iPhone カメラアプリ レヴュー

iPhoneを暫く使ってみて、用途が大体定まってきた。ひとつは暇潰し、ひとつは情報検索、ひとつは写真だ。
カメラ付き携帯の中でもiPhoneのカメラというのは特筆すべき存在と言える:アプリの追加によって機能が如何様にでも変化するという点で。
iPhoneのカメラというのはただ撮るだけのものではなく、撮り方を変える、あるいは撮ったものを加工するところまでセットになっているのだ。
これまでに試したカメラ系アプリを一通りレヴューする。

撮影系

Darkroom(無料)

暗所撮影時の手ぶれを抑えるのだというアプリ。基本的な使用法はカメラと同じだが、シャッター押した後にプログレスバーが出て何か処理を加えている。
ただこれ、私のiPhoneでは撮影の度に異常終了するようで一度もまともに使えたためしがない。よって評価不能というか評価以前というか。

ToyCamera(230円)

正方形フォーマット、周辺減光、緑/赤/黄色シフト、彩度強調または減少、セピア調などのオプション設定を持つカメラアプリ。名の通りトイデジっぽく撮れるが、あくまで今撮影する写真にエフェクトかけて保存するアプリなので、撮ってみるまで仕上がり不明な一発勝負。如何にもフィルムトイデジっぽい使い勝手ではあるが、私にはどうも合わなかった。私は「好みに仕上げるために」アプリを使うのであって、「ランダムな仕上がりを楽しむために」使うのではない、これは多分心構えの問題。

CameraKit(230円)

撮影画像にコントラスト調整や色調補正、ソフトフォーカスなどの多彩なエフェクトを追加するアプリ。各種どちらかというと加工ツールのイメージの方が強いソフトなのだが、起動するとまず撮影モードに入るので撮影してから加工が前提のソフトではある。
撮影したものを保存、または撮影キャンセルすると設定/ファイル読み込みメニューが出現、撮影済みのファイルも加工できる状態に。
カラー写真/白黒/セピア/退色したカラー写真の4モード、周辺減光及びハイライト強調、ソフトフォーカスを3段階、色調を赤/緑/青/黄に補正、また±2段階でコントラスト強調度合いを調整できる。更に画像へ署名を追加することも可能。
今まで使用した補正系ソフトの中で抜群に使い勝手が良い。メニューが判り易い上に「Done」ですぐ適用結果が確認でき*1、調整も適度なバランスに設定されていて段階的調節しかないにも関らず非常に好みの結果を得易い。
基本的にはホワイトバランスやヒストグラムのような本格的調整を行なうものではなく、むしろ彩度を強調し色をずらし周辺減光を追加してトイデジっぽい風合いにするのが本懐だろう。

Pano(350円)

パノラマ写真撮影アプリ。前に撮影した画像の右端20%ほどが画面左側に半透過で表示されるので、それと今映っている映像をなるべくぴったり合わせるようにしつつ撮影する。1枚撮影する度にuseまたはretakeを指示しつつ数枚撮影し終えたら続く撮影をキャンセル、「Make my Panorama now!」で1枚に繋げる。今回のパノラマ撮影自体を最初からやり直すなら「Start Over」で。
撮影前にキャンセルを押すとパノラマのモードを縦横切り換えできる。
かなり自然な感じに繋いでくれる(流石に直線的な部分が多いとなめらかに湾曲しないことがあるが)上に色調も補正してくれるので、例えば下が暗く上が明るい写真をパノラマで撮影し、それぞれの位置に合わせて露出調整された写真を繋げることで、「上も下も明るい」ハイ・ダイナミックレンジな写真が楽しめたりもする。
唯一の欠点は、合成・保存に時間がかかること。
カメラアプリの中では高目の部類だが、値段以上に遊べること請け合い。特に広角系の画を撮りたい時には重宝する。

Time Lapse(230円)

インターバルタイマー。指定した間隔で、指定した枚数だけ、自動で撮影し続ける。例えばiPhoneを固定して5分間隔で風景を撮影し続ければ微速度撮影による超早回しの風景を楽しめるし、ストラップで首から下げたiPhoneで一定時間おきに自分のいる場所を記録するなんてことも可能だ。

カメラ

これだって立派な撮影アプリだ。何の特徴もないが、その分手軽で連続撮影に向く利点がある。撮影してはなんだか設定して保存、みたいなアクションがなく撮影→即時保存→次の撮影になる手軽さは使い勝手良好。
忘れられがちだが3GSなら動画も撮れる。

加工系

SP PhotoFix Lite(無料)

無料にしては強力な画像加工ツール。シャープネス/ぼかし/白黒/セピアフィルタ、色相・彩度・明度調整スライダ、コントラスト・明度調整スライダ、指定ポイントを基準とする自動ホワイトバランス調整。なかなか使えるツールだがよく落ちる。
私は色調の補正を基本的にCameraKitに任せているので、これを使うのはホワイトバランスぐらい。

TiltShift(230円)

一時期Web上でも流行った、本城直季のティルトシフトによる「ミニチュアのような風景」を手軽に作り出すアプリ。画面に出現する円をピンチイン/アウトで拡大縮小回転させて「ボカさない」範囲を決め、それ以外をボカすことで奥行感をおかしくする。Toolsで設定変更、円の代わりに平行四辺形やガウスぼかし/レンズぼかしの切り換え、光の散乱度合い切り換えや適用の閾値を調整できる。画面下のスライダはぼかしの強さ。
モノがモノだけに写真を選ぶ。基本的に細々と風景が映っていて、奥行き感のある写真でないと巧く行かない。

OilCanvas(230円/期間限定で無料)

写真を下敷に、指でなぞって色を広げる「油彩風かんたん塗り絵ツール」。まず太い筆で全体を塗り潰し、徐々に細かい筆でちまちまディティールを浮き上がらせて行くと、「写真のような描写力の」「油絵のような何か」が出来上がる。
PhotoShareをリリースしたBig Canvasの作。

PhotoConv(115円)

「手軽な写真の雰囲気調整」を目指したと思われるアプリ。その場で撮影して良し、読み込んで加工して良し。メニューは「カラー/セピア/モノクロ」の切り換えとコントラスト調整のみと割り切った構成で、これはこれで悪くない……のだが、私の場合はその全機能がCameraKitで賄えてしまうため不要に。

EdShop(無料)

ジョーク系アプリ。画像を減色/平滑化してエッジを縁取ることで浮世絵風に加工、最後に署名を入れて完成。名前もアイコンもPhotoShop(CS3以降)を模している。

AutoStitch(230円)

Panoとは別方向のパノラマ作成ソフト。複数の画像を選択するだけで自動で繋ぎ合わせと、操作は簡単この上ない。ただ結構画像をダイナミックに変形させた上に縁を切らないのでちと見苦しい。

Quick Calendar(無料)

これは本来ここに入れるのはちょっと違うといえば違う。写真の上に文字を入れてカレンダーを生成、ロールに保存するだけ。あとは「写真」で壁紙に設定。

Crop for Free(無料)

画像の回転と切り取りに特化したソフト。実は撮影後に写真の向きを変更できるソフトってほとんどないので重宝する。また切り出しも他になかなかない。ただ、残念ながら縦横比を保っての切り取りはできないようで、そっちはあまり使わないかも知れない。当然ながら切り取り後は画像が拡大される分粗くなる。
また無料版なので上部に広告らしきものが。

Mill Colour(無料)

独特なインタフェイスの編集アプリ。編集パターンは2種類、ひとつは「LOOKS」でフリックによりプリセットを選ぶ方法、もう一つは「COLOUR CONTROLS」。これは「LIFT」「GAMMA」「GAIN」「SATURATION」をそれぞれダイアルの回転で調整するもので、数値がかなり細かく調整可能なぶんCamera Kitでは巧く調整できない微妙な明暗などを生かし易い。
無料でここまでできちゃうのは凄い。性質がちょっと違うので完全置き換えというわけには行かないのだけれど、SP PhotoFixよりも調整部分は使い易いしなにより安定動作する。

PhotoCurves for Free(無料)

トーンカーブの調整に特化したアプリ。「暗部はもうちょっと起こしたいが明部の白飛びは困る」なんてときにはトーンカーブ調整が一番。その性質上ちょっと慣れが必要だが、Photoshopなどで日常的に使ってる人なら入れておいて損はないと思う。

その他

PhotoShare(無料)

写真共有サーヴィス。自分のロールから写真を選んでタイトルを付けるだけで自動アップロードし共有可能。共有範囲も、全体/家族/友人とグルーピングして管理できる。それだけではなく写真へのコメントや好きな写真を多く公開しているユーザのフォローなど、コミュニティとしての機能が盛り込まれており「見てもらう」「好きな写真を探す」の両面で、iPhoneのカメラ利用が楽しくなること間違いなし。
同社リリースの各アプリによる作成画像アップロードだけでなく、他社製アプリでも送信先としてPhotoShareを使うものも多い。
アップロードと同時にTwitterへ投稿するなどの設定もできる。
私のページは、http://www.bcphotoshare.com/photos/548058

写真

単なる写真閲覧アプリ……と思うのはまだ早い。OS付属の純正アプリならではの機能がちゃんと備わっている:フォルダ選択時の左下メニューによる「共有」、画像選択時の左下メニューによるメール他での送信や壁紙設定は憶えておくべき。

おすすめ

この中で万人にお薦めしたいのは「CameraKit」「Mill Colour」「Pano」「PhotoShare」の4つ。うち2つは有料だが、間違いなく金額以上の価値がある。

気になっているもの

DeliCam

食べ物写真を美味しそうに自動で色補正するだけのアプリ。単純で良い。どの程度の効果が見込めるのか、どの程度食べ物写真を撮るか、両面で未知数だったので(有料ということもあり)保留。
Camera Zoom
iPhoneカメラにズーム機能を追加するアプリ。勿論ハードウェア上にそんな機能はないので単に電子ズーム、要するに周辺を切り取っているだけの話であるが、「寄りたいけど寄れない」場面で不要な部分を切り取れるならそれはそれで使い道がありそうに思う。

iStereo3D

立体写真メーカー。1枚写真を撮る→それを元に「こんどはこの辺に写るように撮ってね!」というテンプレートが半透明表示→大体それに合わせて撮る、でステレオ写真出来上がりという仕組みらしい。

*1:ただしこの高速性はデフォルトの作業サイズが640*480に設定されているためで、「i」から設定を変更しフルサイズなどにすることもできるが毎度毎度数秒待たされることになるので注意