「代替医療」ではなく「ニセ医療」と呼ぼうキャンペーン

代替医療」とは英語のalternative medicineの訳語で、本来は「効果は認められているが作用機序不明な伝統医療」や「効果の程も怪しい民間療法」「最先端の仮説に基く治療法だが真偽がはっきりしていないもの」などを広く含む用語である。
つまり、「治療効果は本物だけど科学理論で解明できてない」から「科学的だけど治療効果は疑わしい」「単なる健康法」、果ては「まったくのニセモノ」までが全部一括で「代替医療」と呼ばれているわけだ。
これはマズい。


なにが拙いって、"医療"の2文字が入っているために一見して正しく治療効果のある医療行為であるかのような印象を与えてしまうことが、だ。
東洋医学のように経験的に効果は認められている(が理論化されていない)ものを呼ぶ呼称としては悪くないのだが、ホメオパシーのように原理的にも実証的にも効果のなさがはっきりしているものや心霊治療のようなオカルトまでもが含まれてしまうことで、まるでそれらが医療の代わりに通用するかのように思われてしまう。
そういうのははっきりと「ニセ医療」と呼ぶべきだ。


「科学的仮説に基くが期待したような治療効果がない」ものは、「棄却された仮説/治療法」ではあってもニセ医療ではない。例えばマゴットセラピー(蛆療法)は蛆に患部の壊死組織のみを食べさせ、また蛆の分泌する酵素により回復を早めるというものだったが、回復の促進効果がないらしいという調査結果が出ている(それでも、健康な部分まで切り取らずに済むというメリットは依然残るのだが)。間違っているかどうかは実際にやってみなければ判らないもので、間違っていたこと自体に問題はない。要は修正されれば良いのだ。


が、ニセ医療の場合は修正を受け付けない。彼らは「自分が間違っているのではなく科学が間違っている」「現代の科学では理解できないだけ」と考えているため、誤りの指摘を無視するばかりか「医学による治療には害があるので拒否し、我々の治療だけを受けるべきだ」と主張し、結果的に適正な医療行為の実施を阻害する。


「ニセ医療」という呼称を用いること自体に反対の声はないと思うが、問題は「どれをニセ医療を呼ぶべきか」だ。一度ニセモノとのレッテルを貼ってしまうと、それを撤回するのは困難であるため、選定は慎重を期すべきだろう。とは言え、実質それほど難しいことでもあるまい。基本的には「疑わしきは罰せず」で良いのだ。
要するに

  1. 心霊的療法の一切
    • 祖霊や日頃の「行い(食生活や運動量、睡眠など生活習慣の意味ではなく)」を不調の原因や治療法に挙げるもの
    • 医薬や治療器具でないモノの購入を治療法に挙げるもの
  2. 波動
    • 治療機械/医薬のようであっても説明に「波動」の文字があるものはすべてニセ
  3. ホメオパシー
    • ニセ医療の筆頭。一切効果のない唯の水(を砂糖玉にかけたもの)を薬と称する。実は波動系
  4. デトックス
    • 効果のないことが確認されている

あたりを、医学と勘違いされないよう隔離しておければ良い。
合言葉は「万能の霊薬はないと知れ」「副作用なしには効果なし」。

ついでなので、「ニセではないが医療と勘違いすべきでない」ものも挙げておくことにする。

  1. 健康食品
    • 食品そのものはニセでないにせよ、「これさえ食べれば健康になれる」などというのは悪質と断じて良い
  2. サプリメント
    • 経口摂取に効果のあるものもないものも混在している
      • 特定保険用食品の指定なきものは効果なしと思うべき
      • なかには害のあるものすら混じっている場合があるので、医師に摂取を薦められたもの以外は避けた方が無難

思い付いたら追記する。
ニセ科学と被るところがあるが、あくまで医療行為/薬効を謳うものだけを扱う方針で。また「効果があるかどうか未検証」は別枠、例えば「医療未満」扱いで。