2009-2012年にかけて自民党を政権与党から蹴落とした民主党政権時代。5年経った今ではすっかり「当時は最悪だった」的な論調になっているが、実のところ2011年の大震災を中心に「政権とは無関係に日本がダメージを受けた」時期であり、「民主党のせい」はそんなに多くないのではないか、ということで当時を振り返ってみた。
とはいっても私も当時のことをそれほど憶えているわけではないので、ひとまず「民主党のせい」的なまとめを探して、その内容を検証する形を取ろうと思う。
matome.naver.jp
Naverまとめを参考にするというのもアレなのだが、民主党政権時代への批判として上位に挙がっていたので、ひとまず。
新規国債発行額は過去最悪に
鳩山由紀夫内閣は子ども手当などの政策を実行するため、不足する財源を補うため過去最悪の44兆3,030億円分の新規国債が発行されることになった
最多であるのは間違いないが、「最悪」なのかどうかは判断を保留。国債発行はよく借金に喩えられるが、国の貨幣政策を家計のそれと比して語るのは適切でなく、一概に悪いとは言えないのでは。
事業仕分けで科学技術振興費用が削減
「蓮舫議員のスパコン仕分け」などが印象深く語られるために「民主党が科学予算を削ったのが今になって悪影響を及ぼしている」と思われがちであるが、スパコン仕分けはむしろ「意義を説明できなかった研究者の落ち度」という面が強いし、また個々の事業予算はともかく総額としては、科学技術振興費用自体は減額されていない。従って「民主党が悪い」というのは不当な評価だ。
民主党は科学技術予算を削減していない - 現代 note
口蹄疫の流行
2010年日本における口蹄疫の流行 - Wikipedia
少なくともWikipediaで経緯を確認する限りでは、この事例は主に「以前から防疫体勢が充分でなかった」「宮崎県内で報告を遅らせた」など政権の責ではない要素が中心となったもので、民主党の問題と言える部分は「5/19に担当大臣が国内の大規模な問題を放置して外遊へ出掛けた」ぐらいに思われる。落ち度はあったが「主に民主党のせいではない」のでは。
菅談話
談話内容への評価は、主観に拠るところが著しいためひとまず保留する。
尖閣諸島中国漁船衝突事件
「弱腰外交」との評価についても主観的なものであるので保留。
東日本大震災および原発事故
震災としてだけでも未曾有の大災害であり、その上に原発事故という更なる災害が重なったこと自体には、もちろん民主党の責はひとつもない。
政府としての対応が万全であったとまでは言えないとしても、対応のまずさによって徒に被害を増やしたわけではなく、むしろ甚大な災害によく対応したと労うべきところではなかろうか。
円高
円高と円安のどちらが良いかというのは一概には言えない部分であり、大雑把には輸入と輸出どちらを重視するかの問題であるので、民主党が円高重視であろうと円安重視であろうとそれ自体が問題なわけではない。ただ、1ドル75円もの劇的な円高は流石にバランスを欠くものではあっただろう。
しかし民主党が対策を講じなかったというわけではない。この記事自ら引用している部分にも「日銀の金融緩和、民主党政権の大規模な為替介入によっても円高を阻止できなかった」とあり、「大規模な対策を講じたにも関わらず抑えることができなかった」と言うべきだろう。力不足を批判することはできるにせよ、「民主党のせいで」というわけではない。
民主党政権下で株価11・7%下落 時価総額46兆円減少
「民主党政権下で」株価が下がった、という表現は嘘ではないが正しくもない。長期的な株価の動きを見ればこの時期に株価が底を打ったのは自民党政権下時代のリーマンショックによる急落の時であり、また民主党政権下で下落に転じたタイミングは明らかに大震災の影響によるものであることが見て取れる。「民主党政権のせいで」株価が下がったわけではない。
baseviews.com
生活保護の受給者数は過去最大に
生活保護の需給者数拡大が意味するところは2つあり、ひとつは「不景気によって需給対象者が増えた」、もうひとつは「今まで需給対象者でありながら需給されなかった人に需給された」。
民主党政権下での失業率はむしろ自民党時代にリーマンショックで急増したのが緩やかに下がりつつある時期で、つまり「失業者の増加によって需給者数が増えた」のだとすればそれは民主党のせいではないし、「失業者数のピークではないにも関わらず需給者が増えている」と見るならばむしろ今までよりも需給できるように改善されたと見るべきかも知れない。