星の名前のレンズを

「GM1に似合うレンズ」を探しているうちに些かこじらせて、何故か現在安目のオールドレンズを物色している。

デジカメは電子機器なのでどうしても劣化を免れず、またセンサーにせよデータの処理系にせよ格段の進歩を遂げるものなので中古はどんどん値が落ちるが、対してレンズは純然たる光学機器で、機械的劣化やコーティングの腐食などによる影響はあるにせよ基本的な性質は数十年経過しても通用する。従って「往年の名レンズ」などは今でも相応の値が付くし、まして現存数が少ないものともなるとプレミア価格だ。
とはいえ光学設計にせよ材料光学にせよ、電子機器ほどではないにせよ進歩を続ける技術であるから、純粋にその光学特性を評価するならば往年の名レンズよりも恐らく現代の凡レンズの方が上ではないかとさえ思う。それに現代レンズならオートフォーカスや手ブレ補正にも対応し、使い勝手が良い。「劣化した機材が故の味わい」や「懐古的な外見」を評価するのでもない限り、わざわざ手を出す理由もないような気はする。

しかし新品レンズは安いものでも2万から。汎用性の高いものを一つ二つならまだしも、数を揃えるとなれば結構な出費を覚悟せねばならない。だけど程度良好でなく名品でもないオールドレンズなら、1本数千円程度で入手できる。
──という、あまりお薦めできない動機に基いてヤフオクなどをあちこち引っ掛き回していたわけだ。

当初狙っていたのはGM1と同じマイクロフォーサーズ規格であるオリンパスPENシリーズの祖先、往年の名ハーフカメラPEN F用の交換レンズである。
企業情報:オリンパス
35mmフィルム1コマに2枚撮影するハーフカメラはフィルム面積が半分になった分だけレンズも含めた全体の構成がコンパクトで、これは丁度35mmフィルムカメラを置き換えたデジタル一眼レフ機に対するマイクロフォーサーズの立場とよく似ている。この規格をオリンパスが立ち上げ、PENの名でリリースしたのは伊達ではない。
そんなハーフカメラ唯一のレンズ交換式一眼レフとして登場したのがPEN Fで、レンズも本体サイズに相応しい細身であるのでGM1にもよく似合いそうだ。流石に装着事例はちょっと見付からなかったけど、PEN E-P5との比較写真があったので見比べてみると、細身な12mm f2.0と遜色ないか、やや細いぐらいに見える。
しかもこのPEN F用レンズ、40mmと42mmがそれぞれf1.4、f1.2と非常に明るいレンズで、どうせ単焦点なら明るいものをとの目論見に丁度良いものだったのだ。
流石に42mm f1.2は(程度の良いものなら)3万ぐらいするようでちょっと手を出しかねるが、40mm f1.4であれば1万前後で入手できる。

さて細身のレンズといえば他にもあって、主にレンジファインダー系(ライカなど)用レンズにはそういうものが多いようだ。ライカといえばどうもお高い印象があって、実際に桁ひとつ違う価格が付いてることも少なくないのだけど、製造数も多く各国でコピーされたものが出回ったりもして、そうした互換品なら意外に安価だったりもするようだ。
そんなライカマウント系レンズのひとつに、ソ連のJUPITERシリーズというのがある。
ライカマウントレンズノート
これはコピーというか、戦後にドイツの技術者を連行して作らせたものが発祥であり、つまりある種正当な後継というべきなのかも知れないが、ともあれ性能の割に安価な互換レンズとして知られているようだ。
まあ正直なところ性能はそんなに重要でもなくて、むしろ些かチープながらクラシカルな装いと、何よりそのレンズ名に惹かれてしまった。だって「木星」ですよ。遊星商會としては遊星の名を冠したレンズを素通りするわけにも行きますまい。
木星レンズ。なかなか素敵な感じだ。なんならちょっとアンバーがかった色合いだったりするともっといい。」

同じくソ連のライカ系レンズには他にORION、HELIOSなどがある。あと、星の名とは関係ないのだけど、絞りが六芒星状になり星をちりばめたようなボケが楽しめるレンズもあって、このあたりも手に入れたい。

他にもVEGA、ZODIAKなど天体関係の名称を持つレンズは複数あるのだが、それらはいずれももっと大判なカメラ向けのようで、残念ながらGM1にはちょっと似合わない気がする。これら以外にも、天体関係の名を持つレンズはあるんだろうか。

ところでGM1はそれなりにクラシカルではあるのだけれど、それでも操作系がほとんど背面に収まってしまったが故に軍艦部が些かシンプルに過ぎるきらいはある。
ここに何かそれらしい構造物をでっち上げるフェイククラシックカメラ風なケースとかできないものだろうかと考えているのだが、どうせならメーカー名らしきものもでっち上げたい。そうするとやはりレンズと合わせて「木星光器」とか、あるいはJupiter optiko-mekhanicheskoye obyedinenieみたいな感じだろうか。
オリジナルのエンブレムを作るならもちろん木星モチーフだろうが、土星なら迷わず環を描くところだが木星の場合は1979年のヴォイジャーによる発見まで環は知られていないし、レンズはもっと古い。そうするとやっぱり大赤斑と縞を表すべきか。しかし1色ではなかなか難しそうだ。いっそロケットを意匠とするのもいいかも知れない。
などと妄想は膨らむ。

本日の撮影

銀座を歩いて、宵闇を写してきた。
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東京駅すぐ横のベーカリー。
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高さの異なる街頭が垂直に立ち並ぶのが面白かったので撮ってみた。淡い光の中で歩行者信号機がフレアを生じ反転投影されている。
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GAPと不二家のビルに映り込む赤い夕日が美しい。
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銀座のランドマーク、和光ビルへ向かって。
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低い位置から和光の時計台を見上げる。
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ビルの立ち並ぶ銀座で空を一番広く撮れる、有楽町マリオン前の交差点。
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すっかり青くなった空をビルの壁面が写し取る。