XOとインフラの話

XOとはOLPCプロジェクトによって「発展途上国の子供たちにコンピュータ教育を」という目標のために開発された「100ドルPC」である。実際にはまだ量産効果はさほどでもなく200ドル程度になっているのだが、それでもPCの常識的価格帯からすれば驚くほどの安価と言える。
理念はともかく計画としてはなかなか紆余曲折で、インテルが立ち上げた対抗プロジェクトへの猛抗議とか開発/生産に携わっていたCTOがスピンアウトしたりとか、将来性に不安がなくもない。そもそも、教える人間がいないのに道具だけ配ってどうするんだとか結局転売されて子供たちの手には残らないんじゃないか、なんて指摘もある。


でも私はOLPCというプロジェクトを高く評価している。それは、OLPCの意義がインフラの普及にあると思っているから。
教え手がいないなんてことは百も承知だ。XOは、子供たちが自主的に使い方を学び、何かを生み出すことを期待している。
XOはネットワークインフラの整わぬ環境を想定し、XO同士が自動的に無線でP2Pなネットワークを作り出す機能を備えている。
それどころか、電源供給インフラすらないことを想定して手動発電装置が用意されている。消費電力も低く抑えられているからその程度でも実用的な稼働時間が実現可能だ。
屋根のないところでの利用も想定し、液晶はカラー表示のバックライト液晶とモノクロの反射液晶の切り替えという画期的なもの。
要するにインフラがなくても機能するように作られ、またそれ自身がインフラとして機能し、あるいはインフラの普及を促す作用があるのだ。
単に安価なPCというだけなら、EeePCなどの例が既にある。だがそれは、PCの普及した世界では実用的でも、それ以外の世界ではそうではないかも知れない。


インフラついでにもう一つ。
RFIDタグの類は、本格的に普及すれば流通管理を画期的に変えるだろうと目されている。たとえば個々の荷物についたバーコードをひとつひとつ手持ちのスキャナで読み取って管理しているものを、最初から貼票なり箱なりに仕込まれたRFIDと紐付けておく。自動化しようとするとデータベースからの貼票印刷機能に加え、印刷した貼票のRFIDを読み取って値を返す、または書き込み可能なRFIDを使って印刷と同時にデータを書き込むなどの手段が必要となるが、一度準備してしまえば荷物を一纏まり一括で処理できるようになり、人的・時間的コストは大幅に短縮可能だ。その上、倉庫内での位置など、従来では認識困難だった情報までもリアルタイム認識できるから管理も容易になる。
斯様に利点ばかりに見えるRFIDはしかし、ほとんど普及していない。理由の半分は、専用機材の導入などで初期コストがかさむからだろうが、もう半分はタグひとつあたりの単価が下がらないからのようだ。
こういうものは量産効果で劇的に下がる。逆に言えば、広まらないと生産数が増えないのでコストが下がらない。「インフラがないから使えない→使わないからインフラが整わない」という悪循環だ。
業界大手が肚を決めて一括採用を宣言するか、不安なら業界連合として足並み揃えて導入してしまえば、年間で億単位の生産も不可能ではあるまい。Amazonだけでも多分月間10万は下らない筈だ。