ブレイクエイジの話をしよう

20年前に描かれた、「ロボット対戦ゲーム」漫画の傑作が、Kindle化された。漫画全10巻+外伝、それに小説がリリースされている。
BREAK?AGE 1BREAK?AGE 2BREAK?AGE 3BREAK?AGE 4BREAK?AGE 5BREAK?AGE 6BREAK?AGE 7BREAK?AGE 8ASIN:B0176EZKE8BREAK?AGE 10BREAK?AGE 外伝 ボトルシップトルーパーズ完全版
(理由は不明だが9巻のみリンクできない。はてな側の問題と思われる)

どんな漫画?

一言で表せば「Boy meets Girlでモラトリアム部活モノなロボットゲーム漫画」。

舞台は2007年の日本。既に過去の世界になってしまったが、漫画の執筆時点からすれば15年先の近未来だったことになる。
この時代、ゲーマーたちは専用回線を通じて多人数対戦する、大型筐体アーケードゲーム「デンジャープラネット」に夢中になっている。今でこそ2006年「戦場の絆」や2009年「ボーダーブレイク」などによってゲームセンターでの通信対戦ロボットゲームが実現してはいるが、この時点ではまだ「電脳戦機バーチャロン」すらない時代である。

デンジャープラネットの特徴は、「自分でロボットが設計できる」ことにある。
現代のゲームでも、用意されたパーツを自由に組み合わせた「オリジナルの機体構成」は可能だが、デンジャープラネットでは専用の編集ツールを使用することで既製品の機体構造そのものを改造することが可能であり、それを持ち込んでゲーム内で使用できる。ある意味で現在のPCゲームに於けるMODめいた、データの自作がユーザの手に委ねられているのだ。
これは個人ユーザの話に留まらない。デンジャープラネットは、それ自体がある種の「ロボット・シミュレーション・プラットフォーム」であり、その上で動作可能なロボットを、他メーカーが制作し販売することを可能としている。単なる1ゲームタイトルの域ではなく、そこには「仮想ロボット産業」が成立しているのだ。

ゲームに夢中になったことのある諸兄は、一度ならず「作る側になってみたい」という夢を抱いたことがおありかと思う。この世界では、それが「仮想ロボットを作る側になりたい」という形になる。
しかし、仮想ロボットの設計には、ソフトウェア/ハードウェア工学の素養が必要だ。ゲーム産業に憧れるティーンエイジが工学を学べる場所といえば……そう、工業高校/大学である。
そんなわけで、主人公は国府高専ビデオゲーム同好会に所属する高専生であり、部活とゲームセンターの話が中心となる。
人気ゲームが一大産業化している世界なのだから、ビデオゲーム研究を旨とする同好会には人が集まりそうなものだが、部員数ほんの数名の弱小同好会に留まっているのは、ひとえに「先輩が変人」だからであろう。ビデオゲーム同好会の創設者にして会長であり、「4年生以上は私服」の規定を最大限に濫用した着ぐるみ登校者、また留年限度一杯まで学生生活を謳歌している「卒業しない4年生」。彼を中心とした部活描写は、永遠に続く(かのような)遊びの時間を追い求めるモラトリアム生活である。

そしてBoy meets Girl。主人公は、ゲーム上での最強ライヴァルであるヒロインにこう申し込む。
「俺が勝ったら、つき合って」
「あたしが勝ったらチャラってことね?」
ゲームを通した、友情に限りなく近い恋。趣味を共有する分だけ距離の近い、けれどそれ故に踏み込めない、そんな関係性。
しかしヒロインは、明かせない秘密を抱えていた。それはやがて、主人公を、社会を巻き込み環境を一変させてゆく──

これはそんな、「ゲーム社会」SF漫画だ。(やたらと美形だったり優れた技能者だったりする面はあるけれど)普通の人たちが普通に暮らす、社会にゲームが浸透した、現代の日本と何も変わらない、だけれど魅力的な夢の詰まった、そういう社会を描く漫画だ。

試し読みできる?

ここに、内容を簡単に紹介したPVがある。

コミックスからの無断裁スキャンなので端の方がボケているし、圧縮で鮮明さを失ってはいるが、雰囲気は伝わるかと思う。
もっと中を読みたければ、
マンガ図書館Zにも登録されているので、読むだけなら無料だ。ちなみに無印の「BREAK-AGE」および「外伝」が漫画、「EX」が小説。