著作権延長と冷戦構造は似ている

著作権の70年延長が単に自国の権益を他国より拡大しようという大変に利己的な方針であるのは論を俟たない*1が、一国が権益を不必要に拡大して他国がそれに追従し、それを繰り返してどこまでも際限なく拡大する……そんな構造に既視感があると思ったら冷戦構造下の戦力拡充、とりわけ核配備であった。
自分だけが持つことで得られる力と、一国のみが突出することへの不満と不安から来る追従。まったく、彼の国は(そして我が国は)いつまでこんな幼稚なことを繰り返すのか。


例のネズミやソフトウェアの影響力がこれほど大きくなければ、単に「権利拡大→利用機会減少→収入減」で済むものを、自国の力というものを充分に自覚した上での所業であるあたり性が悪い。
然し、他の国はこの流れに追従したところで大して得るものがないことを理解しているのだろうか?どの国も、コンテンツのみに限れば輸出入の収支は明らかに赤字だ。ということはその部分の利権を拡大すればするほど自国に不利ということになる*2
ヴェルヌ条約批准国間では著作権は相互保証されるので他国と同じ保護期間が国内でも保証されるわけだが、それはあくまで条約の定める範囲内でのこと。死後50年を越える期間を保証する必要はどこにもないので、つまり米国が国内で70年保護を謳ったとしても、その他の国では50年でパブリックドメインとして扱うことに何の問題もない。
当然ながら米国は著作権保護期間を延長するよう圧力をかけてくるだろう。だが延長を正当化する方法がないから、何らかの交換条件を持ち出すしかなくなる。外交的にはカードが増えて喜ばしい。

*1:日本の場合は米国へ倣えであるが、そもそもの発端となった米国には何の大義名分もない

*2:ただしこれは対米輸出入に限った話で、それ以外の国との関係は考慮外だが、いずれにせよどこかの国が得すればどこかが損するわけで、仲良く利権拡大する意味はあまりない