものもある。だいたいはレンズ先端を出す穴(ゴムか何かで軽く締め付けてレンズに固定できるようになっている)の空いたビニールシートみたいな感じで、裏側が空いているのでそこから手を突っ込んでカメラを操作し、ファインダを覗く。確かに雨からは守れるけど操作はちょっとやりにくいし、レンズの長さによっては守り切れないかも知れない。
カメラ自体を防水のものにする、という手もある。コンデジなら各社から防水機が発売されている。これらは水の中でも撮影できるような機材なので、雨ぐらいならなんともない。ただレンズも交換できないしセンサーも小さいので、割り切って使うのでなければちょっと不満が出るかも。
価格.com:防水カメラ

レンズ交換式にだって、水に強い機種はある。
ニコンNikon 1にはAW-1という「レンズ交換式防水カメラ」があって、これは15mまでの水中で撮影が可能だ。すごく良い試みだと思ったんだけど結局専用の防水レンズがキットのズームレンズ1本しか出ずに終わってしまった。
その他のカメラメーカーでも防滴防塵のカメラは色々出ている。
価格.com:防滴機能を持つ一眼ボディ
ボディだけ防滴でも、レンズが壊れてしまってはどうしようもない。各社、レンズについても防滴製品がある。

主要なものだけ抜き出したが、これだけあればボディとレンズについて結構満足の行く組み合わせを見付けられるんじゃないだろうか。

鞄を雨から守る

これはまあ、鞄にかける防水カバーなども売られているけど、普段使っている(防水じゃない)鞄をそのまま使いたいということでなければ、別途防水性の鞄を用意した方が話が早い。
防水カメラバッグなんかも色々出ている。

私は普段からターポリンのメッセンジャーバッグを使っているので、少々の雨程度なら気にしない。

雨の撮り方

雨が降っている様子を撮りたければ、背景が暗い場所を探そう。水滴は白っぽく見えるので、白けた空など明るい背景では溶け込んで見えなくなってしまう。
シャッタースピードが早いと雨粒が止まって見える。流れるような雨をイメージする時はシャッタースピードを遅めにする。だいたい1/160より下ぐらい、1/80〜1/50ぐらいだと雨粒が流れて線に見える。1/10ぐらいになると白糸のような繊細な雨に写る。
まあこの辺は好みで、色々と試してみよう。ただシャッタースピードが遅くなると手ブレしやすいので、三脚で固定するなど対策が必要になってくるかも。

レンズはなるべく望遠がいい。これは何故かというと、圧縮効果で雨の密度が上がるからだ。広角だと広い範囲に雨が散らばるので密度が低くなるが、望遠だとたくさんの雨が重なって強い雨に見える。

水滴を撮る場合はもちろんマクロが要るけど、マクロはなにしろすごく狭い範囲を大きく写すから、ピントや手ブレがすごくシビアになる。意識できないぐらいの微細な体の揺れでピントがずれたり手ブレでぼやけたりする。
ピントについては、ミラーレスならば強い味方がある:それが「タッチシャッター」だ。これは背面液晶モニタをタッチすると、その場所にピントを合わせ、合った瞬間に自動でシャッターを切る機能で、手ブレでピント合わせが難しい場面でも確実に合焦してくれる。
ブレの方はシャッタースピードでなんとかしよう。雨の日は暗いのでシャッタースピードが遅くなりがちで、手ブレも被写体ブレも起こしやすい。ノイズがあっても不鮮明に写るよりはマシなので、思いきってISO感度を引き上げてシャッタースピードを稼ぐといい。だいたい1/250秒ぐらいあれば手ぶれはかなり抑えられるはずだ。

あと、雨の夜景とか水溜まりに映った景色とかを撮りたい場合。基本的にはカメラを地面/水面ギリギリの高さに置くと反射する範囲を大きく撮ることができていいのだけれど、カメラを水に直置きすると(防滴製品でなければ)ちょっとまずい。そういう時は「低い三脚」を使おう。

Manfrotto 卓上三脚 POCKET三脚Lブラック MP3-D01

Manfrotto 卓上三脚 POCKET三脚Lブラック MP3-D01

普通の三脚は立って使うことを前提としているからカメラ位置がかなり高い。脚を伸ばさずに使うことで低くできるやつもあるけど、それでも30cmぐらいの高さにはなる。
スマートフォン用のミニ三脚などでも10cmぐらいの高さはあるし、耐荷重や安定性的な意味ではちょっと不安がある。
そこへ行くとこの板状の三脚は脚の長さが数cmぐらいしかないので、すごく低いところで角度を調節して置きたい時とかには便利だ。耐荷重も1.5kgあるので、フルサイズじゃないミラーレス機であれば耐えられるんじゃないかな……