保留音

電話の保留音というのは何故にああも殺人的なのか。
携帯の着信音は劇的に進化を続け、今や40和音からムービー再生まで行き着いたというのに、何故か固定電話の保留音は取り残されたままである。
これは自分では耳にしないからだと推測される。ユーザーは、自分が聴かない音楽にまで気を回す必要を感じていないということだ。


迷惑なのは電話をかけた方で、あの単調で調子っ外れな音を繰り返し聞かされる羽目になる。
単調なのはまあ良い。単音だろうが短いフレーズの繰り返しだろうが、退屈ではあるが死ぬほどの嫌悪はない。問題は音程の方で、どうしてだか判らないが盛大にピッチが狂っているのである。ある程度音楽の素養があれば、あれは聴くに堪えない殺人音波となるに違いない。


西洋音楽的には、音程はすべて数学的に決定される。
音程の決め方には長い歴史があり、説明すると大変なことになるので省くが、今や機械的に標準的な音程を求めるのはそれほど難しい話ではないはずだ。
それなのに、電話の内蔵音源は明らかに音程の狂った曲を奏でる。これは許し難い。
ある絶対音感の持ち主は、慣れ親しんだ調律に対し僅か2ヘルツ高いピッチでの演奏に耐え切れず自殺したという伝説があるが、各電話メーカーは死者が出る前に保留音を改善するように。