推理ゲームブック

かつて推理小説界を震撼させた(多分)「マイアミ沖殺人事件」という本がある。
マイアミ沖で発生した事件を、現場で捜査した刑事の報告書と証拠物件を元に警部が真相を推理するというもので、実際に報告書と証拠物件がファイリングされている---というか、それしかないのだ。
この斬新な構成は評判を呼び、後に変則的な推理小説ゲームブックを多数生み出した。日本でも和久峻三が「雨月相殺人事権」という、殺人事件の犯人を取り調べた際の調書と裁判の公判記録の二部構成による推理小説を書いている。形式は随分違うが、物語によらない推理ものという点では共通する。

ゲームブックでは「シャーロック・ホームズ 10の怪事件」にはじまる4部作が見事な出来。
ロンドンの地図、タイムズ紙、住所録を元に事件の関係者を辿り、証拠を集めて謎を推理するもの。10問ほどの質問に答えた後、ホームズの推理が披露されるのだが......この男、どうやったら毎回こんなに少ない手がかりで答えを出せるのだ。
1巻ではホームズと推理力を競う形式で、より少ない手掛かりでより多くの設問に答えれば高得点になるものだったが......得点がプラスなら良く推理した方だろう。
1巻は10話を詰め込んだ分一つ一つの密度が薄く、2巻以降の方が楽しめると思う。3巻に至っては4日間で一つの事件を解決するもので、あまりの密度に手を出しかねている。