沖縄へ行こう:3日目(南部編)

沖縄旅行も既に3日目。
ペース配分を考えるならば少し休んでもいいぐらいだが、当初の予報では週の後半が雨かも知れず、行きたいところは行けるうちに行っておくが良い、ということで今日は斎場御嶽せーふぁうたき方面のバスツアーである。
沖縄随一の「聖地」として知られる斎場御嶽以外にも、そこから車で15分程度の場所に大きな鍾乳洞や渓谷もあり、いずれ劣らぬ奇景が楽しめるはずだ。

基本、ゆっくり写真を撮りたい我々はバスツアーをあまり好まない。今日行く場所も那覇バスターミナルから路線バス1本、1時間程度で行ける場所ではあり、ならば自力で行く方が自由度は高い……のだが、何故かこの2地点は近場にある観光名所であるにも関わらず、これらを結ぶバス路線が事実上存在しない。そのため自力で動くとなると一度那覇へ戻ってまた別のバスで1時間というルートになってしまう。ならば両方を巡る現地ツアーに申し込んだ方が良かろう、ということでまたも朝7時半からの行動となった。

バスガイドによる沖縄の地名や砂糖黍畑、戦史などの解説を聞きながら南城市へ。途中で通過するニライカナイ橋は初日の出スポットなどとして人気の場所だそうだが、ここから見える久高島は沖縄神話に於ける国生みの聖地であり、斎場御嶽に於いても男子禁制の御嶽入口から、国王が島を遥拝したのだという(工事のクレーンが屹立しており興醒めのため写真はない)。
到着は開場の9時より前だったので、公園で写真を撮りながら待つ。




斎場御嶽

斎場御嶽は山というか森というか、場そのものが聖地である。いちおう道は石畳で整備されてはいるものの、使われる石材は現地の多孔質な石灰岩であり凹凸著しく、また入口以降は階段なども用意されていない。そのため山歩きに適した靴で行くこと(ハイヒールなどは入口で止められる)。

鬱蒼とした森はそこかしこに巨岩や巨木があり、岩に開いたガマなどの前には石の香台が置かれ祈りの場となっている。

魅力的な景観なのだが、写真に収めてもなかなかその雰囲気が出ない。自然の景観むずかしい……


ぽっかりと開けた小さな湿地は戦中に艦砲射撃を受けた跡だそう。

最も有名な三庫理さんぐーい石灰岩の岩塊が引張応力による伸長節理で縦に割れたのち、地滑りによって傾いたものであるらしい。


かつてはこの割れ目にも入れたのだそうだが、今は柵で塞がれていた。
また、この地を再び男子禁制とすることも検討されているのだとか。

ガンガラーの谷

続いて斎場御嶽から15分程度の場所にある、おきなわワールドという有料観光施設へ。
www.gyokusendo.co.jp
ここは鍾乳洞「玉泉洞」を中心に、沖縄名物とされる「エイサー」や琉装、琉球王国下町風の建物など琉球/沖縄文化を(多分に「観光化された」ものではあるが)楽しめる観光施設となっている。
その向かいにあるのが、かつては玉泉洞とも一続きだった鍾乳洞が崩落したことで現れた渓谷を巡る「ガンガラーの谷」である。
gangala.com
ツアーはここで二手に分かれ、ガンガラーの谷を巡る80分ほどのツアーに参加するか、2時間ほどおきなわワールドを自由に散策するかの二択となる(ガンガラーの谷は事前予約が必要で、料金も異なるためバスツアー予約時点で分かれており現地で選択の余地はない)。

谷の入口にはサキタリ洞という大きな洞窟が残されており、ここはカフェとして営業している。

パラソルは日除けではなく、鍾乳石を滴り落ちる水滴を避けるためのもの。

ここは「港川人」と呼ばれる古代人骨の出土で知られる断崖の亀裂「港川フィッシャー」から1.5kmの距離であり、この遺跡も同時代の人類遺跡と見られる。
入口手前のシート部分は発掘調査現場であり、2万年前の釣り針(釣り針としては世界最古)などが出土している。


奥にはステージがあり、ライヴなども催される。

まずはここで地質・考古学的な説明を受け、1時間以上におよぶ行程の水分補給用にさんぴん茶の水筒を受け取ってツアー開始となる。

ここも斎場御嶽同様に深い亜熱帯森林に覆われている。

とはいえ自然のままの景観というわけでもなく、地元民によって移植されたジャイアント・バンブーなども。

沖縄といえばガジュマル。この木は枝からたくさんの根を垂らし、地に到達すると次第に太く成長し幹化する。そのうち元の幹が枯れ、そうやって移動してゆくのだという。


マムシグサのような赤い実を付ける、サトイモのような葉の植物はクワズイモ。食べると蓚酸の針状結晶で酷い腫れを引き起こすが、そんな植物の葉に緑色の巻貝。カタツムリではなく、アオミオカタニシだそうだ。

道端に貝殻。太古の海底に埋もれた化石か、それとも古代人によって捨てられたものか。

側を流れる川はかつてこの洞窟を作り上げた地下水流だったもの。

まずはランタンを手に、谷から続く洞窟へと入ってゆく。



洞窟を後にして、今度は渓谷へと踏み入ってゆく。


そしてトンネルを抜けた先に、ガンガーラの谷一番の目玉「大主ウフシュガジュマル」が現れる。




大興奮で撮りまくっていたので似たような写真が続いてしまったが、ご容赦頂きたい。
大主ガジュマルを抜けると石積みの、恐らくはここも御嶽の類が。


出口から谷を振り返る。

最後は樹上に設えたウッドデッキへ。

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ここからは港川フィッシャーのある辺りも一望できる。

出口はおきなわワールド内。
これは園内に生えていたもの。どうやらタコノキの実であるらしい。

県庁前にて

バスツアーは13時頃には那覇空港へ、その後13:30頃には県庁前へ戻ってくるので、最終日の搭乗前に利用したり、午後に別の予定を当てることもできるだろう。我々はここまで全力で楽しみすぎてバテ気味だったので、この日は昼食を摂ってホテルへ戻ることにした。
県庁前に「楽園百貨店」と掲げたビルが。どうやらリウボウというデパートであるらしく、食べるところも豊富そうだったのでここに入ってみることに。
地下の食品街ではイートインもあって、買ったものをその場で食べられる。とりあえずここで昼食を済ませてから店内を一巡り。
2階はゆいレール駅と直結しており、また夕刻からは外側テラスがビアホールになるようだ。
4階の一部には那覇市の市民文化部が運営する歴史博物館があり、琉球王朝時代の文化財やかつての那覇市内のジオラマなどが展示されていた。

また、現在は特別展として沖縄海洋博の様子などが展示されている。このために那覇市内から会場へ向かうための高速道路が建設されるなど、良くも悪くも沖縄の近代化に大きな影響を及ぼしたものであったようだ。

デパートの屋上階は庭園になっていた。沖縄では屋上がテラスになっており植物を育てている家が多く見られるが、デパートも例外ではないようだ。


ところでこのリウボウなる店名、どうやら「琉球貿易」を意味するもので、遡れば米軍統治時代に貿易が禁じられた中で唯一の貿易窓口であった琉球貿易庁を起源とする商事会社であった由。
ここで買った刺身がとても美味しかったので、以降ここで晩飯を買うのが習いとなった。

福州園

ホテルに戻って一寝入りしていたら、愛妻がなにやら県庁前にあるという中国式庭園の情報を見せてきた。これはガイドブックや沖縄観光サイトなどにほとんど触れられていない「穴場」のようで、ちょうど7月初頭に改修を終え夜間ライトアップ公開を始めたばかりだという。
早速カメラを準備して出掛けることに。

www.okinawastory.jp
福州は琉球王国が明〜清朝への朝貢に赴く際の寄港地であった場所で、琉球との縁浅からぬ関係から友好都市関係を締結しており、10周年を記念して福州式庭園を造園したのだそう。












ところどころに区切りとなる壁があり、異なる景色を切り替えていることで園内を面積以上に広く感じさせている。

壁の小窓はそれぞれに違った透かし彫りが施される凝りよう。


園内からは月が。この日は満月の前日であったらしい。

19時を過ぎ、暮れゆく園内を楽しむ。足元が暗くなるため、段差のある箇所などは閉鎖されて通れなくなっていたのはちょっと残念。次は明るいうちにも来たい。



四阿天井の見事な細工。

ガンガラーの谷と同じぐらいに撮りまくってしまった。これだけ楽しめて300円は公営ならでは。
ゆいレール「県庁前」駅から沖縄タイムス本社側へ、国道58号線を渡って5分ぐらいと行きやすい場所なので、是非訪れてみて欲しい。