10年くらい前、パソコン購入の上で重要な指標のひとつが「拡張性」だった。パソコンの性能は限られているから、やりたいことに応じて様々な機材を組み込んでやらなければならない。
しかし時代は変わった。今やごく一般的なユースに於いてはエントリークラスのパソコンでさえデフォルト状態で充分すぎるほどの性能を有している。そのまま使っていても特段の不自由はない。また、特別な機能が必要になっても大抵のことは外部拡張、つまりUSB機器で事足りる。すべてをデータとして扱うパソコンにとって、機能の拡張とは即ちデータ通信だと言っても過言ではない。
ただ、残念ながら外部拡張では賄えない部分もあるにはある:通信速度がネックになるほどの高速処理部分だ。
例えばCPUやGPUは外部拡張が難しい。そもそも内部的には相対性理論が障害になるほどの超高速データ転送が行なわれている代物だから、毎秒100MBにも満たない外部ポートの速度では追い付かないのだ。
逆に言えば、ネックはデータ転送速度だけとも考えられる。つまり極端に高速な外部通信ポートを作るか、転送データがごく軽量ならば、状況次第では外部演算装置の実現も可能かも知れない。
まあ極端な高速化は物理長にも影響を受けるからちょっと難しいような気もするが、既にPCI Expressを利用した外部グラフィックカードは試案があるらしい。
CPUの方は更に困難で、外部化するとすれば「少量のデータを元に膨大な計算を処理して少量の結果を返す」ような特殊状況でしか活躍しそうにない。例えば……「answer to life the universe and everything」との入力に対して地球サイズの量子コンピュータを以てして46億年もの時間をかけて演算を行なった末に「42」を出力するような。