ブックマークコメントに反応して反論を頂いた。当該エントリのコメントでやるべきか独自にエントリ立てるべきか少々迷ったが、書き易さなど考えてこちらに展開しトラックバックとする。
発端と流れ
まず、発端となったあちらのエントリー。
http://d.hatena.ne.jp/Asmodeus-DB/20100312/1268421557
ここでは問題点として以下の6点を挙げている。
- 目的が定まっていない
- 効果が算出されていない
- 財源確保のために扶養控除・配偶者控除を廃止した
- 外国人が本国においている子どもにも支給される
- 親が死亡・または不詳である子どもには支給されない
- 子どもが日本人で日本に住んでいても、親が海外赴任などをしていると支給されない
これに対して私の付けたコメントが
財源問題はさておき、基本的に現行の児童手当(金額の不足が指摘され続けてきた)を増額しただけのものなので、問題があるとすればそれはほとんど自民党政権下で決まったことだよと。民主党の支持とはあんまり関係ない
であり、それに対して先に挙げたエントリでの反論があった。
こちらでは、私が「児童手当を増額しただけ」とざっくり述べたことに対して児童手当と子ども手当の差異を次のように列記している。
子ども手当法案原文
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16802014.htmに掲示されている。
冷静にこれを読めば、疑問点、問題点の多くは解消される筈だ。
問題への反論
では個別に。
目的/効果
元々が児童手当の金額的拡充なのだから、その制定趣旨も元制度を引き継いだと見るのが妥当。
効果?「子どもに一律支給」というだけの法案に効果算出もなにも。
「国防費より高いんですよ!」とか仰るが比べてどうしようというのか。そう言えば国防費も効果が算出されていないように思うが、算出が必要だろうか?
扶養控除・配偶者控除の廃止
精確には、まだ廃止してない。「これを廃止して財源に当てたい」とは表明しているものの、セットで実施されているわけではなく先行きは不明。従ってこれを問題点として挙げるのは些か勇み足というものだ。
定住外国人への支給、海外の子どもへの支給、海外の日本人への不支給
これ自体、元々児童手当でもそうなっているもの。それを「改善」しなかったのが問題?
改善ではなく改悪なのだが。当初の児童手当では国籍要件が定められており、これが不当ということで撤廃されたのが今までの児童手当。で、子ども手当でも当然それを踏襲している。従って、今更国籍要件を復活させるというのは前時代的制度に逆戻りということ。それこそ問題だ。
海外の親への不支給については子どもも海外にいる場合と子どものみ国内にいる場合で意味が違うが、子どもが国内に残り親だけが海外にいる場合は祖父母など「児童を監護し生計を主として維持する者」が国内にいる筈で、その世帯に支給される。全員海外の場合は、むしろ駐留先国の児童手当に相当する補助を受けるのが筋。日本でも定住者の国籍を問わず支給するように、海外でも概ねそのように支給される筈だ(国によって法整備の遅れている場所もあるだろうが、それはまた別の問題)。
親が死亡・または不詳である子どもには支給されない
原文にもある通り、支給要件に「父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない子どもを監護し、かつ、その生計を維持する者」が含まれるので、孤児院などでも支給を受けられる。
差異への反論(?)
反論という言葉を使うのは正しくないが。
目的
これは上で述べた。
年収制限
これに関しては正直、法案の意図がよくわからない。収入で充分に養える家庭にまで支給する理由はないだろうにとは思う。
児童手当の場合は金額の低さに加え所得による制限があったので、一部で懸念されているように「海外に養子100万人」みたいなことをしてもあまり意味がなかったのだが、子ども手当て法案ではその制限が撤廃されているため、理論上は可能になる。
これに関しては後述。
12歳まで→15歳まで
これは単に支給額の差異と違いない。
扶養者への支給
支給要件については上に述べたが、親であるかどうかを要件としていない。
養育状況の確認
児童手当法についてはhttp://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO073.htmlに全文があるが、27条「調査」がそれに当たる。
市町村長は、必要があると認めるときは、受給資格者に対して、受給資格の有無、児童手当の額及び被用者又は被用者等でない者の区分に係る事項に関する書類を提出すべきことを命じ、又は当該職員をしてこれらの事項に関し受給資格者その他の関係者に質問させることができる。
子ども手当法案では以下のようになっている。
市町村長は、必要があると認めるときは、受給資格者に対して、受給資格の有無及び子ども手当の額に係る事項に関する書類を提出すべきことを命じ、又は当該職員をしてこれらの事項に関し受給資格者その他の関係者に質問させることができる。
特段の違いはない。
総論
要するに、「金額以外に違いがない」。ただ、この中で所得制限の撤廃だけは少々気にかかるところ。
子ども手当=児童手当は子どもの生育を補助するもので、補助を受けずとも充分に子どもを育成できる家庭には元々必要なく、むしろ低所得ゆえに子どもに充分な養育を行なえない家庭の救済が趣旨である筈だ。何のための所得制限撤廃なのか。