「1円玉は有事のためのアルミ備蓄」説をちょっと検証する

http://ingurimonguri.tumblr.com/post/109921542317/29-2014-02-03-21-16-18-id-ffhhojwu0

こんなのが流れてきたので興味を持って、ちょっと調べてみた。

まず、1円玉の総量を把握する。公的な発表が見当たらなかったのでどの程度の信頼性が於けるのか未確認ながら、複数の筋から異なる書き方でおよそ400億枚ほど流通しているらしいことが伺えた。1円玉はほぼ1グラムだと聞くので、400億g=4万トンの備蓄、ということになる。これって軍事的にはどれぐらいの量なんだろう。

「有事の際」のアルミの使い道といえば、まずは航空機の構造材ではないかと思う。
現在、航空自衛隊が保有している戦闘機の機数を合計すると400機弱。有事の際にどれぐらい増産が必要になるのかよくわからないが、とりあえず倍増ということで+400機分を考えることにしよう。
戦闘機の重量は機種によって違うが、一応国産のF-2支援戦闘機で1トン弱。400機作っても400トン、1%程度の消費で済む。
いや、そもそも戦闘機の重量のすべてがアルミではない。じゃあ重量比でどれぐらいなのか、というのはよくわからなかったので「航空機 アルミ 割合」などで検索してみたところ業界の情勢めいたPDFに「現在の航空機に於けるアルミ材料の重量比」を見付けた。昔は七割方アルミだったのが、最近は複合材料の発達に押されアルミの利用はかなり低下していて、今ではだいたい20%程度らしい。まあこれは民間機での話なので軍用機の場合どうなっているかはよくわからないが、材料工学の発達はむしろ軍事方面で先行する印象があるので、たぶん同じぐらいには割合低下しているんじゃないか……と考えると400機で80トン程度まで必要量が低下する。
もちろん必要なのは戦闘機だけではない。輸送機や偵察機なども必要になる。
現状の輸送機保有数はおよそ80〜90機程度。機種によるが重量は20〜35トン程度。こちらも倍増させるとして630トンほどのアルミ消費。
その他の機種はそもそも保有数がかなり少ないので誤差の範囲な感じがある。戦闘機・輸送機を含め全部合わせても1200トン程度だろうか。倍どころでなく10倍を生産しても30%しか使わない。
備蓄としては充分、というより多過ぎる。

国内に流通しているアルミ製品はなにも1円玉だけではない。飲料のアルミ缶などもかなりの量だ。
アルミ缶豆知識 : 昭和アルミニウム缶によると年間生産量は180億缶、1缶あたり15gぐらいなので2700億g=2万7千トンぐらい。リサイクル率も高いので流通量はだいたい安定している。1円玉を使わずとも、これだけで賄えそうだ。

ちなみにアルミの用途として最も多いのは自動車関連で、重量比にして7%程度だそうだけどなにしろ1台1トン前後、年間1千万台ぐらい生産しているので67万トンにも達する。ただこちらは25%前後を輸出しているので、実際には50万トンぐらい。

ところでこの辺はすべて「国内に存在するアルミの総量と兵器への消費量を比較した」だけであって、「転用可能な量」との比較ではない。
たとえば硬貨の転用は経済への影響がある。まあ最も貨幣価値の低い硬貨だから全部鋳潰したとしてもそう大した金額ではないのだが、しかし最小価値で支払えなくなると全品最大4円の値上げになり得るわけで。
あるいはアルミ缶をなくしてしまうと主に飲料などで結構な影響が出るだろう。最近ではペットボトルの方が強いとはいえ、ビールなどではほとんどアルミ缶だ。
実際にどの程度影響されるかはよくわからないけども、そういったことを考えず単純に分量だけでものを言うことはできない。

……まあ実はこの話には


っていうオチが付くんだけどね。