ツァヴァンドールの王笏

秋葉原YSで気になるゲームを発見。古い書物を模したパッケージで、中身はさっぱり解らない。その状態で手を出すのは流石に躊躇われたので一度見送ってWebで調べると、どうやらアウトポストという古いSFゲームをリメイクしてファンタジーに置き換えたものらしい。
プエルト・リコのように能力を買って組み合わせる」というのに惹かれて入手してみる。


コンポーネントはなかなかの充実ぶり。厚紙の宝石トークン、魔力の粉トークン、集中魔力カード、それに順番タイルとガーディアンタイル。魔力カードとアーティファクトカード。プレイヤーコマ、キャラクターボード、ゲームボード。
幾つかのカードにはドイツ語で効果が書いてあり、またキャラクターボードやゲームボードの表記もドイツ語でしか見分けられない。言語依存性は高めなので、できればオリジナルで日本語化したカードを作っておくとプレイがスムーズだろう。また、ゲームボードの「知識」レベルには得られる効果が書かれていると親切だと思う。少なくとも今回のプレイでは、それらの確認だけでかなりの時間を費やす事になった。
コンポーネントについてはもう一つ不満があって、このコンポーネントにはトークン類やカードをセットするトレイが存在しない。それらを纏めておく為に多数のチャック付きビニール袋が同梱されてはいるのだが、袋からの出し入れとトレイからの出し入れでは利便性が全く異なる。余裕があればトレイを自作したいところだ。魔力の粉、宝石とそれに対応する魔力カード・集中魔力カード、それに捨て札エリアがあると使い勝手が良くなるだろう。


ルールブックについてもあまり高い評価は与えられない。ドイツ語のものは裏面に内容物の一覧があり、写真でそれぞれの呼び名が示されるが、オフィス新大陸の日本語ルールには図があまり入っておらず、それぞれの用語がどれを指すものか理解し難い。また、幾つかの誤植が見つかっている。例えば、リファレンスシートでは記憶の知識が手札上限に影響を与えないとあるが、元の表記では明らかに上限+1である。


さて、実際に5人でプレイしてみた。まずはルール説明から入るが、この時点でゲームボードのどの部分が何を指すのか、また各カードの能力をどう確認するかでかなり時間が取られた。カードの能力については最終的にルールブックをコピーしてリファレンスシートを作成、またゲームボードをコピーしてドイツ語の横に日本語を書き込む。
プレイそのものにもかなり慣れが必要であった。このゲームの最終的な目的は9体の守護像(ワッチ)のうち5体以上を倒す(9枚ある守護像カードのうち5枚以上が競り落とされる)ことであるが、それを成す為には多量の魔力を用意せねばならない。それを生み出すのが宝石である。従って価値の高い宝石を多数購入する必要があるが、その為には「宝石の知識」レヴェルを上昇させて安価に購入できるようにする必要があるだろう、知識の研鑽にもまた魔力が必要である。
また、宝石以外にも多数の呪物(アーティファクト)が用意されている。これらは入手によりより価値の高い宝石を入手できる権利となったり(逆に言えば、これらが無ければ価値の高い宝石を手に入れられない)様々な強力な効果をもたらす。中には、多プレイヤーの宝石を取り除くようなえげつない効果もある。宝石ばかりでなく、これらの存在も無視できない。
宝石は定価で購入でき、また1手番に幾つでも購入できるが、呪物や守護像は各手番で1度のみ、競りを行う権利が与えられるのみである。つまり、最も高い魔力を支払わねば入手はで見ない。宝石に変換した魔力は更なる魔力となって帰ってくるが、呪物や守護像は魔力とならない(宝石と同様に扱うようなものもあるが)から、それらを入手したプレイヤーは当然ながら次の競りでは苦しい立場となる。
結局、プレイヤーは宝石、知識、競りのいずれに魔力をどう割り振って行くのかに頭を悩ませねばならない。正直なところ、かなり見通しの悪い作りと言わざるを得まい。
更に見通しを悪くしているのが守護像の得点効果である。それぞれの守護像には宝石や呪物の取得に応じた得点が設定されているが、それとは別に共通の能力として「毎ターン5点の得点」が加算される、らしい。つまり、守護像については落札からの経過ターン数でポイントが変わってしまうのである。
このゲームは宝石の売買などにより点数変化が起き易い。加算一方ならそうでもないが、時に減算が起きるため頻繁に点数の再確認が必要となる。その時、得点が流動的になる守護像は非常に厄介な存在といえる。しかも経過ターン数をカウントする為のカウンターなどは一切付属していない。
「毎ターン5点」という強力な効果は早くに入手した人へのボーナス、というか終盤には他に得点を伸ばす方法があまり残されていないから逃げ切りが難しい事への対処かと考えられるが、本当に原文にそう記されているのかどうか、少々疑っているタイルを見ると確かに、5xとあるんだけど。


ルールブックにはプレイ時間の目安が「60分程度」とあったが、不慣れな状態で手探りでのプレイとは言え実際にかかった時間は6時間であった。慣れれば2時間程度には短縮できるのだろうか。
2人で再度プレイしてみた。有経験者、且つ少人数なので早く終わるかと思ったが、3時間かかっている。やっぱり60分はどう見ても嘘だ。名古屋EJFの記事にも「180分」とあるのでそういうものなんだろう。