HeadMountDisplayはやっと「自然な眼鏡」に近いところまで来た。無線LANも普及し始め、あるいは携帯電話による通信インフラの利用で随時通信可能な状態は実現している。まだRFIDの普及は遅れ気味で、あらゆるモノに信号を割り当てるところまでは行ってないが、ARの実現までは今一歩のところまで迫っているように思う。
脳と回線の直結や五感投影でのリアルなVRは、当初予想したより遥かに敷居が高く実現は困難な状況だ。元よりグラフィカルなインターフェイスよりコマンドラインベースの原始的インターフェイスの方が本質的に効率が高いので、VRは視覚効果以上の意味付けが薄い。
それに代わって俄に現実味と将来性を帯びてきたのがAugumented Reality、強化現実の方である。パソコン上でファイルのプロパティを確認したりメールの着信をアイコン表示で知らせるように、現実視界の中に補助的な情報を重ね合わせて一度に認識可能な情報量を増加させる。
たとえば現在は携帯のGPS+電子コンパスで実現している2D表示の道案内を、視界に半透過で重ねた矢印と文字やアイコンの表示で行なうことは(現在の携帯端末の処理能力では少々荷が重いだろうが)既に困難な技術ではない。
或いは映画や演劇などの視聴に合わせて字幕や内耳音声案内を出したり、書店で背表紙に触れるとプレヴューがポップアップしたり、CDや映像ディスクの全タイトルがその場で視聴可能になったり、出がけに持ち物をチェックして不足アイテムの位置を強調表示したり、地下鉄内で地上の風景を把握したりといった利用も考えられる。アミューズメント施設に於ける演出のひとつとして視聴覚情報に割り込むのもいい。
「電脳コイル」でそうあるように、数十年後にはHMDが必須インフラ化しているのではないかと思う。それは多分新たな問題を生み出しもするが(行動の監視が今よりもずっと容易になるとか、ARspamが鬱陶しいことになるとか)私はその可能性に期待する。願わくばそれが、私が適応可能な年齢のうちに実現しますように。