読了

オースン・スコット・カード「死者の代弁者」(上巻:ISBN:4150108846:ISBN:4150108854
前作「エンダーのゲーム」に続き2年連続でヒューゴー賞ネビュラ賞を受賞した傑作。
前作は天才的な少年エンダーの成長を中心に、思考形態のまったく異なる異類知性体を書いたが、本作ではそのエンダーが「死者の代弁者」として3000年後の宇宙で*1新たに発見された知性体「ピギー」を代弁する.


私はSFを「人間不要の文学」と位置付けている。SFにも人間は登場するが、それは主に観察者として人間の視点から人間の言葉で世界を描写するためであり、主役は飽く迄も世界の方だ。
野尻抱介などはこの点徹底していて、ジュヴナイルとして個性の強い人間を書くときにも登場人物と世界を切り離している。
ところがO.S.カードは正に人間こそを中心に据え、主要人物の個人的な生活や心理を書き綴る。従って彼の作は、SF読みに違和感と、それ故に強い衝撃を与える---彼の作品は確かに人間を中心に成立しているが、その上で彼は世界を書き切っているのだ!その手腕のなんと鮮やかなことか。


それはそうと、本作では独自の生態系として私が個人的に考えていたことがより高度なレヴェルで再現されてしまっている。嬉しいやら悔しいやら。

*1:彼は亜光速で旅を続けているので、浦島現象により大して年を取らぬままに3000年を生きている