プリンタのトナーが切れたので予備機として置いてあったインクジェット複合機に切り替えたら、何も印刷してくれなかった。テストパターンは正常に印刷できるのでノズル詰まりなどの機械的要因ではなく、印刷データを処理できなくなってしまった電子的故障のようだ。もう6年も前の機械なので限界か。
仕方がないのでコンビニプリントで急場を凌ぎつつ、代替を検討する。
今まで使っていた複合機は単にスキャナ+プリンタ=コピー機というよくあるタイプだったが、どうせならFAXも兼ねられると便利ではある。頻度は低いものの、仕事の都合でまだ時折送られてくるのだ。
現在はFAX電話機を使っているので、FAXを複合機に統合するなら電話も統合したい。固定回線はほとんどインターネット用になっているが、通話がかかってこないわけでもない。
そういうわけで電話機能付きの複合機を探してみたところブラザー工業製ぐらいしか製品がなかった。
35枚オートシートフィーダ付き自動スキャナ機能。上位機種にはある両面スキャンは省かれているが、両面プリントには対応している。
A3印刷対応でありながらスキャナ部分はA4までだそうだが、まあそれほど不都合はない。
無線LAN接続対応。FAX・電話対応、子機付き。
機能面では申し分ない。価格も、FAX電話なしの他社製スキャナ複合機と比べて+5千円程度と充分に手頃だ。
開封から設置まで
箱は結構大きかったので置き場を心配したが、今まで使っていた複合機(CanonのMP620)に比べ横幅は40mm増えたものの奥行きは23mm減少で、フットプリントでは大差ない。ただ電話付き機種のため子機の置き場が必要になるので、ギリギリのサイズで置いていた場合などはちょっと困るかも知れない。
いや、むしろ置き場が問題になるのは「FAX電話の位置で置き換えようとする」時か。流石に単なるFAX電話機と比較してしまうとサイズがかなり違う。たとえ幅が足りたとしても、体積比10倍以上ともなると些か圧迫感があるのは致し方ない。
インクカートリッジや無線LANボックスなどの入った箱を取り出すと、本体が丸ごとポリエチレンの袋に納められている。引っ張り出すために持ち手付きだが、緩衝材の発泡スチロールが生じる摩擦係数に対し段ボール箱の自重が足りず引き出し難い。発泡スチロールの粒が散らばって、本体の隙間に入りそうでちょっと気になる。
設置はとても簡単。
無線ボックスの電源を入れ、電話線を古いFAXから挿し替える。
本体の電源を入れ、インクカートリッジをセット。ノズル掃除が始まり、テスト印刷完了したらとりあえず動作確認OK。
子機にバッテリーをセットし日時を入力。本体側にも日時をセットする。
パネルの「Wi-Fi」を押して接続設定画面へ。うちの場合はAirMacなので手動設定で、AP名をリストから拾ってパスワードを入力するだけ。
本体、無線ボックス、子機充電台とコンセントが3口必要になることには注意。
ただ、電話線の繋がるところに無線ボックスを置きさえすれば本体はちょっと離れたところでも問題ないので、意外に設置自由度は高い。
用紙トレイは標準状態でA4横、トレイを一杯に引き出すことでA3縦が収まる。とはいえその状態では前方にかなり突き出すので、相応に奥行きのある台が必要になる。常用しないのであれば都度手差しの方が収まりは良い。
ドライヴァはメーカーの製品情報ページ下部にダウンロードへのリンクがある。
ソフトウェアダウンロード | MFC-J5820DN | 日本 | ブラザー
インストーラを起動し接続方式を選べばすんなり完了。
専用アプリをインストールすればスマートフォンなどからも直接Wi-Fi接続して印刷実行可能。今や撮影機材がデジカメですらなくスマートフォンですべて済ますことも少なくないので、これは有り難い。6年前では考えられなかった機能だ。
操作
タッチパネルはサイズが小さめでテンキーなどがちょっと押しにくい感はないでもないが、感度は充分だし総じてUI設計は悪くない感じ。ただ、本体には電源以外に操作キーがなく、メニューの切り替えはフリックで行うのでスマートフォン的な操作に慣れていないと少々戸惑うかもしれない。
エラー発生時などに、小さなパネルでは状況確認が難しいということだろうか、レポートが印刷されるのは親切ではあるかも知れないが困ることもありそうな……特にうちは割とトレイにまとめて特殊紙入れて印刷するようなことがあるので、それがレポート出力に使われてしまったりすると有り難くない。
画質
まだ買って間もないのでテストしてはいないのだが、店頭サンプル見る限り申し分ない。まあ今時の最新機種で画質が極端に劣る機種などまずないとは思うが、中間色インクを持つでもなければ印刷密度を求めるでもないので厳密に比較すればEPSONやCanonの6色機よりはやや劣りはするかも知れない。
デフォルトでの用紙方向が横向きなのでヘッドの折り返しが少ない分だけ印刷は早い……ような気がする。なにぶん他社の新機種との比較などをしたわけでもないので結論は控えるが、印刷速度をアピールしているのはその点に自信ありと見た。
総評
他社製機種と比較した場合の優位性は、なんといってもその多機能性だろう。
そもそも電話機能付き複合機自体がブラザーにしかない。FAXや原稿自動送り機構、自動両面印刷などはビジネス向けモデルにならば存在するが、家庭用機種ではあまり搭載されない。逆にビジネス向けは印刷解像度がそれほど高くないので写真印刷などには不向きだし、Wi-Fiダイレクトプリント機能なども備わっていない。こういった、「家庭向けに求められるもの」と「事務向けに求められるもの」を1台で両立させているのはこの機種ぐらいのものではないだろうか。
逆に言えば万人に必要性の高い機種ではないということになるが、自宅で仕事する個人事業主などには大変有り難い機種ではないかと思う。というかありがとうございます。